超おみくじ



<オープニング>


●討伐以来
「六角形の筒のようなヤツです」
 ヒトの霊査士・フィオナ(a90255)は、いつもと同じくやぶからぼうにそう言った。
「……は?」
「お仕事っすよ、オシゴト。
 そーゆー形のモンスターが出たってお話です」
「……お前さ」
「あンですかー?」
「会話、しようよ」
 即ちそれは、心と心のキャッチボール。
「閑話休題。
 そのモンスターは、何ていうか、こう。
 おめでたいというか季節柄タイムリーと言うか、そういうヤツなんですね」
「……?」
「おみくじ付き、みたいな」
「何だそれ……」
「攻撃が全てランダムで放たれるようです。
 大吉なら……運が良ければ軽打。大凶なら……」
 フィオナは、ちょっと怖い顔をして……
「ばん! です」
 俄かに大声を出した。
「面白い外見と性質の割に危ねーヤツです。
 そう油断は出来ませんが、皆さん新年早々運試しもかねて人助けは如何っすかー?」
「ああ。まぁ、それは兎も角」
「……?」
「お前はおみくじとか引いたの?」
 時が凍る。
 そんなもの、無論大凶に決まっているではないか。

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参加者
闇に魅入られし欠片・リュミエール(a15514)
守護風・レイム(a25946)
月華流麗・アルトリア(a30380)
螺旋蜘蛛・ニコレット(a32524)
元気いっぱいねこしっぽ・クララ(a34109)
天蒼の探索者・ユミル(a35959)
追放するもの・ハムラビ(a36669)
闇夜の噂を商う紫炎の操劇・シエン(a37609)
蒼海の風・カレン(a38616)
野に咲く青薔薇の少尉・クインシー(a41681)


<リプレイ>

●でけぇおみくじ
 冷たい風が、その街道を吹き抜ける。
「さて、誰が大凶かな? 我等と戦うモンスターが大凶である事を願うとするが……」
「ま、良ければ信じるし、悪ければ信じない。そんなもんさ」
 追放するもの・ハムラビ(a36669)の言葉に、闇夜の噂を商う紫炎の操劇・シエン(a37609)は不敵に肩を竦めてから、軽く頬を掻いた。
 新春、年の初めの運試しと言えばおみくじ。
 当たるも八卦、当たらぬも八卦――元より参考とするよりは、博打程度の気休めには違いないが、やはり縁起モノである。いい結果が出れば、気持ち良い一年のスタートが切れるし、悪い結果だったならば、それはそれで気をつけようという気にもなるか。
「うわぁ、ホントにおみくじさんなのです……」
 年明け早々、タイムリーに街道を騒がせるおみくじ型モンスター、誰が呼んだか――フィオナが呼んだ傍迷惑なその名も超おみくじ。
 成る程、その討伐に赴いた冒険者達の視線の先にはそれそのまんまな物体が浮いていた。
「新春早々おみくじさんが相手とはおめでたい! そしておもしろいのです!
 しかしながらですね、道行く人に攻撃してくるとは迷惑千万!
 そんな悪いおみくじさんはクララがやっつけるのです!」
 指を指した元気爆発ねこしっぽ・クララ(a34109)の啖呵が綺麗に決まる。
 浮遊するおみくじは、マイペースにふらりふらりと揺れるばかりではあったが。
「まぁ、お笑い系――脱力系とは言え、な……」
 蒼薔薇の少尉・クインシー(a41681)は苦笑い混じりにソレを見て呟く。
「一般人への被害は、職分として到底見過ごせない一件だろう」
 そう。恐ろしく微妙でコミカルとさえ言えるこの六角形の筒は……そんな風で居て、中々に容赦がない。
「強制とは……また迷惑なおみくじですね」
 蒼風の守護騎士・アルトリア(a30380)の言葉に苦味が混じり、
「おみくじは、けして強制的に引かせるものじゃないです。それに、結末が変わらないなんて」
 間近に迫った戦いの時に、風を司りし竜の娘・レイム(a25946)が構えを取る。
 嗚呼、彼女達の言葉は黒い至言であった。
 新春早々、ソレにおみくじを引かされた哀れな犠牲者達は――唯の一人の例外も無く、殺されている。
「後悔、なさいませ」
 水の歌声・カレン(a38616)の声が凛と響く。
 何時の間にやら、緩んだ空気は霧散していた。
 そう、例え「大吉」を引こうとも――ソレの次の動作は、相手の運に依存するばかり。
 最初の十秒、次の十秒――規格外の運の良さで、その次の十秒すら永らえた所で変わらないのだ。この意地悪な運命に相対した犠牲者の結末は。
「運任せ、というのはあまり好きではありませんが。
 このようなモンスターでは、仕方ありませんわね」
 黒炎を纏いし彼女は、小さく溜息を吐く。
「噂よりも可愛らしいお姿――性質も言葉程度に可愛らしければ良かったのですけれどもね」
 ドリアッドの詐欺師・リュミエール(a15514)の瞳が、冷たい光を帯びた。
「すぐに、倒させて頂きますわ」
「同感。とにかく、年明け早々モンスターなんかに出てこられては、せっかくの新年が台無しだ」
 螺旋蜘蛛・ニコレット(a32524)の細い指先が、魔道書の表紙を捲る。
 六角形の筒が怪しく揺れ、冒険者達は一気に駆け出した。
「今年一年の運勢を占う絶好の機会ですね――」
 天蒼の探索者・ユミル(a35959)が、力を込めて敵を見据える。
「――なんとしても大吉を引いてみせますよ!」
 ……え? 意気込みは、そっちなの?

●迷惑なおみくじ
「思う程、簡単な相手では無いでしょうから――」
 ユミルの付与が、アルトリアの鎧を包む。
「――まずは、頼みますよ」
「ありがとうございます!」
 闇色のマントを纏いて、アルトリアは駆ける。
(「これ以上犠牲者が出ないよう――」)
 接敵し、強い決意の込められた彼女のサーベルが突きの形に繰り出した。
 月姫―終式―と銘打たれたその銀光は、優美に舞い流れるように――彼我の最後の距離を埋める。
 連続で閃いた鋭い突きは、光の軌道を残し次々と赤い薔薇を咲き乱れさせていく。
「油断大敵! 心して掛かるのです!」
 その彼女に、大凶を引く前に仕留めなければ――とクララが続く。
 敵の実力が、運次第である以上は――果敢な連続攻撃を以って、早々に追い詰めるしかない。確率論で考えるならば、この敵に実力を発揮させるのは、やはり単純に時間であった。
「――行きますよー!」
 ぐ、と沈み込むようにして力を溜めた彼女は、体中のバネを生かして小さな身体からは考えられない急角度の回し蹴りを繰り出した。
 空中に描かれるのは、光の弧。鉄すら切り裂く蹴撃は、アルトリアの剣戟に怯んだ超おみくじの表面を掠り傷付けた。
 しかし――浅い。
「来ます――!」
 レイムの警告が響いたのと、超おみくじが激しく揺れだしたのは同時だった。
「……え? ボク……?」
 それは、一瞬の激動の後――目標をしかと見定めていた。
 呆気に取られたニコレットが動作を取るより早く――超おみくじから七色の光が放たれた。
「……うあっ!」
 直撃を受けた彼女は、
「か、身体が勝手に動く! まさか、引けと――!?」
 物凄い勢いで、超おみくじへと駆け寄っていく。
 彼女が、不恰好にがらがらと巨大なおみくじを揺すると……

 ――キチナンツーカフツー

 下に開いた口から、札のようなモノが現れた。
「……」
「こういう風に引かせるんですねー……」
 レイムが、感心したように呟く。
 話を聞いた時から彼女にあった疑問は、たった今解決していた。
 ともあれ、空気が緩んだのは刹那だけ。
「……………って、それ所じゃねぇ!」
 余りに珍妙な光景に、我を失っていたシエンが叫ぶ。
 おみくじが、鮮烈な光を放ち全方位に無茶苦茶に光線をばら撒いたのはそれと同時だった。
 きゅどどどどどどど……!
「な、何て危ないおみくじでしょう……」
 リュミエールの頬を汗が伝う。
(「私が、大凶を引いてしまったら――?」)
 彼女は、嫌な予感に首をぶんぶかと振った。

●運次第
「やはり、こうなりましたか」
 ユミルのかけて回る鎧聖の守りは、結果的に多大な効果を発揮していた。
 意外にもタフな超おみくじとの死闘は――続いていた。
 性質の悪さはこの上ない。敵は、死闘を死闘と思わせないいでたちと能力を持っているのに――一端にその力はモンスターのものだった。
「自分の運は自分で切り開いてやるっ!」
 後衛を庇うように、前に出たシエンの手に白糸が絡む。
 奔流となって撃ち出された白い糸の束は、超おみくじを一直線に目指すも、これはソレの放ったビームに焼き落とされた。
(「くそ――今日はついてないっ……!」)
 彼の先刻引かされたおみくじは「凶」。
 気にするつもりは無くとも――多かれ少なかれ、気分は滅入る。
 その上、実害を伴うとなれば……それもひとしおであった。
 戦いは熾烈を極める。
「これで、どうですか――」
 レイムのウィンディム・ディ・ラーガン――赤い槍が閃く。
 彼女の身の丈よりも長い赤い光は、裂帛の気合と共に怒涛の連続攻撃を作り出した。
 幾条かの突きが、手応えを残す。
 されど、威力に欠くその攻撃は敵への決め手に欠けていた。
 だが、そこへ。
「吉だったのは、救いだが――」
 先の不覚を取り戻さんとか、
「――おみくじは願いを込めて楽しく引くものだ。
 ビームがすっ飛んでくるような迷惑おみくじは、もうまっぴら御免だねっ!」
 ニコレットの放った紋章術の光が、突き刺さる。
「えぇ。この手で運試しもしたいところですけれども、命は大切ですからね?」
 そこに、黒炎纏いしリュミエールの撃ち出した針の雨が、
「俺達はお前なんぞの指し示す結果になんぞに、屈する事はせん!」
 全身の膂力を込めて対の斧を振り切ったハムラビの爆裂する斬撃が、続く。
「大凶は、お前だ!」
 ずどむっ!
 冒険者達の渾身の連続攻撃に、流石に多少は堪えたか。超おみくじは、甲高い声を上げた。

 ――キョウダイキョウキチチュウキチダイキチキョウ!

「ほんと不気味な奴だな……!」
 クインシーの悪態が響き、光線が、次々と突き刺さる。 
「一旦、体勢を立て直してくださいませ。おみくじの方は、私が引き受けます」
「悪いな、頼む……っ」
 武器に付与の力を纏わせて、青白い火花散る一撃を叩きつけたクインシーが傷を負い、カレンの後ろに下がる。
「回復いたします。安心してくださいませ」
 柔らかい言葉に、強い意志を込めた彼女は自らの髪の色と同じ――セイレーンを思わせる青いマントで飛び来るビームを受け流す。
 彼女だけでなく、アルトリア、ユミル、ダークネスクロークを従えた三人は、強弱様々に攻撃を乱射する超おみくじに対して、強力な壁の役目を果たしていた。
「あちらも余力は薄い筈――」
 冒険者達も体力を消耗していたが、苛烈な攻撃を受ける超おみくじも又然りであった。
「斬り刻んであげましょう――!」
 カレンの言葉に頷いたアルトリアが、剣を振るい作り出した真空の刃で超おみくじを切り裂く。
「ユミルさん!」
 彼女のアシストを受け、出来た隙に防御付与を終えたユミルが駆け込んだ。
「これで、どうですか!」
 護りの天使を従えて。上段から叩きのめすように打ち付けられた聖なる一撃に、超おみくじはぐらり揺れる。
「トドメですよー! って……!?」
 続くクララの斬鉄蹴こそ回避されたものの。
 それは、確かに――戦いの趨勢を決める決定打になっていた。
「――む……!?」
 されど、辛うじて永らえた超おみくじは七色の光を放つ。
 最後の反撃は――クインシーを捕らえていた。
「くそ、最後の最後で……!」
 操られた彼女が振り出したのは――

●大凶以下。
「流石に焦ったぞ。ま、お陰で幸先よさそうな感じだがな!」
 クインシーは安堵の表情を浮かべて言う。
「……結局、俺が一番……ま、いいけどよ」
 言う割には苦笑いを浮かべてシエンが言う。
 凶を引き、拘束にはいまいち成功しなかった彼だったが――最後の一撃を、放った矢で決めた所は流石か。ある意味のアタリは、「運命を切り開く」と豪語しただけはあると言えるだろう。
「それにしても――やけにご機嫌じゃないか」
「ええ、もう。テメーらもご苦労さんですよ」
 仕事を終えたパーティを出迎えたフィオナは、満面に喜色を浮かべていた。
「で、どうしたんだ?」
 超おみくじの破片――「大吉」の札をフィオナに与えたハムラビは問う。
「それがですね、アタシもおみくじを引いてみまして」
「ほう?」
「開けたくて仕方なかったんですが、テメーらが帰ってくるまで待ってたですよ。
 もうずーっとうずうずしてましたので、今だけはイチジツセンシューでお待ち申し上げていた次第でありますの事だったのですよ!」
 ……相変わらず微妙な言葉だな、フィオナよ。
「成る程、では……今から?」
 リュミエールが問うと、彼女は頷いて胸元からおみくじを取り出す。
「アタシのこのムネにかけて、御利益はバッチリですよ。さー、開けますよー?」
 緊張の一瞬。彼女の開いたおみくじには――
「……」
「……………」
「にょ、にょおおおおおお……!」
 ――人為的なミスなのか。何も書き込まれていなかった。
「せ、責任者出てきやがれですよー!」
 酒場の中を爆笑が包む。
 或る意味、運命すらも匙を投げる美少女霊査士よ何処へ行く。
「ちくしょー! 有り得ねーですよー!」
 ハズレおみくじより有り得ないキャラクターは、飽きる事もなく地団駄を踏んでいた。


マスター:YAMIDEITEI 紹介ページ
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作成日:2006/01/15
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