【さいはての未踏地の先へ Break Out!】その先には何がある?



<オープニング>


 インフィニティゲート……それは三色の光に包まれた、煌く洞窟。
 この洞窟に竜が現れたのは、一年半以上も前の事である。

 蓄えるもの・ワートゥール。
 喰らうもの・ストームゲイザー。
 形成するもの・カダスフィア。

 洞窟に巣食う三体の竜。
 その竜達を倒した後、もう同盟に竜など居ない……。
 誰もが信じ、同盟諸国も頑なにそう言い続けていた。

 だが、そのインフィニティゲートを探索し続ける一つの旅団があった。
 悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)率いる旅団『雲櫂の風』である。
 1年以上におよぶ冒険と探索。
 巨大な異形モンスターとの戦闘、探索、そして鍵。
『掲げよ、さらば扉開かれん』
 その言葉に導かれるように、最奥の地まで到達した彼らは、そこで道程を塞ぐ巨岩を見たのだった。

 この探索の結果は円卓に報告され、円卓の評決により『大岩を破壊し調査を続行する』事が決定した。

 地下遺跡での土木工事は危険が高く専門的な知識が必要となるだろう。
 そのため破壊の専門家を呼び寄せ、冒険者の力と合わせての作業を行う事となった。

 勿論、ただ、破壊すれば良いという事では無い。
 大岩の破壊と共に災厄が降りかかる危険は大きい。
 破壊後の状況に対応した、充分な警戒が必要だろう。

●その先には何がある?
「という訳で、円卓の間での票決の結果、インフィニティゲートの大岩を、ぶれいくすることになったのです〜」
 何が『という訳』なのかはよく分からないが、エルフの重騎士・ノエル(a90260)は、そう近くにいた冒険者達へと告げた。
「こわすのです、どっかーん☆なのです! でもでもボクたちは、こわしちゃいけないのです。他にとっても大切なお仕事があるのですよ。ボクたちは、みんなを護るのがお仕事なのです!」
 真剣な表情で言うと「ボクはがんばるのです、だから皆さんもがんばろうなのですよ〜♪」と皆を見やるが……些か説明が足りず、どういう事なのかイマイチよく解らない。
「えっと……あのね」
 そんな様子に、説明を補うべく口を開くのは、隣にいたリボンの紋章術士・エルル(a90019)だ。
「大岩を壊す事には決まったけど、壊した時に何が起きるか、判らないでしょう? だから、もしも何かが起きた場合に備えて、警戒に専念する人を集めよう、って事になったの。ほら、今回は一般の専門家の皆さん……ブレイク卿などもいらっしゃるから、皆さんにもしもの事が起きたら、大変でしょう?」
 ブレイク卿――かのカディス城砦を破壊した際にも同行した、コーギー・ブレーク卿は、今回もインフィニティゲートへ向かう予定だ。
 他にも、作業に従事する人々が多数、冒険者達には同行する。
 彼らは、冒険者ならば耐えうる出来事にも、あっという間に倒れてしまう存在。彼らが、安心して作業に従事できるよう、護衛を行うのは大切な事だ。
「まして、皆さんは作業に集中しているんですもの。突然何か起きても、咄嗟には反応できない可能性が高いと思うわ。……これは、破壊作業を担当する冒険者の皆さんだって、同じよね」
 だから。もしも何かが起きる可能性に備えて、その『何か』に対応する人員が必要なのだとエルルは言う。
「といっても、大岩を壊したら何かが起きる、って決まった訳じゃないんだけど……」
 大岩を破壊する時、何が起きるかは判らない。
 何も起きないかもしれない。でも、何かが起きてしまうかもしれない。
 もしかしたら大岩の向こうには、何か危険な存在がいるなんて事もあるかもしれない。クリスタルインセクト、フォビア、そしてドラゴン……それらがいたインフィニティゲートの奥だから、何が現れたとしても不思議ではない。
「何も無ければ、それが一番いいのですよ〜。ボクたちの準備は、ムダになるのが一番いいのです。でもでも、起きてから『こうしておけばよかった』って思っても、それはちょっぴり遅いのです。そうならないように、バッチリ準備して出発なのです〜!」
 ノエルはそう皆に言うと、そのまま支度に取り掛かるのだった。

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参加者
NPC:エルフの重騎士・ノエル(a90260)



<リプレイ>

●警戒と護衛と避難の準備と
 インフィニティゲート、最奥の地を塞ぐ巨大な岩。
 それを越えて先へ進む為の方法は一つ……この岩を、破壊する事。
 今、多くの者達の手によって、その作業が進められていた。

「ルートはこうが良いでしょうね」
 そんな中、シン(a11563)やシェルト(a11554)達は、羊皮紙を囲んで相談を行っていた。彼らは手分けして調査をしながら、避難が必要な際のルートを選定する。
 的確に最短ルートでの避難を誘導できるよう、定めたルートは全員がしっかり頭に入れる。
 それは他の班にも連絡され、ミュー(a27242)は輸送班に「非常時には一般人の避難を最優先にしたい為、通路を空けるようにて欲しい」と要望にも向かう。
 薄暗い箇所には持ち込まれたカンテラが置かれ、視界の確保が行われる。
 とはいえ、そういった活動を行う者は全体から見れば僅か。残る大半の冒険者は、周囲に目を光らせながら警護に従事していた。
 ……ただ。
「近付くのは無理だぎゃ……」
 長時間の待機に我慢できず、大岩に向かおうと思い立ったものの、セナ(a07132)はそう呟いて戻って来るしかなかった。
 実は、警護を始めて早々に、一つ問題が起きていた。
 それは人の数に起因する。
 冒険者だけでも四百を越える人数が、この作業に何らかの形で関わっている。そして大岩の周辺は当然ながら、破壊に従事する者達が居なくてはならない。
 すると、どうなるか……破壊班が大岩周辺に位置するだけでスペースは埋まってしまい、警護班が大岩の側で待機するのは難しくなってしまったのだ。
 結局、スィーニー(a04111)やシエヌ(a04519)など、常に一般人の側についていたいと希望した数名が、何とか位置できた他は、大岩から少し離れた後方、通路脇や踊り場、一つ上層での待機という形になっていた。
「護るのは大切ですけど、ぶれいくを邪魔してしまってはダメですからね〜」
 とはノエルの言である。
「……」
 上層での待機となったウィリアム(a00690)は、武器に手を掛けながら目を光らせる。ここはドラゴンズゲート、敵の出現に備えてだ。
 現れたとしても、ここから通さなければ問題ない……そう考える者は多く、クロウディア(a30431)やエルフォン(a01352)など、ここに居るのは敵の出現への対応に当たろうと、あえて上層での待機を選んだ者が多い。
「変化はないか……」
 クロコ(a22625)は敵の様子に異変がないか目を凝らしていたが、そのような様子は無いようだ。
「さて、何があるのかな?」
 大岩が見える通路脇で待機しながら、呟くのはアニエス(a35948)。あの先に何があるのか、気にならない者はいないだろう。
「旧い神話では、禁忌の匣の中には……災厄があったと言うけれど」
 この岩の向こうには何があるのだろうね、と、メイファ(a34291)も伏せがちな瞳を向ける。
「正規の手順を踏まずに開けるのだ。不法侵入に対する、何らかの反応はあるだろう」
 そう予測し、ヤト(a31720)は警戒し続ける。
「気の回しすぎでしょうか……」
 一般人の様子を見ていたルディ(a00300)は呟く。何らかの悪意を持った者が紛れ込む事もあるのではと案じ、様子に気を配っていたが、そういった言動は見受けられない。
「へぇ、色々あるね」
 一方用意された差し入れを眺めるのはリヴァ(a32814)。作業は既に数日に及んでいる。流石に休息を取らぬ訳にはいかず、冒険者は交代で休息や食事を取っている。
 おにぎりやサンドイッチ、クッキーや団子……ドリンクも様々な物が用意され、それらが張り詰めた神経を少しだけ休ませ、癒してくれる気がした。
「終わった後も、みんなで『ほっ』と一息つけたら、いいな」
 ヴァイス(a25660)はお茶を手に仲間達と休息しつつ、そうなるように……いや、そうするのだと強く決意する。
「そうね、みんな一緒に……」
 同様に休憩中のエルルは、その言葉に深く頷き返した。

 作業は地道に着々と進み、破壊された岩の破片が繰り返し運び出されていく。
 やがて、どこからか「あと少しだ」と声がする。幾度も繰り返し続けられた攻撃によって大岩が削られ……それが崩れ落ちる瞬間が、近付いているのだ。
「何も起きないって事は、無いよ。きっと」
 オルフェ(a32786)のみならず誰もがそう思う。
 きっと、何かが起きるはず――。
 ごくりと喉を鳴らし、遠くから見守る彼らの耳に、やがてバートランド(a02640)らによる攻撃によって、岩が崩れ落ちていく音、そして歓声が届く。
「みんな!」
 けれどそれは、自分達にとっては終わりではない……オルフェの言葉が飛ぶのと同時に、一同は皆、起きるかもしれない『何か』に備えて身構えた。

●訪れる時
 岩が崩れる音と同時に、あちこちで光が灯る。即座に動いた冒険者によるホーリーライトだ。
 直後ラッパが吹き鳴らされて、何か起きた事が後方に知らされる。
 崩れ落ちる破片と土煙と……それらの向こうに見えたもの。
 それは。
「――クリスタルインセクト!」
 警護班の中では比較的前方に居たレイク(a00873)は、見覚えのある姿に伝令部隊を振り返る。自分達の何倍もの大きさを持つあの姿。それは『雲燿の風』での調査中に遭遇した、巨大クリスタルインセクトに間違いない。
 それが岩の破壊直後、向こう側から現れ攻撃して来たのだ。破壊班の最前列からは、声と応戦の音が響く。
「敵です!」
 その様子にビクトリー(a12688)やレーヴェ(a33959)ら伝令部隊が散る。
「皆さんは避難を!」
 リセ(a12065)は一般人に呼びかけ、近くに控えていた護衛部隊が動く。にわかに騒がしくなる中、伝令部隊は声の矢文も駆使して事態を皆に広める。
「透明になったら、アビリティを反射するから気をつけろ!」
 知らせを聞いたルシール(a00044)は敵の方へ駆けながら、経験からの警告を飛ばす。声が届く範囲は僅かだが、それは伝令によって広がる。
「エクリプス!」
 ジェイク(a07389)はウェポン・オーバーロードで武器を呼び寄せながら駆ける。他にも同様に、武器を手繰り寄せる者は多い。或いは、鎧進化を使いながら駆けるバルア(a31559)のように、防御を高める者も多かった。
「鎧聖降臨!」
 キサラ(a04388)やロート(a11026)、カーディス(a26625)は、自身の鎧を変形させると、続けて周囲の者達の鎧に力を注ぎ込む。
「反応速度上げとけば少しはマシだろ」
 ルナシア(a20060)やカナメ(a22508)はチキンスピードを使い、エリス(a32220)は紋章筆記を併用してのエンブレムフィールドを足元に広げる。
「出口はこっちだよ〜! みんな慌てずに逃げてにゃ〜!」
 戦闘部隊が人波を掻き分けて前へ向かう中、護衛部隊は一般人を連れての避難を始める。フワフワ(a38667)ら、ホーリーライトを灯した者達が皆を手招く。
「先に行くぜ!」
 リヴン(a19791)やウィル(a27628)らが露払いの為に先んじて通路を戻り、その後ろにホーリーライトを目印代わりにした、エル(a08082)らが続いて誘導する。
「皆さん、足元に気をつけて」
 ミヤクサ(a33619)も照らしつつ呼びかけ、イリシア(a23257)やタダシ(a06685)らが、彼らを囲むように護衛する。
「これを持って下さい」
 メディナ(a36013)は誰かがはぐれたり隊列が乱れぬよう、彼らにロープを握って貰う。
「さ、行くっすよ」
 リョク(a21145)は少しで彼らの疲労を癒せればとヒーリングウェーブを使い、腰が抜けて動けぬ者にはジャム(a00470)が喝を入れ立ち上がらせる。
 辺りには皆を励ますかのように高らかな凱歌が響き続け、人々は冒険者と共に引き上げていく。最後尾についたイクス(a20482)は一般人の背を護りつつ上層に向かった。

 その間にも前方では出現したクリスタルインセクトとの戦いが続く。よく見れば相手は一体だけではなく、複数の影がひしめき合っている。
「――はっ!」
 そこへ真っ先に攻撃を放ったのはユウリ(a18708)だった。比較的前方で待機していた彼女は、矢の届く位置まで来ると、即座にライトニングアローを撃つ。
「ナパームアローは無理ですね」
 レグ(a30220)は仲間を巻き込む可能性が高いと、ホーミングアローを生み出す。
 彼らに続いて、エトワール(a07250)ティキ(a02763)シュン(a27156)……と、弓を携えた牙狩人が次々アビリティを放つ。
 遠くからでも攻撃できる彼らのアビリティは、この状況では非常に効果が高かった。矢によってクリスタルインセクトの動きが一瞬だけ止まった、その僅かな間を最大限利用して、攻撃部隊は後退する破壊班と入れ替わるように前へ出る。
「ここは通さないよっ!」
 バーミリオン(a00184)は破壊班が下がれるよう、身を挺してクリスタルインセクトの攻撃を食い止める。
 一歩後ろからは紋章術士や邪竜導士によりアビリティが放たれるが、クリスタルインセクトは、それをものともせずに、杭のような腕を突き出して攻めてくる。
「これでも喰らいなさいっ!」
 ラビリス(a30038)のソニックウェーブによって一体が倒れても、その後ろからまたすぐに、別のクリスタルインセクトが進み出る。
 どれだけの数がいるのか……クリスタルインセクトによって埋め尽くされ、先の様子が見えない状況に、カムナ(a27763)は眉を寄せつつも、黒炎覚醒にて高めた力でニードルスピアを撃つ。
「――はあっ!」
 ルミル(a12406)は全力で薔薇の剣戟を叩き込む。直後、クリスタルインセクトの色は赤から緑へと転じ……周囲に雑音を撒き散らす。
「皆さん、こちらへ!」
 広がるダメージにカロア(a27766)は呼びかける。
 大岩に塞がれていた箇所――次の場所へと繋がるその入口は、決して広くはない。そこに殺到するクリスタルインセクトと戦う冒険者が前に出れば、自ずと、敵までアビリティの届く必要がない医術士達の位置は、後方となる。
 負傷した者は後ろの冒険者と入れ替わって後退し、癒しを受けてまた前へ出る……その繰り返しで戦うという流れに、誰もが自然に従っていた。
「はっ!」
 ライクアフェザーを用いたマリー(a20057)は、負傷した者と入れ替わり、前に出ると薔薇の剣戟を刻む。更にケイ(a36280)が果敢に流水撃で攻め、直後にクリスタルインセクトから放たれた光の束は、クラウド(a22222)の無風の構えによって、クリスタルインセクトへ跳ね返る。
 けれど、そうして弾けた攻撃は僅か。次々と繰り出される腕や足に冒険者達の体は傷付き、更に再び雑音が広がると、一同の間に大きな被害が出る。
「みんな、ぜってぇ死ぬなよ……いや、オレが死なせやしねえ!」
 リオ(a27356)は届く範囲の冒険者に癒しの波を浴びせ、ファオ(a05259)やピート(a02226)らと手分けしながら、全力で回復に従事する。
 余裕があるなら紋章筆記で記録を……と考えていたシリア(a23240)も、そのような余裕は欠片も無く、ひたすらヒーリングウェーブを使い続ける。
「近くの人は固まって!」
 更に、術士のうちユノ(a25426)などヒーリングウェーブを使える者達が、戦列を立て直す為に回復を行う。
「大丈夫か!?」
 戦闘不能に陥ってしまった者はジーン(a34701)が支え、医術士のうちメイ(a02387)など、命の抱擁が使える者の元へ運ぶ。
「皆!」
 ヒーリングウェーブを放つスティファノ(a31802)の言葉に、小隊【荒舞】の面々は頷いて前に出る。カイリュート(a36048)が電刃衝を放つ脇をリングスラッシャーが翔け、ノヴァリス(a30662)のシャドウスラッシュが刻まれた所へ、舞い飛ぶ木の葉がクリスタルインセクトを縛りにかかる。
 最後に、ハルキ(a31520)が達人の一撃を叩き込むと、その間に体勢を立て直した者達と交代し下がる。その耳に届いた高らかな凱歌は、アクアローズ(a22521)のものだと解った。
「効かぬでござるか」
 エイジ(a16746)ら忍びの数名は、粘り蜘蛛糸を放っていたが、なかなか敵を縛れない。特に青色のクリスタルインセクトには皆無と言って良いほど効果が無かったし、赤や緑のクリスタルインセクトも、足を止めてもその数秒後には、またすぐ動き出す。
 緑の束縛を飛ばすアルム(a12387)の方も結果は芳しくない。こちらも足止めに成功はしたものの、やはり数秒後には効果は薄れていた。
 それでも、その僅かな時間だけでも、冒険者にとっては十分だった。
「もう好き勝手させないんだから……!」
 マライア(a18569)のデストロイブレードが叩き込まれ、後ろからはイオン(a02329)が紋章筆記を併用したエンブレムノヴァを飛ばす。
 火球に焼かれたクリスタルインセクトは倒れ、また新たな巨体が進み出ると、そこにはアリア(a05963)の気高き銀狼が向かう。
「色が!」
 その直後、クリスタルインセクトは色を変える。赤でも青でも緑でもなく、透けるように透明な――。
 レスタス(a20292)は先の警告を思い出す。巨大クリスタルインセクトが透明になったら、アビリティを衝撃波として跳ね返すという。
 なら。
「術士さんは後ろに!」
 ワシリー(a23245)は彼らを護るよう位置しつつ剣を振るう。アビリティを跳ね返すというならば、ただこうして武器を振るうのみ。
 この変化に誰もがアビリティの行使を止め、即座に行動を切り替えられたのは、先程のルシールの警告と、それを広めた伝令部隊の活躍があったからだ。……そうでなければ今この瞬間、冒険者には多大な被害が出ていたことだろう。
「……よし!」
 シヤク(a14804)の一閃がクリスタルインセクトを倒すと、次のクリスタルインセクトへすかさず攻撃が飛ぶ。彼が属する小隊【夢月】の一員であるアリシア(a13284)の緑の業火をはじめ、後列からでは攻撃が届かぬ事から半ば待機する格好となってしまっていた、術士達が一斉に攻撃を繰り出し、赤色のクリスタルインセクトは見る間に砕け散る。
「後ろ、緑色だわ!」
 はっとしたエルルの警告の直後、進み出たクリスタルインセクトが雑音を散らす。グレウス(a36703)は負傷した者と入れ替わり前へ出ると、力を温存ばかりしていられる状況ではないと、惜しまず居合い斬りを放つ。
「膝をつくのはまだ早い! そうだ、立ち上がって目を開け!」
 カズハ(a01019)の歌声は皆を癒し、彼らを尚も奮い立たせる。自身も傷付いていたけれど、それでも歌え、歌い続けろと……高らかな凱歌が止む事は無い。
「いっけーっ!」
 レイ(a25187)の薔薇の剣戟がクリスタルインセクトを刻み、後方から飛んだ矢と炎の塊とが重なる。
「効かないな」
 せわしなく突き出される足による攻撃を、ライル(a04324)はイリュージョンステップによる華麗な動きで避け、そのままゴージャス斬りで反撃する。
「待って……逃げるつもりだ!」
 そんな中、敵に生じた様子にいち早く気付いたのは、状況の把握に努めていたロック(a20544)だった。
 冒険者達の手によって、三十近い巨大クリスタルインセクトが砕かれ、前方に見える姿が数えられる程度になった時……敵は、退き始めたのである。
 彼らなりに不利を悟ったのか、それとも、あるいは何らかの事情があってか……それは解らないけれど。
「行きましょう!」
 ハジ(a26881)はホーミングアローを撃ちながら、それを追う。
 敵が逃げるなら深追いすべきではないと考える者もいた。けれど、逃した敵が後日何を招くか、それに対する懸念もある。自分達を振り返れば、撤退が必要なほど激しい被害は受けていない。
 それに……何より。この先に何があるのか、ちゃんとこの目で見たかった。
 知りたかった――だから。
 冒険者達はクリスタルインセクトを追撃しながら、その先へと踏み込んだ。

●その先には何がある?
 大岩に塞がれていた先に見えたのは、更に下へと繋がる回廊だった。クリスタルインセクトに攻撃を浴びせ、反対にその攻撃を受け……応酬を繰り広げ、クリスタルインセクトを砕いて。冒険者は先へ進む。
「あと一体だ!」
 クリスタルインセクトの数は減り、残りは僅かにあと一つだけ。冒険者達はそれを追い、攻撃を重ねるうちに、回廊を抜けて新しい地を踏む。
「……扉?」
 スキュラフレイムを撃ちながら、ガイヤ(a32280)はその先にある物が何か、認識する。それは石で出来た、とてもとても大きな扉――。
「そんなっ!?」
 その瞬間、信じられないという声が脇から上がる。それはアカシック(a00335)のものだ。
 彼の心境は、それを目にした者、皆に通じるものだっただろう。
 それまで目の前にいたはずの、巨大なクリスタルインセクトが……一瞬にして消えたのだ。
 ――否、正確には消え去ったのではなく。
「これは……像? 像の……欠片?」
 エルルが見上げたのは、扉の前に立つ、一つの像だった。
 割れて、傷付いて、破壊された跡のある戦士像。その足元には像の破片が散らばっていて……クリスタルインセクトがそれと同じものに変わり、地面に転がる瞬間を、エルルをはじめ多くの冒険者が目にしていた。
 あれほど大きなクリスタルインセクトが、こんな物言わぬ小さな欠片に変わってしまうとは。
「……どんな魔法の力なのかしら……?」
「さあ、わからん」
「これが古代ヒト族の力、ってやつなのかな?」
「かもしれませんね」
「むしろ、これって神様の力なんじゃないの……?」
 誰もが顔を見合わせて、口々に何が起きたのだろうかと語り合う。勿論、誰もその正確な答えなど知らない。けれど推測する事は出来た。
「こっちは……」
 何人かの冒険者は、像の前から離れて扉を見上げる。雰囲気や造りは、あえてどこかに例えるならば、ホワイトガーデンにあるクラウドキャッスルの入口に近いだろうか。
 扉にはいくつかの爪跡が見られたが、傷は全て、虹色のクリスタルで補修されている。
 ……どうやらここは、新たな遺跡の入口のようだ。
「すごいな……」
「うん。大岩の奥には、こんな場所があったんだね」
「敵も無事に倒す事が出来たし、こんな遺跡がある事も判ったし……やったな!」
 どこからともなく、ぽつりぽつりと声が上がり、やがてそれは全体に歓声として広がる。
 ――自分達は無事に、起きるかもしれなかった『何か』を退け、更に大岩の奥にこのような場所があるという発見を果たしたのだ。
 それを喜ぶ事を咎める者は誰もいない。敵を退けた事、誰一人失わず済んだ事、新たな発見を果たした事……そんな数々の喜びを、一行は互いに分かち合う。
「先に戻った連中にも……待っている連中にも、伝えないとな」
 エコーズ(a18675)はそれを知らせる為、皆よりも一足先に道を引き返す。ここから先の探索については、また、この情報を元に改めて有志が募られる事になるだろう。
「……この先には、一体何があるんでしょう……」
 大岩の破壊と共に起きた戦いは終わった。でも、まだ全ての終わりではない。またこれから始まる……フィリアル(a15645)は、そんな思いと共に遺跡を見ながら呟く。
 不安がない訳ではない。この先にはきっとまた、危険も待ち構えているだろう。でも……。
 ――今回のように、同じ希望のグリモアに集った大勢の仲間達がいるなら。どのような苦難があったとしても、共に手を携えて、それを乗り越えられるに違いない。
 そう誰もが思い、誰もが信じながら。冒険者達は来た道を引き返し……地上に戻ると、改めて全員での帰還を喜びながら、一息ついて――今はひとまず、ささやかな休息に身を委ねるのだった。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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作成日:2005/12/01
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