≪坐主罵組≫闇夜の人誅劇



<オープニング>


 それは月の無い晩の事。とある商家に盗賊の押し込みがあった。
 主人、家族、使用人。合わせて十数名の命と長年に渡って築きあげた富が一夜にして奪われた。女、子供の区別さえなく……

 半年後

 街角の薄汚れた酒場で一体何を生業にしているのか、いかにも脛に傷のありそうな人相の悪い男達が酒宴を催している喧騒の中、黙って木製のジョッキを呷るリザードマンの男。そして、その男の傍らの席に、店の雰囲気にそぐわない優男が座っている。
 優男は誰に言うでも無く、ボソボソと呟く。
 その声は周囲の喧騒に掻き消されるが、リザードマンの耳には届いたようだ。
 押し黙っていたリザードマンが不気味な笑みを浮かべ、手にした木製のジョッキの取っ手を握りつぶした。

 場所はかわり、坐主罵組の屋敷の広間に集められた組員達を前にザスバは重々しく口を開いた。
「野郎ども、お前らに一つ仕事を頼みてえ。クソッたれな盗賊どもの棲家と次の仕事先を掴んだ。奴らを全員生け捕りにしてきてくれや」
 ニヤリと不気味に笑みを浮かべるザスバに組員たちは苦笑を浮かべるも、ザスバの頼みを断る者は誰もいなかった。
「ゲァッハハハ!!畜生どもに目に物見せてくれるわ!」
 豪快なザスバの笑い声が響き、一匹の蝙蝠が細い刃のような月夜に飛んだ。

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参加者
白き御魂・ブラッド(a18179)
轟音・ザスバ(a19785)
雪ノ下・イージス(a20790)
不完の盾・ウルカ(a20853)
緑の記憶・リョク(a21145)
揺蕩う蛾影・カイサ(a23700)
相剋・パンセ(a24519)
嘲笑う壊れた凶戦士・イルズィン(a25172)
斬空術士・シズマ(a25239)
玲瓏なる紫昏・カナタ(a26377)
義を探す者・ユルギ(a27434)
胡蝶月の夜・オランジュ(a29968)
燃龍ブ・ルース(a30534)
翠緑の慈雨・グレイス(a32683)
黒鋼の竜騎士・ゼファード(a35106)
腰巾着な小悪党・ゴエモン(a36920)
NPC:不変戦士・パシヴィル(a90117)



<リプレイ>

●雲流れる闇夜
 静かな夜。
 頭上に広がる暗い空には細い細い月が闇色の雲に見え隠れしている。
 そんな闇夜の中、ひとつふたつ、カンテラの灯りが揺れ動き、進んでいた。
「話を聞く限りでは、どうやら情けは無用な相手らしいな」
 白き御魂・ブラッド(a18179)の表情を感じさせない呟きに、ニヤリと笑った紅の竜戦士・ゼファード(a35106)顔がカンテラの灯りに怪しく浮かぶ。
「盗賊か……自らの欲望のために他人を殺す輩には……相応の代価を払ってもらわんとなぁ……?」
「人の命を奪ってまで、財産が欲しいんすかね……汗水たらして働けば、生きていくのに必要なだけの物は手に入るはず何すけどね……」
 哀しげに目を細め、緑の記憶・リョク(a21145)は小さな溜息と共に呟いた。
「同じ悪党でも彼らは、人情というものを忘れ、ただ己の快楽のみ求めた者達。そんな奴らは、許せません」
 リョクの呟きの先の言葉を受けたように腰巾着な小悪党・ゴエモン(a36920)が静かに、強く言った。
「侠気も弁えねぇクソどもが、好き勝手やらかしてるなんざ胸糞悪ぃな。馬鹿共にゃ、仕出かした報いを骨肉に知らしめてやんぜ」
 地面に唾を吐き、低い唸るような言葉を吐いた侠盾・ウルカ(a20853)の後ろを大股で歩きながら嘲笑う壊れた狂戦士・イルズィン(a25172)は背筋が寒くなるような笑みを浮かべる。
「世の中にゃやっていいことと悪ぃことってのがあるらしいなぁ? それの区別がわからねぇヤツには、その身をもってわからせてやるのが一番早ぇし、効果的だよなぁ?」
「……敵は、盗賊20名余……殺さず、生け捕り。人誅……ね」
「……闇夜の、依頼……組の、みんなと……協力して、一網打尽に……だね」
 ぽそ、ぽそと呟くように囁くように、だが緊張感を含ませた声で言った流離う風影・カイサ(a23700)と雪ノ下・イージス(a20790)の言葉を聞きながら、物思う秋花・パンセ(a24519)は風に拭き散らかされた雲から姿を見せた月を見上げ、物憂げに目を細めた。
「よりによって、親父さんに目をつけられるとは……不運な盗賊ですね。もっとも、それだけのことをやってきた連中ではありますが」
 ザスバの背中を見て苦笑交じりに言った闇夜ノ凶星・シズマ(a25239)に玲瓏なる紫昏・カナタ(a26377)もザスバの背を見て頷いた。
「皆殺しでも異論無く進んだろうが……親父殿の言だ、尊重しよう」
「まあ、全力でぶっ飛ばせねぇあたりが難点だが、きっちり締めてやるとするか!」
 燃龍ブ・ルース(a30534)が掌に拳を打ち付けた音にニヤリとダース・ザスバ(a19785)は笑みを浮かべた。
「……似たような悪党って、何処にでも居るものなのね。あの時は、殲滅の依頼だったけれど同じ罪を犯しても、片方は殲滅、片方は捕縛……一体何が彼らの運命を分けるのかしら?」
 一人呟き、依頼を初めて受けた日の事を思い出し、翠緑の慈雨・グレイス(a32683)は少し目を伏せた。
 先頭を歩く胡蝶月の夜・オランジュ(a29968)と義を探す者・ユルギ(a27434)の持つカンテラがゆらりゆらりと闇夜に揺れる。
 ゆらり……ゆらり……
 揺れる明かりを見つめながら、オランジュは唇を引き締めた。
(「とにかく、足を引っ張らない事。それに、どじを踏まないようにする! 慌てないように……しっかりと、落ち着いて行動!!」)
 心の中でそうオランジュは繰り返す。
 細い針のような月が雲に隠れ、そして再び微かな光が射す。彼らの耳には吹きぬける風の音と下草を踏みしめる音だけが聞こえる。
 一際強く吹きぬける風に、ザスバは足をとめた。
 遠く、淡く揺れる光が見える。
「いいか、野郎ども。盗賊全員を生きたままとっ捕まえる。せいぜい恐怖に怯えさせてやろうじゃねぇか」
 薄く笑んだザスバに皆は頷き、黙したまま動き出した。

●潜伏
 固い地盤に辛うじて根を張り生きようとする草は焚き火の灯りに弱々しく揺れている。
 荒地に身を伏せ、灯りの方へ目をやれば盗賊たちが思い思いに酒を飲み交わしている者もいれば、大地に寝転び大きなイビキをかいているものもいる。小屋の壁にもたれ、武器を手入れする者の刃に微かな光が怪しく揺れる。
 身を伏せている仲間たちの背を軽く叩き、ザスバと数人の仲間たちは盗賊たちに気付かれないようにその場を離れていく。
 その影を見送り、パンセは手の中で深紅のサイコロを転がした。
(「6だったらラッキーって事で……」)
 大地に振ったサイコロはコロリと6つの目が掘られた面をパンセに向けて止まった。
「あ、本当に出た……幸先いいな」
 そんな彼女に笑みを浮かべ、頭を撫でたウルカはゴエモンとパシヴィルとパンセに目と指差しで盗賊たちを包囲する為の展開位置を示した。
 それに頷き、4人は盗賊たちに気付かれぬよう静かに広がる。
 荒地の反対側。林の中に潜むブラッド、イージス、カナタ、リョク、グレイスは灯りひとつ持たず、静かに時を待っていた。
 エルフのイージスは暗闇の中、盗賊たちの間で怪しい動きが無いか目を凝らす。
 静かな夜だ。遠く、時折聞こえる盗賊たちの下卑た笑い声が風に乗って届く以外はひっそりと静まり返っていた。
 鳥も虫も今は眠りにつき、一羽の蝙蝠が木の枝にぶら下がり翼を広げ一度身じろいだ。
 木々の合間から見える下限の月を見上げていたカナタは耳に届いた異質な音に視線を小屋へと向けた。
「……さて……」
 小さく呟き、仲間たちを見る。彼らもカナタの言わんとしている事を察し、小さく頷くと小屋へ視線を戻し、そして動き出した。
 異質な音の元は荒地側にあった。
 カンテラの灯りを高々とかざし、小屋から距離を取り立つユルギは大声を張り上げた。
「ここが盗賊団のアジトで間違いないな!? 私が貴様等を捕縛する! 正義は我にアリー!って事で、神妙にお縄に着くが良いですよ!」
 ユルギの隣に立つゼファードも声を張り上げ、鎧を鳴らす。
「我の名はゼファード!! 悪徳の限りを尽くす貴様らを成敗するためこの地へ来た!!」
 盗賊たちにとってはまさに寝耳に水。驚き慌てる盗賊たちにユルギはバカにするようにアッカンベーをし、からかう。
「群れなきゃ何も出来ない癖にー! やーい、臆病者ーッ! あっかんべーっ」
「あんだと、このクソガキっ!」
 一気に殺気立つ盗賊たちの横手で鈍い音と共に地面が抉れ、土が飛び散った。
「オマエら、どこ見てんだぁ? 敵はこっちにもいるんだぜぇっ!?」
 地面に半分埋まった大鉄球を引き上げ、にやりと笑みを浮かべたイルズィンに盗賊たちは一人、二人と後退りをし始める。
 そして……
「な、なんだテメぇら!!」
 突如蹴破られた小屋の戸に、中にいた男達は咄嗟に身構え怒鳴りつけた。
「ゲァハッハハッ!! てめえらと同じ悪党だよ!!」
 ザスバの高笑いと共に、捕縛劇が始まった。

●深夜の捕縛劇
「ホワァァァァァァッ!」
 一つ大きく息を吸い込み、吼えたルースの紅蓮の咆哮に屋内の空気が振動する。
「……此方は、狩る側……其方は、狩られる側……せめて、楽しませて」
 一人の盗賊の懐に、下から潜り込むように間合いを詰めたカイサの言葉が男の耳に届いたかは分からない。だが、驚きに一瞬大きく目を見開いた男は鳩尾への一撃に床の上へ倒れた。
「ゲァハッハッハ!」
 高笑いを上げながら、壁へ床へ釘バットを叩き付け派手な音を立て足を踏み鳴らしマヒしている盗賊へと近づいたザスバは、盗賊の正面で大きく釘バットを振りかぶった。人の悪い笑みを浮かべ、振り下ろす。勿論、当てることはしない。盗賊の顔の横を掠め、床を叩き割った。
 それは恐怖を与えるのに充分過ぎた。泡を吹き、腰を抜かし崩れ落ちる男にザスバはまた高笑いをあげた。
 紅蓮の咆哮に体の自由を奪われなかった数人は逃げへと打って出るが、彼らが逃がすはずはなかった。
『逃がしませんよ』
 シズマとオランジュの言葉が重なる。
 シズマの頭部が激しく光り、目を眩ませたところをオランジュの飛ばした木の葉が男達を拘束し、室内に動ける者がいない事を確認したオランジュは安堵の息を漏らし額を拭った。
「もう終いか? 物足りねぇな」
 ルースは舌打ちしながら、動けない盗賊たちをロープで縛っていく。次々と仲間たちの手により縄を掛けられていく盗賊たちを満足そうに眺め、ザスバは小屋の外へと目を向けた。

 外でも小屋の中と同じ光景が展開されたいた。
 突如打ち破られた小屋の戸の音に、外にいた盗賊たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げ始めたが、それを逃がす事はなかった。一人残らず、捕らえる事が彼らの目的なのだから。
 突入組が小屋へと突入した直後、紋付を大きく翻しながら羽織ったユルギは駆け出した。
「親父殿に目をつけられたのが運の尽き、ですね! 坐主罵組、ユルギ。参ります!!」
「覚悟しろよ、オマエらぁ!!」
 イルズィンの咆哮が逃げようと背を向けていた男達の動きを止め、ゼファードが腹に拳を打ちつけ気絶させる。
「うわぁっ!?」
 ゴエモンの作り出した土塊の下僕に足を掬われ、倒れた男の上を影が覆う。冷めた目で見下ろしたゴエモンは下僕達に命じた。
「さぁ、この悪党を取り押さえなさい!」
 土塊の下僕に押しつぶされるように拘束された盗賊に、ゴエモンは荒い鼻息を吐いた。
「死ぬ気で抗うか、従って命を永らえるか。選ばせてやんぜ」
 盗賊には突如目の前に現れたように映っただろう。ハイドインシャドウを解除し、男の前に立ちはだかったウルカに逆らう気は男になかった。小さく震え、命乞いする男に感情のない顔でウルカは荒縄をかけ、縛り上げた。
 僅かな抵抗を示すも、ただただ逃げる事を最優先にしている盗賊たち。パンセは感情を殺した視線を緑の束縛で縛り付けた男達に向けた。
 荒地の捕縛は最後にパシヴィルの咆哮が響き渡り、そして終わった。
 
「逃げちゃ……だめ」
 林の中へ逃げ込もうとしている男の目の前に飛び出したイージスは眠りの歌を歌う。
 咄嗟に己の障害物となるイージスへ短剣を振り上げた男だが、凶器とともに力なく地面に崩れ落ちた。
「……悪いが、見逃すつもりはない」
 ブラッドが吐いた言葉と共に、吹き飛んだ木の葉が盗賊の一人の身動きを取れなくした。
 不意に闇夜に光る緑色の光。光の元のリョクは笑顔を浮かべ逃げてくる盗賊を見据えていた。いつもと変わらぬ笑顔……表面だけ見れば、だ。
 すっと盗賊へ手を伸ばし、狙いを定めて作り出した白く光り輝く槍を放つ。
 眼前スレスレを走り抜ける輝く槍に、大地へ尻餅をついた男にリョクは笑顔のまま近づき目を細める。
「死ぬのが怖いっすか? 大丈夫っすよ。この槍じゃ人は殺せないんす。何なら喰らったあとに、すぐに治療もしてさしあげるっすよ。だから……何度でも……死ねない苦しみを味わえるっす……」
 笑顔は崩さない。だが、細めた瞼の奥の瞳は笑っていなかった。
 盗賊から逃げる意思は消え失せた。
 緑色の光と別の激しい光が闇に慣れた盗賊の視界を奪う。
「ぐあぁっ!」
 目を押さえ動けなくなった男をグレイスは冷めた視線で見下ろした。
 捕まえられていく仲間を見捨て、林の中へ逃げ込んできた盗賊たちはギクリと足を止める。
 闇の中、林の合間に静かに佇むカナタは唇を笑みの形に歪め、歌を紡ぎだす。眠りへと誘う力ある歌を。
 しまった、と盗賊たちが思った時には既に夢の世界へ進み始めていた。地面へ身体をつけた男達にカナタはひとつ息を吐き出し、荒地の小屋へと視線を向けた。
「……さて……親父殿はどうするつもりなのだろうな……」
 いつの間にか、夜の空に広がっていた雲は風に吹かれ消え去り、満天の星空が輝いていた。

●人誅
 捕縛した盗賊たちをひきづり、坐主罵組は襲われた商家のあった町についた時には白々と夜が明け始めていた。
「あたたた……一生懸命なんてガラじゃ無いんだけど、ね」
 呼び出したフワリンの背に乗り、腰を擦るグレイスに大丈夫ですか? とオランジュは苦笑するが、彼も気張りすぎて少々疲れたらしい。肉体的に、ではなく精神的に。
「で、お頭。こいつらどうすんだ?」
 手荒に男たちを地面に転がしたウルカの問いに、ザスバはニィっと口元を歪める。
「おい、野郎ども。こいつらの衣服を剥ぎ取れぃ!」
「は。服を剥ぐんですか?」
「おうよ。何度も言わすな、さっさとやれ!」
 思わず聞き返したシズマに、手でもさっさとしろと促す頭。互いに顔を見合しながらも、男の組員たちは盗賊たちの衣服を剥がしにかかる。
「え、えと……ど、どーするんでしょうか親父殿は?」
 顔を赤くし、どんどん裸にされて行く男達にどこへ目を向けていいものやら困惑するユルギにカイサは茫洋とした表情で事の成り行きを見て呟いた。
「さぁ……でも、楽しそうな事かも、ね……」
 楽しそうに仲間たちに指示を出すザスバ。
 昇り始めた太陽に辺りが明るくなると、そこには妙な光景が広がっていた。全裸で縛られた男たちが猿轡を噛まされた状態で、地面に転がされたり、木に吊るされたり……そんな彼らの隣に立てられた看板には盗賊たちの罪状が書き連ねられている。
「ゲハハハ、腐れ外道どもがっ! せいぜい生き恥を晒すが良いわ!!」
 ゲハハと笑うザスバに、最初は呆れ顔をしていた仲間たちも苦笑を浮かべ、声を上げて笑う。
 今日は良い天気になりそうだ……


マスター:桧垣友 紹介ページ
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