大カボチャを守れ!



<オープニング>


 とある村で開かれる大カボチャ祭り。それは丹精込めて育てあげたカボチャの大きさと形、そして味を競うという、この村ならではの秋の風物詩だ。
 そもそも、村近くに館を構えているカボチャ好きの領主様によって始められたお祭りで、見事優勝を勝ち取った大カボチャの育て親には、『一番カボチャ』の称号が送られ、なんと領主様の食卓にカボチャをお届けするという栄誉(?)を得る事が出来るのだ。
 のどかな農村のお祭として、これまではそう大した問題も起こっていなかったのだが……。

「最近、村ではカボチャ畑が次々と荒らされ、丹精込めて育て上げた大カボチャが、無残にも食い荒されてしまうという痛ましい事件が相次いで起こっています。このままですと大カボチャが未出品となり、村の皆さんが楽しみにしている大カボチャ祭りが中止になってしまいます。あ、お待ちしてました♪」
 と、依頼に付いて冒険者たちに説明をする霊査士のテーブルに、何故かカボチャの煮付が盛り付けられた大皿が届けられる。怪訝そうな冒険者の視線をよそに、霊査士はなんとそのカボチャの煮付を頬張り始めた。ま、まさか!?
「……霊査によりますと(もぐもぐ)大カボチャを食い荒らしたのは(むぐむぐ)どうやら豚グドンの一群のようですね(ごっくん)」
 冷たい水を飲み、ふうっと一息つく霊査士。にこっと笑って、証拠品であったカボチャを冒険者たちにも勧める。冒険者の力を借りる為に、村人たちが冒険者の酒場に持ち込んだグドンの食べ残した大カボチャを、捨てるのは勿体無いと料理して貰った物らしい。
「あっ、大丈夫ですよ? 綺麗な所をより分けてもらいましたから♪」
 そういう問題じゃないだろう? と突っ込みを入れたくなるのを堪えて、霊査士に話を進めるように促す冒険者たち。
「ええと、次に被害に遭うのは、ズバリ優勝候補の大カボチャだと思われます。下馬評では、去年の優勝者のゲーリーさんの育てた『ブレンダ』と、去年は惜しくも準優勝だったトーマスさんの育てた『ジョディ』の二つが、今年の優勝候補の最右翼だそうです。残念ながらどちらが本命なのかまでは、霊査では特定できなかったのですが、不幸中の幸い、この二軒の農家は隣り合わせとなっているそうです。冒険者の皆様、どうか『ジョディ』と『ブレンダ』を守りつつグドンを退治して、大カボチャ祭りを無事開催へと導いてください」
 そう言うと、本格的にカボチャの煮付を冒険者たちに勧める霊査士であった。

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参加者
傭兵上がり・ラスニード(a00008)
朽葉の八咫狐・ルディ(a00300)
疾風の焔・ミユキ(a00324)
若草の翔剣士・オリエル(a00348)
黄金の旗手・メノアリア(a00666)
神秘嗜好者・ブロージャ(a01272)
西瓜魔人・スイカモズー(a02064)
焔銅の凶剣・シン(a02227)


<リプレイ>

●感想?
「カボチャねぇ」
「なかなかだな」
「カボチャは美味しいです」
「畑の平和は私が守る!!」
「カボチャ祭りには参加したいぜ♪」
「呼子にロープ、……照明もいるな」
「カボチャ料理、食べてみたいです」
「いや、実はカボチャは苦手なんだ俺……」
 ……え?(汗)

●無言の重圧
 ここはゲーリーさんの大カボチャ畑。畑の中央付近には、大きなカボチャが一つだけ実っている。これが『ブレンダ』だろう。尋ねて来た冒険者たちを一瞥すると、ゲーリーさんは再び畑仕事に戻る。
「『ブレンダ』を無事に守る為にも畑の周囲に罠を仕掛けたいのです。もちろん、ゲーリーさんの畑仕事の邪魔にならないようにします」
 言葉の限りを尽くして、切々とゲーリーさんを説得しているのは、ストライダーの邪竜導士・ブロージャ(a01272)である。しかし沈黙のプレッシャーが、図太いと自負している筈のブロージャの肩の上に重く圧しかかる。
「……畑の中のどの辺りまで踏み込んでも大丈夫なのですか?」
 気を取り直して、ヒトの武人・ラスニード(a00008)は、警備の為の行動可能範囲について訪ねる。すると、ゲーリーさんは畑のあぜに立てられた看板を指差す。
『カボチャ畑への立入りを禁ズ』
 ……取り付く島も無い。
「必ずカボチャは、『ブレンダ』は守ります。安心してください」
 職人気質なゲーリーさんにある種の共感を抱いていたストライダーの武道家・ミユキ(a00324)は、それでも粘り強くゲーリーさんとの会話を試みるのだが、前途多難のようである。

●言葉の洪水
 一方、こちらはトーマスさんのカボチャ畑。農作業の手を休めて、愛想良く冒険者たちを迎えたトーマスさんは、早速聞かれもしない『ジョディ』の自慢話を始める。
「さぁ、御覧あれ! これが今年の大カボチャ祭りの優勝を勝ち取る、我が愛しの『ジョディ』嬢です。どうですか、美しいでしょう? 大きいだけが売りのゲーリーさんの所の『ブレンダ』とは雲泥の差ですよ!」
 種の選別時の秘話に始まり、双葉が開きすくすくと苗が育っていく様、そして花が咲き、実を選別する段階へと話は目まぐるしく進む。
「はわわわわ……」
 トーマスさんの話を真面目に聞きながら、うんうんと頷いていたストライダーの邪竜導士・ルディ(a00300)だが、何時終るとも知れない自慢話に次第に目を回して来たようだ。
「大きいカボチャですね。これを使ったら何人前のパンプキンスープができるのでしょうか?」
 横からヒトの重騎士・メノアリア(a00666)が話題転換を図る。どうやら外見よりも味に興味があるらしい。待ってましたとばかりに、トーマスさんの舌は更に滑らかになる。
「パンプキンスープもいいですが、他にも色々と美味しく食べれますよ。『ジョディ』の素晴らしさは見た目でだけではなく、その味にもあるのです。そうだ。後で秘伝のレシピをお教えしましょうか?」
 舌好調のトーマスさんのトークショーは、まだまだ続く事だろう。

●ニセ巨大カボチャ作戦?
 ここは『ブレンダ』と『ジョディ』の畑のほぼ中間地点に位置する休耕地。何やら、多くのカボチャの破片と格闘しているのは、ストライダーの翔剣士・オリエル(a00348)だ。夕刻も近付き、見た目は立派な大カボチャが完成した。しかし……。
「うーん、やっぱり痛んでたかなぁ?」
 そう、季節は秋に差し掛かっているが、まだまだ残暑も厳しい。見た目はともかく、カボチャの周りからは異臭が漂って来る。カボチャ集めを手伝ってくれたルディからは『ダリオファーナ』という立派な名前を送られていたのだが、諸々の事情(特に異臭)により『ニセ巨大カボチャ作戦』は早々に終止符を打たれたのであった。残念。
「ようし、カボチャ畑の仕掛けは上々だ。村人たちが罠作りの手伝いを快諾してくれて助かったぜ」
 密かに人手を集めて罠作りを終えてきたヒトの狂戦士・シン(a02227)は、人心地つく。色々と紆余曲折はあったものの、二つの畑の周囲に罠を仕掛ける事ができたのだ。まあ、二つ返事のトーマスさんはともかく、ゲーリーさんの沈黙を『肯定』と受け取っただけであったりもするが。
「畑を襲うとは……おのれグドン、卑劣な奴! この農家の味方、スイカモズーが絶対に許さんぞ!!」
 シンと共にカボチャ畑周辺の罠作りを手伝っていた農業をこよなく愛する男、エルフの紋章術士・スイカモズー(a02064)は、グドンに激しい怒りを燃やしていた。丹精込めて育て上げた作物を、グドンに荒らされた農家の人たちの心労は如何ばかりの物であろう。農家の皆さん、作物の仇はこの私が……と決意を新たにするのであった。

●カボチャ畑の攻防
 グドンによる被害だが、夜間に集中していた。冒険者たちは各々所定の位置で夜通しの見張りに付く。

「足元には、くれぐれも気を付けてな」
 暗がりの中、ラスニードは共に『ブレンダ』周辺を警戒しているブロージャに声を掛ける。
「ああ、わかっているさ。折角の苦労が水の泡になっちまうからな」
 と、苦笑いを浮かべるブロージャ。ラスニードの言葉は、仲間を気遣っての事だけではなかったのだ。2人はゲーリーさんとの粘り強い交渉―とは言え、一方的に譲歩の条件を提示して行っただけであるが―の末、カボチャの葉や茎を決して踏まないとの条件で、ようやく畑内部への立入許可を貰う事が出来たのだ。が、このまま平穏無事に終ろう筈も無かった。

 所かわって『ジョディ』周辺に目を移してみよう。こちらではメノアリアとルディが息を潜めてグドンの襲撃に備えている。
「豚グドンさんたちから『ジョディ』さんを守らなきゃね」
 トーマスさんの自慢話に感化されてしまったルディは、すっかり『ジョディ』のファンになってしまったようだ。
「ええ、そうですね。一緒に頑張りましょうね」
 メノアリアはにっこりと笑みを浮べて、ルディの言葉に答える。この依頼の後で、トーマスさんから秘伝のカボチャ料理のレシピを教えてもらう約束を交わしたとあって、中々に気合が入っている。昼間の『聞き疲れ』が多少心配ではあるが。

 両カボチャ畑の中央付近の休耕地には、4人の冒険者たちが待機していた。冒険者たちは中央班を設置して、2つのカボチャ畑に集るグドンの数に応じて援軍を送ると言う作戦を取ったのだ。
「よし。『ジョディ』さんは、まだ無事のようですね」
 エルフの夜目で他の者よりは視界の利くスイカモズーは、麗しの『ジョディ』付近の監視を怠らない。彼もどうやらトーマスの毒牙(?)に掛かった一人のようだ。
「そう構えてるなって。夜は長いぜ?」
 こちらもトーマスさんの畑寄りで監視を続けていたシンは、少々入れ込み気味のスイカモズーを嗜める。
「今の所、まだ何の変化も無いみたいだな」
 一方、『ブレンダ』寄りに待機しているオリエルが、同じく隣に待機しているミユキにそっと話し掛ける。
「そうですね。でも油断は出来ません」
 そう答えるミユキの視線は、ゲーリーさんのカボチャ畑付近の林に注がれていた。
『林じゃろう……』
 グドンの襲撃についてのミユキの問い掛けに、唯一ゲーリーさんの洩らした言葉がそれであった。恐らくは直感的に答えなのだろうが、そのゲーリーさんの言葉がミユキの耳から離れなかった。
「ミユキ、あれは!?」
 そうミユキに呼びかけるオリエル。彼女の指先は、まさにその林の中に見え隠れする光を差し示していた。

 異変に気が付いたのはオリエルだけではなかった。『ブレンダ』の警備に当たっていたブロージャとラスニードも、林の中の光点を確認していた。
 そして、月明かりに照らされ豚に良く似た容貌のグドンの一団が『ブレンダ』の畑付近に続々と姿を現す。その数10匹余り。グドンたちが『ブレンダ』に駆け寄ろうとした、その時。

 ピィィィィィッ! ピィィィィィッ!

 鋭い音が立て続けに2回鳴り響く。ラスニードが合図の呼子を鳴らしたのだ。
「さて、私に剣を抜かせるのは誰かな?」
 流浪の剣士は剣を鞘に収めたまま、抜刀の構えでグドンの前に立ち塞がった。
「彼女には、指一本触れさせない」
 その背後に続くブロージャは、蛇の杖を携えてそう言い放つ。
 予期せぬ相手の登場に一瞬怯みを見せたグドンだが、敵が二人だけと悟ると手にした武器を構え直し、数に任せて向って来る。
「行かせはせん!」
 向ってくるグドンに『居合い斬り』を放ち、ラスニードは敵中を突っ切る!
 その突撃に合わせ、ブロージャがグドンの一団に『ニードルスピア』を撃ち込む。
「指一本触れさせないと言っただろう!」
 手痛い反撃を受けたグドンたちは、冒険者を包囲して倒すべく周囲に展開を始めた。しかし、その行動には更に手痛いしっぺ返しが待っていた。
 足元に張り巡らされたロープに躓き倒れる者、釘を踏み抜き飛び上がる者、落とし穴に嵌る者。冒険者たちが仕掛けていた罠に、グドンたちが次々と引っ掛かってゆく。
「よし狙い通りだ。後は時間稼ぎでいい。援軍の到着を待つぞ!」
 混乱に陥ったグドンたちが『ブレンダ』に近付かぬよう牽制しつつ、ラスニードは大仰に剣を振るうのだった。

 グドンの一団が『ブレンダ』の畑を襲い始めた頃、『ジョディ』の周辺でも異変が起きていた。月の明かりの中、静かに動く影が1つ、2つ……。複数の小柄な影―グドンが、静かにそして密かに『ジョディ』の畑へと近付いて来る。影は10前後までに増えている。
 と、遠くで鋭い音が2つ鳴るのが聞こえる。ピクっと耳をそばだてるグドンたちのすぐ側で、同じく鋭い音が2つ鳴り響く。
「出ましたね。『ジョディ』ちゃんに近寄る前に私が相手です! カボチャでは無く、これでも食らいなさい!!」
 密集していたグドン目掛けて、メノアリアは『砂礫陣』を叩き込む。メイスに抉り取られた砂礫がグドンたちを襲う!
「そうです。『ジョディ』さんの命が惜しかったら、それ以上近づかないでください!」
 何を思ったか、『ジョディ』に蛇の杖をかざして、グドンを脅迫(?)するルディ。
「あ、あの、そうじゃなくて……」
 一瞬、動きの止まったメノアリアの脇を抜け、もちろんお構い無しにグドンが『ジョディ』に迫る。
「や、やっぱりダメ?」
 と、構えた杖をグドンに向け直して、ルディが放った『ニードルスピア』にグドンは動きを鈍らせる。気を取り直したメノアリアもメイスを構え、グドンの前に体を滑り込ませる。
 『ジョディ』を背にした2人は、近付くグドンに容赦ない攻撃を加えるものの、苦戦を強いられた。数で押して来るグドンに対して、『砂礫陣』や『ニードルスピア』を出し惜しみする余裕は無かった。
 中には冒険者たちの仕掛けていた罠に引っ掛かるグドンもいたが、じりじりと包囲を狭めるように『ジョディ』に迫って来る。アビリティも尽きたその時。
「畑を荒らす愚かなるグドンよ!」
 おおっ、この声は!? そう、あの男だ。
「神やミユキさんが貴様らの所業を許そうが……、この私、野菜の味方、スイカ大帝スイカモズーが天に代わって成敗する! 受けろ、我がエンブレムシュート!!」
 スイカモズーの描く力の紋章が、一瞬カボチャの形に見えたのは気のせいだろうか? 解き放たれた『エンブレムシュート』が、グドンを直撃する。
「よぉ、待たせちまったかい?」
 死角から密かに『ジョディ』に近付いていたグドンを『マッスルチャージ』で切り倒したシンが、2人にニヤリと笑いかける。
 形勢は一気に逆転した。

「大切なカボチャです。食られるわけには行かないの!」
 一方、オリエルと共にゲーリーさんの畑へ急行していたミユキは、グドンとの闘いに突入していた。
「よーし、ミユキ。一気にかたを付けようぜ!」
 オリエルの言葉にミユキが頷く。スピードに勝るオリエルが、疾風のような剣撃をグドンに浴びせ掛け、その怯んだ隙を突いてミユキが流れるような連携で『旋空脚』を決め、大打撃を与える。
「これはこれは……。私も負けてはいられませんね」
 2人の連携攻撃を横目に伺いながらラスニードは軽く笑みを浮かべると、打ち振るう剣を防御から攻撃へと転ずる。
「とっておきだ。後は任せるぞ!」
 乱戦の中、隙を作る為、ブロージャが最後の『ニードルスピア』を撃ち込む。
「承知!」
 その隙を逃さず、ラスニードの剣がグドンを捉え、切り伏せる。大勢はほぼ決した。
 程無くして畑を荒らし、大カボチャを食い荒らした豚グドンたちは、見事冒険者たちの手によって打ち倒されたのであった。

●兵どもが夢の後
 翌日、冒険者たちはグドン退治の後始末に奔走していた。大カボチャたちには、傷一つ付いていなかったものの、畑には無残な爪跡が残されていたのだ。仕掛けた罠の撤去もある。
「ご、ご免なさい、トーマスさん。お詫びにきちんと畑を耕しますから……」
 中でも、メノアリアが『砂礫陣』を放った『ジュディ』周辺の地面は、何箇所も深く抉れていた。流石のトーマスさんも、畑の惨状を見て言葉を失ったと言うのだから、その状況は推して知るべし。
「畑が駄目になった所が多いと聞く。どお〜れ、この余が一肌脱いでやるかな? アッハッハ!」
 農家の味方スイカモズーは、大カボチャを守リ切ったと言う喜びもひとしおに、村の農家を巡りグドンに荒らされたという畑の整備に勤しんでいた。
 こうして、無事(?)に後始末も終えた冒険者たちは帰路に付いた。
「お2人とも、頑張って良いカボチャ作ってね」
 ミユキの言葉に、もちろんですとも、とにこやかに答えるトーマスさん。うむ、と大きく頷いたゲーリーさん。この二人がいる限り、大カボチャ祭りは無事開催される事だろう。
 冒険者たちは2人の男に見送られて、村を後にするのであった。

【END】


マスター:五十嵐ばさら 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2003/09/05
得票数:戦闘2  ほのぼの5  コメディ18 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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