<リプレイ>
●特攻準備 「いたぞ。虎、獅子、黒豹。3体ゆっくり歩いてくる」 「3体とも口周りが真赤ですねぇ。これはやはり、食べたのでしょうか」 知識を渇望する者・エコーズ(a18675)、銅の交渉人・レイクス(a24991)の2人は遠眼鏡を覗き込み、道を闊歩する3体のモンスターの姿を捉えると、その様子を仲間達に連絡した。 「距離を詰めよう」 事前に補助アビリティを用いて準備するにしても、今の距離では遠すぎて、いざモンスターと切り結ぶ際には効果が切れてしまう。出来るだけ村から距離を離す為にも、出来るだけ走って距離を詰める。改めて距離を測りなおして準備に問題ない距離まで詰めると、各々の身に宿るアビリティの力を引き出して武器や術の力を引き出し、そして強固な衣を降ろしていく。 「……って何て格好してるんですかーっ!!?」 鎧聖降臨を施された仲間の格好を見て、旅人は焔をはらむ風と共に・セルシオ(a29537)が顔を真赤にした。背面に「三千上等」と書かれた特攻服姿になっていた為である。 「この方が気合が入って良いじゃないか」 何人かの仲間が自然にそれを選び、セルシオに言った。鎧聖降臨は被術者が鎧の形状を決める事ができる。この姿を拒否しようと思えば拒否できるのだが……。 (「「「着ろよ」」」) 誰とは言わないがそんな無言の圧力が発せられたのを受信し、セルシオも特攻服形状に鎧を変化させた。 「三千上等 夜・露・死・苦ッ!!!」 目尻に涙がにじんでいる。もしかするとこのメンバーには、影の力関係が存在しているのかもしれない。 「おっと、おいでなすったようだぜ」 「先ずの一撃……と、いざ」 古びた錆浅葱・プレスト(a17802)、量産型蜥蜴裏音・ジアド(a24688)が、敵影を確認すると、2人が夫々、身に纏った黒炎のオーラと同じ炎と、先端に炎が宿る赤く透き通ったをモンスター3体の真ん中辺りに向けて放った。赤と黒の2つの炎が中央で爆ぜ、3体は方々に飛びのき間隔を広げる。飛びのいた隙を見逃さず、冒険者達はモンスター達に切り込んだ。
●引きつける者 冒険者達はモンスター達がグドンを襲っている時に確認された戦闘手法から、3体それぞれの得手不得手を考え、8人の冒険者の傾向から、肉体に優れている虎、術が得意な獅子、弱点を的確に狙う黒豹の順番に倒すと決めていた。虎と黒豹が切り込んでくる為、黒豹が術士達に攻め入るのを防ぐ役目を、殺意のとんちに目覚めたっぽい・イッキュウ(a17887)が、毛針を飛ばしてくる獅子を牽制する役目を、ジアドが担う事になっていた。
「させぬわ! 悪しきものを清める、とんちの音撃を喰らえい!!」 托鉢僧のような姿をしたイッキュウが黒豹の前に立ちはだかり、りんを棒で叩いた。破壊の音が黒豹を打ち、その身を仰け反らせる。 邪魔をするイッキュウにモンスターが2本の太い髭を震わせ、大きくしならせて叩きつける。強化された小坊主服がある程度勢いを削いでくれるものの、髭が引かれる際にヤスリのようなそれがノコギリの刃のように彼の皮を裂き、傷つけた。 変幻自在に動く髭の攻撃を防ぐのは本来困難であったが、心技体共に修練を積んだ武道家にとって、そのような一種の惑わし攻撃は大きな効果をあげず、稀にではあるが完全に避けきる事もできた。 それでも大きな実力差ゆえに、ほぼ防戦状態となってはいるものの、自らの身を癒しつつ何とか隙を突いてりんを鳴らして黒豹モンスターを押し返す。術の能力はイッキュウに若干分があるようだ。 「何とか耐えてくれよ」 エコーズからも回復術の支援が飛び、時に防ぎきれない鋭い一撃が飛び危なくなった時も彼とイッキュウの2人の治療術で、イッキュウは懸命に耐えている。
業の刻印・ヴァイス(a06493)が虎の死角を取ろうと回り込みを試みるが、その様子は若干後方にいる獅子からは丸見えだった。獅子は鬣を逆立て、鋼の硬度をもってそれを周囲に飛ばした。 ヴァイスも獅子に見られるのは分かっており、獅子モンスターに盾をかざして毛針が急所に当たるのを防ぐ。効き目が芳しくないのを感じた獅子は、大きく息を吸い込むが、そこに矢が飛来してモンスターの動きを阻害する。ジアドが放ったホーミングアローだ。 「卑怯だと思うなよ、コッチも必死なんでな」 ジアドは獅子の術が当たらずこちらの弓で攻撃できる遠距離から攻めていた。獅子が反撃をしようにも、毛針を飛ばせる範囲に矢を射った冒険者はいない。更に軌道が曲がる矢で弱点を攻めるジアド。 だが、身を隠す所がほとんどない荒野。距離がいかに離れていようと、その居場所を探るのは容易く、そして皆が手一杯の為に、身を張って獅子をその場に押しとどめる者もおらず。獅子は虎や黒豹と戦っている冒険者達を無視してジアドを目指し駆けた。 思いもよらない獅子の行動にジアドは距離を離そうとするが、強力なモンスターと対する場合の孤立は敗北と敵の行方をくらます事となり、離脱は仲間への後ろからの攻撃を許す事になる。ジアドはひたすら矢を撃ち、全速力で駆け距離を詰めた獅子は、術に弱いリザードマンに対し、息を大きく吸い込んで口から炎を吐き付けた。
●戦う者 虎の熱く熱された爪を、煌めく剣閃・ランベルト(a26692)が盾で受け止めた。押し返すつもりで状態を屈み腰から力をいれる。受け止めた爪の熱が空気を介して伝わり、熱気に鎧の下が汗ばむ。虎はランベルトを上から押さえ込もうとするも、不自然な体勢の為に力が入らず、加えて横から撃たれたレイクスの飛燕刃に身体を貫かれ、飛びのいて距離を離した。 ヴァイスが貫き通す矢を生み出し、ダーツの如く投げつけて虎を刺す。毛皮をすり抜け直接身を刺すその痛みに、虎は猛狂いヴァイスに飛び掛るが、すかさずランベルトが割って入った。 「させませんよ!」 急ぎ割って入る事できちんと構えがとれず、金属鎧を爪が擦り、火花が飛び散り内側に熱を加える。顔をしかめるランベルトに、プレストが癒しの波動を放った。 「まずいです、ジアドさんが……」 最後の癒しの力を使い、プレストが肩で息をする。ジアドと獅子はまるで守りを捨てたかのような戦いとなっていた。身体を炎で打たれ白い鱗の方々を黒く焦がし、地に伏す。獅子の側もかなり傷を負っているが、怪我が何ともないかのように術の範囲まで詰め寄り、毛針を放つ。 急ぎ虎を片付けるべく、治療術をイッキュウに任せ、術士達も光弾や黒炎を虎に放つ。ランベルトが虎の攻撃を身を挺して防いでいる間に、他の者もそれぞれが持つ技で虎を攻め、後方からの毛針の雨に苛まれつつも虎に止めを刺した。
獅子は更に距離を縮め、一番近くにいる術士の元に迫る。そしてある程度体技にも自信があるのだろうか、ドレスを着てか弱そうなプレスト目掛け、その首筋に素早く牙を突きたてようとする。だが、後方から治療やブラックフレイムで戦っていたが、実は技に関して最高の素養と実力を持つ牙狩人であるプレスト。彼女は獅子の動きを見切り、必要最低限の動きで回避し、生臭い息を漂わせる眼前の獅子の顔を、冷やかに見つめる。 とはいえ、獅子が得意とする術に弱いのは、同じ得手不得手の傾向を持ったジアドと同じ。オブディシアンで作られた儀礼用長剣を、相手を斬りつけるべく構えるものの、攻め手に欠ける。 ふいに、プレストの視界に赤い飛沫が舞った。顔を上げると、ヴァイスが串刺しの名を持つ槍『ツェペシュ』を、犠牲者の血を啜るかのように、獅子の首にその穂先が埋め込んだのだ。獅子の目の焦点がプレストから合わなくなり、その身は糸が切れたかのように地面に崩れ落ちた。
その一方で、イッキュウは黒豹に髭の鞭で滅多打ちにされていた。仲間達に治癒の術をかけるべく、仲間の姿を正確に視認しようと動いた所を狙われたのだ。己を含め懸命に治療をするイッキュウ。彼が押し切られる寸前、イッキュウに迫る鞭に鋼糸が絡みつき、イッキュウが打たれるのを防ぐ。レイクスの鋼糸だ。 「お待たせしました!」 「もう少しゆるりとされてもよろしかったのですぞ?」 セルシオがイッキュウに声を掛け、その横に位置する。少し遅れてエコーズからのヒーリングウェーブが届き、体に走る新しい裂傷を塞いでいった。 もう一本の髭で鋼糸が断ち切られる寸前にレイクスは鋼糸を解き、手元に戻す。他の冒険者達も、黒豹を囲み武器を構えた。敷かれた包囲網の中、二方向から放たれた飛燕刃が黒豹に向かって飛ぶが、そのどちらもが素早く回避される。 「やはり黒豹を後にしておいて正解でしたねぇ」 技が得意な冒険者が多い為、同じく技が得意でぶつかれば互いに防戦となる黒豹を後回しにした判断は正しかっただろう。そして今繰り広げている戦いは、先の2体と比較して確かに長引いていた。 だが。 りんの音と光の弾が黒豹をうち、魔力が着実に黒豹の体力を奪っていく。 「この一撃で!」 ランベルトが裂帛の気合と共に剣匠ともいえる動きで剣を振るって黒豹を斬る。その圧倒的な剣技は黒豹に畏怖を与え、鞭を振るうのを止めさせる。 「これで終いです!」 セルシオの槍に、弾ける稲光が宿り、黒豹の首目掛けて振るった。槍は首下に当たってその部分の毛皮を焦がし、そのまま振り上げて黒豹の首を刎ねた。
●それが実情 「毎日、どこかの人里がこんな脅威い晒されているんですね……」 プレストが剣を鞘に収め、血飛沫を拭いながら言った。 今回は冒険者がたまたま訪れた事で、事なきに終わったが、誰にも知られずひっそりと町が一つ消滅する事がある。それが旧モンスター地域の実情なのだ。 「まだまだ此処での仕事は多そうだな」 ジアドがゆっくりと体を引き摺るようにして、仲間の元にきた。 「ジアド、大丈夫ですか?」 「ああ。戦いは出来ないが、歩く分には問題ない」 鱗の焦げ跡こそ痛々しいが、幸いにも骨や臓器に異常はないらしく、安全な場所で1〜2日休息を取れば戦える事だろう。 「さて、村に戻って、あの冒険商人に済んだ事を伝えますか」 ブンと槍を振るい、付着したモンスターの血を払ってセルシオが提案する。 「そうですねぇ。ついでにアフターサービスで次の村まで送り届けましょうか」 「賛成だ。サービスのチップで護衛の報酬でも貰えたらラッキーだしな」 「いやいや、そうがっつく事はありますまい。まあ寄進でしたらいつでも受け付けますが」 「もらえるとは限らないんですよ?」 「いや、貰ってみせるさ。基本別仕事だからな」 一同はたわいない話で盛り上がりながら、村への帰路を歩み始めるのだった。

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参加者:8人
作成日:2005/12/20
得票数:戦闘15
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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