超がつくほど忘年会



<オープニング>


●速攻! 年忘れ
 年の瀬も押し迫る十二月。
 この季節は、一年の苦労を労う意味でも、多くのコミュニティにおいて年忘れの儀としての宴会が行われる事が一般的であった。
「むむむむむ……」
 と、言う訳で。
 ヒトの霊査士・フィオナ(a90255)は、酒場のカウンターの中で唸っていた。
「……今度は、どうした。びしょーじょ霊査士」
 そう呼べ、と強制されている辺り、問い掛ける冒険者の声には一層やる気が無い。
「むむむむむむ!」
「……はぁ」
 溜息を吐く冒険者。
 いっそ、野生動物ならば分かり易かろうに。変わり易い天気のようにピーカンだったり、通り雨だったり。霧が立ち込めてみたり、風が吹き荒れてみたり。
 ……往々にして当人より、周囲に甚大な影響を及ぼすお騒がせ霊査士の言動は一定しないのだ。
「……アタシは、超疲れました」
「はい?」
「ですからー、アタシは今年超疲れたと言ったんです!」
「……で?」
「ですからー、ぼーねんかいをしましょう」
 ……お約束であった。
「早くないか?」
「どうせフォーナが近付けばカップルのあんちくしょー共は、そっちにかかりきりでアタシなんざ構ってくれないンですよ!
 そうです、そうに決まってます!
 かくなる上は今のうちに『美少女霊査士・フィオナたん萌え萌えお疲れ様パーティー』を開催するしかないのですよ! この際!」
「おい、コラ。待てや」
 既にそれは、忘年会ではないだろう。

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参加者
NPC:ピーカン霊査士・フィオナ(a90255)



<リプレイ>

●師走恒例
 貸し切られた店に、次々と冒険者達が入っていく。
 フィオナによる忘年会――
「はーい、軽いおつまみにパイは如何かしらね♪
 今の旬なら、アケビに梨、松の実ね♪」
 ――その会場になった店の外には、屋台。元気の良いイツキの声が響いていた。
「口直しに買っていかないと、後悔するんだから」
 応。それが、フィオナ・クオリティ。
 元来――呑んで騒ぐに理由は要らぬ。
 経済的な意味、時間的な余裕、そして何らかの口実――それさえ揃えば、場所も時も選ぶまい。
 選ぶまいが、一年で一番大手を振ってそれを叶えられるのが、やはり年の瀬と新年であろう。
「忘年会! パーティー! となればやっぱたくさんの料理だよねっ!食べるぞー!」
「フォン様、食べ過ぎには注意ですの」
 ……それとは、余り関係のない人達も居るが。
(「今日も、フォン様と仲良く楽しく過ごしますの!」)
 メラメラと乙女の炎が燃え盛る。
 尤も、リュリュナの場合は特にこれといった他意は無いのだが――
「思ったより集まってるみたいだな」
 シエンが、足を踏み入れた座敷の中を見渡す。
 席の埋まりは未だ七割程、しかし既に二十以上の数を数える冒険者達は、用意された席に着き――宴の始まりを待っていた。
「……人の話を聞かない辺り、やっぱりフィオナは大物なのかなぁ。
 その癖、これだけのヒトを集める辺り、やっぱり大物なのかなぁ」
 リセンクがしみじみと呟く。
「素っ頓狂な時期にパー券握って、『捌き切るまでおうちに帰れない』とか抜かしてる冒険者が居るから、何処のマッチ売りだよと思えば、フィオナの忘年会か……納得」
 カルアの言葉通り、その陰に『うら、シャテーの負けドッグ! キリキリパー券さばくですよー!』等とこき使われた誰かの苦労が偲ばれるのは、言うに及ばないのだが。
「本日は、『美少女霊査士・フィオナたん萌え萌えお疲れ様パーティー』に御出席下さり、ありがとうですよー!」
「……『萌え萌え』っつーか……むしろ『喪え喪え』って気がするんだが」
 大声で、趣旨と違うパーティ名を喧伝する霊査士を見てのエイト、
「食うよ? 食いますが何か? さぁ、作れってんだこんちくしょー」
 蒼く閃く負けドッグ、
「今年のヨゴレは今年のう・ち・に★」
 何かぶっ壊れてるスィーニー然り。
「超絶美少女フィオナたんにお任せっすよー」
「あら、フィオナさん、なんで手にリボンなんか結んでるの?」
「にょおおおおおおお……!」
「ごめんな、ホントごめんな……!」
 からかうセレアに、心底すまなさそうにフォークス。
 それは好意なのか、好奇心なのか、冒険心なのか何なのか。
 確かに「アレ」の放つ「変な中毒性」にヤられている冒険者達は少なくは無いようであった。
「で、愛憎エプロンの会場はここですか?」
 違うってば、グレイ君。

●でも、愛憎のエプロン(結局)
「乾杯っすよー!」
 用意された席は全て埋まり――宴は、高らかな声と共に始まっていた。
 テメエも飲み食いする事が決まっている上に、大人数である。真面目にやればそれなりの事務能力を持っているのか、フィオナの幹事っぷりはそう悪いものでは無かったらしい。
 用意された料理に飲み物は、予算抑え目の割には中々ツボを抑えていた。
「今年一年、お疲れ様でした。あ、でも未成年のお酒は駄目ですよ」
 テルミエールが、席を回ってお酌をしていく。
「先日は、どうもでした。
 私もお爺さんには少し思いいれがあって――」
 ティトレットが、フィオナに軽く頭を下げる。
「にょおお」
「一年間お疲れ様でした。
 来年も、一層美人さんに元気に素敵にごーいんぐマイウェイなのですよー♪」
「おお、いい心がけなのですよ。愛いヤツなのですよ」
 先日の憂いは既に何処にも無かったが、フィオナは少し嬉しそうであった。
 そうして、暫く。
 日々の疲れや不満をこそげ落とすように冒険者達は歓談し、グラスを傾ける。
「にょおお!」
「ふ、余興はまだかな?」
 深手を負ってる癖に根性のあるヤツである。
 掴まされたパー券の分楽しみ倒してやる、とばかりにフィオナを乾杯責めにしていたショウが呟く。
 そう、男と生まれこの霊査士主催のモノに参加したからには……挑むしか無いではないか。(暴論)
 参加者の相当数がアイコンタクトで頷き合う。
 それは、「水くせぇ。一人じゃ死なせないぜ★」ってな具合の微妙に暑苦しい男達の友情の迸りであった。
 一同の声無き合意を受け、ロックがやおら高らかに宣言する。
「さあ、やって参りました! 霊査士フィオナの愛憎エプロンin忘年会!」
 即ち、恐怖の「余興」の開幕を。
「本日、帝王に挑むは完食された前回の雪辱を晴らすか、マーダーシェフ・ラビリス!」
「ふふふ、今回はあんな胃腸まで筋肉みたいな奴居ないし、どちらが手料理で数多く倒したかで勝負よ!」
「おおっと、大会の趣旨は兎も角、料理の趣旨を完膚なきまでに勘違いしている、ラビリス選手!
 そこんとこ、どーですか? 解説のベージュさん!」
「そーですねー」
 テンションのおかしいロックのグラスには烏龍茶。
 茶で酔うのですか、君は。
「厨房の良心・アルシア!」
「頑張りますですよ〜♪」
 持ち前のドジも料理には発揮されない、彼女は安牌であった。
「同じく、帝王に挑みし小さな勇者アスト!」
「フィオナが萌えかどうかに関しては、敢えてノーコメントで行こうと思う」
 正直なアストであった。
「ゲテモノスープのエイト!」
「見た目は酷いかもしれんが味はいけるぞ? 栄養もある。あと薬膳と言え!」
「実力には定評! カレーは御馳走様でしたな、サクヤ!」
「お雑煮を作って皆さんにお出ししようと思いますぅ」
「期待の新星、料理少年レイナート!」
「ま、負けないよっ♪」
「大丈夫です、アレのには生ゴミでも勝てます」
 レイナートに言うベージュの目は割と据わっていた。
 彼女の近くには空のボトルが、既に二本……
「決戦の火蓋が今、落ちる。クッキングバトルスタート――って、あれ?」
「えー? 面倒くせーですよー」
 フィオナはだらだらと寝転がったまま、ぐでぐでと焼き鳥を摘んでいた。
「アタシも暇じゃねーですよー」
 ゴロゴロぐでぐでダラダラ……
「あー、忙しー★」
 おい、コラ、テメエ。

●音舞
「フォン様、こちら美味しいですの。あーんです」
「むぐ、ありがとー♪ リュリュナー……むぐ!」
「ああ! フォンさん、そんなに慌てなくてもお代わりはたっぷりありますから〜」
 微笑ましい一団あり、
「ふむ、どうしてフィオナさんを癒していいかは分からないが……ゆっくりするのも悪くは無いな」
 今の所は、穏やかに宴を楽しんでいるガルスタあり、
「なぁ、ベージュ。あれを止める方法知らないのか? マブなんだろう?」
「誰と誰が?」
 結局ダラダラと厨房へ向かったフィオナに気を揉むカノン、零下のコメントで切り返すベージュあり。
 宴の時間はゆっくりと過ぎていく。



「お、お前等もイケる口だな」
 グラスをゆっくり傾けながらシエンが、
「べーやん、強いな」
 シュウが、時間を潰す。彼にしてみれば、それは執行猶予なのだが――
「や、たまにはこういうのもいいモンだよな?」
 シルヴァは、賑やかな宴会の様子に目を細めて言った。
「ええ、そうですね」
 その傍らには、依然結構なペースで杯を傾け続けるベージュの姿があった。
「シルヴァ殿」
「お、すまねぇ」
 注ぎつ、注がれつ……
 参加人数の割には、酒のいける口は多くは無い。
 面識のある一組が出来たは、僥倖か。
「お、見ろよ――」
 シルヴァの指した先では、次の余興が始まっていた。
「さて――」

 ――――♪

 フォークスのリュートに合わせて、フェリーシャが舞い、歌う。

 ――――♪

 天使の少女の歌声は、澄み渡り、その動きは羽のように柔らか。
 息の合ったそれは、やはり義理とはいえ兄妹ならではか。
「結構、やるじゃない」
 珍しく目を閉じたセレアが、夫の健闘に呟いた。
「そういう時間帯みたいだな」
 カノンが、よっと席を立つ。
「演奏頼めるか?」
「任せとけ……と、レイナート!」
 オカリナを手にしたユナンは、厨房から出てきたレイナートに声をかけた。
「お耳汚しかも知れませんがぁ」
 そこに同じく料理を終え、横笛を手にしたサクヤが加わる。
 三人はそれぞれの楽器を手にして、

 ――――♪

 ゆったりとしたカノンの演舞を盛り上げた。
 宴はたけなわ――
「あーれ・きゅいじーぬ!」
 ヤな感じのフィオナの声が響いたのは、その時だった。

●戦慄のアルパレスト
 恐怖の広がる向こう側と――
「うにゃ、ベージュさん、前の時の格好可愛かったのにな〜」
「……っ」
「ま、いいか。ベージュさん、シアちゃんの作ったコレ美味しいよっ」
「あ、ホントに……ん、サクヤ殿のも中々」
「自信作なのですよー♪」
「本当にぃ、美味しいですぅ」
 ――チトセ、ベージュ、アルシア、サクヤ――「食べられるモノにしか手を出さなかった」賢明なる彼女達は、ある種の好対照であったと言えようか。
 数メートルの距離を隔てて、そこには地獄があったのだから。



「だから、ゲテモノとか言うな食え!」
 健康にいい虫のスープを指してエキサイトするエイト、
「二人目よ! 私だって負けないわよ!」
 おたまを握ったままのラビリスが、きっとフィオナを睨む。
 彼女のマーダー料理は、合わせ技一本の如く、綺麗に二人目の冒険者を沈めていた。
 しかし、帝王の名を冠する美少女霊査士(自称)は怯まない。
「あ、これ! 美味しいっすねー♪」
「……」
 むしろ、彼女は自分の作った料理の起こした惨状を気にすら留めていなかった。
 アストやレイナートの作ったつまみを摘みつつ、けたけたと笑うばかり。
『チャレンジャーの名にかけてどんな料理でも完食してみせる!』
 ……ショウの言葉は、余りにも無知であった。
 既に彼女が大鍋を置いた卓の周囲には、口から液体を流して倒れ臥す彼が、
「食べる不協和音って、ふきょうわ、ふきょわ……」
「二度あることは……三度アール、超人ガッツで玉砕キュルルン」
「……嗚呼、赤い、なんて赤い夕陽だ……」
 我慢大会のノリで「ソレ」に挑んだ、愛しき蛮勇ノヴァーリスが、白目を向いて何かを呟くシュウが、スィーニーが。
「魂を凌駕とかそういうもんじゃね……ぇ……」
 指先を震わせ、
「だが、負ける訳には……」
 脂汗をかきながら、箸を睨みつけるウォルルオゥン(ノックアウトフラグテンパイ中)が、
「バッドステータス以上……とは、な……」
 注:多分、戦闘不能(X)。
 散々の対策虚しく散ったテンユウが。次々と倒れ、死屍累々とその体を横たえていた。
(「ま、ともあれ古人曰く。
 冒険者は挑戦する事に意義があり、何かを獲得してこその挑戦……だな……」)
 薄れ行く意識の中で、エルヴィンは心中呟く。
(「ふ、格好つけすぎたか。俺には帰る所があるんだ……と思えばきっと……もっと食べられ……」)
 意識、暗転。
「……なんか、銀食器の色がどす黒く変色してる。
 これもう料理じゃねぇ……料理と名を偽った、凶器だ……」
 カルアの言葉が、陰惨に響く。
 嗚呼、その一撃は力ある彼等すら打ち砕き……
「……駄目だっ!」
 堪えていたリセンクまでもが、白目を向き、不自然に崩れ落ちる。
 残ったのは、たったの一人――
「質問があります」
 ――そのグレイは、銀色のスプーンを握って自問する。
 それはまるで、魔性を秘めたループの呪い。
 今日も、かの料理は血に飢える。
「なぜ私はコレを持って料理の前にいるのでしょう?
 傍観で済ませるはずが、またいつの間にか食べようとしていますよ!?」
 赤い外套の紋章術士は、有り得ないロングレンジ攻撃に射抜かれたような顔をして、
「ぐはあ!」
 二度血に咽ぶ。
 ――誰かが、フィオナさんの料理は即死確定だと言っていたのに、それを忘れてこの始末です。



 閑話休題。
「なぁ、フィオナ。好きな相手にこう、直球でコクって上手くいっちゃう奴って羨ましいよなぁ? 
 アレックスとかエリザとか……!」
 レーヴェの拳が、どんと机を叩く。
「まったくですよー! アタシってば、霊査士なのに皆に率先して先駆けデスフォーナですよー!」
 酔っ払い二人は、くぴくぴとグラスを傾けながら意気投合を果たしていた。
「好きなやつ、いないの、フィオナ?
 ちょっといいなーってやつに、どう告白されたら嬉しい? 逆にどんな風に接してこられたらドン引き?」
「ロマンチックに迫られたら、らぶいずおけーですよー!
 ちょっと強引ならもう辛抱たまらんですよー!
 お願いだからヤらせて下さいって土下座されたら考えます――!」
 実は、より好みする癖に。
「呑んじゃ駄目だからね?」
 惨劇の場になった宴会場で、倒れた勇者達を介抱しながらイツキが溜息を吐く。
「ヒンコーホーセー、セーセキユーシュー、アイドル的存在のアタシに限って飲酒なんざせんですよー!
 態度が悪いとか怒られたとか、そんなもんきっと幻ですよー!」
 スレスレな叫びを吐き散らす一方で、フィオナは漸く倒れた冒険者達と料理に目を向けた。
「……そんなに不味いですかね。いっしょーけんめー作りましたのにっ」
 烏龍茶で酔っ払った(二人目)フィオナは、悲しそうに目を伏せる。
(「……う、凄いプレッシャーだ……」)
 食べるべきか、食べざるべきか、それが問題である。
 危険を察知する事に聡いフィンフは、それこそ脚本が一本書けそうな勢いで人生の岐路に立たされていた。
(「どうしよう……!」)
 惨状と、好意の間でフィンフは揺れる。揺れる。揺れる。

 ……もぐ。

 結果は、フィオナに傾いた。
「……うん、美味しいとは、口が裂けてもいわないけど……これが、フィオナさんの手料理なんだねぇ」
 或いはそれは愛の奇跡であろうか。
 些か引き攣ってはいるものの、フィンフは笑顔を彼女に向けていた。
「にょおお! フィンフ様はいいヤツですね。よっしゃ、アタシがちゅーしてやるですよ、ちゅー!」
 烏龍茶で酔っ払ったフィオナは、フィンフを抱き寄せようとするが――
「……あれ?」
 笑顔で硬直したまま、フィンフの身体が朽木のように後ろに倒れた。
「フィ、フィンフー!」
 響くのはアストの悲痛な叫び声。
「……」
「……………」
「大体やってらんねーですよー!」
 フィオナは、レーヴェに向き直って愚痴を再開する。
「無かった事」にされては、倒れた少年も浮かばれまいに。

●そして宴会は……
「……あれ?」
 リュウが目を覚ましたのは、夕闇に包まれた店外だった。
 フィオナの料理を口にしたまでは覚えていたが、その先の記憶が定かではない。
 ただ、喧騒は、まだ続いているようだった。
(「今年は、ホントに楽しかったよ。ありがとう。
 ――来年も色々あると思うけど。よろしくね!」)
 彼は、ゆっくりと店内に向かう。



 夜は、これから――宴も、やはり、これから。


マスター:YAMIDEITEI 紹介ページ
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