＜リプレイ＞
●水上へ出る前に
ゆるやかな流れの川を眺めつつ、冒険者たちは幾つかの船が停めてある辺りに集まっていた。幾らか上流の方には大きな橋が架かっているのも見て取れるが、ここから向こうまで行くには距離があり、この辺りの道を使う人々は渡し舟を使うらしい。もっとも、上流の方の道を使う場合は橋を使うのだそうだが。
「逃げ場の無い川で悪いことをするのは卑怯者ですね」
船着き場に集まる船頭さんや利用客から話を聞きながら、蒼影揺夢・キリ（a00339）は川に出る盗賊……川賊に怒りの言葉を呟いていた。
「非合理的な気もするけれど……まぁ、二度と悪さが出来ないように懲らしめてあげましょう」
ノソリンの瞳を炎に燃やせ・ルシア（a35455）もキリと共に川賊の人数や船の数などの情報を集めていく。そうして話を纏めれば、大体２０人ほどの規模で２隻以上の船を持っているであろうことが明らかになった。
「船上での戦いであるし、武装していると冒険者だとわかる可能性もあるだろう。鎧などは外し、武器も隠しておくことを勧める」
仲間たちを見回して言う六風の・ソルトムーン（a00180）、その言葉を聞いて船上にて敵の目に入るであろう者たちは各々武器を隠す。しかしそこは冒険者たちも考えていたようで、ほとんどが特徴の少ない服や、武道家で武器を持たずにこの依頼に臨んで来た者が多く、軽くチェックをするだけで済んだ。
そんな中で一人の船頭さんと交渉を取りまとめ、船と船頭さんが普段着ている服を借りてきた渡り鳥・ヨアフ（a17868）が舵を握り、船の操作法や注意について色々と話を聞いていた。
「この木箱で大丈夫でしょうか？」
カムフラージュの為の荷物の箱を調べながら戦巫女・サヨ（a37161）が首を傾げる。同様に奏風月歌姫・セレネ（a30868）も大き目の箱の中に入り込み、内側から小さな穴を開けて外が覗けるように細工している。
「これで賊の本拠地に乗り込めるといいのですけれどね」
荷物に紛れてゆく作戦なのだが、敵にばれてしまったり、途中で落下したり……上手く行かなかった場合の可能性も懸念しながら月下幻想曲・エィリス（a26682）も箱の中へと身を隠す。こうして３人は積荷に紛れて船へと乗り込んだ。
「盗賊の人たちなんて大っ嫌い！ 絶対やっつけてやるんだから」
そして冒険者たちは荷物を積み終えいざ出港する。盗賊退治に熱意を燃やす猪突猛進吶喊娘・ヴィニィ（a37066）の言葉にある者は船上で、ある者は荷物の中で力強く頷くのだった。
●川での戦い
船が岸を離れて水上を進む、舵を取るヨアフに乗客を装うソルトムーンとルシア、眠ったふりのヴィニィ。荷物の中で息を潜めるエィリス、セレネ、サヨ。箱には入っていないが荷物の中で隠れるキリ。荷物の量に比べて乗客が少ないような気もするが、それほど不自然なものは無い。一度目は何事も無く対岸へと辿り着き、再び反対岸へと向けて出港する。
そうして船が丁度川の真ん中辺りに差し掛かろうかと言う頃、上流から流れるようなスピードで二隻の船が急接近してくる。
（「来たか？」）
心中で呟く冒険者たち、ヨアフは船を逃がそうと舵を取るが船はどんどん近づいてくる。怯えたように船の上で後ずさるソルトムーン。
がづん！ と激しい音を立てて船と船がぶつかり、板が下ろされて相手の船からぞろぞろとナイフなどを構えた一団が乗り込んでくる。同時に反対側からもう一隻が挟み込むように接近し、そちらからも板が下ろされた。
「痛い目を見たくなけりゃ大人しくしろ！」
覆面を被った川賊の一人が叫ぶ。ひぃと声を上げて川に飛び込むヨアフ。無人となった舵を川賊の一人が掴んだ。
激しく逃げるようにヨアフが飛び込んだのに注目が集まっている隙に、荷物に紛れていたキリがそっと水中へとその身を沈ませる。ハイドインシャドウを使用して水に入ることは少々泳ぐことに意識を向ける為難しかったが、ヨアフが気を引いてくれたお陰でキリに気付く川賊は居なかった。
「姉ちゃん随分と可愛いじゃねぇか」
何だか下品な笑みを浮かべながら、ルシアの顔を覗き込む川賊が一人。怯えたように顔を伏せるルシアだが、腕を掴まれて嫌イヤとそれを振り払う。
「嫌！ 離して、お父様に言いつけれるわよ！」
逃れて下がるルシアを前に、「まぁゆっくりと相手をしてやる」と剣を抜き、詰め寄る川賊。ちらりと荷物が運ばれているかどうか視線を走らせるルシア。まだ……荷物に紛れた仲間は運ばれていない。そのまま反撃はせず、逃げ回るだけ逃げ回るルシアだった。
「うわぁ、一体何事？」
呆然と抵抗するようすの無いヴィニィに川賊が詰め寄る。「大事な積荷はどれだ？」と聞かれて迷わずに幾つかの荷物を指さす。勿論、それには仲間が入った荷物が含まれている。
「へっへっへ、随分と積み込んでいるじゃねぇか」
ナイフをちらつかせて脅す川賊の後ろで、他の賊が片方の船へと荷物を運んでゆく、その中に仲間が入った荷物が運ばれてゆくのを逃さずチェックするルシア。
ばしん！
「汚らわしい手で触らないで！」
手と同時に声を出して、ルシアは手近に居た賊を殴りつけていた。一瞬迷いを見せるも、怒りの表情を浮かべて動き出そうとする川賊たち！
「調子に乗るな！」
そこにソルトムーンの紅蓮の咆哮が響き渡る。動きを止めた船の上の川賊たちだったが、その様子を見て「冒険者かっ！」と川賊の船に残っていた賊たちが板を蹴り飛ばし、動ける者だけで逃げ出そうとする。
「殺傷力のあるアビリティには注意しろよ、手加減できぬから殺してしまうぞ」
注意するソルトムーンとそれに小さく頷いたルシアが動きの止まった川賊たちを素手で組み伏せ、縛り上げる。 船は二人に任せてヴィニィは離れようとする川賊船の片方に飛び移った！
ざばっ！ と音を立てて、飛び乗ってきたヴィニィとは逆の方向から粘り蜘蛛糸が川賊たちに絡み付いていた。逃げた船頭を装っていたヨアフである。キリも水から上がり、蜘蛛の糸から逃れた賊をヴィニィと一緒に捕縛する。
「大人しくしないと、折るよ」
ヴィニィに組み伏せられてもまだもがく川賊にぽつりと言い放つ。それを聞いて大人しくなる川賊。
「こっちは全部捕らえたよ」
キリが仲間たちの船に向けて手を上げる。ルシアとソルトムーンの方も既に川賊を全て捕縛し終えていて手を上げて返した。舵に誰もついていなかったので船はやや流されては居たが、そんなに離れては居なかったので程なく合流を果たす。キリがロープで川賊の船と仲間の船を結わえ付けておいてくれたお陰である。
こうして川賊の船一隻とその上の賊たちを捕まえた冒険者たちであったが、もう片方の川賊船には逃げられてしまっていた。しかしそれで良いのだ。逃げた川賊たちは知らない。奪った荷物の中に自分たちの拠点を突き止めるために潜んだ冒険者がいることに。
「冒険者か……まいったな」
「あぁ、こうなりゃ捕まった連中には悪いが……とっととトンズラするっきゃねぇな」
そんなやり取りが交わされながら、逃げた川賊の船は岸へと向かっていた。そっと箱の隙間から外を窺うセレネ。どうやら川から少しだけ溝を掘って、人通りが少なく辺りに木が多いこの辺りに船が停められる場所を作ったようである。
………♪ ………
「……なんだ？」
遠くから聞こえるような歌声に、川賊の一人が首を傾げる……がそうしばらくせずにその歌が聞こえた者は眠りに落ちた。セレネが眠りの歌を奏でながら、そっと箱から身を乗り出した。
「命まで取るつもりはありません」
眠らず、まだ動いていた賊に向けて光の槍が放たれた。エィリスが慈悲の聖槍を撃ったのである。燐花扇を構えて冒険者にそう言われて降参する川賊。
しかしまだ戦意を失っていない者も居た。手に手に剣や棍棒を持ち、飛びかかってくる！
ばん！
箱から飛び出し、瞬時に川賊に当身を食らわせるサヨ。鞘に収めたままの太刀、�之遒撚イ蠅弔院∋Τ欧泙任呂靴覆い茲Δ砲靴覆�ら戦闘不能に陥れる。
冒険者を前に成す術なく続々と倒れる川賊たち……だったが、冒険者たちの人数が少ない隙を突こうと、逃げ出そうとするものがまだ残っていた！
「無駄です、逃がしません」
飛び出し、太刀の�之遒鯣瓦�もせずに柄だけで当身を加えて川賊を倒すサヨ、まだ逃げようとしていた他の奴に太刀を向けると、ようやく観念したらしく川賊たちは降参したのだった。
「まったく……いつかはこんな日が来ると分かっていたんだろ？」
船の上で捕らえた川賊からアジトを聞き出し、合流した冒険者たちは捕縛した川賊たちを一箇所にまとめ、悪事を改めるように説教をしていた。ヨアフは「地元の人たちに引き渡すからな」と言って腕を組んだ。
「どうか更生の道をお取りになってください」
エィリスも丁寧に言いながら、川賊に相応の罰と新たな道が開かれることを祈っている。
「そうだね、人の物を奪うのは良くないと思います。普通に荷物を運んだりして稼いだらいいのに」
率直な感想を告げるセレネ。そうして何だかしゅんとして大人しくなった川賊たちは冒険者たちに諭されながら、使っていた船と共に地元の人たちに引き渡されたのだった。
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参加者：8人
作成日：2005/11/08
得票数：冒険活劇22
戦闘3
ダーク1
ほのぼの4
コメディ1
えっち1
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冒険結果：成功！
重傷者：なし
死亡者：なし
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