アリス



<オープニング>


●救出依頼
「つー訳で、お仕事っすよー」
 ヒトの霊査士・フィオナ(a90255)は、何時もと同じ調子でカウンターの冒険者達に告げた。
「どんな仕事だ?」
「街に程近い街道で盗賊に遭い、森に入って逃げた所、グドンに捕まってしまったらしいご夫妻の救出です」
「それは、また……壮絶に運が悪いな……」
「ですです。
 で、今回そのご夫妻――パパさんとママさんをですね、助けて欲しいという依頼が、その娘さんから来まして」
「どんな娘さん何だ?」
 聞けば、良くある話である。
 ふむふむと頷いた冒険者達は、何気なしに聞く。
「それが、ですね、そのー……」
 が、フィオナの反応は予想外に微妙であった。
「……どうした?」
「や、その。名前は、アリスちゃん。
 長い金髪に赤目、青いエプロンドレスを着たとても可愛らしいお嬢さんですよ……十歳位の」
 何かこう、色々と微妙である。
「で、お前さんがそういう反応をするという事は……」
「ええ、そのお嬢さん。『ぱぱとままは、わたしがぜったいたすけだすんだから!』だそうで。
 彼女、何と驚き同行するそうです」
「そーだろーよ」
 薄々、そう言われるような予感があったのか、冒険者達は驚かず、ただ嫌な顔をする。
「流石に十歳は……」
「アタシもそう言いましたとも。
 が、何ですか。『わたしのぱぱとままなんだから、わたしのいしはそんちょうしてほしいものだわね』だそうで。更には、
『あのあたりのもりは、わたしくわしいのよ。
 いっこくをあらそうんだから、くわしいじょうほうをてにいれることはひつようだとおもうの』だそうで。
 いやー、最近のお子様は大人顔負けですねー。
 きっと、余程心配なんでしょうけど。まぁ、そんな訳でお願いしたいんですが」
 冒険者達は溜息を吐く。今回の仕事も一筋縄ではいかない様子。
 アリスちゃん、色々と手強そうである。

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参加者
緑薔薇さま・エレナ(a06559)
蒼く揺れる月・エクセル(a12276)
幻蒼狼牙・ダリア(a17620)
血濡れの人形姫・アリス(a25128)
前進する想い・キュオン(a26505)
白鞘・サヤ(a30151)
か弱い武道家・セリーナ(a35404)
沈みゆく天の彩り・フューラ(a36770)
激昂の・アーバイン(a40094)
ヒトの医術士・エイル(a40956)


<リプレイ>

●強襲! アリスちゃん
「……この子も同行するのか……」
 戸惑い気味に漏れたのは、吼え猛る月狼・ダリア(a17620)の呟き。
「なによ、わたしだってちゃんとやくにたつんだからね」
「さいきん、おはだのつやがわるいのよ。こまったものなのよね〜」
「かみのていれにはあのせっけんがいいのよ。まちでのはやりなんだから」
(「なんつー……マセた餓鬼……」)
 その内心はさて置いて、血風の獣姫・アリス(a25128)と依頼人アリス。二人のアリスが並べば、少女同士それなりに自然な絵にはなったが。
「あとでわたしがすきんけあをおしえてあげるわ」
 場を支配する尊大な平仮名は、中々に手強かった。
「兎に角! つー訳で……」
 吸血鬼もまたいで通る・セリーナ(a35404)が、ビシっとポーズを決める。
「か弱い美少女武道家・セリーナ様にお任せよ♪」
「じぶんでじぶんのことをかよわいとかいうおんなは、けっしてかよわかったりしないとおもうの」
「……」
「だけど、わたしあえていおうとおもうの。せりーなひっしだな」
「黙らっしゃい、我儘姫二号!」
 一号が誰かなんて、語るだけ言葉の無駄である。
(「でも、アリスさん……」)
 白鞘・サヤ(a30151)は形の良い眉を少しだけ曇らせながら少女を見ていた。
(「……御両親の事、心配なんでしょうね……」)
 快活でマセた少女に不似合いな影がある。それが小さいままである事を、最後まで彼女が今のように笑っている事を彼女は願って止まなかった。

●泣く?
 森には、冒険者十人と、一人の少女。
 乾いた土の上を行く一行の頬を冷たい風が撫でる。
「後、どこか心当たりありますか?」
「たぶん、こっちのはずだけど」
 サヤの問いに答える、青いエプロンドレスを着た可愛い金髪の少女――アリスの口数が少なくなってきたのは、何時頃からの事だったろうか。少女が言った通り、事態は急を要していた。行程で、話をしていた時以上に、それを痛感してしまったのかも知れない。
「いざという時に全力を出すには、常に万全の体調を保たないとだめですよ」
 ドリアッドの舞踏家・エレナ(a06559)の用意されたサンドイッチを食べている間も、
「大丈夫……? 無理はしないでね……?」
 意外にも――と言っては失礼になるが、子供が好きな新妻の蒼く揺れる月・エクセル(a12276)に飴を渡されても少女の表情は晴れない。
 言うだけの事はあり、彼女は「フィオナが視た」と思しき、開けた場所の数箇所に冒険者を案内していたが、ここまでは空振り。

 ――――♪

「意外と奥までお逃げになったみたいですわね……」
 エレナが獣の歌で集めた情報も芳しくはない。
 快活な少女の沈黙は、想いは自然と冒険者達に伝播する。彼等は、この少女の笑顔を守る為に仕事を請けたのだから――それは余りに不本意だった。
「大丈夫だよ」
 少女の肩に手を置き、前進する想い・キュオン(a26505)が言う。
「大丈夫」
 多くを語らず二度言って微笑む彼に、アリスは小さくこくりと頷く。
 無論、それでたちどころに不安が払拭される事等あるまいが……
(「小さなレディの為です、何とかして差し上げたいですね」)
 片目を閉じて、空言師・フューラ(a36770)の見る少女は、気丈だった。
 時折、少し苦しそうにするのは、恐らくは沸き上がってくる涙を抑える動作なのだろうが。泣き始めてもおかしくはない現状なのに、彼女は必死に堪えていた。
 同行を申し出た自分が足手纏いにならないように考えての事なのか、それとも泣いたら動けなくなってしまう気でもしているのか――彼には分からなかったが。
 ハッキリしている事は、一つ。
「立派な、レディです」
 思わず、フューラの口から呟きが漏れる。
「冒険者は、強いんだぞ?」
 自らのズボンを引っ張るようにしたアリスに、激昂の・アーバイン(a40094)が優しく告げる。
「傷一つ付けさせないから――」
 最悪の想像はせずに、彼は敢えてそう言った。
 決意が、自らを奮い立たせ、運命を決定付ける材料になるように願って。
 ややあって、
「これは……?」
 ヒトの医術士・エイル(a40956)が、偶に目にした痕跡に目を留める。
 茂みを掻き分けて覗き込んだ先――森の奥に通じる獣道の入り口には、「二本足の動物の足跡」が残されていた。
「こ……このさきにも、ひらけたばしょはあるの!」
 泣きそうだったアリスの表情に朱がさす。
「……どうやら、この先のようですわね」
 エイルの見つけた痕跡、アリスの言葉を、エレナの得た情報が裏付ける。
(「やれやれ、今度こそ……か?」)
 アリスは、一つ嘆息をして、
(「そうであってくれなくちゃ――オレが何より困るんだけどな」)
 ハッキリと安堵した。
 同年代らしく振る舞い、子供の機嫌を取る事もそう容易くはない。気を逸らすネタがタネ切れになる前に進展があって良かったと言わざるを得ない。
(「ガキが、泣きだすとメンドくせぇからな」)
 これ又同じく、お子様の意見ではあるのだが。

●愚鈍な獣
「……ぱぱ……まま……!」
「御気を落ち着けて」
 息を呑み、飛び出しかけた少女をフューラが止める。
「ここからが、冒険者の仕事ですから」
 少女の父母――問題の夫妻は、二十体程のグドンが群れているその場所の中央辺りに居た。
(「とはいえ……少し攻め難いですね」)
 まさかグドン達は、計算している訳ではあるまいが。夫妻の位置は即座に救出に向かうには余り良い位置では無かった。歴戦の彼等がグドン如きに遅れを取る事は有り得ずとも――
「作戦通りに、だな」
 ダリアの言葉にパーティは頷く。
「……頼んだぞ」
 彼女は、エレナ、フューラ、エイルと共に少女の護衛につく事になっていた。
 彼女の守りだけは万全過ぎる程で間違いがあるまい。残りの六人の内三人が、正面からグドンを強襲、殲滅に当たり、残りの三人が迂回して隙を突き多角攻撃を以って迅速に夫妻を救出する手筈となっている。
「じゃ、行こうか」
 気配を殺し、キュオンが、
「アリスさん……くれぐれもお気をつけて。皆さんの後ろから動かないようにして下さいね?」
「待ってろ、すぐに助けてくる」
 サヤがアーバインがゆっくりとその場を離れていく。
 彼等三人が所定のポイントについたのを確認して――
「じゃ、か弱い! 私が行くから」
 残った三人――セリーナが、
「一匹たりとも逃がすわけにはいかないわね。またアリスちゃんがご両親と遊びにこられるように……」
 大きく頷くアリスにウィンクを一つして、エクセルが、
「んじゃ、軽く片付けてやるかね」
 得物の鋼糸を軽くしならせ、漆黒の髪を風に揺らした少女が言った。

●Alice in Danger Land
 ガアア――!
 威嚇するような怒りの咆哮が、冬の森に響き渡る。
「はっ……!」
 グドンの群れに対して、敢えて己の存在を誇示するかのように突撃したのはエクセルだった。
「さぁ、死ぬほど痛いわよ……?」
 裂帛の気合を以って、迎撃に出たグドンを怯ませ。彼女の巨大剣が閃く。
 流れる水の如く正面を薙ぎ払った彼女に続き、
「あーもう……」
 汚い錆びた斧を軽々避けた、
「犬グドンに襲われるか弱い美女、なんて絵になるのかしら」
 セリーナが。
「いっそ、このままさらわれてみようかしら。
 白ノソリンに乗った格好いい王子様が助けに来てくれるかしら……」
 夢見がちな戯言と共に、グドンを簡単に蹴り倒す。
「ちっとばっかし謳ってもらうぜ。グドンどもっ!」
 冷たく笑むアリスの放った気の刃が、連続して間合いを走る。
「は――! 他愛ねぇ!」
 実力そのものが違いすぎるとでも言うべきか。
 一瞬の攻防の内に、グドンは実に三体も打ち倒されていたが。
 ガア!
 怒りの形相で彼等三人に、背後のアリス達五人へと殺到したグドンはそれぞれの得物を手に咆哮を上げる。

 ――――♪

 アリスのドレスに防御力を付与したエレナが、今度は高く歌う。
 グドンの二体は、近寄るより前に眠りに落ちる。
「……後ろには一歩たりとも通させはしない!」
 鮮烈な声と共に、ダリアの二刀が一閃される。
 斬り倒された仲間に構わず、グドン達は彼女に襲い掛かるが。
「――ッ!」
 キン――!
 剣戟の声を立てながら、彼女はコレを何とか凌ぐ。
「恐れ入りますが、貴方には余りいいモノではありませんから」
 グドン達の声に怯え、足元にしがみ付いたアリスを背に置き。フューラはむしろ微笑んだ。
「そう、そのまま。どうぞ、僕達を信じて――」
 光の雨が弾幕となって降り注ぐ。
 グドン達はその光と音、威力にその突進力を奪われていた。
「――このまま、参りましょう」
 エイルの癒しが、傷付いたダリアを癒す。
 彼女が確認した前方では、既に横合いから襲撃を開始した救出班が夫妻のもとに到着していた。

●愚鈍な獣
 無音の一撃が閃く。
 声も無く絶命したグドンを越え、アーバインはぐったりとする夫妻を担ぐようにした。
「頑張れ、アリスが待っているぞ」
「よし!」
 それを確認したキュオンの蜘蛛糸が、一瞬で向かってきたグドン達を縛り上げる。
 まずは夫妻の安全である。幸いにも正面からグドンに向かった三人の仲間も順調に敵の数を減らしていた。
「アーバインさん、ご夫妻を下げてください!」
 向かってきたグドンに手痛い針の雨を浴びせかけ、サヤが言う。
 二人を抱えて下がり始めたアーバインを背に、彼女はきっと敵を見た。
「――後は」
 そう、倒すだけ。

●大団円
「御無事で安心しましたわ」
 エレナがそっと微笑む。
「アリスちゃん、パパとママに会えてよかったね♪」
 アリスからアリスへ。
(「少しだけ……アリスちゃんが羨ましいわね。私に両親の記憶はないから……」)
 エクセルの前には、幸福な大団円があった。
「……本当に有難う御座います」
 救出された夫妻は、幸いにも命に別状は無かった。
 多少の怪我こそ負っていたものの、それもサヤの癒しによって全快している。
「この御恩は一生……」
 緊張の糸が完全に切れたのか――父に、母に抱きついてぐすぐすと泣くアリスを優しく撫でながら、夫妻は揃って深く頭を下げる。
「お前も、もう泣かなくていいんだよ?」
「わ、わたし、ないてないもん!」
 説得力の無い言葉と共にぱっと離れて虚勢を張ったアリスの頭を、
「よく頑張ったな」
 アーバインの手が優しく撫でた。
「な、あなた! れでぃのあたまをきやすくなでるなんて、むしんけいすぎませんこと」
 些か棒読み。
 彼女は、顔を真っ赤にしていた。
「えらいぞ。頑張ったからご褒美だ――肩車してやろうか?」
 差し出されたお菓子を受け取りつつも、アリスは複雑な顔をする。
「れでぃは、かたぐるまなんかでよろこんだりしないとおもうの」
 でも、して欲しそう。
「アーバインさん」
 フューラが、ちちと指を振る。
「こういう時は……」
 彼は、屈むようにして少女と視線を合わせ、
「ハンカチもお付けしましょう。
 僕達も男ですから、魅力的なレディには笑っていて頂きたいのですよ」
 そんな風に言った。
(「成る程、小さくても女の子か」)
 ふむ、とダリアが頷く。
「そ、そんなにしたいならさせてあげるわ。しかたないから!」
 夕暮れの森に、一同の笑いが響く。
(「むねが、なにかどきどきするの」)
 マセるのも程々に、せめて後数年は経たないとお兄さん達も困ると思うよ?
 少しだけ微妙な感情を残し――少女の冒険は、かくして幕を閉じた。


マスター:YAMIDEITEI 紹介ページ
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作成日:2006/01/06
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白鞘・サヤ(a30151)  2009年12月22日 22時  通報
アリスさんがいい性格(ほめ言葉)してますね
良い子ですw