ソードハンター



<オープニング>


 ヒトの霊査士・ミッドナー(a90283)はその日、冒険者達の目の前で、いつものように語りだした。
「剣を1本、取り戻してきてください」
 事の始まりは1週間前。村で鍛冶師を営む男が、作ったものを街に届けに行く最中の事だ。
 男は次の日になっても帰って来ず、心配になった娘が街道の途中で見たものは、無残に切り刻まれた父親の死体だったという。
「荷物のほとんども同様に切り刻まれていたそうですが、唯一……剣が無くなっていたそうです」
 他に盗られたものはなく、唯一、剣だけが無くなっている。
「霊査しましたが……間違いなく、モンスターの仕業です」
 恐らくは街道の近くに潜み、剣を持つ者を襲っている。
「モンスターの姿は、多数の剣で構成されています。恐らくは、奪った剣で体を構成しているのでしょう。本体は、どれか1本です」
 このモンスター……ソードハンターを倒し、剣を取り戻して欲しいとミッドナーは語った。
「それと……どれが父親の剣かは、娘さんであり、依頼人のテッツァさんが見極めてくれます。最も……彼女は一般人ですから、戦闘の最中に見極めるのには、中々苦労しそうですね」
 テッツァさんは村で待っているから先に合流してほしい。そう言うとミッドナーは、すっかりぬるくなったワインを傾けるのだった。

マスターからのコメントを見る

参加者
魔竜月吼・ナハト(a12353)
勝利の戦乙女・ビクトリー(a12688)
白桜の意志受け継ぎし大和撫子・ミーナ(a13793)
影舞・アスカ(a19931)
無影・ユーリグ(a20068)
時の伝承歌・シャナ(a22757)
砕けること無き不破の盾・ソリッド(a28799)
蒼空に閃く翼・ティムナ(a28918)
エルフの主婦・セレア(a33556)
蒼戦姫・レフィーユ(a35999)


<リプレイ>

●村にて
 テッツァの家は、村にはありがちの、普通の家だった。
 しかし、その家はテッツァ1人が住むには明らかに広すぎた。
「あはは……私以外は、皆死んじゃったんです」
 そんな視線を察したのだろう。テッツァは極めて明るく冒険者達に話した。
「しかし……剣を見極めるために自らモンスターの下に出向くのは危険かと思います。 まあ、故人の形見を求める気持ちは……」
 天駆ける蒼き翼・ティムナ(a28918)がテッツァに心配そうに言うが、それをテッツァは途中で制止すると静かに首を横に振った。
「ありがとうございます。でも、私はやらなきゃいけないんです。全部お任せしたほうが、確かに安全かもしれない。でも……」
 テッツァはそこで言葉を切ると、笑顔で振り返った。
「さぁ、行きましょう! アイツはきっと、今日も出るに違いありません!」

●街道の途中にて
「剣の特徴、ですか?」
 きょとん、とした顔で大きな荷物を背負ったテッツァが聞き返した。
「長剣か短剣か……はたまた儀礼剣かというのが分かるだけでも大きく違うものですよ」
 無影・ユーリグ(a20068)の言葉にテッツァは、静かに思索を巡らせる。
「たぶん……巨大剣だと思います」
 その言葉に駆け抜ける風・セレア(a33556)が思わず振り向いた。
「巨大……剣……なの?」
「豪快な人でしたから……」
 お恥ずかしい、という顔で笑うテッツァ。
「でも……それなら早く、見つかりそうですね……」
 時空の煌き・シャナ(a22757)がフォローするように言うが、テッツァは「いやいや、お恥ずかしい」と繰り返すばかりであった。
 そんな微妙な空気をほぐそうとしたのか、ユーリグが腹話術で腕を喋らせるが…。
「あれ?お腹すいたんですか?」
「幾らお腹すいても、腕がはーまんずはぁー…なんて鳴らないと思いますよ」
「私の父はお腹がすくと、ぶるぅまんでぇーって鳴る人でしたけど」
 影舞・アスカ(a19931)とテッツァの、そんな会話が繰り広げられる結果となったりしたのであった。

●街道にて
 螺旋の騎士・ビクトリー(a12688)の目の前が、突然暗くなった。
「こいつは……まさか、こいつが……!?」
「体は剣で出来ているっていうのですか……それにしても、ちょっとこれは……」
 ビクトリーと蒼戦姫・レフィーユ(a35999)の言葉も、無理からぬものである。
 実際に目の前のソレ……ソードハンターは、かなりの体躯を誇っていた。
 冒険者達の中で一番背の高いソリッドよりも、更に一回り大きな姿。その体は、無数の剣で構成されていた。
 ソードハンターは驚く冒険者達に構える隙を与えず、一本の蛮刀を抜き放ち、薙ぎ払うかのような攻撃を繰り出す。
 ビクトリーは慌てて防御するが竜牙剣を抜く暇はなく、白銀の聖盾を構えるのが精一杯だった。
「危険なので俺から離れないようにな……」
 他のメンバーと同じように自らの盾……魔盾【迅雷・改】を構えたソリッドが、背後のテッツァに告げる。
「はい。よろしくお願いします!」
 鎧聖降臨の感触に何だか高揚感を覚えているらしいテッツァが興奮した口調で答える。
「では…哀しき妄執に憑かれし剣を折りに参りましょうか」
 ユーリグが十字剣リベルクルスを、白桜守護天使・ミーナ(a13793)が白桜・大和撫子を、シャナがジュエルソードとクリスナイフを、ソリッドが魔導剛剣【ASTEISEN RIESE】を、ビクトリーが竜牙剣を、そしてティムナが妹の形見のシミターを構える。
 その姿を。その剣を見て。ソードハンターは歓喜していた。目の前に、これほど多くの剣が集まっていることに。

●戦闘開始
「来ましたか……お前の執着、私達が断ち切ります!」
 ソードハンターの四方を闇を剣と変え血を纏いし魔狼・ナハト(a12353)、ビクトリー、アスカ、ティムナ、レフィーユの5人が囲む。
 それを見てソードハンターは儀礼用長剣を抜き取り、アスカへと発射する。
 予想より素早い速度にアスカは防御を諦め、竜牙剣で弾く。
「人様の剣を奪うのは感心しません……ね」
 言いながらアスカが矢を射るが、意にも介した様子がない。
「あっちゃー、本体に当てないと大したダメージにはならないか。テッツァさん、どれだかわかります?」
 駆け抜ける風・セレア(a33556)が、飛んできた短剣をホーミングアローで叩き落しながら聞く。
「……分かりません。表面を覆ってるのは、ほとんどが弱い剣です。でも、父の剣は見当たりません」
「表層を剥がさないと駄目、ということですね……」
 シャナの言葉にテッツァは真剣な表情で頷いた。
「持久戦ですね…魔剣を屠るか回復が尽きるか、と言った感じでしょうか?」
 ユーリグがそう言った時。ソードハンターの体が、バラけた。
 ソードハンターの体が静かに、素早く。バラバラになっていく。その全ての切っ先は、四方へと向けられて……。
「あれは……!」
 ソードハンターが何をしようとしているのか。気がついたレフィーユがクーリアスを構える。
 そう、剣の雨。ソードハンターの最大の技であり、冒険者達が一番警戒していた技である。
 そして無数の剣が、冒険者達に降り注ぐ。
「そう易々と突破はさせんぞ……!」
 ソリッドが自らを盾にして、テッツァをガードする。
 短剣、長剣、蛮刀、儀礼用短剣、儀礼用長剣、両手剣、巨大剣……ありとあらゆる剣が冒険者達に降り注ぐ。
 予想以上の攻撃。予想以上の熾烈さ。鎧聖降臨の加護がなければ、何人かは戦闘不能寸前まで追い込まれていたかもしれない。
 アスカが粘り蜘蛛糸を発動するが剣が戻って行く速度は素早く、何本かを絡め取る事に留まった。
 次の攻撃に移ろうとする冒険者達であったが……ミーナのダメージが予想以上である事にユーリグが気がついた。
「一体何が……」
「たぶん、敵の本体です!」
 テッツァが焦燥した声で叫んだ。
「ミーナさんに向かっていった剣……色んな剣に混ざって、明らかに刃の煌きがおかしい剣がありました! あんな禍々しい煌き……たぶん、あの長剣が本体です!」
 剣の雨に混ざって自らも攻撃する。なんという大胆さだろうか。
「私には……詠い、支援することしか…」
 シャナの高らかな凱歌がミーナを含む冒険者達を癒していく。
「このモンスターを倒せなければ、フィアさんを超えられない!!」
 回復したミーナが、再び飛んできた長剣を白桜・大和撫子で迎撃する。気合は充分、体力こそ万全とは言えないが、まだまだ戦うには充分であった。
 続けてソードハンターが抜き出したのは、一本の巨大剣。
「あの剣は……?」
 ソリッドにテッツァは違う、といって首を横に降る。
 巨大剣から繰り出されるであろう剣撃。それをナハトは回避すべく……次の瞬間、長剣が別の場所から飛び出してきた。
「ぐっ……!?」
 予想外の攻撃、そして予想外の威力。この剣はまさか。
「さっきの剣……!」
 テッツァが息を飲む。自らが考えた以上にしぶとい冒険者達を、確実に仕留めにかかったというのだろうか。長剣は素早く内部へと収まって行く。
「本体……見つけました」
 アスカが放ったホーミングアローに、長剣が微かに振動する。間違いない。あれこそが本体である。
 だが……今はまだ、届かない。

●剣は何処に
 テッツァの父の、形見の剣。それを取り戻すのが今回の目的である。しかし、未だそれは見つからなかった。
 見つからない以上全力で攻撃するわけにもいかず、冒険者達は攻めあぐねていた。
 もっとも、内心穏やかでないのはソードハンターも同じであろう。
 目の前の、中々死なない生き物達。いつになったら、動かなくなるのか。
 やがてソードハンターの本能は、自分に攻撃してこないモノがある事を察知する。
 そう、それは。
 テッツァ・レイ。彼女が何を考え、この死地に赴いているかなど……ソードハンターには関係のない事だ。
 何より……彼女は「剣を持っている」のだ。そこが何よりソードハンターには重要であった。
「動きが……妙ですね」
 ビクトリーが、訝しげにソードハンターを観察する。
 剣の動きが、明らかに怪しい。まるで、どこか一方を狙っているかのように……。
 その先に居るのは……ソリッド。いや……まさか。
「テッツァ、下がるぞ!」
 ソリッドが叫ぶ。ソードハンターは、テッツァを狙っている。そして、あれは……ソードハンターが使おうとしている技は。
 止められない。どうやって攻撃を止めろというのか。ならば、防御を。だが、間に合うのか。
 剣の雨が、テッツァだけを狙って降り注ぐ。
 無数の剣が。無数の殺意が。無数の悪意が。テッツァただ1人を殺す為に降り注ぐ。
 ソリッドがテッツァを守るかのように立ち塞がる。
 だが、テッツァは。呆けたように動かなかった。
「見つ……けた……」
 見つけた、と。そう呟いて。剣の雨が、2人に降り注いだ。

●形見の剣
 降り注いだ剣の雨。その一部が、テッツァの投げた荷物の袋を引き裂いた。
 その中からあふれ出たのは、無数の盾。
 降り注ぐ無数の剣の威力を、落下する無数の盾が削いでいく。それは、僅かばかりの抵抗に過ぎない。
 だが、その僅かな時間は……ミーナが立ち塞がるに充分であった。
 矢返しの剣風。このタイミングで生じた烈風は、まさに逆転の風。ソードハンターは、その身に自らの送り出した剣を受けることとなった。
「見つけた……お父さんの……お父さんの剣!」
 テッツァが、一本の巨大剣を掴んでいる。その巨大剣もまた、ソードハンターの元に戻ろうとしている。
 無情にも。テッツァの力では、ソードハンターには敵うべくもない。
 何という悲劇か。だが、彼女の幸運は、この場に居たのが彼女だけではなかった事である。
 ユーリグの十字剣がソードハンターと剣を繋ぐ糸を叩き斬る。
「全く……無理をしますね」
 テッツァを見て、ユーリグは嘆息する。テッツァの服は所々がボロボロで、血が滲んでいた。生きていたのは、まさに鎧聖降臨のおかげであろう。
「あはは……」
 ごまかすように笑うテッツァ。
 そして、巨大剣を奪われたソードハンターは……その身に自分ではない力を蓄えていた事が災いした。矢返しの剣風によって返ってきたダメージは本体を貫き……恐らくは、すでにボロボロであった。
「さーて、それじゃ、そろそろ本気でいくわよー?」
「……その命、我が喰らい殺す……!」
「この攻撃はちょーっと痛いかも!」
「……神氣抜刀居合い斬り!」
 ようやく、本気の攻撃を繰り出す冒険者達。この時点で、ソードハンターの敗北は動かぬものとなり……然程時間も立たぬうちに、ソードハンターはあっさりと滅びる事となった。

●そして、終わりに
「ありがとうございます、皆さん」
「戦えれば良かったんでな……。仲間と共に帰還する…と」
 無愛想に言うナハトに、それでもテッツァは笑顔で答えた。
「またの機会がありましたら……あまり無理をしない事をお勧めいたします」
 ユーリグの言う、「またの機会」。それが何を意図して、テッツァがどうとったか。とにかくテッツァは「ええ、そうします」と答えたのだった。
「剣は手元に戻りましたが、これからどうされるのですか?」
 ティムナが、テッツァに自分の姿を重ね合わせる。彼女の問いは、どう過ごすかではなく……どう生きるのか。
 恐らくは本人も無意識のうちに発せられた、重い問いかけに。テッツァは、こう答えたのだ。
「……無力な自分が、嫌いだったんです。だから……私は……」
 その先の答えは、力強く冒険者達の耳に吸い込まれて。
「さぁ、とりあえず私の家に来てください。ごちそうしますよ!」
 駆け出す背中。その背中に背負われた形見の剣を……冒険者達は、眩しそうに見つめるのだった。


マスター:じぇい 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2005/11/10
得票数:冒険活劇31  戦闘3  ほのぼの2 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。