ぴかっと光るネズミ



<オープニング>


●ピカ
「突然変異のネズミが、ある村を騒がせている様子なのです」
 うーんと唸るようなヒトの霊査士・ゼロ(a90250)の言葉に酒場の冒険者たちが視線を向ける。それを受け止めながら、ゼロは話を始めた。
「ある村に突然変異のネズミが現れ……びりびりと村人を痺れさせているようなのです。そのネズミは一見なんら変哲の無いネズミでちょろちょろと素早く動きまわって居るのですが、体に常にぴりぴりと静電気のようなものを纏っている様子です」
 攻撃力というものはほとんどは無く、しばらくすれば痺れも取れるので怪我人などは出ていないらしい。しかし、痺れている隙に逃げられてしまうので退治が出来ないのだそうだ。
「通常のネズミと同じ程度の大きさですので……その個体を探すのが少々骨かもしれません。ただ、夜にそのネズミが目撃された話によりますと、その毛並みが薄く光って見えるのだそうです。なので夜に捜索をすれば見つけ易いでしょう」
 問題のネズミは4匹、村のどこかに潜んでいるのだそうだ。
「変異ネズミを探し出して、退治することをお願いします。攻撃力は殆どありませんが、びかっと光って電気を放出して麻痺の効果を与えてくること、小さくすばしっこいので捉えにくいである点を注意してお願いします」
 そう言って、ゼロは冒険者たちを送り出した。

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参加者
碧・ヘラルディア(a13998)
天照月華・ルフィリア(a25334)
前進する想い・キュオン(a26505)
蒼天を旅する花雲・ニノン(a27120)
親愛の白霜・セルト(a36973)
ポセイ首領・ボルジャック(a37012)
黒猫魔術師・ルーニャ(a37367)
無限の旋律を奏でる七色の音階・クロウ(a38657)


<リプレイ>

●ピカねずみ
「ネズミの良く出る場所……食料がある所とか暖かい場所かなぁ〜ん?」
 黒猫の着ぐるみ……のような格好の蒼天をあおぎ旅する花雲・ニノン(a27120)に問われた方は一瞬驚いたような表情を向けるも、冒険者と聞いて問題の変異ネズミと遭遇した時の話を聞かせてくれた。その人は路地を歩いている時に小さな光を見かけたのだと話し始める。
「被害に遭われたとのこと……御見舞い申し上げます。私たちが何とか致しますなぁんね」
 ニノンと共に変異ネズミの被害者や町の人の話を聞いていた碧・ヘラルディア(a13998)。一通り話を聞き終わるとお礼と挨拶を済ませて仲間たちと合流するために歩き始めていた。
「おびき寄せる餌はチーズが良いニャ……」
 そう言ってすっとチーズを取り出す黒猫魔術師・ルーニャ(a37367)に、深緑の双眸・セルト(a36973)も「上手くかかるといいんですが……」と仲間たちに配り始める。これで罠を仕掛け、ネズミたちをおびき寄せる作戦なのである。
「クックック……村人の協力に感謝するニャ……」
 これは分けてもらった物なのだと付け加えるルーニャにニノンも頷く。
「ねずみ……早く退治して……村の人たちが安心できるようにするのです……」
 罠用にと用意してきた籠を手に天照月華・ルフィリア(a25334)も餌を受け取り、罠を設置する場所をセルトと相談し始める。
「変種の電気ねずみですか……かわいそうだけど退治するしかないんでしょうね」
 チキンレッグの吟遊詩人・クロウ(a38657)はねずみ退治とは言え命を奪うことに気が乗らない様子で表情が重かった。しかし冒険者の仕事を全うする為にと、獣達の歌で集めた情報を仲間に伝える。聞き込みを始めとするそれらの話を元に、4箇所の罠を設置する場所が絞られた。
「村を困らせるとは許せんな、我輩が成敗してくれるわ、ガーハッッァ!」
 そんな不安を知ってか知らずか、豪快な笑いで雰囲気を盛り上げるポセイ首領・ボルジャック(a37012)。その笑い声に後を押されるように、冒険者たちはそれぞれ罠を仕掛けに町に散らばる。

●夜に光るのは……
「光るねずみねぇ………まぁ、深く考えるのはよそう……」
 何か思い当たることでもあるのか、軽く頭を振る前進する想い・キュオン(a26505)、チーズをばら撒いた道から少し離れ、路地に潜んでその様子を伺っている。
「灯りが無いと怖いですね……」
 キュオンと共に身を潜めるクロウ。びくびくと怯えながらも視線はチーズを撒いた辺りから外さない。
(「ニノンちゃんと一緒の班じゃないのは残念だな……」)
 視線は外さずに居るが、中々目的の変異ねずみが現れないことに退屈を覚えるキュオン。
 ぴか
「いっ!?」
 そのキュオンに走る激しい痛みと痺れ! 見れば足元には小さな光が走り抜けている。道に餌を撒いてそこを見張っていた二人だったが……ちょうどその二人の潜んだ路地から餌に向けて変異ねずみが現れたのであった。餌を撒いた場所に注目していた二人は背後から迫る小さな光に気がつかなかったのである。
「キュオンさんっ!」
 驚きの声を上げるクロウの脇を抜ける光るねずみ、その灯りが素早く動き……止まった。撒いた餌を食べ始めたのだ。
「……皆のために……ごめんね」
 餌を食べるねずみに向けて穏やかな旋律が流れる。クロウの眠りの歌が……そのねずみをゆっくりと眠らせた。せめて苦しまないように。
「っ……牙狩人として……的が小さいからって外せるかっ!」
 クロウが稼いだ時間の内に痺れから抜け出して、キュオンがホーミングアローが放つ! 光の軌跡を描く矢が、一撃でねずみを貫いていた。
「流石ですね、僕ももっと頑張らなきゃ……」
 キュオンの一撃に目を見張るように、クロウが呟いていた。
「いやいや、努力すれば、きっと力のある冒険者になれるよ」
 笑顔を返すキュオン。そして二人は他の班が上手くいったかどうかを気にしながら、静かにその場を後にした。

「頑張って退治できるよう、宜しくお願い致しますなぁんね」
 一礼するヘラルディアに「クク……宜しくニャ」と返すルーニャ。罠を仕掛けたのは水路の近く、暗い闇に光るものを見逃さぬように、二人で目を凝らす。
 カラカラカラ……
 ヘラルディアが設置した罠に繋がる鳴子が軽い音を立てる。視線を向ける二人の先には小さな光がちょろちょろと動いている。
「……ぉぉ、ねずみがきたニャ! ぅー……ねずみニャ……光っているニャ……」
「自分はクールだからねずみ如きでははしゃいだりしない」と豪語していたルーニャだが、何だかうずうずとストライダーの猫尻尾をぴくぴくさせるている。そんなルーニャに少し待ってと合図して、挟み撃ちにするべくヘラルディアが静かに回り込むように動く。
「ククク……お仕置きニャ……!」
 ヘラルディアが移動したのを確認して、待ってましたと言わんばかりに飛び出すルーニャ、同時に体から呪われし鎖を解き放つ! それに絡め取られた光るねずみは一撃で動けずに縛られる。ルーニャ自身も麻痺しているが……すかさずヘラルディアが癒しの聖女を飛ばす。
「……これで、後は始末なぁん……」
 ヘラルディアと自由を取り戻したルーニャの前に、動きを縛られた光るねずみは最早なす術が無かった。

「チーズ……来るでしょうか……」
 合図用に用意したハープをきゅっと握り締めて呟くセルトを手で制し、「静かに……」と返すルフィリア。罠の籠へと続くように転々と落とされたチーズが暗い夜道にうっすらと見える。
 ちょろ……と二人が潜む路地とは逆の方向から現れる小さな灯り、それはサササッ、サササッ、と転々と転がるチーズに向けて駆け、止まるを繰り返す。その動きを目で追う二人。
 やがてかたん、と音と共に籠の入り口が閉められる。中で驚いたように、急に騒がしく小さな光がガサガサ! と動き回っていた。
「……掛かった……」
 食料などが蓄えられている倉庫の付近に罠を張っていたルフィリアとセルトが飛び出す。その時暴れるねずみの勢いに負けて籠がガシャンと倒れ、蓋から光るねずみが逃げ出した。
「……逃がさない……!」
 ルフィリアが紅蓮の咆哮を浴びせ掛ける。セルトが胸中で(「あぁ、夜に騒がしくしてしまいました……」)と後でお詫びしなくては……などと思いながらも退路を塞ぐように回り込み、碧の書『ライトクロス』から衝撃波を飛ばす。ねずみは咄嗟に方向を変えて飛び退いた。
 げしっ
 そこにルフィリアの蹴りが突き刺さった。ねずみはその一撃を受けて動かなくなる……がしかし、直接蹴りを打ち込んだルフィリアも電気に痺れ、びりびりと麻痺してしまうのであった。

「寒いなぁ〜ん、着ぐるみ着といて良かったなぁ〜ん♪」
「ガーハハハッ! ねずみめ、何時でも現れるがいいっ!」
 黒猫の着ぐるみを着たニノンと、豪快に笑うボルジャック。路地に潜む(?)二人は多少怪しいような気もするが、夜で多少は目立たないだろうし、ねずみは気にしないだろうということにしておきたい。
「ねずみが来ましたなぁ〜ん!」
 その時二人に向かって小さな灯りが駆けてくる。目的地は路地にあるゴミ捨て場のようだ。
「村人を困らせるねずみめ、我輩が懲らしめてやるわぁぁぁっ!!」
 激しく気合を入れてマッスルチャージを発動させるボルジャック。筋骨隆々のその肉体にムキムキッと力が漲る。だがねずみはその間にボルジャックの足元に駆け寄っていた。
 びりびりっ!
 マッスルチャージのポーズのままで痺れるボルジャック。慌ててニノンが駆け抜けるねずみに向けて粘り蜘蛛糸を放つ。
「捕らえたなぁ〜ん」
 白く粘つく糸に絡めとられ、光がもがく様にしながらもすぐに動きを止めた。そのままニノンはブーメランを投げつける!
「ピリピリこないように近づかないようにっと……なぁ〜ん」
「ぬおぉぉぉ! 突撃ぃぃぃぃ!!」
 その時痺れが解けたのか、ボルジャックが突撃する! ニノンのブーメランに続いてトライデントを振り下ろし、仕留める! ……が、同時に電気に痺れ、再びビリビリと麻痺するボルジャックであった。

●あとしまつ
「夜中にお騒がせして……申し訳ありませんでしたっ」
 がばっと頭を下げて回るセルトに、村人たちも快く許しの声を返してくれた。町を騒がせる変異ねずみを退治できたのだから、今までの騒ぎに比べれば大したことは無いと労いの言葉を加えてくれる人も居た。
「冬のたくわえをねずみにあげちゃってごめんなさになぁ〜ん」
 ニノンも一緒に罠用の餌を提供してくれた村人たちにお礼の言葉を送る。その程度の協力ならいつでも……と笑顔を返してくれる村人たちの優しさに、ニノンもほっと一息をついて微笑む。
「……申し訳ありませんが、これが運命なのでしょう……なぁんね」
 村から少し離れた草原に、ヘラルディアとクロウが立っていた。
「次に生まれてくる時は幸せにね……」
 そっと大地に向けて囁くクロウ。変異ねずみとはいえ一つの命、人々の平和の為に……それに犠牲になって貰っている。これからも平和を守るために頑張っていかなければならないと、冒険者としての使命を心に刻み付けるヘラルディアとクロウだった。
「皆、お疲れ様だな!」
 しかしそれでも今は、平穏を訪れた村には笑顔がふさわしい。そんな気持ちにさせるようなボルジャックの豪快な笑いが響き渡るのだった。


マスター:零風堂 紹介ページ
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