<リプレイ>
● 「実は、最近の窃盗事件と関係あると思われる計画書を入手しまして、彼らの次の標的が、貴方の家の階段下にあるガーネットだと判ったのです」 最初に自分達は冒険者であると告げ、縁側で昼寝するドリアッド・イクス(a20482)が単刀直入に切り出した。 「決行は近日中の夜なので、ご迷惑をお掛けしますが夜の間はどこかに避難して頂けると助かります」 突然の話に、冒険者の目の前に座るブランドは目を白黒させている。 「わ、私の家が狙われているのですか……」 「そうです。どう考えても貴方の家が騒動に巻き込まれてしまいますが、街の安全のためにもご協力を!」 ブランドに懇願する銀の剣・ヨハン(a21564)は、 (「ブランドさんの幸運度は、きっと『大凶』だ」) と、不幸が降って湧いてきた商人の男にちょっと同情的だ。当のブランドは、実直そうな好青年に懇願され、まんざらでもない表情を浮かべたり、目を白黒させたりと、なかなか忙しい。 ブランド氏の元を訪れた冒険者達は一様に、表から武装している事が判らない様に装いに工夫を凝らしている。件の窃盗団がブランド氏を見張っていた場合に備えての事で、昊天の疾風・ワスプ(a08884)の案だ。 恐ろしい計画にプルプルと震えていたブランド氏が、ふとイクスの言葉のとある単語を復唱した。 「先程計画書と仰いましたが、それは一体……」 「それはデスね〜、しまし……」 「おっと、ちょっと待ってくれ」 説明を始めた夢語りの蛍・ユウノ(a10047)の言葉を、ワスプが遮った。 「(できればしましま団のことは伏せておいてくれ。あいつらが一枚噛んでいると思わせたくないからな)」 「(ぅや、そうデスか〜。それでは……)」 コホンと小さく咳払いをし、再びユウノが口を開く。 「計画書デスが、冒険者の酒場に持ち込まれたものなのデス〜。霊査と冒険者のよるメンミツな調査で、その内容に信憑性があることが判明したのデスよ〜。計画書は二枚ありマシて――」 そのうちの一つは既に起こった事件の概要を示しており、もう一つの、これから起こるであろう事件の計画書に、ブランドの宝石を奪うと記されていた事を、簡単にユウノは説明した。 「この計画書の事は他言無用なのデスよ〜。盗賊さん達に警戒されてしまうと困りマスから」 「うむむ、不思議な話ですが……冒険者の皆さんが仰るのなら、それは事実なのでしょうな」 「ええ。とにかく、貴方が持つガーネットが狙われている事は判って頂けましたでしょうか」 「……何となく」 淡々と語る未来が見える者・リコ(a01735)の有無を言わさない態度に、ブランドは冒険者の言葉を何となく信じたようだ。 「ご理解頂けたようで良かったです。先程も申し上げましたが、これから数日の夜間、ブランドさんと家族の方はこの家の外に避難して頂きたいと思います。その間、私達が常に屋敷の警備に入りますが、一応ガーネットは偽物にすり替えておきましょう。本物はブランドさんに常に携帯して頂けば宜しいでしょうか?」 大まかな方針を、蒼月を抱きしめる涼風・アンジェリカ(a22292)が次々にブランドに説明する。目を白黒させていたブランドも、ようやく頭が回るようになってきたのか、冒険者達の提案に一つ一つ頷いたり、意見を述べたりしている。 (「ブランド氏の説得は上手くいきそうだな。後は家人の護衛と、今後の体制の打ち合わせ、それからしましま団の撹乱をどうにかしなければ、か」) やはりポイントはしましま団がどう動くか、か……と静かな大地・ソイル(a27309)はふむと小さく呟いた。
● 今後の方針についての細かい相談は仲間に任せ、赤雷・ハロルド(a12289)、天藍顔色閃耀・リオネル(a12301)、イクス、ヨハンの四人は外に出た。ちょっと厄介なもう一方の当事者、しましま団を今のうちに牽制しておくべきだと考えたからだ。計画書を持ってきたという彼の少年にも、色々と聞きたい事がある。 さて、何処に行けばしましま団と遭遇できるかなと辺りを見回したところで、黄色と緑色のカエルが家の影から顔を覗かせた。 「あ、ハロルドさんにリオネルさん! えと、それから……」 「イクスです」 「私はヨハンです」 「イクスさんにヨハンさんですか。この間は有難うございました」 と黄カエルの子がぺこりと頭を下げた。 「お、シャムロックにクラナッハか。今日は二人だけか?」 ハロルドの問いに、「そうだぜ」と緑カエルの少年がぶっきらぼうに答える。 「他の皆はトゥアレグの指示で、他の商人を見張っているんだ。だから、心配しなくてもこっちには来ないと思うぜ」 「あはは。まるで僕達が、しましま団に仕事の邪魔をされるとでも思っているかのような口調だね。……来ないに越した事はないんだけど」 冒険者達の懸念を見透かしたようなクラナッハの発言に、リオネルが苦笑を漏らした。 「でも……そうだな。もし、彼らが何かをやりたいって言い出したら、ブランドさんとその家族の護衛をお願いしたいって僕らが言っていたと伝えてくれるかな? 凄く重要な役割だからね」 わかった、と二人の少年は揃って頷いた。 リオネルと少年達の話が一段落付いたのを見て、イクスが口を開いた。 「シャムロック君、君が計画書を写したそうだけど、どうやって写したのか教えてくれませんか?」 少年達が顔を見合わせた。ハロルドが続いてシャムロックに問い掛ける。 「メモを何処で手に入れたのか、それから写し切れなかった情報もあれば教えて欲しいな」 「特に、計画の実行日が記されていなかったか、その辺りが知りたいですね」 ヨハンも気になっていた点を問う。 「写し切れなかった事は特にないですけど……」 シャムロックが三人の問いに答えるが、少々歯切れが悪い。メモを何処でどうやって手に入れたのか、この問いに答えたくないようだ。 「あのメモはな、トゥアレグの部屋にあったんだ」 ふんと鼻を鳴らしたクラナッハが、シャムロックの代わりに答える。何か言いたげなシャムロックの視線を黙殺し、クラナッハが続ける。 「勝手にメモを持ち出すとばれるから写したってわけだ。……当然トゥアレグは、次に狙われるのがブランドの所だって知っているはずなんだ」 「でも別の家を見張ってるんだよな、そのトゥアレグの指示で」 ハロルドの念押しにクラナッハが頷いた。 「ところで、トゥアレグとはどちら様でしょうか?」 イクスがふと首を傾げ、少年らに尋ねる。クラナッハはふいとそっぽを向き、こう答えた。 「しましま団……俺達の実質的なリーダーだ。青カエルの人だぜ」
● 窃盗犯は計画書通り、夜間に現れると踏んだ冒険者達は、毎晩ブランド氏宅に張り込むこととなった。 「自警団の方にも話をしてきました。ブランドさんの家の警備は私達冒険者に任せて、自警団の人達は街中の見回りをして下さるそうです」 とは、アンジェリカの談。そして、冒険者達が最も警戒していた伏兵であるしましま団は、最初の夜は姿を現さなかった。先のクラナッハの話からすると、これからも事件が起こるまで姿は見せなさそうな気配だ。 警備に当たるようになってから二日目の夜のこと―― (「今日もしましま団は姿を見せなさそうだな……無駄な警戒をしなくて済むのは助かるが……ん?」) ブランド邸の正面口向かって左側の物陰に潜み、真っ暗闇に目を凝らしていたソイルの視界に何かが映った。ぼんやりと、人の大人程度の物体が四つ、ひたひたとこちらに向かって歩いてくる。 「(どうしました?)」 ヨハンがソイルに囁いた。 「(何者かが来た、人数は多分四人だ。現状ではそれ以上の事はわからない)」 ワスプが小さく頷いた。 「(それで十分だ)」 反対側の物陰には、ユウノとアンジェリカが隠れている。ユウノの目にも、ソイルが捕らえた人影は映っているはずだ。 さて、ソイルが見つけた四人組は、のこのことブランド邸の正面口までやってきた。 「よーし、計画に移すぞ。派手にやれ!」 野太い号令が飛ぶと、三人が「了・解!」と叫び、正面のドアに蹴りをぶちかました。三つの靴底が木製の扉を蹴り飛ばす鈍い音が、静かな夜の街に響く。扉は……依然としてそこに立ちはだかっている。 「……あ、開きません!」 「何ィ、くそ……引いてみろ。押してダメなら引けって言うだろ!」 再び野太い号令が飛ぶと、三人は再び「了・解!」と叫び、正面のドアに手を掛け、力の限り引いた。ドアは勢いよく開き、三人は尻餅をついた。 「ようし! ここいらで陽動作戦と行くぜ! さぁ、騒げ! 騒げぇ!」 三度目の野太い号令が飛ぶと、三人は三度目の「了・解!」を叫び、どたんばたん騒ぎ始めた。 (「あいつらアホか? ……まぁ丁度いいか」) 物陰から様子を窺っていたワスプ、内心アホ過ぎる四人組に眩暈を覚えつつ、手を挙げ仲間に合図を送る。合図を受け、ユウノとヨハンがさっと物陰から飛び出し、舞飛ぶ胡蝶を繰り出した。 「うぉっ、何だこの光は!」 「はわわ〜……はうっ! こんな近くに敵が!?」 光る無数の蝶の群れに包まれた四人は一瞬呆けた顔を作り、直後互いの頬を殴り始めた。
館の二階では、施錠されていない窓から三人の男が館内部への侵入を果たしていた。 「本当に鍵が掛かってねぇとはな、計画書サマサマだ」 「ああ、さっさと仕事を済ませてずらかろうぜ」 余裕綽々たる態度で暗い部屋の中を通り過ぎる三人の闖入者。彼らが部屋を完全に後にしたのを確認すると、闇の中からリコが姿を現した。 (「本当に予定通りの手口でやってくるとは、色々な意味で強敵ですね」) 呆れ混じりの溜息を吐きつつ、リコは窓にシャドウロックを掛け、男達の後を追った。
裏口でも、リオネルが扉にシャドウロックを掛けていた。裏口からは男が一人、館の中へ入っていった。 (「ガーネットを手にした盗賊は、ここから逃げて行くんだったね。逃がさないように気をつけないと」) そしてリオネルは再び、闇の中に身を潜める。
二階から侵入した三人が、階段を下りてきた。闖入者達は落ち着かない様子で辺りの様子を窺いながら、階段下の壁を調べ始めた。正面玄関からは、誰が何をやっているのかよくわからない喚声が聞こえてくる。少し遅れて、薄暗い通路を通って一人の男がやってきた。方向からすると、この男は裏口からやってきたようだ。彼は階段下の壁をまさぐる仲間の中には入らず、通路で待機している。 (「来たな、奴さんら。正面、二階、裏口……全員揃ったか」) ハロルドは闇に潜んだまま、飛び出す機会を窺う。 間もなく、三人の男の一人が壁板の一つを押した。するとカタンと小さな悲鳴と共に、壁の一部が開いた。その男は素早く中に手を突っ込み、真っ赤な大きな宝石を掴み出した。それは事前に偽物とすり返られた赤いガラス球なのだが、闖入者は鬼の首でも取ったかの如く、拳を突き上げた。 「見つけた、ずらかるぜ!」 「そうはさせません」 すかさずハイドインシャドウを解き、姿を現したイクスが眠りの歌を歌う。ハロルドも三人を取り押さえるべく、闇から飛び出した。ようやく待ち伏せされていた事に気がついた闖入者は、手にしたガーネット(偽)を通路で待機していた仲間に向かって投げた。 「後は任せた! うぅ、眠……」 運良く眠りの歌に掛からなかった賊の一人が、慌てて階段を駆け上る。 「逃がすか!」 後を追うために床を蹴ったハロルドの前に、蜘蛛の糸で絡め捕られた賊が転がり落ちてきた。ハロルドが顔を上げると、階段の上でリコがロープを手に、転がり落ちた盗賊を見下ろしている。 「助かったぜ、リコ」 リコは一つ頷くと、階段を下りてきた。 「さぁ、今のうちにロープで縛り上げましょう」
ガーネット(偽)を手に裏口に掛け戻ってきた闖入者も、待ち構えていたリオネルの放った蜘蛛糸に絡め捕られ、床の上にばったりと倒れていた。その手からガーネット(偽)が転がり落ちる。 「うぅ、くそ……何で冒険者がいるんだ?」 リオネルが転がり落ちたガーネット(偽)を拾い上げた。 「残念だったね」
屋内組が四人の賊をロープで縛り上げ、正面口に戻ってくる。そこでも既に決着はついており、土塊の下僕達が青痣だらけの顔をした盗賊をロープで縛ろうと、悪戦苦闘しているところだった。 「あ、お帰りなサイ〜。その様子だと、上手くいったみたいデスね〜」 最初に気付いたユウノが、賊を連れた四人に手を振った。 「館内部では四人の賊を捕らえましたが、それで人数は合いますか?」 リコがワスプに目を向ける。 「ああ、盗賊達は全部で八人だと聞き出した。こちらで四人抑えたから、これで問題はない。こいつらは自警団に引き渡すかな」 ワスプが捕らえた盗賊達に目をやる。彼らは口をヘの字に曲げ、しょんぼりと肩を落としていた。……元々、バリバリと盗賊業に励むような性質ではなかったのかもしれない。 これで街の治安も少しは良くなりますね、とアンジェリカが笑みを浮かべる。ふと、何かを思いついたのか、「そうです!」と声を上げ、仲間を見回した。 「計画書を持ち込んだのがしましまさん達だという話、ブランドさんに伝えておきませんか? 結果よければ、ではありませんが、盗賊を捕まえる事が出来たのはしましまさん達のお陰ですし」 「そうデスね〜。やっぱりちゃんと伝えまショウ〜」 ユウノがアンジェリカの提案に賛成する。 「ともあれ、無事に終わってくれてよかったよ。しましま団の撹乱もなくて何よりだった」 ソイルは靴底の跡が残る扉を見遣りつつ、無事に事件の解決を迎えた事に安堵の溜息を吐いたのだった。

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参加者:9人
作成日:2005/12/06
得票数:冒険活劇7
ほのぼの8
コメディ1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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