カツラ盗賊団ヅラール



<オープニング>


 チキンレッグ領の辺境で、カツラ盗賊団ヅラールが暴れている。
 その名の通りヅラールはカツラを被った盗賊達で構成されており、カツラを使って妙技を駆使してチキンレッグ達の住む村を襲っているらしい。
 彼らの目的はただひとつ。
 究極の毛生え薬を手に入れる事だ。
 そのためには手段を選ばない。
 彼らのリーダーはヅラトロ。
 ヅラトロはヅラを取る事によって3倍速く動けるものだと勘違いしており、口を使って効果音を出している微妙なヤツだ。
 彼には心・技・体を司る手下がいるのだが、別名『光頭連(ピカール)』と呼ばれており、一斉にヅラを取って太陽の光を反射させるサンアタックという技を使うらしい。
 この技は眩しさと共に、虚しさが湧き上がり、時には同情してしまう程だ。
 肉体的なダメージはほとんどないが、相手を哀れに思うため負けたフリをしてしまう。
 ……それほど切ない技らしい。
 そこでお前達にヅラールを捕まえて欲しいんだ。
 色々な意味で必死な奴らだから、そろそろ楽にさせてやりたいんだよ。

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参加者
笑劇の伝道師・オメガ(a00366)
紋章術士の菓子職人・カレン(a01462)
眠り赤栗鼠・チャオ(a03781)
悪代官・スケベエ(a04439)
朱い翼・ナミ(a10048)
月無き夜の白光・スルク(a11408)
エルフの邪竜導士・チコ(a15701)
太陽の風車・ハルト(a21776)
前進する想い・キュオン(a26505)
輪廻の翼・フィード(a35267)
ポージョピエルナの吟遊詩人・カルメン(a35368)
海原よりうまれし天空・パライバ(a36869)


<リプレイ>

●秘薬
「……これだけ噂を流しておけば、盗賊団の方からやって来るはずです」
 カツラ盗賊団ヅラールを誘き寄せるため、眠り赤栗鼠・チャオ(a03781)が近隣の村に立ち寄り噂を流す。
 ヅラールとの戦闘に備えて村人達を避難させてあるため、後は彼らがやって来るのを待つだけである。
「それにしても……、どんなカツラなんやろな? ひょっとしてアフロかぁ。まぁ必死になる気持ちは分からんでも無いけども、犯罪はあかん。やっぱり、しかるべき所に突き出すしかなさそうやな」
 ヅラールのカツラを想像しながら、紋章術士の菓子職人・カレン(a01462)がボソリと呟いた。
 彼らの愛用しているのは一般的なものだが、その時の状況によってカツラを変えるという噂があるため油断する事が出来ない。
そこはかとない感じだが、心を鬼にして退治するぞ!」
 何処か悲しげな表情を浮かべた後、笑劇の伝道師・オメガ(a00366)が気合を入れる。
 ……ハゲてしまった事で、人の道を外れた者達。
 その事に関しては同情する事が出来るのだが、だからと言って盗賊団になっていい理由にはならない。
「とにかく秘薬を完成させなきゃね」
 増者効果のある秘薬を作るため、海原よりうまれし天空・パライバ(a36869)が古今東西、増毛効果があると言われているものを鍋の中に放り込み、スパイスを投入してカレー風味に整える。
「……普通に美味そうな感じがするのは気のせいか? まぁ、あんまり妙な臭いがしても困るのだが……」
 苦笑いを浮かべながら、オメガが海草、ニンジンエキス、ローヤルゼリー、オリーブなどを入れていく。
 次第に鍋は緑色に変色し、何とも言えない臭いがもわんと漂った。
「何だか妙な色になってきたな。それに……手に持っているモンは……」
 オメガの手元を指差しながら、カレンがダラリと汗を流す。
「ふっ……、これか。もちろん『使用済み』のブルマだ! ちなみに……俺の穿いた物じゃないぞ。ブルマが吸い込んだ汗と若さのパワーを秘薬に与えるのだっ!」
 拳をギュッと握り締め、オメガがくわっと険しくさせる。
 それと同時に待機していた自警団が現れ、オメガをブルマ窃盗の罪で捕まえた。
「は、離せ! 俺はブルマの未知なる可能性にかけただけだ!」
 仲間達の冷たい視線を浴びながら、オメガが激しく首を横に振る。
「何だかとんでもない事になっているようやな。まぁ、自業自得かも知れんけど……。とりあえず……達者でなぁ」
 気まずい様子で笑みを浮かべ、カレンがパタパタと手を振った。
「た、助けなくていいんですか……?」
 ジックリと煮込んで完成させた鍋を持ちながら、チャオがカレンに向かって声をかける。
「助けたいのは山々だけど、色々な意味が前科がありそうやしなぁ……。触らぬ何とかに祟りなしや」
 同情した様子でオメガを見つめ、カレンがなむなむと両手を合わす。
 自警団に連れられ、オメガが小さくなっていく。
「こんな状況でも、必ず帰ってきそうな雰囲気だよね。……オメガさんなら」
 仲間達から色々と噂を聞いているため、パライバが乾いた笑いを響かせる。
 ……これで3種類の秘薬が完成した。
 ヅラールを引きつけるために必要なものが……。
「これで準備は完了したね。後は……盗賊達を待つだけか」
 完成した秘薬を瓶の中に流し込み、パライバがホッとした様子で溜息をつく。
 辺りには物凄い臭いが漂っているため、盗賊達も場所を間違う事はなさそうだ。
「あっ! 誰か来たようですよ! か、隠れましょう!」
 そう言ってチャオが物陰に潜む。
 ヅラール達を油断させるため……。

●ヅラール
「お、御頭! どうやら、これのようッスね。この秘薬さえあえば、わしらの髪は……」
 冒険者達が隠れているのも知らずに、ピカール達が秘薬を煮込んでいた鍋を覗き込む。
 彼らの近くには秘薬の入ったビンが置かれていたため、さっそく蓋を開けて頭にペタペタと塗っている。
「明日になったら、カツラがこんもりしてしまうかも知れんな。……念入りに塗っておけ」
 3種類の秘薬を順序に塗った後、ヅラトロがニヤリと笑ってビンを置く。
「む、虚し過ぎる……。あんな事をしても効果がないのに……」
 茂みの中から顔を出し、ソラ恋イ・フィード(a35267)が汗を流す。
 ピカール達は秘薬を塗るのに一生懸命で、フィード達に存在に気づいていない。
「……なんだかなぁ、ある意味厄介な相手だなぁ……」
 大粒の汗を浮かべながら、前進する想い・キュオン(a26505)が溜息をつく。
 秘薬にまったく効果がない事は理解しているつもりだが、あまりにもピカール達が必死なために邪魔できない。
「それにしても、凄い光景だなぁ……。このまま放っておいてもいいんじゃない? 何だか可愛そうになって来たよ」
 同情した様子でピカール達を見つめながら、純粋なる愛を唄う桃姫・ハルト(a21776)がボソリと呟いた。
「それじゃ、彼らが哀れ過ぎる。ここは非道に行こう。その方が彼らのためじゃ」
 ピカール達が秘薬を塗り終わった事を確認し、月無き夜の白光・スルク(a11408)がサングラスをかける。
「誰だっ!」
 それと同時にピカール達が反応し、秘薬でテカテカに光った頭をむけた。
「これなら……、スーパースポットライトの方が眩しいと思う……。可愛そうな人達だなぁ……」
 哀れみの表情を浮かべ、ハルトが色々な意味でションボリする。
 『どうだっ!』と言わんばかりの表情を浮かべるピカール達。
 ……さすがに無視する訳にはいかないようだ。
「でも……、カツラを外したのは失敗だったね」
 すぐさまストリームフィールドを発動させ、フィードがピカールのカツラを舞い上がらせる。
「カ、カツラが!」
 青ざめた表情を浮かべながら、ピカール達がカツラを追って走り出す。
「……切ない。……こいつら切な過ぎる……」
 黒眼鏡越しに涙を流し、キュオンが戦う事を躊躇した。
 これ以上、戦っても虚しさだけが残るため、キュオンには涙を拭う事しか出来ない。
「しかし、カツラを被って頭を隠しながらも、それを技とする矛盾……。そんな中途半端な輩に同情する必要はないじゃろう。……彼らを目覚めさせるためにもな」
 襲い掛かってきたピカールの攻撃を避け、スルクが当て身を食らわせる。
「きっと、彼らは迷ってるんだ。このままハゲとして生きるべきか、それともハゲを隠して生きるべきかの狭間でね」
 ふわりと落ちたカツラを拾い、フィードがピカール達をジロリと睨む。
「こんな物があるから、彼らは中途半端のままなんだっ!」
 ……ピカール達の動きが止まる。
 フィードの握ったカツラを見つめ……。
「彼らの時が……止まった……!? そうか! ヅラ質だっ!」
 驚いた様子でピカール達の顔を見つめ、キュオンがハッとした表情を浮かべる。
「……いいじゃないか、髪がなくたって! 禿でも格好良く生きていける方法なんかいくらでもある! 君達が禿の時代を作ればいい! 頑張れ禿!」
 綺麗な髪を風に漂わせ、フィードがピカールの説得をした。
「ふ、ふざけるな! お前にわしらの気持ちが分かるか!」
 それと同時にピカール達が飛び上がる。
「……終わりじゃな」
 粘り蜘蛛糸を使ってピカール達の動きを封じ、スルクが疲れた様子で溜息をつく。
「残ったのはヅラトロだけだね」
 そう言ってハルトがピカール達を縄で縛る。
 カツラを押さえて逃げ出したヅラトロを見つめ……。

●ヅラトロ
「つ、捕まって……たまるか!」
 必死でカツラを押さえつけ、ヅラトロが秘薬を抱きしめ逃げて行く。
「フサフサ……、いや、ボウボウになるんだぁ……」
 まるで何かに取り憑かれたような表情を浮かべながら……。
 あの輝かしい未来を、もう一度……。
 フサフサだった、あの頃を……。
「……速いのは逃げ足だけかい? 思ったよりも腰抜けだね」
 ヅラトロの前に立ち塞がり、朱い翼・ナミ(a10048)が挑発的な態度をとった。
「な、なんだと……」
 怒りに満ちた表情を浮かべ、ヅラトロがカツラを直す。
「だって、そうだろ? 仲間を見捨てて逃げるんだから……。悔しかったら、かかって来なよ。僕らは逃げも隠れもしないから……」
 含みのある笑みを浮かべ、ナミが両手を開いて返事を待つ。
「さらばだっ!」
 カツラをバサッと放り投げ、ヅラトロが脱兎の如く逃げて行く。
「……って、逃げるの!?」
 舞い上がったカツラを見つめ、ナミがハッとした表情を浮かべてツッコミを入れる。
「当たり前だっ! また会おう、諸君。あはははははははは……」
 大事そうに秘薬を抱きしめ、ヅラトロが再びゲラゲラと笑う。
「あの……その秘薬。全部、偽物ですよ……」
 気まずい様子で声をかけ、エルフの邪竜導士・チコ(a15701)が口を開く。
「まさか……その格好……。お前……あの時の村人……!?」
 信じられない様子でチコを見つめ、ヅラトロがダラダラと汗を流す。
「ようやく……状況が飲み込めたようですね?」
 申し訳なさそうな表情を浮かべ、チコがボソリと呟いた。
「そ、そんな……馬鹿な……」
 ガックリと肩を落とし、ヅラトロがションボリとする。
「……哀れな。あまり他人事とは思えんが……。いや、わしは地毛じゃが」
 薄くなりかけた自分の髪を気にしながら、悪代官・スケベエ(a04439)がハイドインシャドウを解除した。
 ヅラトロはショックのあまり呆けており、スケベエ達が近づいても全く動こうとしない。
「どうやら……燃え尽きてしまったようね……」
 チコの衝撃発言で真っ白になったヅラトロを見つめ、激情の鶏女・カルメン(a35368)が溜息をつく。
 秘薬が偽物だった事がよほどショックだったのか、ヅラトロはあっちの世界に行ったまま、なかなか帰って来ようとしない。
「これじゃ、勝負をする必要もなかったね」
 予想外の出来事に驚きながら、ナミがハリセンでヅラトロの頭を軽く叩く。
 次の瞬間、ヅラトロの頭頂部に残っていた最後の一本が抜け落ちる。
「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
 はらりと落ちる一本毛。
 ヅラトロの魂がひょろりと抜けた。
「し、死んでしまったんでしょうか?」
 困った様子で汗を流し、チコがヅラトロの身体を寄らす。
 ヅラトロは最後の毛が抜けたショックで目の前が真っ暗になり、チコ達の言葉が聞こえていない。
「……仕方ないのう。とっておきの手を使うか」
 何とかしてヅラトロの意識を取り戻すため、スケベエが懐から『実践貴方も3日でフサフサ増毛法』を取り出しボトリと落とす。
 それと同時にヅラトロの瞳に光が戻る。
「そ、それは……! 実践貴方も3日でフサフサ増毛法!」
 すぐさま書物を奪い取り、ヅラトロが熱心に読み進む。
 書物には妖しい増毛のノウハウが書かれており、ヅラトロが幸せそうな表情を浮かべている。
「この様子じゃ、私達の声が聞こえていないようねェン。おーい、聞こえている〜?」
 目の前で大きく手を振ったあと、カルメンが疲れた様子で溜息をつく。
 既にヅラトロは書物の虜になっており、カルメン達の存在をすっかり忘れているようだ。
「まさかここまで効果があるとはのう。……そんなに凄い本だったのか」
 ヅラトロの落としたカツラを拾い、スケベエがダラリと汗を流す。
 大事なカツラが落ちた事さえ気づかないほど夢中になっていると言う事は、スケベエの持っていた書物にはよほど重要な事が書かれていたのだろう。
 所有者であるスケベエでさえ気づかぬ事を……。
「ど、どうしましょうか?」
 ハリセンを握り締めたまま、チコが仲間達の顔を見る。
 本当はハリセン勝負を行うつもりでいたためショックはデカイ。
「とにかく縛りつけておきまショウ。これで良しっと♪」
 ヅラトロの身体を縛り上げ、カルメンがハゲ頭をぺちっと叩く。
「ひょっとして……ガイさんの言っていた、色々な意味で『ズレ』ているって、こういう意味だったのかなぁ……」
 ガイの言っていた事を思い出し、ナミが納得した様子で汗を流す。
 ヅラトロは色々な意味で……ズレていた。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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作成日:2005/11/21
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