ラブハンターはパンプキン



<オープニング>


 冒険者達が集まったのを見ると、その構成を見て…リゼルがこちらへやってきた。
「ふむふむ…なるほどね」
 なにやら意味ありげに一人頷き、そして話を始める。
「さて、今回の依頼よ。ハートフル・パークっていう…ベタな名前よね…いわゆる恋人達を目当てとした公園があるの。園内には湖―もちろんボート付・岸辺にカフェもあり―や、花畑―ランチを食べたり、追いかけっこする恋人達多数―、渋いカップルに人気の並木道や石像なんかが置いてある彫刻広場、それから結婚式なんかにも使われるっていう大理石の神殿―夜にはダンスパーティも開かれる―とかがあるそうよ。他にも色々な施設があるみたいだけれど…。で、そこの公園で…一週間前から奇妙な噂が流れていてね。いわく、『ハートフル・パークでデートすると、失恋する』って。事実、そこで失恋するカップルが続出。それだけならよかったんだけれど…失恋した女性達に話を聞いてみると、『急に彼が憎らしくなった。今はなんともないのに…』とか、『喧嘩する前に奇妙な影を見た』とか『カボチャが浮いていたような気がする』とか、怪しい証言が付随してたのよ」
 そこで…とリゼルの話は続く。

「そこで、ハートフル・パークの園長さんの頼みで霊査してみたら…どうもカボチャ頭のモンスターがカップルを見ては仲たがいさせているようなのよね。今のところは死傷者はでてないけれど…このままエスカレートするとどうなるかわからないわ」
 なので、これ以上の被害が出る前に何とかして欲しい、というのが園長さんの依頼である。
 なんでも、このハートフル・パークは恋人達の為に半生をかけて作ったもので、こんな事件で潰されるのは無念でならない…とのことだ。多少の無理は聞くから、どうにかしてこのモンスターを追い返してくれ…と泣きながら園長さんは頼んでいたらしい。

「相手は普段は姿を隠してる上に、公園内は場所がら隠れる場所も多いから…おびき出すのが一番だと思うの。後、どうもこのモンスター、一日見たカップルの中で一番仲のよさそうだった…言い換えるとイチャついていたカップルを狙うみたい。仲たがいしたのは、全員夜中だったそうよ。昼間から夜にかけて獲物を物色、襲撃って感じみたいね。ま、要はカップルのフリしてモンスターをおびき寄せて倒してってこと。フエンテちゃん辺りにはカップル役は難しいかもだけど…がんばってね」
 肩を叩かれた砂塵の中の蒼・フエンテ(a90277)は、きょとんとした表情で小首をかしげるのだった。

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参加者
蒼炎の戦姫・フィア(a05367)
四神を司りし紅き魂の聖魔・レツヤ(a12580)
黒焔の執行者・レグルス(a20725)
時の輪の謡い手・エルシー(a30716)
蒼い薔薇の下で眠る子猫・ミナ(a35897)
囁くのは優しい嘘・ドロレス(a35973)
NPC:砂塵の中の蒼・フエンテ(a90277)



<リプレイ>

●恋人達の園
 ファンシーピンクで彩られた巨大なアーチ。ところどころに飾られた、ハートを基調としたオブジェ。街頭では楽隊が優雅な音楽を奏でている。

 てってってってって…。
 軽快な足音。アングルを足元からあげてゆくと、深いスリットから覗く健康的な太股が眩しい。スリットは腰の辺りまであり、ややもすれば下着が見えそうである。
「ルグスちゃん〜、はやくはやくですよぉ♪」
 だが、そんな格好をしてても、色っぽいというよりは可愛さ、元気さ、あたりが強調されてしまうのは、その一挙手一投足に生気が満ちている為であろう。彼女、蒼い小さな猫と華・ミナ(a35897)に呼ばれた相手役の光闇の破壊者・ルグス(a29914)も、
「あんまりはしゃぐと、すっ転ぶぞ」
 などといいつつ苦笑していた。

 にこやかな笑みを浮かべている黒焔の執行者・レグルス(a20725)。しかし、その笑顔はどこか引きつり気味。その視線の先には、入り口にどっちから入るか…できゃいきゃい騒いでいるカップルが。
「…ハントする気持ちはわからなくもなねぇな……。というか、後ろがつっかえてるんじゃあぁぁっっ!!!」
「レグルスさま…、他人さまを蹴っ飛ばしてはいけませんのよ?」
 暴れるレグルスを宥める、時の輪の謡い手・エルシー(a30716)。彼女がレグルスの相手役…というかレグルスが相手役にさせられた、というほうが正確かもしれない。
「…ところで、いちゃいちゃってなんですの?」
「「…………」」
 見詰め合う二人…。流れる沈黙…。そして…、続くため息(台無し
「…後で辞書でもひくか。花畑で本でも読もう……邪魔するなよ?」
「はい、私は音楽でも奏でてますわ♪ それと…あんまり怒ると身体に悪いですわよ?」
「うるせぇっ! いったい誰のせいでこんな苦労を…ぶつぶつ…」
 背中に哀愁を漂わせるレグルスだった。

「久しぶりだね…こうやって二人で出かけるのも」
 本当はもう少しおめかしして来たかったんだけど…と思いつつ、蒼炎の戦姫・フィア(a05367)は聖魔に選ばれた紅き魂の剣士・レツヤ(a12580)と並んで歩く。
「…そうだな」
 答えて、レツヤは心の中で苦笑する。彼としては南瓜のモンスターを退治しにきたのだが…何時の間にか目的がデートに入れ替わっている事実に。そこまで考えて…隣を歩くフィアを見る。
(「まぁ、フィアが喜んでいるのなら…良いか。……いちゃいちゃ、しないとな…」)
 ぎこちなく、フィアの肩を抱いて、自分へと引き寄せる。
「ぁ…」
 小さく呟き、そのまま身体を預けるフィア。二人は、そのまま湖へと向かっていった。

「さて、今のところは順調そうね」
 こちらは、囁くのは優しい嘘・ドロレス(a35973)。物憂げな表情をしつつ、ドロレスはそれぞれのカップルの予定を思い出ながら、傍らに控える砂塵の中の蒼・フエンテ(a90277)を振り返る。
「というわけで…女二人、一応何事もないか見回りしましょうか?」
「……はいですの」

●時の輪は黒焔に抱かれて眠る
 少し小高い丘。てっぺんには大きな木があり、その周りを囲むように様々な花が咲き乱れている。その木の根元で、読書にふける黒衣の男性が一人。木の上には、フルートを奏でるエンジェルの少女…。
 風が吹き、黒髪と紫色の髪が花や木の枝と同様、風にそよぐ。
「えー、いちゃいちゃ…カップルが中睦まじげに巫山戯合う」
 そんな幻想的な光景の中、男性…レグルスが棒読みで呟いた。そんな恥ずかしいこと人前でできるかっ! などと叫び本を閉じる。
 と、不意に陽光が遮られた。
(「! これは…!」)
 このシチュエーションに、彼は覚えがあった。
「エルシー、ぼーっとするな! 飛ばされ…!」
 上を見上げ大声を上げるが…時遅し。むぎゅ、という蛙がつぶれるような音が辺りに響いた。

「……はっ、ここは…」
 ふっと意識を取り戻したエルシーが感じたのは、温もりであった。そして次に驚き。
「ったく…。始めてあったときといい、今日といい…。お前、やっぱり俺に恨みでもあるんじゃないか?」
 ふぅ…とため息をつくレグルス。その腕の中には、エルシーが。
「…初めてお会いした時も、こんなでしたわね♪ 暖かくて…安心できて…亡くなったお姉さまを思い出しますの。あの時と代わらなくて…大好きですの」
「…俺はお前の姉ちゃんかよ」
 突っ込みを入れつつ、レグルスにはエルシーのとても嬉しそうな笑顔がまぶしかった。
「ふぁ…なんだか、安心したらねむたく…お休みなさいですの…すぅすぅ」
 一つあくびをして、エルシーはすやすやと眠りこけてしまった。
「…いい気分で昼寝か」
 さんざん自分を追い掛け回す少女の寝顔を見ながら、レグルスは呟く。頬をふにふにとかしてみる。追っ手から逃れ、自由になったと思ったとたん…この少女に追い掛け回されるようになったのを思い出す。最初はうっとおしいなどと思ったこともあったが…、今はどうなのだろうか? 自問自答しても、形となるような答えは出てこなかった。
「少なくとも、今悪い気分じゃないらしいな、俺は。……今日だけの特別サービスだからな」
 こうして、レグルスはエルシーが起きるまで彼女の抱き枕となる運命を許容したのだった。

●蒼炎は紅い魂に縁りて
 ほぼ同時刻―。
 
「さ、さっきは…その…ゴメンね、レツヤ」
 顔を赤くしてレツヤに誤るフィア。さっきの…とは

ここより回想シーン−−−−−

「ねぇ、私もボート漕いでみたいんだけれど、いいかな?」
 太陽の光に煌く水面の上を滑るように移動するボート達。その中に、レツヤとフィアの乗るボートもあった。
「構わないが、結構難しいからな…。バランス崩さないよう、注意するんだぞ?」
 レツヤは笑いながらオールを渡す。
「んんっ…本当だ…。結構重いのね…っと、きゃあっ!?」
 予想以上の手ごたえに、バランスを崩してしまうフィア。どさっ、という音がして…揺れる船の上、フィアはレツヤの腕の中に倒れこむ。
「…だから注意しろっていっただろう? 大丈夫か、フィア」
「……う、うん…」
  
−−−−−回想終わり

 …の、ことである。
「何、気にするな。それより…お弁当作ってきてくれたんだろう?」
「あ、もちろん♪ そうね…あそこで一緒に食べてようか」
 と、フィアが花畑を指差した。
 手早くランチマットを広げ、二人並んで座る。ランチボックスの中には、サンドイッチをメインに…唐揚げやタコさんウィンナー、ポテトサラダに玉子焼きなどが所狭しと並んでいる。デザート用の別の箱には、この間覚えたチョコバナナタルとが入っていた。
 広げられたランチを前に、肩を寄せ合って座る二人。
「はい、レツヤ。あ〜ん…」
 定番の『あ〜ん』をしつつのランチ。フィアがレツヤにウィンナーを食べさせれば、レツヤがフィアに玉子焼きを食べさせる。陽気も良く、あれだけあった昼食は…ほどなく全て無くなっていた。
「…で、どうだった、お弁当?」
 ランチボックスを片付けながら、少し緊張気味に感想を聞くフィア。
「美味しかったよ、フィア」
 レツヤの優しい声が耳に入る。ランチボックスをしまい終え…フィアはレツヤへと向き直ろうとした。
「本当? 嬉し…んっ!? んっ…んんっ………ん………………」

 重なり合う影。

 ざあっ……!
 一陣の風が吹く。花びらが舞い、二人を彩るように包み込んだ。

●蒼い小さな猫
 ここハートフルパークの名物の一つに、白亜の神殿がある。その神殿の庭、一際元気のいい声がする。
「うーん、このソフトクリーム美味しいですよぉ〜♪ ルグスちゃんも食べると良いですぅ」
 差し出されたソフトクリームを苦笑しながら受け取るルグス。大人っぽい格好をしていても、普段と全く変わらないミナの立ち振る舞いに…入園してからずっと苦笑しっぱなしである。だが、それがミナの何事にも変えがたい魅力である、ということもルグスは知っていた。
「お腹もいっぱいになったし…ベンチにすわっていちゃいちゃするのですよぉ」
「そんなに引っ張るなよ、ミナ…。ベンチは逃げたりしない…って、くすぐったいって、ははは」
 ミナに引きずられるように、ルグスはベンチへと連行される。そして座らされるやいなや…首筋にすりすり、頬にぺろぺろ。
 その行動は、人間に懐く猫そのものである。
「にゃぁ〜、ルグスちゃんは大きくてあったかくて、すりすりしてるといちゃいちゃなのですぅ?」
 ひたすらミナにじゃれつかれ、困ったような顔をしつつも…その頭を撫でてあげるルグス。やっぱり、猫とご主人さまかもしれない。

●セイレーンな二人
「…現在のところ、『ほのぼの』『王道』『猫系』といった感じかしら…? はい、私の手番ね」
 と、各カップルのぱっとみの感想を述べるドロレス。述べつつ、自分の手札に目をやる。とりあえず相手が出てくるまでは手持ちぶたさなので、昼休みがてらフエンテとカードゲーム、である。
 ドロレスが昼間観察してた感じ、フエンテはカップル同士のやりとりを不思議そうに眺めている感じであった。ついでに言えば、噂の影響か…そんなにアツアツといえそうなカップルもいなさげである。というか、人が既に少なかった。園長さんが泣くのも頷けるわねぇ…と、ドロレスは思ったりしていると、フエンテの声がした。
「……お強い、ですのね」
「ん? ふふ、まぁね。フエンテちゃんもなかなかやるわね〜。そういえば、どのカップルに敵が…」
 こちらはこちらで、今のところ平和であった。

●ラブハンターは星と消え
 夜。松明の炎で幻想的に照らし出された神殿が、闇の中に浮かび上がる。その庭には、楽しそうに語らう、冒険者達の三組カップル。
 彼らを一望できる茂みに、ぼっ、という音とともに光がともる。内にオレンジ色の炎をやどした南瓜頭。その頭の下におまけのようにひらめく緑色の布きれ。南瓜頭は、ケタケタと笑うと内に秘めた炎を燃え上がらせ…!
「はい、そこまでよっと」
 背後からの不意の声に、ぎょっと振り向く。そこには、禍々しい黒曜石の刀身をもつ蛮刀を肩に担いだドロレスが。予め襲ってくる場所を限定するようにした上で、潜んでいそうな場所に網を張っていたのだ。
 傍らのフエンテが、ぴーっ! と笛を吹き鳴らす。
 危険な気配を感じて一目散に逃げ出そうとする南瓜頭だが…レツヤが投擲した鞘をとっさに回避しようとし、動きが止まる。次の瞬間、
「おっと、逃がしゃしないぜ?」
 の台詞とともにレグルスが放った暗黒の鎖が南瓜頭を絡め取る。もがく南瓜に、つかつかと歩み寄るフィア。
「…折角いい雰囲気だったのに。誘い出すのが目的だったけれど、邪魔されると面白くないな…」
 がしっ! 慌てふためく南瓜の頭を掴み、ぐるぐると振り回し…レツヤへと放り投げる!
「これが、俺の最高の技だ!」
 夜の闇に白刃がきらめき、南瓜頭がカッコーン!と元来た方向へときり飛ばされる。そこには、満を持して待ち構えるドロレスが。
「最後くらい、派手に決めさせてもらうわよ」
 肩に担いでいた蛮刀を構え…振り抜いた!

 どっかーーーん!!

「あらあら、ジャストミートですわ」
 カンテラを持って照明係になっていたエルシーが手をかざして夜空を見上げる。
 派手な爆発とともに、南瓜は夜空の彼方へと飛んでゆく。
「…しまったわね」
 すっ飛んでゆく南瓜を見ながら、ドロレスが呟く。相変わらずの物憂げな表情で、髪をかき上げる。
「どのカップルにアタックしようとするのか、見るの忘れてたわ」
 南瓜は、キラーン☆ という音とともに星になった。合掌。
「さてと、倒したことだし…もう少し遊んでいこうよ、レツヤ。フエンテさんも、どう?」
「…よろしいですの?」
「わーい、みんなで朝まで遊ぶですぅ〜♪ 夜店とかも見て回るですよぉ〜」
 明日からは、また忙しい日々となるであろう。ならば、今夜くらいは…。楽しそうな冒険者達を、月と星達が静かに見守っていた。


マスター:PE2 紹介ページ
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参加者:6人
作成日:2005/11/06
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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蒼炎の戦姫・フィア(a05367)  2009年08月31日 17時  通報
今読み返すと結構恥ずかしいかも(笑)
でもとってもいい思い出でした。