旧モンスター地域復興 〜闇の中に瞬く光〜



<オープニング>


 命と希望は未来に捧ぐ・ローリィ(a29503)が救急箱の蓋を閉めた傍らで、子供が穏やかな寝息を立てていた。ローリィと空色の翼の見習い医術士・ゼフィ(a35212)が顔を見合わせて頷く。背後でドアが開くと、翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)が顔をのぞかせた。
「どう?」
「うん、だいぶ落ち着いたよ」
「……何か、分かりましたか?」
 ゼフィの問いに、首を振るナタク。
「今、ミャアさんたちが聞き込みしてる。モンスターにさらわれたのに、奇跡的に助かったみたいらしいね」

 ひょんなことから、道に倒れていた子供を助けた、愛を振りまく翼・ミャア(a25700)たち冒険者の一行がたどり着いた小さな寒村。村人たちは、一様に死んだような顔つきで、目の下に巨大なくまを作っていた。冒険者達が腰に下げた剣が音を立てるたびに、過敏なまでに反応する様子に、一同は顔を見合わせるしかなかった。ほどなく、助けた子供が村人の子供であることが分かった。
「では、毎晩モンスターがやってくるのねぇ」
 ミャアの問いに、子供の父親は頷いた。
「どこからやってくるのかも分からない。分かったことといえば、夜になると襲ってくる……か」
 前進する想い・キュオン(a26505)が頭をかく。
「モンスターの姿形はわからないのですか?」
「はっきり見たわけじゃないので……こうもりみたいな羽がついていて、とても恐ろしい怪物としか。それが何体もいるんです」
 紅蓮の刃・レン(a25007)の問いに答える父親の顔は怯えていた。
「忘れてましたわ。ルーコ、これを拾いましたの」
 大海原のお嬢様・ルーコ(a30140)が、ふと思い出したかのように取り出したのは、原型をとどめていないカンテラだった。
「これが子供のそばに落ちてましたの」
 父親が言うには、子供が持ち出したカンテラらしい。そういえば……と父親が思い出したように言った。
「一度だけ……村人総出で怪物を追い返そうとした時に」
「時に?」
 全員が身を乗り出した。
「たいまつとカンテラを見て、モンスターが恐ろしい悲鳴をあげたのを思い出しました。結局全員で逃げ出してしまったので、追い返すどころの騒ぎではありませんでしたが、モンスターが激しく暴れたのを覚えています」
「それは面白いね」
 部屋に戻ってきたナタクが言った。
「もしかしたら、その辺りにモンスターを倒す鍵があるかな?」
「同感ねぇ。あたしもそう思う」
 ミャアが頷く。
「今晩は月が出そうにないから、今夜あたりは危ないかもね」
 窓の外を見たキュオンの言葉に、ナタクが答えた。
「決戦、だね」
 その言葉に、冒険者たちは無言で武器を手に取るのであった。

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参加者
翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)
碧風の翼・レン(a25007)
愛を振りまく翼・ミャア(a25700)
前進する想い・キュオン(a26505)
偽りの贖罪者・ローリィ(a29503)
大海原のお嬢様・ルーコ(a30140)
黒百合と歩む意志・ティア(a34311)
小さな絵描き天使・ゼフィ(a35212)


<リプレイ>

「ボク達が今日で最後にしますから……今日だけは、耐えてください」
 命と希望は未来に捧ぐ・ローリィ(a29503)の指示で、村人達は村の集会所に集められていた。建物の窓は全て雨戸を締め切っている。不安の色を滲ませる村人達に、建物から絶対に出ないようにと、紅蓮の刃・レン(a25007)と愛を振りまく翼・ミャア(a25700)が説明した。これから夜明けまで、一切の明かりはつけることは許されなかった。
「ホントに大丈夫なのですか?」
 村人の問いに、大海原のお嬢様・ルーコ(a30140)は自信たっぷりの表情で答えた。
「もちろんですわ。モンスターたちなど、ルーコ達に任せておけば安心ですわ〜」
 ルーコはふと、村人の後ろから覗き込む少女を見た。笑顔を失ってしまったその表情に、ルーコは心が痛んだ。そっとしゃがむと笑顔で子供の頭を撫でた。不意に聞こえる歌声に、え?となる村人たち。空色の翼の見習い医術士・ゼフィ(a35212)の歌声だった。
「みんなの……居場所を失うこと、させたくないから。だから……精一杯、がんばるよ」
と、ゼフィが言った。
「怪物は、ルーコが倒しますの。だから、ここから出てはいけませんのよ?」
 少女はこくりと頷く。一同の前でドアが閉じられ、鍵が掛けられる。振り返ったルーコの顔からは、先ほどの笑みは消えていた。
「これで全部ですの?」
「これで全部です」
 ルーコの問いに頷くレン。
「あとは、モンスターが来るのを待つだけねぇ」
 ミャアは建物のドアが固く閉ざされているのを確認すると、建物を後にした。
 
 頭上に広がる漆黒の夜空に、月の姿はない。
 祝福されし思い出・ティア(a34311)の小さなくしゃみが一つ寒空に響き、身体を震わせた。
「ティアちゃん、寒い?」
 一人仁王立ちしたまま、闇の向こうを見据えるのは、前進する想い・キュオン(a26505)。
「なんだか緊張しますね。ミャアさん、大丈夫でしょうか」
「大丈夫じゃないかな?」
 ちょっと不安だけど、と口ごもるキュオン。
「キュオン君、囮役は任せてねぇ?」
 と言って、満面の笑みを浮かべて自ら囮役を買って出たミャアに、キュオンは一抹の不安を覚えていた。
「ミャア姉、何やる気なんだろ?」

「何かこっちに来てる!」
 最初に気が付いたのは、翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)だった。振り返ったナタクの向こうで、キュオンが頷いた。ルーコとティアが何かを囁くと、次々と姿をあらわした土塊の下僕が、あらかじめ準備されたカンテラに近づいていく。息を潜めて待つゼフィが空色の翼杖を握り締め、ローリィが、召喚した土塊の下僕を見つめる。
 羽音らしきものは、ゆっくりとミャアの方へと近づいてきた。空中を飛ぶ、というよりは高さ3メートルほどくらいの高さを移動しているという感じだった。キュオンの目には、シルエットははっきりと伺えないが、蝙蝠のような羽を広げて、低空をなめるように進んでくるのが分かった。数は10匹ほどか。
 と、不意にモンスターの動きが止まった。羽音をさせたまま、進むのをためらっているようだった。
「気付かれたかな?」
 ローリィが呟く。キュオンは決断を迫られた。ためらうように、速度を落として再び動き始めるモンスターに、キュオンは怒鳴った。
「目標正面ッ! いまだっ!」
「待ってましたわ」
「お願い、効いて!」
「それっ!」
 一斉にシャッターが開かれるランタンの明かりが、空中を照らし出した。いくつかはあさっての方向を向いたが、いくつかはモンスターの一体を捕らえた。つんざくような悲鳴をあげると、カンテラ目掛けて突撃した。地面に降りると、土塊の下僕ごと手当たり次第にカンテラを吹っ飛ばした。そこへ、ミャアの頭上に燦然と光り輝くホーリーライトが、モンスターたちを闇の中に浮かび上がらせた。一同の視線は醜悪なモンスター……ではなく、ミャアに向けられた。キュオンは戦闘中であるのを忘れてずっこけそうになった。
「ミャア姉、こんな時に何やってんだよーッ」
「あー、ミャアさん、ずるいですわ!」
 ルーコがうらやましそうに口を尖らせる。一同の視線の先には、どこかの舞台衣装も真っ青といわんばかりの、背中に巨大な蝶の羽のような飾りとともに、金と銀のド派手なスパンコールのドレス姿のミャアが両手を広げて立っていた。
「愛を振りまく翼、オン・ステェージっ♪」
 ミャアのファナティックソングが、夜空に響き渡る。恍惚状態のミャアの歌声に、数匹のモンスターが、全身から血を噴きながら、地上に叩きつけられた。が、残ったモンスターは、ホーリーライトの光にあきらかな拒絶反応を示しつつも、一斉にミャアに襲い掛かった。
「そうはさせないよっ」
 ナタクが、モンスターの前に立ちはだかる。キルドレッドブルーと融合したナタクの半身からは、魔氷と魔炎が噴出する。だが、モンスターたちの矛先は、直接的な光を発しているミャアに向けられていた。
「そうはさせませんわよ!」
 ルーコの前に浮かび上がる紋章から、次々と発せられた光のシャワーが、モンスターたちに浴びせられた。
「挨拶代わりだ! 喰らえ!!」
 キュオンの千楽から放たれた稲妻の矢が、モンスターの一匹をぶち抜いた。ファナティックソングの影響で体中から血を噴いたモンスターが、大きくよろめいた。
「もらった!」
 よろめいたモンスターの懐に飛び込んだのはレン。その足が光の弧を描き終えると、顎に直撃を受けたモンスターが吹っ飛ばされると、そのまま動かなくなった。
「ナタク、一匹行った!」
 怒鳴ったレンの声に呼応するように、ナタクは突進してくるモンスターを正面から見据えた。アンデッドに蝙蝠の翼が生えてるかも……と彼女は呟いた。
「ナタクさん、危ないッ」
 悲鳴をあげるティア。モンスターの両腕が、ナタクに振り下ろされる。
「ボクをつかまえようなんて……」
 ナタクの目が光った。襲い掛かってきたモンスターの腕をナタクは素早くつかんだ。
「早いんじゃない?」
 モンスターの体が宙を舞った。地面に叩きつけられつつも起き上がったモンスターに、混乱した別のモンスターが襲いかかった。
「お願い、皆の反応速度を!」
 ティアのチキンスピードが、冒険者たちの動きを早める。だが、ファナティックソングの効果が及んでいないモンスターは、ひるむことなく襲ってきた。
「ミャア姉!」
 キュオンはためらうことなくやじりを向けると、矢を放った。ライトニングアローが命中するも、モンスターは、にじり寄るかのようにミャアに迫る。
「ミャアさん!」
 ローリィが慌ててニードルスピアを撃つ。だが、モンスターを止めることが出来ない。そこへ滑り込むようにして飛び込んだのはナタクとレン。
「させないよッ!
 だが、モンスターの攻撃がほんの少し早かった。ナタクは、モンスターの攻撃を辛うじて受け止めたものの、強烈な一撃を食らって倒れた。
「ナタクさんッ! この野郎ッ」
 レンは、振り向きざまにモンスターに斬鉄蹴を叩き込んだ。モンスターの首があさっての方向を向き、しとめた、と思った次の瞬間、レンの体が宙を舞っていた。モンスターの腕が、レンを吹っ飛ばしたのである。別の方向から近づいてきたモンスターがミャアに襲い掛かった。すんでのところで攻撃をかわすが、別のモンスターの一撃がミャアを捕らえた。もんどり打って倒れるミャアに、モンスターの醜悪な腕が振り上げられる。間に合わない、ミャアがそう思ったとき、モンスターがバランスを崩してよろめいた。すかさず体をさばいて逃げるミャアが見たのは、空色の翼杖を構えるゼフィだった。
「……貴方たちの相手は……私よっ!」
 キッとモンスターを見据えるゼフィ。再びエンブレムシャワーを放つ。その攻撃は、モンスターに大きなダメージを与えるには至らなかったが、ミャアたちが逃げ出すための時間稼ぎにはなった。
「………守るよ…絶対に!」
「ナタクさん、しっかりしてください!」
 ローリィのヒーリングウェーブが、一同を淡い光で包み込む。モンスターは、冒険者たちを取り囲むようにじりじりとその包囲網を狭めていく。ミャアが再びファナティックソングを歌い始めた。数匹のモンスターが、首をかしげると全身からどす黒い血を噴いた。そのうちの何匹かが、別のモンスターに襲い掛かり、混乱が生じた。それでも、ファナティックソングの効果が及ばないモンスターが、一斉に飛び掛る。
「同じ手を何度も食うかよッ」
 レンの一撃が、モンスターに命中する。が、モンスターは怯むことなくレンに醜悪な腕を振り下ろす。それを危ういところでかわす。
「ボクたちはここで負けるわけには、いかないんだよっ!」
 ナタクの拳がうなりをあげてモンスターに叩き込まれると、吹っ飛ばされるモンスター。
「そのまま眠っていてもよろしいですのよ? というか、眠りなさいですの!」
 ルーコの頭上で描かれる紋章から、紅の火球が現れると、よろめきつつ立ち上がったモンスターに命中した。炎に包まれるモンスターが悲鳴と共に、地面に崩れ落ちる。
「ナタクさん、後ろですッ!」
 ティアが悲鳴をあげた。はっと振り返ったナタクの背後にモンスターが迫っていた。振り下ろされたその腕をぎりぎりでかわす。
「……間に合って!」
 ゼフィのエンブレムシャワーが、ナタクに群がり始めたモンスターに浴びせられる。
「ち、数が多過ぎる!」
 キュオンのライトニングアローが、ナタクに掴みかかろうとしたモンスターの脳天を貫いた。ふらふらと後ずさったモンスターに、混乱した別のモンスターの攻撃が命中し、そのまま倒れた。が、ナタクが全てのモンスターを相手にするのは無理があった。ついにその攻撃がナタクを捉えた。
「ナタクッ!」
 レンが割って入ろうとしたが、間に合わなかった。ナタクはモンスターの最初の一撃をバックラーで食い止めたが、ニ撃目までかわすことが出来なかった。鈍い音と共に、ナタクの腹に食い込む一撃。
「まだ……だよ?」
 ナタクはニヤリとすると、モンスターに斬鉄蹴を放った。のけぞりつつ崩れ落ちるモンスター。レンがナタクの背後にとっさに滑り込み、そのまま襲い掛かろうとしたモンスターに蹴りを放った。がくりと倒れるモンスター。
「ナタクさん、しっかりしてください!」
 ティアがヒーリングウェーブを用意するより早く、ナタクはそのまま地面に崩れ落ちた。
「ナタクさん?! 許さないですわよッ!!」
 怒りに震えたルーコのエンブレムノヴァが、モンスターを吹き飛ばすと、動かなくなった。
「みんな、しっかりして!」
 ミャアのヒーリングウェーブが、冒険者達の体力を回復させる。モンスターは、同士討ちも含めてその数を減らしつつあったが、危機的状況には変わらなかった。迫るモンスターに、レンが突っ込む。
「レンさん、だめぇ!」
 ミャアが叫ぶ。だが、ナタクが倒れた今前衛を守れるのはレンだけだった。一瞬脳裏に浮かぶ婚約者の顔。レンの鋭い蹴りの一撃が、モンスターに命中した。全身から血を噴き出しつつ、モンスターがゆっくりと倒れ、それに襲い掛かる別のモンスター。残ったモンスターがレンに一斉に飛び掛る。
「そろそろ……バイバイしようや!」
 キュオンのホーミングアローが、モンスターを深々と貫いた。後ずさるモンスター目掛けて、ローリィのニードルスピアが浴びせられる。キュオンの一撃を食らった一体が崩れ落ちる。
「キュオン君、左!」
「分かってる、ミャア姉!」
 キュオンの矢が、モンスターに命中する。だが、一瞬の隙をついて飛び込んできたモンスターが、ゼフィに襲い掛かる。かわそうとしたゼフィだが、間に合わなかった。
「……ごめん……なさい」
 ゼフィが倒れた。とどめを刺そうと振り上げた腕から、ゼフィを救ったのはレンだった。が、代わりにレンがその攻撃をまともに受け止めてしまった。
「……レンさん?」
 目を見開いたゼフィの頭上で、苦痛で顔をゆがませつつレンがニヤリとした。黒いマントが、レンをモンスターの攻撃から守ったのである。すかさず放たれたキュオンのライトニングアローが、モンスターの背中を貫いた。ゆっくりと振り返ったモンスターに、ルーコの怒りのエンブレムノヴァが命中すると、悲鳴をあげてモンスターがのたうち回る。ゆっくりと立ち上がったゼフィが、エンブレムシャワーを浴びせると、モンスターは大きく体を震わせて動かなくなった。そのままふらりと倒れこもうとするゼフィを、ティアが受け止めた。
「ゼフィさん、しっかりして下さいッ」
 ミャアは、無言で周囲を見回した。累々と転がる死体を見つめると、弓を下ろしたキュオンを見た。無言で頷き返すキュオン。
「敵は全部倒したよ、ミャア姉」
「みんな無事でよかったです」
 ローリィの言葉に、ミャアが答えた。
「……ちょっと、手酷くやられちゃったわね」

 翌日。
 モンスターとの激戦の跡に、石を立てて作られた小さな墓が出来ていた。
「せめてボクらは、貴方のことを忘れずにいます……ゆっくりと眠ってください」
 ローリィは、墓に手を合わせると静かにその場を後にする。
 
 静かな夜が戻ったのは、それからまもなくのことだった。


マスター:氷魚中将 紹介ページ
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作成日:2006/01/25
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