【嫉妬戦記】フォーナの役〜嫉妬最終戦争〜



<オープニング>


 とある山奥のボロ小屋……もとい、秘密の集会場。
 そこから夜闇に紛れて出てきた二人。
「これは……大変な事になったな」
「ええ、急いで戻ってレィズに報告しないと……!」
 白い息を吐き出しながら、二人がそこを離れて山を降りようとした時。
 バババッ!!
 二人の周囲を松明やカンテラの明かりが照らす。
 見付かった。そう二人が思った時、目の前に現れたのは蒼い瞳を妖しい仮面で隠した、金髪の青年。黙っていればきっと美形なのだろう。
「貴公子……!」
「これはこれは。我らが始祖である嫉妬神ミーヤ様では有りませんか。そして、その横にいるのは……神官か?」
 大仰な言い回しをする貴公子に、舌打ちをするミーヤ。そして、傍らにいる神官と呼ばれた女に囁いた。
「突破するぞ、いいな?」
「勿論……任せて」
 女……ルディリアは手にした杖を強く握りしめたのだった。


 それから数日が経過し。
「決戦の時や」
 レィズは集まった冒険者を前にそう告げた。
「フォーナの時期が近づいて来おった……『奴等』の活動の活性化が徐々に報告されとる……」
「奴等って……?」
 冒険者の一人が真剣な表情で問うと、レィズはコクリと頷いた。
「嫉妬の秘密結社……『ネオ・シットー』や」

 説明しよう!
 嫉妬の秘密結社『ネオ・シットー』……それはモテぬ自らを鑑みる事無く、世のカップルを逆恨みしては数々の嫌がらせに走り、バカップルのみならず普通の善良なカップルにまで迷惑をかける、とんだお騒がせ集団なのである!!!
 冒険者との熾烈な戦いの結果、大幹部『嫉妬軍曹』を撃退し、『嫉妬神官』を捕虜にする事に成功。
 だが、残る大幹部『嫉妬の貴公子』、そして謎のヴェールに包まれた存在、『嫉妬皇帝』……!
 彼等を倒さぬ限り、幸せなカップル達に真の平穏は訪れないと言えよう!!

「で?」
 一部、頭を抱えた冒険者の問いにレィズは頷いた。
「ネオ・シットーの元になった組織の元首領やった男、ミーヤからの依頼や。当の本人は……」
 レィズはチラとルディを見た。バツの悪そうな表情を浮かべた彼女は首を静かに横に振った。
「ごめんなさい。ミーヤってば例によって一人で潜入するって言うから流石に心配で付いていったのよ、私。でも、帰りに見付かって囲まれて……突破はしたんだけど……」
 ミーヤは途中で転けたらしく、気が付いたらルディの遥か後方で倒れているのを拉致されたのが遠く見えたのだった。
「その代わり、情報は聞いてきたんやな?」
「ええ……彼等ネオ・シットーの恐るべき計画を……!」

 その計画の名は。『嫉妬最終戦争(シットハルマゲドン)』
 既にその内容は単なる嫌がらせに留まらず。暴徒と化した彼等は、武器を手に幸せな家庭築くカップルの家をぶち壊し、熱いカップルを攻撃し、血を血で洗う、言葉では言い尽くせない恐ろしい計画であった。
 そもそも嫉妬とは恐ろしい感情である。彼等でなくとも、行き過ぎた嫉妬心で人を殺める話はある。大罪と呼ばれる忌まわしき感情の一つとも言われている程なのだ。

「総本部から嫉妬戦闘員が近くの町から襲撃を開始するらしい。その前に、ネオ・シットーを叩き潰し、壊滅させるんや」
「あと……ミーヤの救助ね」
「ああ、アイツは自分が原因の災いを何とかした上で今度のフォーナを迎えたい言うとったわ」
「今度、子供が生まれるんだ、って……そう話しながら潜入偵察に行ったのに……」
 激しく死にフラグっぽいが、大丈夫だろうか。


「緊急指令や。敵は『ネオ・シットー』!!」
 目的は二つ。『ネオ・シットーの壊滅』と『ミーヤの救助』。
 組織は秘密基地を叩き潰し、大幹部である嫉妬の貴公子をやっつければ壊滅する筈である。
 出来れば嫉妬皇帝も倒したい所ではあるが、何せ謎のヴェールに包まれた相手。捕捉出来るかは冒険者の行動次第だろう。
 なお一応、悪の秘密結社っぽいとは言え、敵はあくまで一般人である。そして構成員全ては決して悪人ではない。ただ、恋人がいない思いが変な方向に暴走している可哀想な人達だ。
 誤って殺める様な事はあってはならない。そう、元首領だったミーヤだって改心して幸せな家庭を築き上げる事が出来たのだから……!
「いつもみたく、再び潜入して情報を得るとか悠長な暇はないわ。突撃あるのみよ」
 ルディは真剣な表情でそう冒険者達に告げた。
「私も、決着を付けなきゃならない。嫉妬の貴公子と。だって、彼は――」
「さて、ここまで話を聞いてくれてまずは感謝や。さて、準備はエエか?」
 彼女の言葉を遮って、レィズは真剣な表情で冒険者達を見回し、言った。
「ネオ・シットーとの最終決戦に臨む勇者、大募集や」

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参加者
黒錐槍・トール(a00832)
邪神・ドラゴ(a02388)
葬月花・レノリア(a02513)
ピンクリボンの翔剣士・ミサ(a05541)
疎遠スパイラルな嫉妬王・マスク(a08452)
妙音媛・アールタラ(a10556)
桃百合の四葉姫・メルクゥリオ(a13895)
消失した青・ユーリリィ(a17040)
世界を救う希望のひとしずく・ルシア(a35455)
灰猫・キリク(a37913)
NPC:白金蛇の巫・ルディリア(a90219)



<リプレイ>

 ネオ・シットー本部。囚われたミーヤが宙吊りにされて拷問を受けている。
「嫉妬神よ。再び我らの元に戻ると仰って頂ければすぐにその縄を外すと言うのに」
「ふ、俺は再び堕ちる訳には行かない……既に俺には帰りを待つ家族が居るんでな」
 鞭打たれるミーヤは耐える。きっとルディ達冒険者が助けに来てくれると信じて。
『貴公子よ……』
「は、この御声は嫉妬皇帝!?」
『……その者と話がある。皆を引き連れて下がるが良い……』
「御意!!」
 貴公子達が部屋を去り、残されたミーヤ。そこに風格漂う黒甲冑を身につけた男が一人現れた。
「貴様が、嫉妬皇帝?」
「……久しいな」
「! まさか、お前は!?」
 仮面を外した皇帝の顔を見たミーヤは愕然としたのだった。


「フッ、遂に最終決戦……感慨深いでござるな」
 出発前。しみじみとそう呟くは挙動不審・ドラゴ(a02388)である。
「実に様々な嫉妬模様を繰り広げた嫉妬団……させまいと妨害し続けた冒険者……どちらも良く頑張った。どちらも輝いていた! 今こそ決着付けてやるZE!」
「おお?」
「冒険者共め!!」
 ずごむっ!
 最果てへの旅・ユーリリィ(a17040)とルディはその辺にあった樽でドラゴを殴打して。
「貴方も冒険者でしょうがっ!」
「そうそう。シットッテナニー? ワタクシイッパンボウケンシャネー」
「……ユーリリィさん……」
 いかにも嫉妬冒険者である事を隠そうと言うあからさまな演技に、暖かな夜を歩く月・レノリア(a02513)は彼女をジト目で睨むも、コホンと一つ咳払い。
「そ、それはともかく。今回こそネオ・シットーとの最終バトルー! ……になると良いなぁ」
 弱気だ。
 一方、幸せの四葉・メルクゥリオ(a13895)は憂いに満ちた表情で呟いた。
「フォーナ祭は皆様楽しみにしていらっしゃいますのに。それに、そんな事したって幸せになれないのに……」
「うむ。嫉妬に狂う気持ちは良く解る。だが、庶民に手を出すのは問題だな……」
 真なる嫉妬王・マスク(a08452)は同意して頷く。説得力が微妙ではあるが。
 そんな話を聞き、マスク達を見、ノソリンに咲くランプランサス・ルシア(a35455)はハァ、と大きく溜息一つ。
「嫉妬嫉妬嫉妬……嫉妬って内に秘めて耐え抜く事で人間的に成長出来る感情だと思うのに……勿体ないなぁ」
 ぐさぐさぐさっ! 彼女のその言葉、まるで心に突き刺さる慈悲の聖槍の如く。
 出発前から屍と化した嫉妬冒険者達を横目にメルクゥはグッと拳握って決意を述べた。
「絶対に止めてやりますなのぉ!」
「レィズ……アル、行ってくるね」
 いつになく真剣なレィズに、妙音媛・アールタラ(a10556)も思わずシリアスに声をかけた。
「ああ、気ぃつけて行きや」
「ルディ、嫉妬の貴公子って……あ、ごめん、何でもない……」
 シリアスに思わず意味深な台詞をルディに投げかけるアル。
 ルディは僅かに微笑んで返しただけであった。
「後で、解る事よ」


 そして。嫉妬集会が行われるのは決まって夜である。
「メルクゥ、アルよりお姉さんになっちゃった!」
 急成長してほぼ同い年になったアルとメルクゥの仲良し二人。用意した覆面仮面をごそごそ身につける。
 何せ元々がザルの秘密結社。100や150もいれば、二人や三人紛れ込んでもきっと解らない。
「それじゃ行くよ!」
 ユーリリィを先頭に山小屋に吶喊する三人。まずボロ扉を開いたユーリリィの一声。
「大変よ! 勝ち組の男が表をウロウロしてる!」
 激しく裏声で女性嫉妬団員を装った言葉に嫉妬団員はざわめきだす。
「わたくしの情報では、アチラの方向にもバカップルさんの巣窟が!」
「早く行かなきゃ! この瞬間にもきっとカップルが増えてる! 急いで!!」
 メルクゥにアルも大声で嘘の情報を流す。彼等達は顔を見合わせ、嫉妬嫉妬と声高らかに叫び出すも、躊躇する者もいる。
「敵は余りにも多く……此方もかなりの人数が必要でしょう!」
「みんなで行けば大丈夫! さぁ!」
「さぁ、参りましょう同胞よ!!」
 その言葉に(間違った)勇気を持った構成員達は一斉に二人を押しのけて怒声と共に外に飛び出していった。
 が、嫉妬厳戒注意報が出ている事もあり、慎重な男達がユーリリィに疑いの目を向け問いただす。
「貴公子様の話じゃ、冒険者が来るかも知れないそうじゃないか。まさか……」
「何を言う! このボクが愚昧なアベック共に味方するとでも? 笑止!!」
 ずばーん! ユーリリィはかなり本音で熱く語る。
「ボクは忘れない! 一人で過ごしたあのフォーナを。そう、あの夜――」
 以下略。
「――よってボクは嫉妬の父の洗礼を受けたんだ!」
「おおお……」
 彼女の本気演説に感銘を受け涙流す嫉妬団員達。
 そして彼女達は多くの一般嫉妬構成員を本部の外に出す事に成功したのだった。


「否嫉妬の冒険者が貴公子とかとっ捕まえてくれるだろーし、ミーヤ救出でも行っとくかぁ」
 黒槍翔剣士・トール(a00832)はぼんやりそんな事を考えていた。
 彼も嫉妬騎士の裏称号を抱く者。本来なら敵に塩を送る行為。
 だが。
「ルディリアちゃんで誘導して貰えると助かるな。迷う事は無いだろうけどキミなら彼が何処にいるか想定出来るよね?」
「ええ、地の利は得てるつもりよ」
 霹靂ノ賭博師・キリク(a37913)がルディにそう声をかける。救出作戦には彼女も加わるのだ。
「……マジメに動いて良いトコ見せておかないとなぁ」
 あくまで真面目なフリだけど。彼女の前では格好良いトコ見せておきたい。その秘めた感情故に。
「さーて、今回は嫉妬パワー全開で行くZE!」
 一方、ダメな人もいたりする。例えばドラゴとか。
 最初から嫉妬側に仮面を被って参加し、ミーヤの耳元で「嫉妬」と囁き続ける事で再び嫉妬洗脳を施して嫉妬神に戻って頂き、神の帰還で雑兵の志気も上昇し、勢いで冒険者達を殲滅する大作戦。
 完璧である。あくまで『彼の脳内』では。
「……って何でレィズ殿の格好で縛られてるの拙者ーっ!?」
 ぶらーんと雁字搦めに縛られて木の枝から吊り下げられたドラゴ。さながらレィズ2Pカラーの出来上がり。ルシアが張り切って縛ってたのはココだけの話。
「直接嫉妬団員と戦うのは心持ち嫌なんでな。ドラゴ、悪いが往生してくれ」
 嫉妬リボン・ミサ(a05541)はニコッと笑ってそう告げた。既に潜入してる三人が誘導する先が此処。彼を餌に団員を誘き寄せ、此処に釘付けにする作戦。
「ドラゴという尊い犠牲の上に成り立つ作戦……よくぞ『立候補』してくれたなドラゴ!」
「いや、拙者は何も言っ――」
「と言うコトで宜しくですドラゴさーん! 貴方の雄姿は後々に語り継がれるでしょう……」
 レノリアが爽やかな笑顔でそう告げた。手にした陽動用の看板にはバッチリとこう書かれているし。

『〜デス・フォーナ〜 レィズ・ネフラァト撲殺会場はコチラです』

 仮面つけつつレノリアはドラゴの傍にそれを立て、嫉妬雑兵待ち構える準備は完了。
 そして向こうにゾロゾロ見える嫉妬団員達。其方に向けて大声で叫ぶ。
「翡翠の霊査士をとっ捕まえたぞー!」
『何だってーーっ!?』
 思わず大挙してやってくる嫉妬団員達。暗いから偽者だって気付かないし。マスクはそこに大声で演説する。
「ネオ・シットーの同胞達よ! 我らは遂に今まで悉く作戦を邪魔してきた霊査士レィズを捕らえるコトに成功した!!」
『おおっっ!!』
「さぁ、ハルマゲドン戦勝祈願祭を行おうではないか!」
「皆の者、処刑じゃー! コヤツを嫉妬大神の贄とするのじゃー!」
 ミサが煽り、皆が吊されたドラゴに拳やら棒やらバールのようなもので殴りかかる。
「げふおべあべしっ!?」
 100人以上の者が一斉に取り囲んで殺到する。ルシアはリンチに加わらない者を狙って作戦を立てていた様だが、残念ながらそんな者は誰一人居ない。過去の嫉妬集会で嫉妬幹部は散々レィズを悪者にしてましたから。ああ、集団洗脳って恐ろしい。
「ドラゴ、君は良い友人だったが恋人が居るのがいけないのだよ……」
 周囲でアイヤーアイヤー踊りながらマスクは彼から目を逸らしたのであった。
「……結構本気ですねぃ、マスクさんにミサさん……」
 ボコられるドラゴと二人を見比べて、レノリアはそう呟いたのであった。


「何やってるんだ。あっちにあの憎き翡翠の霊査士が現れたぞ。ココは俺に任せてお前らも早く行かないか!」
「ここは俺達が交代するから、早く!」
 仮面を付けたトールが本部に到着するなり残る見張りにそう叫ぶとアッサリ彼等は囮の元に走り。覆面付けたキリクが内部を見渡すと驚くほど静寂。表玄関から堂々と入っても咎める者も残ってない。
「多分、こっちね」
 かつて此処にいたルディが案内し、幽閉されてると思しき部屋に辿り着くと。
「ミーヤさん!」
「……来て、くれたか!」
 キリクが叫ぶと、吊され項垂れていた彼が顔上げて明るい表情見せた。
 その瞬間。
 ぼごぉっ!
 トールがいきなりミーヤを殴った。サンドバッグの様に大きく揺れた彼を慌ててキリクとルディが助け降ろす。
「な、いきなり何を!」
「迷惑料、て所だ。その位は当然だよな?」
「否定は……しないけど……」
「なぁルディ、今頭の中に『ジーク嫉妬』って聞こえた様な……」
「幻聴だ!!」
 実は拳で語るで殴ったらしいのだけど。誤魔化すトール。
 その間にもキリクはミーヤの縄を解いて怪我の有無を確認。ルディが癒しの水滴をかけた上で三人は本部を脱出したのだった。


 一方、散々レィズ……もといドラゴをボコって満足した嫉妬団員達は疲れた所でアルとレノリアの眠りの歌ですっかり眠りこけていた。ロープ使って数人がかりで何とか捕縛完了。
 終わった頃に目を覚ました団員達を前にマスクが言う。
「同胞を殴るのは気が引けるでな。説得は任せておけ」
「……そういえばドラゴ様は大丈夫ですなのぉ?」
 説教を前にメルクゥがふと気付くと、吊されていた筈のドラゴが見えない。
「逃げたのか、ちっ」
 ミサが舌打ちする。と、ユーリリィの姿も見えない。
「ふふふ、嫉妬はこんな所では終わりませんわ」
 その頃、物陰でこっそり嫉妬マスクを装着していたユーリリィ。何か人格変わってます。
 そして説教タイム開始。
「外見より中身。モテる様に内面を磨けば良いんですよねぃ。ここまで出来る情熱があれば、努力次第にそれなりに!」
 レノリアの演説に頷く団員達。基本的に乗せられやすい人達かもしんない。


 その頃、関節外して縄を抜けたドラゴは本部に向かっていた。痛みは嫉妬で消して!
「む、あれは!?」
 それは嫉妬の貴公子と対峙する四人の姿であった。
「逃がしはしない。特にルディ……」
「良いわ。ケリ、付けるわよ」
「ちょっとまったー!」
 ルディが深刻な台詞吐いた所で割り込んできたドラゴ。
「嫉妬の戦ともなれば! 見せますやります最終秘伝! 嫉妬エネルギー全開の嫉妬忍者! センベーシットロト! 呼ばれてなくてもただ今参上!」
 口上を終えて貴公子の手を取り、助けんと走り出すドラゴ。
 だが、そこに容赦なくルディの慈悲の聖槍がドラゴを、そして貴公子を貫いた。
 がくりと項垂れる二人。ドラゴは放置してキリクが貴公子を抱え起こすとその仮面がハラリと取れた。面影が誰かに似ている。
「金髪碧眼にして美形……もしかして、彼はキミの?」
「……兄よ」
 血縁関係では? そう予想していたキリク。もしそうなら余り争って欲しくない。
「仲が悪いのは互いの為に良くないよ。これ以上傷つくキミを――」
「傷ついていないわ」
 ルディは淡々とそう言って、貴公子を抱きしめた。
「私と同じ様に兄には更生して貰う。もう、争う必要は無いわ」
 そう言いつつ。首絞めてる絞めてる。


「見て! あれ!?」
 マスクの説得が間違った方向に向かいだした時、アルが何かを指差して叫んだ。
 黒甲冑の男が本部から数人引き連れて駆ける姿。トール達が連れてきたミーヤや貴公子が見て呟く。
「アレは嫉妬皇帝!?」
「何と……まさか我らを見捨てて?」
 嫉妬の総首領、嫉妬皇帝。逃がす訳には行かぬとその後を追う冒険者達。だが。
「嫉妬皇帝様! 流派は違えども同じ嫉妬を信奉する者。よってこのローゼンシットー救援に駆けつけましたわ」
 ユーリリィっぽい女が高い所から薔薇を投げて登場し、皇帝と冒険者の間に割って入った!
 更にマスクが彼等の前に立ち塞がる!
「お逃げ下さい陛下! 玉体に何か有れば一大事なれば、此処は落ち延び今一度再起をお謀り下され!」
「うむ、良く解らぬが任せたぞ」
「あんたら……」
 皇帝は二人に礼を述べると再び逃走開始。呆れた声でルディが呟き追おうとするも。
「これで此処から先には進めまい! 嫉妬皇帝様が逃げるまでこの私が相手をしてあげる……ってギャース!!」
 ローゼンシットーがバナナの皮を撒き散らして自ら踏み転倒した。戦わずして一人撃退。
「く、俺一人でも戦い抜いて見せる。冒険者共よ、この嫉妬王が相手だ! かかってくるが良い!」
 マスクは無風の構えを取るも。
 冒険者相手にそれは『無防備』に等しかった。
「のわあぁぁっ!!?」
「嫉妬は滅びない……ってあー! 蹴らないで!?」
 嫉妬冒険者を退治する間、皇帝の姿は最早見えなくなっていたのだった。


 ルシアの手によって破壊されていくネオ・シットー本部。
 小屋も付属施設も地下室も粉微塵に爆砕拳でぶれいく完了。
「きっと貴方達にもフォーナ様の祝福がありますなのぉ♪」
 構成員達にメルクゥの優しい微笑み。頑張ったドラゴにもアルの高らかな凱歌で癒しを与え。
 殴って鬱憤晴らした彼等が更生の道を歩むのも時間の問題だろう。

 嫉妬の秘密結社、ネオ・シットーは滅びたのだ。

 酒場に戻り、ミーヤは皆に礼を述べた。
「やっとこれでフォーナに平和が戻った。礼を言う」
「えと、お子様が出来るとお聞きしました。おめでとうございますなのぉ♪」
 メルクゥは彼に祝辞を述べるとミーヤは思わず頬を染めた。
 それを聞いていたアルはレィズに飛びついて爆弾発言一つ。
「アルもレィズの子供欲しい!!」
 ぶぼっ! その場にいた全員が茶を吹いたのは言うまでもなく。
「アル、それ、問題発言やから。オレの立場的に」
「えー」
 この辺が命狙われる原因なんだろうとか思いつつ、レノリアは不意に呟いた。
「だけど、この程度じゃ終わらない気がするんですよねぃ。キノセイ?」
「皇帝が逃げおおせたからな」
 ミサがジト目でマスク達を睨む。が、マスクは深刻な口調でミーヤに問うた。
「時に皇帝なのだが、もしかして奴はミーヤの……」
「流石冒険者の観察眼だな。ああ、その通りだ」
 ミーヤは頭を抱えて、そう一言答えたのだった。
「嫉妬皇帝の正体は……俺の弟、モトだった……」

 新たに判明した真実! 果たして皇帝・モトの行き先は!?
 嫉妬の芽はまだ残っているのか!?
 最終回に続く!!


マスター:天宮朱那 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2006/01/02
得票数:ほのぼの3  コメディ22 
冒険結果:成功!
重傷者:邪神・ドラゴ(a02388)  疎遠スパイラルな嫉妬王・マスク(a08452)  消失した青・ユーリリィ(a17040) 
死亡者:なし
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