ダンサアリ



<オープニング>


 ある日リザードマンの狂戦士・バーリツ(a90269)が、いつものように酒場に行くと、テーブルの上に小さな箱が置かれていた。
 バーリツは、なんとなく開けてみた。
「おはよう、冒険者さん。早速だが、今日の依頼だがここからかなり歩いたところにある村へ行き、銅鉱山に潜む3体組のモンスターを退治してもらいたい」
 声は下から聞こえてくる……。
「モンスターはアリ型で、村はずれの鉱山にいるらしい」
 テーブルの下を覗くと、ストライダーの霊査士・ルラル(a090014)がしゃがんでいた。
「えぇ!? 覗いちゃだめにゃの!」
 その剣幕に慌てて覗き込むのをやめる。
「えっと、例によって冒険者諸君が捕えられ、あるいは殺されても霊査士は一切関知しないからそのつもりで。なお、この箱は自動的に消滅する。それでは健闘を祈る」
 言葉が終わると、ルラルの「えいっ」という声がする。声と同時に箱を構成する板の1枚がスルスルっとテーブルの端に引かれていく。板が抜けた箱はバラバラになる。
 ルラルがテーブルの下から抜け出してきて、袋に箱を片づけ始めた。
「……ほかに情報はないんですか?」
 バーリツが引きつった顔でルラルを手伝う。
「鉱山が留守になる夜のうちにアリ型モンスターが住み着いたみたいで、中には坑夫さんはいないんだって。また、今のところ、鉱山から出て村人を襲ったりはしてないそうなので、この辺は安心していいみたい」
「モンスターの特徴は?」
「体長3mの大きなアリさんの姿をしているんだって。1体は赤くて角が生えていて毒の牙を持っているの。噛まれたら『パワーブレイク』みたいに戦えなくなっちゃうみたい。残りの2体は緑色で変なダンスしながら殴ってくるんだって。『幻惑の剣舞』みたいに変な感じみたい」
 箱を片づけ終わった。
「鉱山はどんな感じなんでしょう?」
「無数の通路と、入り口から10m入ったところにある大広間からなるの。通路はだいたい幅3m×高さ2mでアリさんは1体ずつなら通れるけれど、動きにくいみたい。そのかわり、冒険者も2人並べるかどうかだけれどね。
 大広間はアリさん3体と戦えるくらい広いみたい。昼間はここで寝ているんだって。でも、鉱山入り口から大広間に出るところに1体のアリさんが見張りに立っているから不意打ちは難しいかも。
 あと、鉱山内はところどころで足下がでこぼこしてるっていうから気をつけなきゃね。入り口には『段差あり』と注意書きがあるくらいよ」
「昼間寝ているとすると、夜活動しているんですね」
「そうだって。夜、通路の奥の鉱山で鉱石を食べているみたい」
「夜ならば、各個撃破できるかもしれませんね」
 バーリツは腕組みして考え始めたが……、めんどくさくなってすぐやめた。
「そういえば、先ほどのあれはなんなんです?」
「えーっとね、こうやって依頼するサーガがかっこよかったから真似してみたんだけど……ダメかにゃ?」
 ルラルが真っ赤な顔して上目遣いで尋ねてきた。
 思わずバーリツは抱きしめたくなるが、そこは同性同士、どうにかこらえる。
「……まぁ、どうでしょう、うーん」
 酒場に冷たい風が吹き込んでくる。二人の間の変な空気を吹き飛ばし……きれたのか。
「そうそう、鉱山みたいな狭かったり、閉じこもった空間で大暴れすると坑道を支える柱とか壊しちゃうかもしれないので気をつけてね〜」
 箱を抱えたルラルは逃げ去るように立ち去っていった。

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参加者
緋の剣士・アルフリード(a00819)
射殺す嵐・アヴァロン(a06462)
まじかるしんがー・ユーリアル(a06708)
光と影の輪舞曲・アディルード(a09456)
白き夕凪・サミュリート(a26225)
紅蓮の兎・ソロネ(a32518)
養護教諭・エンデミオン(a35860)
礼装の重騎士・エスタリオン(a35955)
NPC:リザードマンの年増狂戦士・バーリツ(a90269)



<リプレイ>

●入り口〜坑道〜広間
「夜に忍び込んだのが良かったみたいね」
 光と影の輪舞曲・アディルード(a09456)の言葉に皆がうなずく。
 冒険者一行は鉱山の入り口近くの通路をくぐり抜け、広間に潜入を果たしていた。
 とある黒い髪が通路の天井に何本かむしり取られたことを除けば、一行は問題なく広間を確保することができた。

 広間を除く、坑道は高さが2mしかなく圧迫感がある。
 だが、この高さにも訳がある。
 天井を高くすると掘り抜くのに必要な手間暇が増加する。経費増加につながり、坑夫たちの報酬をも左右する。
 とはいえ、そんな理由が鉱山に潜り込む冒険者たちに慰めにならなかった。

「すみませんね、セス」
 まじかる長官・ユーリアル(a06708)がペットのこりすの頭をなでる。普段は頭上が所定位置だが、身長198.2cmの彼の頭上と坑道の天井との間にセスのいる隙間はない。
「時々ユーリの頭がこすれていたな」
 ユーリアルの親友、無限の剣製・アヴァロン(a06462)がセスの表情を覗き、そう告げる。
「この高さでは坑夫たちも頭をぶつけるんじゃないかな」
 こう口にした、怠惰な医術士・エンデミオン(a35860)の手には籠があった。
 エンデミオンの『ホーリーライト奥義』により広間の一角が明るくなっている。彼は、この光と各自のカンテラだけが光源だということに不安を感じ、鉱山内の照明を村で確認してきている。それが籠の中の蝋燭であり、鉱山内の燭台に立てるためのものだという。
「カンテラを吊すついでに私も手伝わせてもらおう」
 礼装の重騎士・エスタリオン(a35955)は燭台に灯を点すのを手伝いながら、天井の突起にロープをかけてカンテラを吊していく。広間は徐々に明るくなっていく。
「では、灯りもばっちりですね。
 それでは、村の人たちのためにも、必ず成功させましょう」
 白き夕凪・サミュリート(a26225)の一言に、一行は坑道の探索組と広間待機組に分かれて動き始める。

「どの通路を調べたかの確認をよろしくお願いしますね」
 緋の剣士・アルフリード(a00819)が青い瞳に笑みを湛えて、待機組に声をかける。サミュリート、エンデミオン、エスタリオンが力強くうなずくのを見て、アディルードとともに左方面の坑道に踏み込んでいった。
 続いて、ユーリアルがこう口にして、
「私たちはこちらでアリを探してきますよ」
 アヴァロンと正面付近の坑道に身を躍らせる。
 最後に右方面へと女性コンビ。
「やっぱりこれじゃないとね♪」
 と『鎧進化改』を用い、紅蓮の兎・ソロネ(a32518)が己のソフトレザーを赤いバニースーツへと変える。その様子に失笑を浮かべたリザードマンの年増狂戦士・バーリツ(a90269)は、同じ坑道へ姿を消した。

●右方面の通路
「それじゃあいきましょうか?」
 ソロネの声にバーリツが霊フレイルを軽く振って返す。

 しばらく進んだ二人の前には、緑のアリ型モンスターの姿があった。
 緑アリは少しずつ体の向きを変える。
「どうやらお食事中のところにお邪魔してしまったようですわね」
 緑アリの口は休みなく動く。鉱石の破片を口端からこぼしながら、アリは近づいてくる。
「打ち合わせ通り、おびき出すわよ!」
 ソロネたちは、坑道を戻っていく。時々振り向き、間合いを確認する。それとは別に、転ばぬように、足下に注意を払う。文にしてしまえば容易に思えるかもしれないが、実際に行うのは面倒な作業だ。
 一歩一歩、広間へと緑アリを招き寄せていった。

●正面の通路
「これは……」
 アヴァロンが段差の陰から緑色の塊を拾う。
「輝き、触り心地……おそらく青銅かと」
 ユーリアルにアヴァロンはうなずく。
「こんなところに?」
「銅山なので銅自体はありふれているでしょう。しかし、塊として掘り出されることは珍しいはず……」
 アヴァロンが塊の形に考え込む。
(この形、どこか日常でよく見かけたような)

 行き止まりの坑道を諦め、新たな坑道に潜っていく。
 そんなことを何度か繰り返した後、出会った。
 緑アリは尾部から何か排出していた。先ほどアヴァロンが拾い上げた塊に酷似している。
「つまり、これは……」
「やつの……」
 二人の顔がちょっとばかり引きつった。

「さて、気を取り直して……。
 見せてもらいましょうか、新しいモンスターの実力とやらを!」
 ユーリアルが叫び、魔法槍マギウス・ペイン-紫電-を構えた。
 その言葉に緑アリは体の向きを入れ替えることで応える。
 前衛のユーリアルがまず動いた。『ブレードダンス♪奥義』がいきなり繰り出される。
「腰がいくか敵がいくか、時間との勝負ですね」
 頭上、足下に気を配るため、アリに全注意を向けることができない。それでも、ユーリアルは踊りながら、把握しにくい動きで槍を繰り出していく。アリは、直撃を避けようと試みるが、傷つけられていく。
 その間にアヴァロンは『鎧進化改』により、鎧をより堅固なものへと変えていく。
「ユーリ、来る!」
「わかってます!」
 アヴァロンの指摘にうなずき、ユーリアルはアリの体当たりを避ける。傷口から体液が勢いよくあふれ出しているが、その体液さえもユーリアルに触れなかった。
 体当たりは壁にぶつかり、天井から無数の粉を落とす。当たったところで痛みはないが、頭髪に潜り込んだ粉を洗い落とすのは面倒だろう。
 壁にぶつかったアリは、ユーリアルの途切れぬ舞いにより全身を傷つけられていき、複眼を潰され、やがて絶命した。
 アリとユーリアルの戦いに割り込む空間的な隙がなかったためとはいえ、アヴァロンが出る間もなく決着はついてしまった。

●左方面の通路
 アディルードの掲げたカンテラに照らされ、アリ型モンスターの姿が坑道の奥に現れた。その体皮は赤銅のように赤く、頭には角が生えていた。
「私たちが赤いやつと遭うなんてね」
 アルフリードの色白な顔にも朱が差す。
 赤アリは二人に気づき、牙を激しく鳴らし、彼らの動揺を誘う。早速アルフリードは『ライクアフェザー改』、アディルードは『イリュージョンステップ未完成』で、攻撃に備える。
「逆に各個撃破されてはシャレにならないからね」
 アルフリードは赤アリとアディルードが対峙している隙に後ろに下がりはじめた。
「おっとっとと……美しくない」
 掘り抜かれたままの段差にバランスを崩してしまう。痩せがちの身を操り、体勢を立て直そうとするも、
「えっ?!」
 愛用の鋼の糸を構え、大技を繰り出そうとしていたアディルードの背にもたれかかってしまった。
 モンスターは、そんな絶好の機会を見逃さない。赤アリの牙が、白濁した液をまき散らしながら、彼女に迫る。アルフリードがアリの動きに気づく。素早く立ち退く。だが、狭い坑道内だ。アディルードが牙を避けようにも身を翻す空間はさほど存在しない。
「……でも、そう簡単にはね、殺されるわけにはいかないのよ。特にモンスターにはね!」
 アリの牙はアディルードの糸に絡められ、その軌道を止めていた。アリは、自らの牙が彼女の色白の体に食らいつけなかった事実を信じられぬ、と怒りの気配を色濃く身に纏う。
 アディルードはアリが再び動きだす前に呼気を整える。彼女は鋭く息を吐き出し、糸を支える腕をずらす。糸は牙に込められた力を上手に流し、牙をずらす。この動きは最終的にアリの姿勢を崩す。
「この隙に!」
 アリが体勢を整え直す間に二人は十分な間合いをとることができた。間合いを維持しながら広間へと向かう二人を追いかけ、赤アリは走り続ける。

●広間再び
 アルフリード、アディルードが左から、ソロネ、バーリツが右から広間に転がり込んできた。
 その様子をサミュリートが確認していると、緑アリ、赤アリが続いて飛び出してくる。
「これでようやく退屈な時間ともおさらばだ」
 刺激の乏しい待機時間に寝てしまいそうだったエンデミオンがニンマリと笑みを浮かべた。

 エスタリオンが『鎧聖降臨改』を仲間へ丁寧にかけてまわる。
「まずは赤いやつからです」
 サミュリートは『緑の業火』を放つ。炎に包まれた木の葉が赤アリに向かっていくが、赤アリは避けてしまう。だが、業火は赤アリの動きを乱していた。そのおかげか、続いての攻撃をアディルードは難なく避けることができた。
「くぅっ、ゾクゾクしてきますわね!」
 バーリツが緑アリの手足をもぞもぞさせる踊りを我慢して、霊フレイルを連続で叩きつける、『ソードラッシュ奥義』だ。だが、緑アリはその攻撃を避けきってしまう。

「これで、戦闘体勢は完璧ですよ」
 アルフリードが『黒炎覚醒奥義』により、黒い炎で身を包む。
「貴方の血で薔薇の花を咲かせてあげるわ」
 続いて、アディルードが鋼の糸で赤アリに斬りかかる。その場に居合わせた誰もが把握しきれない光の糸が赤アリの外皮を、肉体を次々と切り刻んでいく。糸の軌跡に沿って赤い薔薇の花が舞い散る。その花は大きくなっていき……最後には散って消えてしまう。
 負傷に対応するため待機中のエンデミオンが薔薇から視線を移せば、アリは肉塊と化していた。
「残るは緑だけです!」
 サミュリートの作り出した紋章から燃える木の葉が現れ、緑アリに向かう。緑アリの触角が焼け落ちる。緑アリは苦痛にのたうつ。
「雷の一撃を受けなさい!」
 そこへ『電刃衝奥義』による稲妻がまとわりついた、ソロネの肉包丁が差し込まれる。アリの体は大きく痙攣し、体の動きが止まる。体液が逆流し口から吹き出す。その液体は、続いて殴りかかろうとしていたバーリツに降り注いだ。
「これで終わりですわね」
「そういえば、あと一体いるんじゃなかったっけ?」
 体液まみれのバーリツの問いに、エスタリオンが問いで応じる。そのエスタリオンの問いには、広間に姿を現したユーリアルが答える。
「その残りの一体は私たちが仕留めましたよ」
 続くアヴァロンとともに赤アリを倒されたことに残念そうな表情を浮かべていた。


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