ツキユー祭り



<オープニング>


 今だ必殺ツキユーファイヤー いいぞ頑張れエスカミーロ!
 エルメトラかしこみかしこみもうす ムーンワールド切り開け!
 明日はきっと雪が降るから 持病の古傷痛み出す
 だけど涙は見せないの 男の涙は心の汗
 トゥエンティフォーを超えたその先に 果て無き広がる房中術
 未だまだ見ぬ理想郷 心の汗を掻きまくれ!

(セリフ)
 ラウレック「今年のフォーナ感謝祭は中止になりましたー」
 フォーナ「ちょ、何わしの祭り中止させてんねん自分!」
 ラウレック「うっさいわ、なんでお前とザウスだけ祭られてんねん! 見てみぃ、ヴィアもジンツァーも隅っこで体育座りしていじけとるやないか!」
 フォーナ「そんなん勝手に祭りあげとる人間らに聞けや! 今年もフォーナ感謝祭はやりまくるでー!!」
 ヴィア「フォーナちゃんやめてぇな、うち、そんなフォーナちゃん見とぅない」
 フォーナ「じゃあかしいわ!」
(頬をはたく音)
 ヴィア「うぇ……うぇぇぇん、ひとりだけまつられるフォーナちゃんなんか、だいきらいや」

 神をも恐れぬツキユーエメラルド そこだふんばれエスカミーロ!
 …………


「……なによ、この歌」
 苦虫を噛み潰し終わって奥歯削ってます的な顔のハンナへ、ツキユーが自慢気に胸を張る。
「勿論今年のツキユー公式テーマソングです」
「アンタ、そのうち天罰くだるわよ」
「別に神様を侮辱している訳ではありませんよ。ただ、ツキユー祭りと同じ月に行われるフォーナ感謝祭への挑戦状なだけです」
 心外そうな顔をしてみせるツキユー。女神フォーナに張り合う時点でどうかしている。
「つーか、ツキユー祭りってなによ。初耳なんだけど」
 どうせロクなもんじゃないんだろーけど、そう付け足しつつ溜息をつくハンナ。
「去年は私が寝込んでてやってませんでしたからね。私の第一誕生日を祝うついでに、来年の公式テーマソングを作成するお祭りですよ」
 なんでもツキユーの説明によると、普通に酒場を貸しきってパーティーをするのだが、参加者には歌詞を1フレーズずつ持ち寄ってもらうという。
 ツキユーが持ち寄られた歌詞から素敵フレーズを組み合わせたり修正したり捏造したりして来年の公式テーマソングを作成するのだそうだ。
「ふむ、意外にちょっと面白そうね……私も暇つぶしに参加していい?」
「もちろんもちろん! 誰でもヤンキーゴーホームですよ!」
 誰でもウェルカムですよ、と言っているようだ。
「あー、めちゃくちゃ不安だわ……ホントに大丈夫かしら」
 ハンナは顔を俯かせ、自らの肩をハンマーでトントンと叩くのだった。

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参加者
NPC:千の悲しみを識る霊査士・ツキユー(a90076)



<リプレイ>

●入り待ち:有名人が仕事場に入るのを待つ事
 会場となる酒場へ向かうシェードは、その途中でハンナと出会った。
「おいーっす! アンタもツキユー祭りに?」
「こんにちは、ハンナさん。ええ、そうですよ」
 シェードの手に引かれているのは酒樽や食物を載せた台車。彼は呑んべえや食いしん坊の為に酒と食事を調達してきてくれたのだ。
「大変そうねぇ、私も引くの手伝うわよ」
「すいません、じゃあお手伝いお願いしますね」
 二人は台車を引きながら、角をまがる。
 そこで二人は、信じられない光景を見た。

「よいしょ、よいしょ……これで花輪の完成です!」
「素晴らしいですね……でも、菊の花で良かったのでしょうか?」
「ツキユーさんは菊の花が好きだと聞いた気もしますよ」
「ツキユーさんがツキユーさんを……なんて、ああもうどうしましょう……想像すると発汗が……」
「しまった、ツキユーさんへのぷれぜんとを失念していた。一体どのようなものを贈ればツキユーさんは喜んで貰えるだろうか? いや、よしんば好みの物を贈ったとしても俺では……」
 順番に花輪を設置したエルシー、土塊の下僕にツキユーの扮装をさせているリュイシン、そわそわして落ち着かない様子のソナ、プレゼント『ツキユー型手作りチョコレートケーキ1/16スケール』を抱いたまま目をグルグル回しているナノカ、ぶつぶつと危ない独り言を繰り返しているクオーツ。
 ツキユーファンクラブの面々である。
「何あれ……もしかしなくても、ツキユーの入り待ちよね?」
 こめかみから一筋汗を流すハンナの後ろから掛かる声。
「全く、随分と偉くなったもんだなぁ」
 いつの間にかワスプが立っていた。ワスプは頭の後ろで両手を組み、嘆息する。
「ワスプさん、丁度良い所に。これを運ぶのを手伝って―――」
 シェードの声は黄色い歓声に掻き消された。
「「「きゃーっ! ツキユーさぁーん!!」」」
 湧き上がるファンクラブの面々。本日の主役のご登場らしい。
「やあ良い子のみんな、しっかり冒険してますか? 冒険は1日1時間ですよ」
 テキトーな事を言いながらテキトーに歩いてきたツキユー。ファン達はそんなツキユーを取り囲む。
「「「愛のシャドウロック☆」」」
「まほかんたー」
「きゃーっ! シャドウロックを返されちゃった!!」
「ああもう……どうしましょう……」
 卒倒する者あり、骨抜きにされたのか赤面してうずくまる者(ただし男)あり、大人気っぽい。
「なーんか、目をつけてた有名人がメジャーになっちゃった瞬間みたいよねー」
 ハンナ達の後ろからやってきたのはミィミーだ。酒場前の喧騒を見て、自分達と明らかに違う温度差を感じ取る。
「あはは、まぁなんというか元気でなによりです」
 シェードは苦笑いを浮かべるしかない。
「いつの間にかファンクラブまで出来てるんだもんねー、世界ももう長くないわ……」
 言うとハンナは大きな溜息をつく。こんな未来になるのなら、同盟滅んどけば良かったのにと呟いていた。
「とりあえず、ここじゃ近所迷惑になりますし酒場に入りましょうよ……あれ」
 ファンクラブの面々へ説いていたツキユーはハンナ達に気付き、手を振った。
「やあみなさん、こんにちはー。本日はよろしくお願いしますよ〜」
 妙に馬鹿丁寧な挨拶が、ツキユーらしかった。

●ツキユー君の回転天国スピード地獄
「では、前回に引き続き僭越ながら私、アリスが乾杯の音頭を……ってまたこのパターンかい!!」
「「「かんぱーい!!」」」
 司会アリスの音頭で始まった『ツキユー祭り』ことお誕生日会。

「な、なんですかこの革のベルトは! 私の力じゃどうにも出来ないじゃないですか!」
 ツキユーは今年も拘束されていました。
「ふっふっふ、この『ローリングクレイドル』は上下左右前後、自在に回転させることが……」
 奇妙な椅子へ縛り付けられたツキユーに説明してやる発明者パルミス。
 専門的すぎて説明はよくわからないが、とにかく凄い回るらしい。
「年の数だけくるくる回すなんて、こちらにはおかしな風習があるんだな!」
 誰かの与太話を真に受けたメルバルが、ツキユーの頭に羽ペンを挿す。
「これはオレ様の始めての生え変わりのときに抜けた羽で作った特製の物だ。多分」
「そこから記憶に不安ですか貴方……とにかくありがとうございます、この羽ペンで一杯依頼書を書きますよ。っていうか拘束を解いてくださいよ」
「ツキユーさんは全ての神をも恐れぬ捨て身でブレイヴな所業が盛りだくさんだからねぇ……」
 腕組みし、首を斜めに傾けるクレイ。
「な、何が言いたいんですか、クレイさん」
「んー、善悪の判断は自己責任だと思うから敢えて省くわ」
 言うだけ言って無慈悲に会場の設置やら料理の配膳に戻っていく。
「助けてください! 誰か助けてください!!」
「もうそのネタは古いですよ。今は『30代ど真ん中を突っ走る霊査士・ツキユー・エスカミーロ、出てこいや!』、コレですよ、さあどうぞ」
「いやマイトさん、ネタじゃないんですけど……」
マイトと入れ替わりでアムリタがやってくる。
「まあまあ。幸運になる祈祷をしてあげるわね。……よし。これであんたの人生幸多くなると思う」
「いや、まずこの場面を切り抜けないと幸が多くないような……」
「最後にこの水晶を肌身離さず持ち歩くこと。それじゃ」
 聞く耳持たずで水晶をツキユーに手渡し、去っていくアムリタ。
 誰か助けてくれる人はいないかと、ツキユーは唯一動く首を巡らす。

「もきゅもきゅ……幸せでちゅ〜、いくらでもたべれちゃいまちゅ!」
「お料理は一杯ありますからね、ゆっくり食べてくださいね♪」
 スィーアは育ち盛りなパステルにせっせと料理を運んでいる。

「生きる為に欠かせない飲食物を、粗末に扱うもんじゃない。それに冒険者たるもの、健康管理を怠るべからず、だ」
「俺は一気食いなんかしてないなぁ〜ん。これは漢の食事なんだなぁ〜ん」
 カンティアーモはバリバリへ食べ物の有り難みを説いている。

「やぁ、ハーゼ殿奇遇ですねぇ、こんな所でお会いするとは」
「おや、タケルじゃないか。実は以前からツキユーは気になっててな」
「ハーゼさん、世間話は後ですよ! 折角今日はツキユーさん32歳の誕生日を祝う為に、超高級酒を用意してきたんですから、飲んでもらわないと!」
「親分、その酒、色変わってる……」
「あとツキユー殿はまだ三十歳ですよ……」
 タケルはハーゼやカロアに捕まっている。

「お友達募集中ですー♪」
 リリカは友達を募集している、そもそも助ける気も無さそうだ。

「いいぞー、やれやれー!」
 外野で飯をつまみながら、野次るユーセシル。つまり、ツキユーに逃げ場無し。
「ツキユーさんお誕生日おめでとう〜〜」
 そんなツキユーの視界に飛び込んでくる2つの肉の塊。それは飛びついたフルルの胸だった。
「ツキユーさん弄り放題〜♪」
「むが、フルルさ……息、出来……むがー」
 ツキユーの顔がフルルの胸にうずもれていく。
「あれは、俗に言う幸せ固めの派生技ですよ。洗脳力はかなり高いです」
 冷静に解説するマイト。
「うむ、羨ましいのう……じゅる」
 その横で持参した山吹色に着色されたお菓子を摘んでいるスケベエ。どんな菓子かは謎である。
「あの、それ以上やるとツキユーさんの中身が大変な事に……」
 ツキユーが窒息しかけたところに、フェミルダが救いの手を差し伸べる。
「あ、そうだよね。これから回転させるんだもん、死んじゃったら大変だよね」
 フルルがツキユーから身を離す。蒸気した頬に大きく空気を詰め込みながら、ツキユーはフェミルダに礼を述べようとする。
「ありがとうフェミルダさん、貴女のお陰で助か―――」
「そうですよ、回転させるんですから。無理には止めませんけど、死なない程度にしてあげてくださいね」
「―――ってないじゃないですかうわーん」
 ごめんなさいね、と目配せするフェミルダ。ツキユーはがっくりと動かない肩を落とした。
「さて、そろそろ回転させるか」
 ウェイは土塊の下僕を作り出し、椅子の手すりを持たせる。
「つきっち、覚悟だーい♪」
 リヴァが反対側の手すりを持ち、思い切り回した。
 世界が、回る。
「きゃあぁぁあ、知らん人に回されたぁぁあ〜、有名税ですねぇぇええ〜」
 悲鳴を上げながらクルクルと高速回転を始めるツキユー。残響音が鬱陶しい。
「いやぁ、目出度いね」
「本当ね〜。誕生日って誰のでも目出度いわよね」
 回されるツキユーを生暖かい笑顔で見守るエルドとミィミー。
「なんだかんだで皆も楽しんでいるようだし、何よりだ―――」
 行儀良く食事に手をつけていたエスカミーリョの視線が、空中で止まる。
「危ない! あの椅子、ヒビが入ってるぞ!!」
 回転高速椅子の根元、確かにヒビが入っていた。
「あらら〜、長時間使用には耐えられなかったみたいですね〜」
 のほほんとしているパルミス。ハンナがニヤリと笑う。
「私が椅子製作手伝った時、自然に優しいご飯粒で接着したせいかしら」
「なにエコを考えてるんですかぁぁぁぁあああ!!!」
 ツキユーがそう叫んだ瞬間、根元がポキッと折れた。椅子ごと宙へ放り出されるツキユー。
「やっぱりやりやがったか!」
 不測の事態を予期していたワスプが粘り蜘蛛糸を放ち、見事椅子へと命中させる。
 蜘蛛糸でワスプとつながった椅子はピンと張り詰めた後、ほぼ垂直に落下していった。板床に激突する。
「……遅かったなぁ、飛び出す前に気付いて固定できれば良かったんだが」
 自称同盟最後の良心、ワスプは未成年の飲酒を監視していた為に反応が遅れたのだ。
 それでも、ワスプの蜘蛛糸が無ければ椅子は酒場の壁を突き破って飛んでいっただろう。
「そういえばさっき、祈祷の手順間違った。あれじゃ不幸を呼ぶ呪いだよ……まぁ、ツキユーだしいいか」
 アムリタの呟きは気絶したツキユーの耳には届かなかった。

●ツキユーテーマソング2006発表
「……やっぱり酷い目に遭いましたよ」
 気絶から回復したツキユーは、咳払いひとつで気を取り直した。
「それでは、メインイベント、ツキユーテーマソング2006の発表です!」
 アリスの進行で、ツキユーは自作した歌詞カードを粗品と共に1枚1枚参加者へと手渡していく。
「……歌えばいいのか?」
 首を捻るウェイに頷いてみせるツキユー。
「そうですよ〜。伴奏はニューラさん、お願いしますね」
 伴奏を担当するのはチャレンジャーのニューラ。
「ツキユーはちゃんと踊るのよ〜」
 振り付け担当はミィミー、ツキユーだけでは不安なのでマイトとルシアも舞を担当する。
「みんな準備はOK?」
 アリスが尋ねると、肯定の歓声が返ってくる。
「それじゃあ、ミュージック、スタート!!」
 ニューラの手が、琴の弦をかき鳴らし始める。


『ツキユーテーマソング2006』

1番
青い鳥が 星の欠片を一滴落として 笑って消えた……
轟く雷 ふぶく雪 貴方と私を隔てる季節
その黒き瞳は 闇を拓き 真実に至る
「こう見えて霊査はマトモだったりするんだよもん」
いっけー ぼくらのツキユー ご飯パワー炸裂だ(ツキユーさんはすばらしい!)

ツキユー 好き! YOU アイラブユー ツキユー 突き! YOU 突きYou Be※

『んーふふー、ふぅーん、はぁ〜ん♪ ん、ふはぁー、ふーん♪』(間奏コーラス)

2番
痛かったら手を上げてと言うけど
手を上げたら 我慢しろって言うのが大人
砂漠にでかい字で『さみしー』と書く
「腹が減ったら霊査もできぬ」
間違えて食べた殺鼠剤 世界が揺れ暗転する意識(あきらめたら絶滅しちゃう〜♪)
※繰り返し

「このツキユー……天に帰るのに人の手は借りぬわー!」(間奏セリフ)

3番
おひさまぽかぽか ひなたでぐっすり
わ・た・しの笑顔は Deep Impact 貴方の心に焼き付ける
黒い瞳がお前を見ているぞ 恋が待っているぞ
「君のハートをキャッチ・アンド・リリース!」
常識覆す いけいけボクらの超霊査士♪(おもいこみでもへいきだぞー)
※繰り返し

「キャッシュレスラブレスでもアツイハートはあるさ 三十路からが漢(ヲトコ)の見せ場だぜ!」(間奏セリフ)

4番
負ける事は許されぬ 我ら冒険者何度でも
勝つまで戦い続けろ! 勇気と夢と勘違い
三つの力を翼に変えて 太陽目指し羽ばたいてゆけ
「素敵で無敵? のツキユーだぁい!」
いまだ必殺 大回転えびぞりハイジャンプ霊査!(涼しい目元がステキだね☆)
※繰り返し
いつか一つだった足音も重なり歌いだすだろう ツキユー音頭
※繰り返し

「ツキユー祭りは雪のフォーナ感謝祭を応援しています!」


マスター:蘇我県 紹介ページ
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参加者:33人
作成日:2005/12/23
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月下に咲く花・エルシー(a10291)  2010年06月29日 21時  通報
……ツキユー祭りが、公式的なお祭りとして認められたらよかったのに……
というのは冗談で(ぉ、楽しかったですよ。