【脆い青玉】弧状の死線



<オープニング>


 この色を表現すべき言葉を探してみたが、僕にはわからない、僕はこの色を知らない――。
 
「依頼です」
 髪が少し乱れている。薄明の霊査士・ベベウは手櫛で黒髪を梳かし、薄暗い夜の室内に、白く浮かび上がるかのような額の皮膚を、わずかにのぞかせた。すぐに前髪は額へと戻り、鉄鎖に絡め取られた手首はテーブルへ、ちらつく燭台の向こう側には、彼の双眸が瞬いた。
「三体の、おそらくは同様の力を持った魔物を対峙していただきたいのです。場所は……とある河の――清流と呼ぶべき、美しい河のようです――ほとりとなります」
 高から低へ、西から東へ、大地を刻むか浸すかしながら流れる河が、ちょうど三方から交わる地点に、魔物たちは現れたという。
「目にも鮮やかな白砂が堆積した、浅い流れのなかに、魔物は位置しているようです」
 魔物らには関係ないのかもしれないが、冒険者たちにとって冷たい流れに身を浸しながらの戦いは、体力の、継続的な消耗を促すことだろう。
「こちらにとって優位と言えることは、魔物たちが距離を開いて位置する点にあります。水辺こそ浅いのですが、中央へ行くに従って水深は人の背丈を超えるものとなる。戦場から戦場へと移動するためには、なんらかの移動手段をとるか、泳いで渡らなければなりません」
 蒼銀の髪をした少女が肯く。天水の清かなる伴侶・ヴィルジニーの問いかけに対して、ベベウは、憂慮の言葉を口にした。
 分断された戦場――と。
「現時点において、魔物たちは互いの距離を詰めていませんが、戦闘が開始されればどのように動くかわかりません。彼らが交わることのないよう、こちらも力を分散させて対峙する必要があるでしょう。こちらが敵を分断するのであり、分断されてしまってはなりません。救援へ向かうには、いくらかの時が必要となるからです」
 彼方を見晴るかすかのような視線で、ベベウは燭台の焔を貫いていた。
「中央での戦いが最も厳しいものとなる可能性が高い。戦術的にきわめて重要となるでしょう」

マスター:水原曜 紹介ページ
 水原曜でございます。
 
 新しいシリーズシナリオです。テーマは青色。
 今回はヴィルジニーが参加しています。絵を描いていただいたときに書いた彼女のテーマは、ターコイズブルーだったのでした。
 
 戦場についての捕捉です。
 河は広くて大きなものです。流れも遅くはありません。
 魔物たちは、東から西へと流れる河の、北の河岸にいます。
 
 魔物の形状は、身長3メートルの人間型。
 体毛はなく、包帯でぐるぐるまきにされたように、皮膚を引きつらせています。
 武器は長さ二メートルほどのサーベル。
 強力な流水撃に加えて、紅蓮の咆哮に似た力も使用してきます。
 
 それでは、皆さんの参加をお待ちしております。

参加者
漆黒の彼岸花・トモコ(a04311)
決別を呼ぶ吠響・ファウ(a05055)
昼行灯・エイシス(a06773)
冷酷なる飄蓬の暗殺兵・エイジ(a16746)
爻・クロノ(a16804)
思策に耽る者・スクウェア(a18410)
不破の双角・ゼオル(a18693)
暁の鬼狐・ユウキ(a24790)
破壊滅却暴君・ファル(a26026)
鮮紅花炮・フィリス(a31192)
先読みの呪術師・アキト(a31644)
藍舞・リース(a32023)
黒白異端狂想曲・シャリオル(a33960)
音無き絶海・ヴァニレアンス(a35939)


<リプレイ>

●北東の河岸
 突き刺すような風に頬を撫でられて、決別を呼ぶ吠響・ファウ(a05055)は肩を震わせた。水面に浸からぬように腰から生やした尾にも気を使う少年が、「川遊びは好きだけど……何もこんな時期に……」と囁いたのも無理からぬこと。渡河のために小舟を借り受けようにも集落がない。鎧聖を降臨させて防具の形質を変化させるのがやっとで、そのために力は消費された。
 自らの意に反してカチカチと鳴る奥歯を、鮮紅の烈女・フィリス(a31192)が仕方ないといった笑みで封じ込めようとしている。黒風のマントを羽織ってはいるものの、水に浸かったまま握りしめる縄の感触は、お世辞にも快適とはいえない。
 北東へと流れる支流を越えたフィリスたちは、そこで、鈍色の躯をそびやかして、足下には人間の背丈を超える巨大な刀剣を従える、一体の魔物と遭遇した。
 気を抜けば、どの様に成るかは明白――。飄々ととらえどころのない笑みの裏に、黒白異端狂想曲・シャリオル(a33960)は峻厳なる決意を含ませていたが、おそらく気づく者はここにはない。ありうるとすれば、彼がヴァニラと呼ぶ少女だけだが、彼女はシャリオルと入れ替わるようにして、南東へと降る支流へと向かっている。
 ふたつの支流、そして、西から東へと流れる本流、三本の流れに一体ずつの魔物が点在しており、冒険者たちもまた、戦力をみっつに分割していた。
 唇から息を吐いて水を吹き飛ばすと、フィンスライサーを手にするファウは、投擲すべき空間を脳裏に描きだし、こちらへと向かってくる巨大な像と重ね合わせた。宙に弧を描く斬撃を浴び、魔物は上体を揺らがせたが、かまうことなく突貫を続行する。
 元より色の薄い肌には、青ざめた色が浮かんでおり、微動を繰り返す唇の肉は紫に染まっていた。乱れ狂いし紅き華・アキト(a31644)は、紅の椿が先端に飾られた杖を握り直し、心の内奥に潜む猛々しい力を全身へと這わせた。魔炎に巻かれ、彼は呟く。
「なるべく短期決戦と行きたいが……な」
 暴風にも似た音が巻き起こった。凄まじい威力に圧倒されたシャリオルが、呻きを洩らして頭を垂れている。かきむしるように彼の指先が、朱に染まった胸部のシャツを握りしめる。フィリスも巨大な刀剣による斬撃を浴びていた。目の前を滑るように通り抜けていく鋭角な切っ先が、少女の肩に裂けた傷を残した。
 不破の双角・ゼオル(a18693)は全身を震わせた。黒い鱗から滴り落ちる水、立ち昇る白い湯気――彼は自らを呪いでもするかのように、手にする古びた刀剣を握りしめていた。たとえ、深い傷を負った我が身であったとしても、前衛として戦いたかった。だが、今はまだその時機ではない。鞘から引き抜かれた妖狼の檻が虚空を馳せ、仄かな光の輪が広がった。今は自らの責をまっとうせねばならない。
 指先から朱色の混じった河の水を滴らせたまま、フィリスは宙へと駆け上がった。魔物の膝を足がかりに飛び上がった少女は、身体をねじり、光の線を引く右の踵を、魔物に叩き込んだ。剣を按じる右腕を狙っていた。
 苦しさが身体に鉛のような重さとなって残っていたが、シャリオルは蒼鈍色のサーベルで空を十字に切り裂き、夢幻の色彩に縁取られた薔薇の花びらをあたりへと散らした。黒猫の尾を揺らめかせ、少年は華麗な剣によって次々と魔物の体躯を刻んだ。
 魔物は波打つ刀身を翻した。怒濤のごとき斬撃の裡に、またしてもシャリオルたちは巻き込まれていた。
 
●南西の河岸
 冬の清冽な朝をその身にまとうかのような少女は、分厚い硝子板を思わせる水の流れが、ただ東へと流れていく様を、ほんのわずかな間だけ眺めた。薄ら氷に佇む戦姫・ヴァニレアンス(a35939)は視線を煌めく水面から逸らした。長い睫毛に縁取られた視界の中央には、人の背丈を遥かに凌駕する巨躯の持ち主が佇んでいる。不意に黒い影が過ぎった。魔物へと駆けていく仲間の姿だった。
 冷酷なる飄蓬の暗殺兵・エイジ(a16746)たちは浅瀬を見つけ、腰までしか水へ浸からずに済んでいた。ひきつっていて鈍色の肌を持つ魔物は、寒さに凍える様子もなく、あまりに長大すぎる刃を、斬撃を放つ構えの最上部に掲げて立っていた。エイジは波を起こしてこちらへと迫り来る魔物へ、指先に生成した複数の飛燕を投擲したが、敵は突貫の勢いを失いはしなかった。
 普段ならば背にさらさらと流された髪も、渡河の邪魔にならないよう、冠のように結わえられている。浅瀬へと踏みだすなり、思策に耽る者・スクウェア(a18410)は足下から赤黒い焔を渦巻かせた。それは足を伝って胴へと到り、指や髪先まで包み込んだ。
 透けた刃を手にして、ヴァニレアンスは魔物の行く手を阻むように、水辺へと身を躍らせた。――螺旋を描く青い髪が、水に濡れた色味を深めた薄紫のリボンによる束縛から逃れた。流れへと身を横たわらせたリボンは東へと流れていく。ヴァニレアンスは左腕を押さえながら、膝をついた姿勢から立ち上がろうとしていた。鎧聖を降臨させるための力を、斬撃に見舞われた彼女は有していなかった。色無き表情のまま、少女は頭上に綿毛の塊を浮かべ、無色裂衝――そう名づけられた斧が魔物の左足へと叩き込まれた。
 闘うたまねぎ・エイシス(a06773)は水際に位置していた。構えられた弓の弦には、矢羽根に白い光を含んだ矢がかかっている。極大射程よりも魔物との距離は近かったが、彼は癒しの力を持つ仲間の側にあることを選択していた。――光の弧が宙をうねり、魔物の胸部へと突き刺さった。
 天水の清かなる伴侶・ヴィルジニーの薄い肉付きの体躯から、波打つ裾野を翻す、癒しの光が広がっていく。ヴァニレアンスの身体は朧な光の内側に閉じられたが、未熟なヴィルジニーの力では、肩に残された酷い傷跡は満足に塞がらず、残されたままだった。
 
●中央の河岸
 華奢な体付き、尖った鼻、凛とした眉、すぼめられた唇、首に巻かれた革の輪――。彼岸ノ愛華・トモコ(a04311)は宙に黄金の紋章を描きながら呟いていた。
「ホント……大きなモンスターね」
 水面を光球が翔ていく。暁の永遠を狩る赤き狐の鬼姫・ユウキ(a24790)は視線を魔物へと移した。鬼姫の名を持つ弓には、輝く外装が施されている。彼女は光を帯びた矢を手の平で形作っていた。
 こちらへと激しい水飛沫を噴き上げながらかけてくる魔物にも臆することなく、ユウキは矢を射た。綺麗な弧を描いた鏃は、身体の割には狭い額に突き刺さった。
 魔物の左足が水面を突き破るように差しだされ、人の背丈を超える刃渡りの剣が空間をぎざぎざと裂いた。攻撃を浴びたのは、滅壊・ファル(a26026)だった。巨大影を水面に宿す敵の、怒濤のごとき斬撃は、彼に酷い傷を負わせたが、それでもまだ、鉄のごとき意志を曲げるまでには到っていない。
 水まみれになって河原に転がりながら、ファルは立ち上がろうとしたが、右足に力が入らない。痛みが走った腿に目を遣ると、赤黒い傷口がぱっくりと開いていた。滅界と渾名された自慢の巨大剣を支えに身体を起こした彼は、痛む足に無理を利かせて水上へと跳ねあがった。渦巻く闘気の力を帯びた刃が魔物の肩を打ち、巻き起こった爆風によって敵の頭部があらぬ方角へと押しやられる。
 耳を覆いたくなるような、ごりごりと骨の擦れ合う音がして、魔物の首が正しい位置へと戻っていく。爻・クロノ(a16804)は自分以外の、すべての仲間たちへ聖鎧の力を付与した。クロノは危惧していた。理想的な戦術を行うには、理想的な戦力が必要であり、果たして、自分たちは見合っているのだろうか。聖天の魔道天使・ルナが広げた癒しの光が、ファルの身体を包み込んでいる――。
 黒衣をまとうしなやかな体躯が、小さな波紋を連ねて魔物の後方へと回り込んだ。誘惑の灰夢と渾名される鋼糸で、虚皇・リース(a32023)は空に、幾重もの、銀色の戦場を刻んだ。風の刃が紡がれ、それは瞬く間に魔物の大きな背へと吸いこまれ、厚い皮膚に裂傷を浮かべた。
 ファルはよく耐えていた。たったひとりの前衛として、あまり多くの回復も得られないまま。
「早くくたばれーっ!」
 だが、彼の剣戟が魔物の肉体ではなく、巨大な刃へと向かった次の瞬間、無意味に終わった斬撃を嘲笑うかのように、巨躯の魔物は剣を振った。その刀身はファルの身体を貼りつけたようにしたまま振り抜かれ、少年は川辺へとその身を叩きつけられた。
 前衛を失ったトモコは、「ユウキさん……いきますね!」と仲間に呼びかけ、ワンドの先端から螺旋を描いて領域を埋め尽くした、清冽な緑の木の葉によって魔物を封じようと試みた。しかし、魔物は動きを留めなかった。身を震わせて、水面を振動させるほどの咆哮を発する。
 ユウキは肩をすくめたが、身体には力が入っているだけで、指先は自由に動いた。他の仲間たちも、叫び声に縛られてはいない。
「私もしっかり守るから拘束よろしく頼むよぅ!」
 薄く透けた闇色の矢羽根が、魔物の体躯に突き立ったまま震えている。ユウキが意識したのは、矢を次々と放つことで相手を怯ませる『攻撃の壁』だった。動きを合わせるようにして、クロノが光の糸を引く矢を放つ。けれど、それでは不十分だった。ファルを失い、十分な回復がのぞめないトモコが、身に矢を立てながらも迫る魔物の攻撃に耐えられたのは二度のみ、三度目はなかったのである。
 リースは魔物との距離を保ったまま、風の刃を鈍色の肌へと撃ち込んだ。自らに鎧聖の力を施したクロノが、深い傷を負った仲間たちを庇うようにして、巨大な刀剣をまるで嵐のごとく振り回す魔物の苛烈な攻撃に身を晒す。ユウキは弦の震えが止まる暇もないほど、黒い矢羽根を生やした貫く矢を射続けた。
 そして、胴に魔物の斬撃を浴びたクロノが、とうとう力尽きて、残るはリースとユウキのふたりのみとなった。凄まじい勢いで、自身の身体ほどもある刀剣が、頭上へと振り下ろされる。リースは魔物の斬撃を、鮮やかな身のこなしで避けた。ユウキの放った矢が魔物の胸部を貫いたのを見届け、リースは指先の鋼糸たちが触れ合う、しゃららと鳴る音を聞きながら、敵へと言い放った。
「……ごめんね? 死にたくないのはお互い様だろうけど……どうあっても……こっちも死んでやる訳には……いかないんだよっ!!」
 糸で吊られてでもいるかのように、魔物はゆっくりと静かに身体を沈めたが、水面にぶちあたるなり轟音を響かせ、大波に河岸を浚わせたのだった。
 
●再び、北東の河岸
 鎧聖による守りの強化を得られないまま、ヴァニレアンスはそれでも果敢に戦った。偉容を誇る魔物を目の前に、触れてしまうだけで壊れてしまいそうな、華奢で繊細な身体が立ち塞がる様は、仲間たちに大いなる感銘と勇気を与えた。だが――。
「ヴァニレアンスさん!……これでは」
 声を発したのは、スクウェアだった。表紙に千禍と箔打ちされた魔導書を広げ、禍々しい文言を唱える。彼の足下から立ち上がった赤黒い焔の火柱は、魔物の斬撃を浴びて横たわり、手足をわずかにすら動かさない少女の上を過ぎ去り、巨大な剣を手にする影へと襲いかかった。
 倒れた前衛の代わりに、エイシスが最前列に飛びだした。空を駆け抜けた稲妻のごとき嚆矢は、魔物の肩を貫いた。ヴィルジニーは癒しの光を休むことなく、自身の力のあらん限りを尽くして展開した。だが、それでも、仲間たちを救うことはできなかった。踏みだされた大きな足の裏が叩いた水面から、濁った膜が空へと向かう。その中程を巨大な刃が薙ぎ、胸を切り裂かれたエイシスはそのまま仰向けに倒れた。そして……彼を助け起こそうとしたヴィルジニーもまた、直後に野蛮な刃の餌食となったのである。
 飛燕を放って魔物との距離をなんとか保ち、エイジが撤退の決断を下さなければ、冒険者たちは命を失っていたかもしれない。彼とスクウェアは仲間の身体を支え、最も側にいる仲間たちの元へと急いだ。だが、彼らは知らなかったのである。中央の流れで戦うリースたちもまた、多くの仲間たちを失っていたことを。
 
●再び、中央の河岸
 濡れて冷たくなったヴィルジニーとヴァニレアンスの身体を、エイジは両脇に抱えていた。水辺に辿り着いた彼らを、駆けつけたリースとユウキが陸へと引き上げてくれた。
 全身に魔炎を燻らせたまま、スクウェアは膨れあがる水面を見ていた。魔物の頭が現れ、続いて巨大な刀剣がその切っ先を彼へと突きつける。異形の貌を持つ焔の塊を放ったスクウェアだったが、巨躯をそびやかす敵は倒れてくれなかった。術士の身体は、脆くも激烈な斬撃によって破壊されたのだった。
 残された戦力は、リース、ユウキ、そして、エイジのたった三名となっていた。彼女らは、倍以上の怪我人たちを護らねばならない、危機的な状況に陥っていた。三人は魔物の攻撃をただひたすらに、しのぎにしのいだ。さらに、絶望的な出来事が襲うとも知らずに。
 南の方角、三名が背にして立つ本流の方から、水の膜がめくれあがる大きな音がした。白濁した帳をまとい、立ち上がった巨大な影は、もう一体の魔物。冒険者たちは、挟撃の危機に見舞われていたのである。
 
 だが……その時だった。水面下を金色に煌めく何かが這い進み、魔物の足下へと辿り着いたかと思うなり、小さな波紋を広げて、ひとりの少女が飛び跳ねた。
 光の弧を刻む蹴りを放ったのはフィリスだった。南西から魔物を追ってきたのだ。白い川辺の砂にまみれて横たわるヴァニラの姿を認めるなり、シャリオルは外衣を投げ捨て、北東の魔物へと斬りかかった。あたりへと薔薇の花を彷徨わせ、荊の十字をもって鈍色の皮膚を刻んでいく。
「直ぐに回復を致します……」
 囁くなりアキトは、その身体から淡く光彩ながらも力強く波打つ、光の輪を戦場に咲かせた。聖寵祈祷・リアが追随し、リースたちの傷がたちどころに癒える。
 甲冑の合間から大量の水を滴らせ、ゼオルは魔物の行く手を阻むように位置取った。我が身へと撃ち込まれた斬撃にも、聖鎧の力を借り、かろうじて耐える。だが、それは仕方のないことだった。誰かが言わねばならない。彼は悔しさを噛みしめるように言った。
「撤退いたしましょう……皆さん、急いでください」
 東の方角へは逃げられない。河が交わる場所だからだ。西へならば、川沿いを走ることができる。動ける者は皆、四肢から力を失った仲間の身体を担いだ。
 撤退する仲間の壁となり、ファウは最後まで魔物と剣を交えるひとりとして戦った。そこで、彼は一矢を報いたのだった。青い闘気を走らせた武具が振り抜かれると、南西の魔物が地響きをたてて倒れたのである。
 残る魔物は一体となったが、すでに冒険者たちに力は残されておらず、すべてを倒すことは惜しくも叶わなかった。


マスター:水原曜 紹介ページ
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死亡者:なし
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