<リプレイ>
●いざ、谷間へ向かって ここはあの、ジョンが土砂崩れに遭った現場の谷である。 「ここねー、土砂崩れの現場からしてこの辺かしら……?」 きょろきょろと辺りを見回すのは、狂想道化・ソニア(a34730)。 初めての依頼という事で、少し緊張しているようである。 谷からの強い風が冒険者達を阻むかのように空へと吹き付ける。 「うわ……ここから落ちたら大変だね……」 谷間の崖を上から見下ろし、天涯孤独・ショウキ(a28164)は思わず呟く。 「だから、丈夫そうな木に、こうしてしっかり結び付けてるんだろ」 そう言って哀愁の自称爽やか好青年・スレイク(a32576)は、崖を降りるためのロープを側にあった大木に括り付けた。 「この世に生れ落ちて23年。まさか自分の色恋沙汰より先に他人の色恋沙汰の援助をする羽目になろうとは……」 ほろりと涙を流すスレイク。けれど、その手はしっかりと仕事をこなしていた。 仕事と私事は別である。………一応。 こうして、準備が整った彼らは、ゆっくり慎重に崖を降りていく。 初陽の娘・リラ(a27466)は、いつものよりも地味な色で動きやすい服装をしていた。これも、谷の奥に潜むグドン達に見つからぬようにと考えての事であった。リラ達が慎重に進んだお陰が、谷のくぼ地には、何もいなかった。あるのは、大きな岩とまばらに生える草、そして、先日流れてきた土砂のみである。 「必ず見つけますから……お二人の為に」 その胸に強い思いを込めて、リラはゆっくりと谷のくぼ地に足を付ける。 最後の仲間がくぼ地に着いても、幸いなことにグドンは現れない。 どうやら、グドン達は住処の奥にいるようだ。 「では、さっそく分かれましょうか」 薫風の護り手・ジラルド(a07099)が、皆に呼びかける。 今回、彼らは2班に分かれて行動する事になっていた。 一つの班は、このくぼ地に残り、指輪の捜索に当たる。 もう一つの班は、谷のくぼ地にぽっかり開いたグドンのいる穴に入り、グドン退治を行うのだ。 「では、お互い気をつけて……」 2班に分かれた彼らは、自分達の役目を果たす為に動き出したのであった。
●ゆかいな下僕達と捜索隊 冒険者達のホーリーライトで、くぼ地は明るく照らされていた。 その中で、沢山の土塊の下僕達がとことこ歩いている。 いや、ただ歩いているのではない。 「こちらからあちらまで……藍色のケースと指輪を……探して下さいね?」 そういって下僕達に説明するのは、リラ。 「青い色をした木の箱を探して来てくれ」 スレイクも自らが出した下僕達に命令する。 もちろんショウキも、下僕達に落ちている指輪を探して拾えと命令していた。 下僕達を使わずに一人で頑張るのは、ソニア。 下僕を召還する術を持たないソニアは、他の者たちと別の方法で探すことにしたのだ。 「んー、あまり面倒なところに落ちてなきゃいいんだけどー」 そう言って砂礫陣を使って、大地を削っていく。 こうして、埋まった土砂を削る。削った場所をカンテラで照らしながら、指輪の入ったケースを探すのだ。 「ん?」 何かを見つけたのか? いや違う。 「グドンっ!!」 明るい谷間に、騒がしさ。 それを聞きつけたのか、モグラグドン達が様子を見に来たのだ。 だが、まばゆいホーリーライトにモグラグドンは、目を瞬かせている。 「あの……今は、探し物をしているのです……どいて、下さいます……?」 リラがそういってお願いをするが、話を素直に聞くとは思えない。 ショウキ、スレイク、ソニアは、既に臨戦体制を取っている。 「あっ……」 リラは気づいた。 現れたグドンの中の1体が、きらりと光る何かを持っていることに。 「ダメです……返して下さいませ……!」 機嫌悪そうに、リラは動いた。 「エンブレムシャワーっ!!」 リラの放つエンブレムシャワーが、グドン達を貫く。 「こっちは探し物しているんだから、邪魔しないでよねっ!」 そういって、ソニアも砂礫陣を放つ。 「飛燕連撃っ!」 ショウキは、その技で一体のグドンを葬った。 「うおおおおっ!! どうせ俺は彼女はいないんだぁ〜!!」 スレイクの怨念(?)がこもったエンブレムブロウが、一体のグドンをぶっ飛ばした。 流石に空の星にすることは出来なかったが、その命を奪う事には成功していた。 「これで……最後ですっ……!」 最後のエンブレムシャワーが放たれた後。 全てのグドンは地に伏した。 「えっと……ここで倒したグドンは5体だね」 倒れているグドンの数をショウキは数えた。 「それよりも、指輪……」 リラがグドンに駆け寄り確認した。 が、しかし……。 「違ったみたい……」 グドンが隠し持っていたのは、赤い宝石であった。残念ながら、探している指輪ではない。 念のために倒れているグドンを全て確認したが、結局、指輪らしきものは一つも持っていなかった。 「それじゃ、皆、探索に戻ろうか」 グドンを邪魔にならない場所に移動させて、ショウキが元気つけるように言ったのであった。
数時間後。 「周りと土の色が違うわ、この辺も上から落ちてきた土砂ね」 目星をつけたソニアが、また砂礫陣を放った。 がこ、ことん。 何かが転がり落ちてきた。 「あら、これ怪しくなーい? ようやくビンゴかしら♪」 そこに現れたモノ。 それは、皆の探していた、あの藍色のケースであった。 「ああ……ありました……よかった……!」 リラもソニアに駆け寄り、嬉しそうに微笑む。 「念の為に中も確認しよう」 ショウキの言葉に皆は頷いた。
ぱこ。
そこにあったものは。 いや……。
「か……空っぽ、ですっ……!」 血の気の引いた4人は、また捜索を開始する。 今度は、ケースが発見された場所の周辺を重点的に……。
●暗闇に潜むモノ 暗い洞窟の中。 ここはグドン達が潜む危険な場所であった。 エルフの夜目を使って、道の先にいるグドンを探すのは、静逸なる匠・アレキス(a02702)だ。 彼の夜目によって発見、倒されたグドンは7体。残りは13体だ。いや、探索班の倒した5体を含めると、残りは8体。 ふと、アキレスの足が止まり、後ろを振り返る。 「どうかなさいましたか、アレキス……義兄さま……」 アレキスのすぐ後ろにいた紫銀の蒼晶華・アオイ(a07743)が心配そうに尋ねる。 「……ん……アオイ……元気無い……?」 くしゃりと、アオイの頭を撫でる。 「元気が無いって、そんな風に見えました?」 アオイの言葉に、アレキスは静かに頷いた。 「大丈夫です……ただ、大切なものを無くされたジョンさんの気持ちを考えると……」 いや、ジョンだけじゃない。その相手の女性。もし、彼女にジョンから大切な指輪を渡す前に無くしてしまったと告げられたら、どんなに悲しい事だろう。 もしそれが、自分だったとしたら……。 ジョンと同じく、アオイにも大切な人がいた。 だからこそだろう、その女性に自分を重ねてしまう。 「駄目ですね、こんな考えしていたら、依頼も上手くいきませんものね」 そして、目の前には優しい義兄がいる。義兄もこうして心配してくれているのだ。 その優しさが嬉しかった。 「心配してくれてありがとうございます、アレキス義兄さま」 今度はちゃんと言えただろうか。最近、義兄になったアレキス。まだ言いなれない義兄という言葉に感謝を込めて。
それを微笑ましく見ている者達がいた。 「ちょっと……羨ましいのう」 儚の護師・クリステラ(a34383)は、思わず呟いた。 「羨ましい?」 クリステラの隣にいたジラルドが問う。 「にゃ、な、なんでもないんにゃあ」 ぱくぱくと慌てるクリステラ。 実はクリステラには、兄がいる。事情により生き別れてしまった兄。 その兄に一目会いたい、その一心で冒険者を志した。 だが、未だ出会えないでいる。 それが、少しもどかしい。
ふわり。
「え?」 そっとクリステラの頭を撫でる暖かい手。 「きっとそのうち、いい事がありますよ」 ジラルドが微笑む。 「そう……じゃな。さっさとグドンを倒して、ここを出るのじゃ」 クリステラはそういって、先行するアレキス達の後を追おうとした。 「あ、ありがとうなのじゃ」 立ち止まり照れくさそうにクリステラは、振り向かずにそうジラルドに告げる。 「どういたしまして」
少し前を歩くクリステラを見ながら、ジラルドは思う。 (「もう少しこのままでいいかな……まだ、見つかりたくないし……それに」) くすりと微笑む。 「こういうのも、悪くは無いですしね」 「何か言ったか?」 ふとクリステラが振り向いた。 「いえ、何も」 と、そのとき、先行していたアレキスから合図が送られた。 アキレスの持っている光苔のチョークが揺らいだ。 それは、前方にグドンがいるという証。 「行きますよ」 クリステラ達も急いでアレキスの元へ向かう。
「………はっ!」 ホーリーライトの下、彼らはグドン達と戦闘を繰り広げる。 アレキスの放つ粘り蜘蛛糸奥義でグドン達の動きを止める。 「ニードルスピアっ!」 クリステラのニードルスピアが炸裂。 多くのグドン達に大ダメージを与える。 「エンブレムシャワー!」 アオイのエンブレムシャワーも負けていない。 「あうっ!」 クリステラがグドンの攻撃を受け、怪我を負った。 「ヒーリングウェーブっ!」 すかさずジラルドがヒーリングウェーブで怪我を癒す。 「気をつけて、また来ます」 「にゃ、わ、分かっているのじゃ」 ジラルドの声を聞き、急いで体制を整えるクリステラ。 ざしゅん! 「え?」 アオイの後ろを狙っていたグドンが突然息絶えた。 いや、違う。アレキスの放った飛燕刃奥義がグドンを貫いたのだ。 「義兄さま」 名前を呼ぶより早く、怪我をして怒り狂うグドン達が来る。 「エンブレムシャワーっ!」
数分後。 その場に8体のグドン達が地面に転がっていた。 1体も動ける者はいや、生きている者はいない。 アレキスは、そんなグドンを数えながら、まとめて埋葬していく。 ころん。 数体目を担ぎ上げたとき、グドンの懐から何かが転がり落ちた。 「あら、これ……」 アオイが拾い上げたそれは。 「指輪……じゃな」 蒼く澄んだ宝石がついた、美しい銀の指輪。アオイは指輪の内側に文字が彫られているのを発見した。 ジョンより愛を込めて。 そう、刻まれている。 「どうやら、これがジョンさんの婚約指輪みたいだね」 「早く皆さんに伝えないと!」 アオイの言葉に皆は頷いた。
●あるべき愛の形 こうして、彼らは無事に目的を果たした。 グドン達を全て倒し、指輪もケースも無事に見つけ出したのだ。 「これで間違いないよね?」 心配そうにショウキが指輪の入ったケースをジョンに手渡した。 なお、指輪とケースはジラルドの手によって、綺麗に磨かれ光を取り戻していた。 (「この指輪がちゃんと彼の想いを伝えてくれますよう」) そんなジラルドの想いを込めて。 「ええ、間違いありません」 美しいままの指輪を見て、嬉しそうにジョンは微笑む。 「ジョンの気持ち……届けば……皆……しあわせ……ね」 アレキスも嬉しそうに微笑んだ。 (「どうかお二人の幸せの手助けになることができますよう……」) アレキスの隣で、アオイもそっと祈る。 (「彼が、想いを伝えられるように、なのじゃ」) クリステラもそう、心の中で呟く。 「お二人とも……本当にお幸せに……ずっとずっと、いつまでも……本当に……」 そう告げて、リラの頭の中にふと、想い人の顔が浮かんだ。ぼっと赤くなるリラ。 「まぁ誰かの幸せって他人の幸せを生贄にしたり踏みにじったりして得るもんだから俺の幸せもジョン氏の幸せになってる考えれば納得でき……るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」 少し離れた所でスレイクが叫ぶ。 願わくば、彼の元にも春が来ますように。 涙の数だけ、強くなれますように。 そんな彼らを横にソニアがジョンの前に出てくる。 「ジョンさん、大事なものなんだからもう失くさない様に、ね?」 「ええ、もうなくしたりはしません。本当に……本当にありがとうございました……」 ジョンは涙を浮かべて、彼らに向かって頭を下げたのであった。 その手には大切な指輪を持って。
数日後。 ジョン達は幸せな結婚式を迎える。 ジョンの隣で微笑む新婦の手には、冒険者達が苦労して見つけた、あの指輪が光っていたのであった。

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参加者:8人
作成日:2005/11/20
得票数:恋愛2
ほのぼの11
コメディ1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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