<リプレイ>
●Tour les deux 硝子に囲まれた美しいダンスホールが今宵の舞台。 見上げれば降り注ぐかの如く輝き続ける綺羅星の群れ、白い月が煌々と照り、夜を穏やかに照らし上げる。 薄紅色の衣装は女性らしい柔らかな輪郭を際立てた。色を揃えたヒールを見下ろし、少しばかり覚束無い足取りで続くヴィラ。ピンクの香りが鼻先を掠め、クリストは小さく笑った。耳元にきらりと瞬く黒い飾り。 「此処だけの話。誘われた後に一人で練習したのだよ?」 囁きながら彼女の手を取り、舞台の中央へ歩み出る。 詰めた襟元の金刺繍に手で触れて、ムラクモは丁重に手を差し伸べた。某と踊って頂けますかと言葉を向ければ、シズルは笑みを浮かべる。薔薇の刺繍が施されたサテン生地の夜会服に、下ろした髪がひと房掛かった。頭を気にしている彼に、 「他の方が何て言うても、うちは……一番、素敵やと思いますえ?」 頬を赤らめて、秘め事めいた囁きを返す。 ダンスフロアに向かう前、踊る前にしなければいけないことがアズーロにはあった。赤面しながらも、真顔で告げる。 「あんたとなら、長い人生、退屈しないと思うんだ。どうか、俺の特別な女性になってもらえないだろうか?」 不器用ながら選ばれた言葉は、酷く真摯に耳で響いた。紺碧の衣装を纏ったティファレットは、答える代わりに腕を伸ばす。手袋を嵌めた手を彼の首に回し、頬にそっと口付けた。愛しておるよ、と照れ混じりの微笑を零す。 「君と共に居られるこの時間……いつまでも続いて欲しいと、そう思う」 周囲には感謝祭を謳う恋人の波。 場に呑まれたか、普段ならば決して言えぬ言葉を吐いた。 「……笑わないでくれ、柄じゃないのはわかっているんだからな」 ザンザは僅かに視線を逸らし、言い訳染みた言葉を言い足す。身体のラインが浮き出る黒い衣装。白い首元を飾る真珠が良く似合う。もう少し強引に出てくれても良いのに、とマナは微笑みの裏で密かに思った。 黒のイブニングドレスと絹の手袋、胸元に光る紫の石。平らな胸を見下ろして、まだまだ映えぬとハルヒは少しばかり悲しくも思う。そんな彼女を労わりながら、カナメは優しく微笑んだ。青みがかった灰銀色のスーツを着崩した彼は、随分様になっていて、少女はもう一度息を吐く。 シキは身嗜み全てにおいて美しい男性の姿を模るように着飾っていた。胸元の開いた真紅のドレスを纏ったヴィオラに、素敵やね、と感嘆に声を洩らす。くすくすと笑いながら、愛の言葉を囁いた。
●かの男 漆黒の瀟洒な礼服を靡かせて、ケネスは薄く微笑んだ。今年に在った出会いに感謝すると共に、 「遠くから拝見する、ジルさんが踊っているも可愛いですが、こうやって直ぐ傍で見ると益々可愛いですよ」 ケネスはフラジィルに慈しむような言葉を掛ける。一曲を踊り終わると、きちんと彼女を手渡した。 夜に沈む濃い色の礼服を着たヴィンは、彼女の頭に飾られた薔薇色のティアラを見て小さく笑む。似合いますよぅ、と笑う少女の手の甲に口付けて、「踊って貰えますか?」と穏やかに尋ねた。フラジィルは吃驚したように目を瞬くも、頑張ります、とにっこり笑う。 「ティアレスさん、見て見てなぁ〜ん♪」 くるくると回るルルノーの尻尾に叩かれたりしている毀れる紅涙・ティアレス(a90167)を見て、彼女の保護者は「まぁ良いか」と穏やかに笑みを浮かべていたりした。 彼女はきちんと見立てられた檸檬色の可愛らしいドレスを着ている。髪を飾る緑のリボンも愛らしい。モスグリーンのスーツを着たウルフェナイトは、其の出来栄えを満足げに見遣っていた。 其処にきちりと燕尾服で決めたオーダタが遣って来る。ティアレスが「コビトペンギン……」と呟くのを物ともせず、決死の覚悟で少女をダンスにと誘った。笑顔と共に了承を得、彼は感涙に咽ぶほど喜んだ。 「今日はお詫びを申し上げに参りましたの。だって物凄く怒ってらしたから……」 薔薇模様の膨らんだスカートを着込んで来たハイネの謝罪には、「そう、であったか?」と眉を顰める。記憶に無いのか惚けているのか判断がつかない。 「俺と、踊って、くれませんか?」 純白のロングドレスを纏い、胸元に緋色の薔薇を飾ったミナがティアレスに言った。彼は酷く、哀れむような冷えた眼差しを向け、 「……男と踊るつもりは全く無い」 低い抑えた声で一言告げた。 そっと近付いたレインには言葉半ばで軽く頷き、片手を胸に、片手を差し出し甘く笑う。傍らの蒼い霊査士には「行って来る」と其の言葉だけで済ませ、慣れた仕草で誘うように歩んだ。「とても心配したのよ……」と苦笑する彼女に、やはり綺麗な笑みで返して「良く似合う」と絹地の衣装と銀の髪型を褒める。 元々は彼女をエスコートしていたオウンは、ひとつに纏めた髪を揺らしながら取り残された霊査士に声を掛けた。 「ロザリーも可愛いな。気が向けば一曲、どうだ?」 軽い口調での誘惑に彼女は僅かに目を細め、 「踊ることは好きでは無いの。ごめんなさい」 元々踊るつもりは無く来たと言うかのように断りを述べる。確かに、彼女はティアレスとさえ一曲も踊りはしなかった。成る程、と彼は素直に引き下がる。
●かの女 「今夜の黒いドレスはよく似合っているよ。セクシーでとても素敵だ。とても素敵なので、私が独り占めしてしまうよ」 気取った台詞を極自然に紡ぎつつ、アローシュは彼女と共に優雅に踊る。オパールが思わず赤面したのは甘さゆえでは無くて、彼女が少し、意識を他に逸らしていた事実があったからだ。 「……他所見しちゃってゴメンね」 素直に謝りながらも、さて友人は如何にしているかと二人は少し、目を細めた。 其の頃のジョジョは慣れぬタキシードに袖を通し、蒼い霊査士の前に立っている。 「宜しければ?」 微笑んで手を差し伸べるも、霊査士は伏せがちの瞳に深い憂いを湛えた。一見して判るように、霊査士はダンスなど好まない。そしてそのような気分で、此処に足を運んだのでも無かった。緩く首を振って拒絶の意を示しす。 彼が立ち去った後に、そっとニューラが近付いた。彼女から掛けられた言葉を吟味して、ロザリーは閉ざされた唇を薄らと開く。 「……賢い人は、好きよ。貴女が、彼が厭うことを知った上で、私に話し掛けてくれたのも、判る……でも、『ダンス』に価値を見出そうとするなら、踊れないわ……」 ふ、と唇を緩めて、 「……理解を求めるのは、いけないこと?」 彼女に対してか、誰に対してか。霊査士は緩く小首を傾げた。「そろそろ決めてあげませんか」と問われた言葉には、「何かを決めるくらいなら、全て選ばないことを選ぶわ」と躊躇無く答える。 「ロザリーさんまで遠いよ……」 しくしくと緩い涙腺を解放しつつ、エンはひっそりそんな様子を見守っていた。黒の蝶ネクタイも立襟のシャツもきっちり着込んでは居るものの、見えない壁が何かを阻む。普段通りの霊査士は、普段通りながら、決してホールから浮いても居ない。綺麗だなあ、とほろほろ涙を流す。 黒い夜闇の色をしたタキシードなどを着た為、少しばかり落ち着かない心地ながらナナトは霊査士に近付いた。少しばかり疲弊した様子であることは見れば知れ、労わるように壁際へ誘う。蒼い瞳を覗き込み、 「……フォーナの祝福を」 掠れた声で囁いた。距離を縮め、寄せられた唇を押し留めるように、霊査士は白い指先で軽く触れる。 「……今宵の祝福が、全ての人に注ぎますように」 くすり、と艶めいた笑みを零して彼女は小さな声音を返した。
●恋人たちの永遠 白銀のミディアムドレスを纏ったコーラルの手を確りと握って、ヒューレは「大丈夫だ」と微笑んで声を掛けた。彼自身も酷く緊張していたのだが、何より彼女に今宵と言う時間を楽しんで欲しいと思う。 結局白衣を手放せなかったユルは、黒いドレスを纏ったジョーカーの美貌を褒めた。ぎくしゃくと踊る彼女の身体を銀の指輪が光る掌で抱き締めて、冬の夜の長きを想う。野暮な言葉は口にしないが、薄い笑みが全てを明瞭に語っていた。 残酷なほどに優し過ぎる彼女の手を取って、せめて今宵は楽しんで貰えるようとジークは胸を張る。オールバックに纏めた髪は、少しばかりらしく無い。シンプルながら繊細な純白の衣装を纏い、慣れぬヒールに戸惑いながら、プリマは背の高い彼を見上げた。 決して手放さぬ剣すら外して、ガルスタは此処に立っていた。仕立てた特注の礼服を着込み、彼女に恥はかかせぬようと小さく気負う。アティはと言えば深緑の落ち着いた夜会服に、森の色をした髪に雪の色をしたティアラを飾り、人を酔わせる淑やかな香りを漂わせ、唯、彼と共に在ることに愛を込めた。 「全く罪な男だよ、俺ってやつは……」 黒いタキシードにシルクハット、胸に飾るは白い薔薇。硝子に映り込む自身に見蕩れていたシーザスは、ハッと我に返った。相方が未だ着いていない。彼の人肌を恋しく想いながら、そわそわと辺りを見回し始める。気付いたのは彼よりも更に上背のある、平らな胸を露わにした優雅な純白のドレスを纏うオージの姿。 「似合う……かな、これ……」 恥じらい俯きながらの呟きに、否定の言など返せようか。 背中が開いた夜の舞踏会に相応しい淡い蒼の衣装を纏い、髪は高くに纏めたショーロは、常から察することも出来ぬほど優雅かつ可憐であった。内心の困惑を打ち消したのは、さり気無く繋がれたワンダの手による。薔薇の深い香りと共に、此れからも見詰め続けていこうと胸中に誓った。 きらきらと輝く夜の世界は、酷く幻想的でもある。今宵が良い思い出になってくれることを確信しながら、フィオラは踊った。彼女の下ろした髪がふわりと靡く。クライシスもまた、得意ではないながらに彼女を支えてやろうと心掛けていた。 「……久しぶりに、やっと会えましたね……」 壁際で、カズハは愛しい人を抱き締める。暫くの間逢えなかったと言う事実は、愛しい人を更に慈しむべきと感じさせた。エスニャの指先には大切に扱われている指輪がきらりと輝いている。二人で一緒に過ごせる時間がとても幸せだと、彼女は小さな声で囁いた。 踊りをやめて、ルーネは小さく「御願い」をする。ボサツは一度瞬いて、其れくらいならば簡単だとばかりに彼女の小さな身体を抱き上げた。人の良い微笑みを見ながら、幼い想いながらも想う。自分は子供だ。恋人と言う立場が叶わずとも、彼の傍に居れるようになりたい、と。 「前より少し大人っぽく……そう、女らしくなったな」 久し振りに見るサナの着飾った姿に目を細める。白薔薇の衣装にプリンセスケープを羽織り、色調を合わせた可愛らしい靴が足元で踊った。彼女の瞳に映り込むのは眼鏡を外したアモウの優しい笑顔。 「此れからも、何時までも、お前だけを愛する事を誓おう」 差し出された銀細工の薔薇を見て、青い瞳を見開いた。 「私……きっと、世界で一番幸せな女の子です……」 いっぱいになった胸に銀の薔薇を抱く。瞳を閉じた彼女の唇に深く甘い口付けを落とした。 穏やかな夜空の下に広がる銀世界は、正に夢の中のよう。輪舞曲は鳴り響き、ちらちらと白雪の降り注ぐ中、恋人たちは踊り続けた。
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参加者:48人
作成日:2005/12/25
得票数:恋愛44
ダーク1
ほのぼの6
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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