<リプレイ>
●登場 覗いた遠眼鏡の中、風に揺れる洗濯物。 「いかんでござる」 歌う山伏・ハル(a28611)は現場に急行、取り込みに掛かる! そこに間一髪で降ってくる矢。 再び覗いた遠眼鏡には、噂の変な矛が! すると、何処からか響く複数の声! 「ナンジャコリャ〜、新春スペシャル〜」 見ればそこには、鎧進化で薄紫の振り袖姿になった、緩やかな爽風・パルミス(a16452)が、くるりと回って注目目線! 「スペシャル恒例〜、依頼場所三つでお送りしています〜」 そして差し込む眩い光! 「貴方の悪事、そこまでですぅ!」 ぴかっと頭を光らせたのは、愛と正義と黒バニーの使者・アリス(a20132)! 「晴れの日にも雨を降らせてご近所様のお洗濯の邪魔は許しません! 愛と正義と黒バニーの使者、うさライダーのアリス!」 びしりと指差すその勇姿を、見習い救命士・エルム(a18957)が頭上に点灯させたホーリーライトが更に明るく照らし出す! そんなエルム自身も。 「可愛い、があるふれんどを作る!」 新年の抱負を主張してみたり! それに対し。 「エルム君ったら〜寂しいんですね〜」 パルミスの脳内では、見知った顔とはぐれたせいで妙な事を口走っているんだと、間違った解釈が! 嫌な予感はしつつも、エルムはそんなパルミスの頭上へと光を移動。隣には、御揃いの振袖を着たパルミスそっくりの妹、苛烈なる壮風・ラグニス(a40885)の姿も。 「パルミスです〜。新年明けまして〜、おめでとうざいます〜。昨年中は〜、色々お世話になりました〜」 いつの間にか戻ってきたハルが吹き鳴らす鳥笛の音をBGMに、挨拶するパルミス。 初仕事がこんな色物だなんて……姉の誘いでなければ、きっとこんな場所に出向かないであろうラグニスは、複雑そうな表情を…… 「……フフ、姉さんとお揃い……」 嬉しそうだ! 「……な、何よ。言いたいことがあるなら、ハッキリ言ったらどうなの?」 「今年も〜、よろしくお願いします〜」 パルミスの挨拶が終わり、光は次へ! 寸前にラグニスが武器を取り出していたのは見なかった事に! しかし、律儀だ。 仲間と矛の様子を見守る、闇夜ノ凶星・シズマ(a25239)は改めて思う。 奴等は何故、待ってくれるのだろう…… 一方、煙草に火を点けつつ矛を見る、赤烏・ソルティーク(a10158)の視点は、シズマとはまた違う。 「……フォルムのディテールが甘い! アレを槍とは認めません!」 そこに丁度光が。 間違えましたと一言告げて、ソルティークは再び矛を見据える。 「雨も許せませんが矢を降らせるとは許すまじ……」 矛は相変らずじっとしている! 「めがねっ娘と洗濯物を護る為! ソルティーク推参です」 彼の言う洗濯物は、コスプレ用らしいぞ! だが、その直後。 「……でも、着ている衣装をぼろぼろにしてくれるなら許さない事も無っ……」 ラグニスがっ、ラグニスの視線が怖い! 怖いっていうか痛い! 刺さる! 物理的にも刺しそうだ! 「……いや、戦闘ならばそれも然りでは」 女性的感情に大変乏しい、彩雨流千撃の・チヅキ(a38104)は、何をあんなに怒っているのかと不思議そうだ。 つまりそれはチャンス? といわんばかりの表情になったソルティーク。それに釘を刺すかのように。 「男は、姉さんの半径2m以内には近付かないで」 ラグニスは再びソルティークに視線を移動し。 「あなたは5m!」 くわっ! そんなやりとりを吹き飛ばす勢いで、白翼の騎士・レミル(a19960)が矛へ高らかに名乗りを上げる! 「最近ネタキャラっぽくなってきた純粋エンジェル、レミル参上!」 どばーん。 彼の背後に、荒波(の幻影)が視える! と、その刹那。 矛の体が、大きく揺れた! どさりと倒れる矛。その背後に立っていたのは! 「後ろから失礼」 エルムの操るホーリーライトが、月夜に映える者・リーナ(a34480)の姿を眩く照らす。 そう、皆が口上で気を引いている間、リーナは一人ハイドインシャドウで身を潜め、この機を覗っていたのだ! そして! 「いくですぅ! とぉ!」 皆もばばっと散らばった!
●決戦 戦場の大地に薄ぼんやりとした光が立ち込める。 「敵にも効いちゃうけど……出血が治らない方が嫌だもんね」 そうしてエルムが展開するのはフォーチュンフィールド。 だが、今しがたシャドウスラッシュを食らったばかりの矛はまだまだ混乱中。薙ぎ払うのも忘れて、とりあえず真後ろにいたリーナに頭を振るう! 翻る闇色のマント! しかし、勢いを殺しきれず、刃の部分がリーナを叩く。 そんな矛の背後に! 「後ろががら空きですよ〜」 レミルは気を引くように、それでいて無造作に。 達人の一撃で以って間合いへと侵入したその一撃に、混乱中の矛は更に訳判らなくなって意気消沈! 今のうちにエルムが癒しの聖女を派遣、リーナの傷を綺麗さっぱり消し去っておく。 と、しょんぼり項垂れる矛に。 「形状が槍って時点で容赦って言葉は私の心の辞書から削除されるんですよ〜」 にこやかに笑うソルティークの頭上、虹色に輝く巨大な火球が形成されてゆく! 「二重起動完了、爆ぜて砕け『赤光』!」 掛け声と共に矛へ向け一直線に飛ぶエンブレムノヴァ! 炎は矛に当たると一層眩く燃え上がり、虹色の火の粉となって弾け飛ぶ。 その輝きが消え失せるよりも一瞬早く。 三回転ダイナミックジャンプの後、イリュージョンステップの構えを取っていたアリスが鋼糸を煌かせた。 「切り裂け旋風! ソニックウェーブ!」 すっ飛んできた衝撃波が、矛の芯にまで届き、その身体を大きく揺らす! と、思えば、今度は薔薇の花びらを撒き散らせ、シズマが一気に接近。 「この一撃……避けられますか」 鋭く突き刺さる薔薇の剣戟! 消沈もあって、打たれるままよろめく矛! その背に、再びリーナのシャドウスラッシュが炸裂。 俄に。 周囲に、不可思議な風が流れた。 着衣を掻き乱すほどではない微弱な、されど、跳び来る武器を弾き返す特異な風の領域。 「矛としての自分を最大限に極めればいいものを……」 その風の中を突っ切ってチヅキが肉薄、懐の暖かさが生み出す心のゆとりを刃に乗せて、矛へ叩き付ける! 痛い部分を指摘されたせいなのか、ゴージャス斬りのせいなのか。相変らずやる気のない矛は、ぐらっと揺れて地面に横転! そこへ更に! 「戌も歩けば〜……」 振袖を捲り、唱えるように腕を上げたパルミスの掌の中に、不吉な絵柄のカードが。 「矛に当たる〜♪」 当たった! むしろ刺さった! 「お手つきはすると〜、墨が塗られます〜」 そんなパルミスの台詞通りに、ちょっぴりカルタ風味なバッドラックシュートを受けた矛の胴に、黒い染みが! そこに今度は、真っ赤に燃え上がる蛮刀が影を落す。 「輪切りにしてやるわ!」 振袖を刃から噴き出す闘気の炎に揺らめかせ、ラグニスが矛の胴の真中へと、ファイアブレードを打ち下ろす! 燃え移る魔炎! そこに、火を消すことのない激しい針の雨が。 「動きそうでござる!」 すっかり矛の周囲に集まった前衛に向けて、後方から矛の様子を見ていたハルが注意を促す。 刹那、その言葉どおりに。 起き上がり様の矛が、自らの周囲に集まった者達に向けて、頭部の刃を叩き付けるように薙ぎ払った! 緑色と闇色が踊るように翻り、それと同じだけの数が、巧みな脚捌き……既にイリュージョンステップの構えを取っていたレミル、シズマは矛の一撃を逃れる事ができた。同じく構えを取っていたリーナだが、回避は仕切れなかったものの召喚獣の効もあって威力が落ち、吹き飛ばしは避けられた。 一方、盾で以って持ち応えようとしたラグニスだったが、ファイアブレードの痺れもあってか上手く凌ぎきれず、数メートル後方へと押し戻される。 「変な物体の分際でっ……」 「手前もまだまだであるな」 同じく力任せの一撃を受けたチヅキだが、咄嗟に剣を付き立てることで、予定よりも吹き飛ばし位置を短く抑え、直様次の攻撃の構えに入った。 そんな三人の身体を包む、優しい光。 「幾らでも治すからどんどんやっちゃってね〜」 ヒーリングウェーブを行使しつつ、エルムが声援を送る。 不意に、再び虹色に輝く……見れば、ソルティークの描いた紋章の中から、纏った炎を虹色に明滅させる無数の木の葉が噴き出ている! 「灼きつくせ、紅きモノ『紅葉』!」 掛け声と共に、緑の業火が一斉に矛へと吹き付け、その身を覆い尽くして眩く燃え上がった! 再び魔炎に焦がされる矛! 悶えるその周囲にはハルの高らかな凱歌が響き、ラグニスの麻痺だけを一足先に解除する。 そんな炎塗れの矛が。 「矢が来るでござる!」 ハルの鋭い警告と同時に、熱そうに見をくねらせる矛の胴からにょきっと矢が生え、頭の刃が引き絞った弓にそれを番える! 狙われたのは。 「ひらり〜ひらり〜ですぅ♪」 巧みな脚捌きと、翻る緑のマント! 空を切る矢。 アリスは攻撃をかわしたその脚で、間合いを詰める! 「幻影舞踏! ミラージュアタック!」 三つに別れたアリスの体から繰り出される一撃! その丁度背面に。 再び無造作に居合わせるレミル! またもやばっちりと達人の一撃を食らい、燃えたままやる気を無くす矛。その周囲に、またもや薔薇の花が咲く。 シズマの振るう剣の軌跡に生まれる花びらが、魔炎に一層紅く輝く! 華麗に打ち込まれる薔薇の剣戟。 矛は散る花と共に、またもや大地に横倒し! そんな矛に当然容赦なく、リーナの無音の一撃が深々と突き刺さり…… 再接近したチヅキの姿が、三つに割れる! 既に存分に割け、燃え続ける傷口に潜り込むのは、ミラージュアタック! そんな満身創痍気味な矛に向けて、戦場にはそぐわないのんびりした声が! 「次いきますよ〜。泣き面に〜」 再び掲げたパルミスの掌に浮かぶ、不吉な絵柄! 「恥〜」 またもやお手つきマークをつけられる矛。まさに泣きっ面になんとやら! そして、本当に泣いているかも知れない矛の頭上で、再び燃え上がった闘気の炎が緑の業火の魔炎と重なり、矛の身体を燃やし尽くす! 打ち下ろし、また動きを止めたラグニスに、しかし、エルムの派遣した癒しの聖女が、その身体に自由を取り戻させる。 そこにまた吹っ飛んでくる巨大な火球! 「さっきの攻撃でぼろぼろになってればなぁ」 前衛に密集している女性陣を遠目に眺めつつ呟くソルティーク。 すると、チヅキがゴージャス斬りしつつ。 「ぼうろならばあるぞ」 なんか違うものに聞こえたらしい。 しかし、そんな会話にも関わらず、矛はもう息も絶え絶え状態。 今こそハンマーチャンス! 「愛と正義の鉄槌を受けるですぅ!」 煌くアリスの鋼糸が、裕福さから滲み出る余裕でいっそう眩しく輝く! そして、もう一人。逆方向に。 「悪・即・斬!」 抜き放ちざまの長剣に稲妻を纏わせて、レミルが渾身の電刃居合い斬り! 双方から繰り出される、別の意味で眩しい攻撃。 そして矛は、その太い胴を、真っ二つに圧し折られたのであった。
●撤収 「正義は勝つ! ですぅ☆」 ポーズを決めるアリス! ソルティークは新しい煙草に火を点け一服。 「あー……しんど、アリスさんもいつも御苦労様です」 それから一瞬間を置いて。気付いたように自分もポーズしてみる。 「いやはや、不可思議な相手でした。まだまだ、自分にも精進が必要なようですね」 色んな意味で。 思うシズマの目の前で、エルムは魔炎で焦げた矛の残骸を更に燃やしに掛かっている! 「とある地方では今の時期に、新年を祝う飾りを燃やして無病息災を祈るとか」 「ご利益があるのを祈るばかりでござる」 ハルの見上た空は快晴。さっき取り込んだ洗濯物も、今から干せば乾くだろう。 ソルティークは一服を終えると、何処へともなく視線を飛ばし。 「さぁ次の生贄(ネタ)は誰でしょう? めがねっ娘は眼鏡をメンテナンスしながら待っててね♪ ……えーと生贄?」 そんな彼に、何故かチヅキがおもむろに歩み寄り。 「佃煮ならある」 そんな具合で途中で止まってしまったソルティークの言動を継ぐようにパルミスが。 「それでは〜、次回もこの時間に〜、ナンジャ〜コリャ〜です〜☆」 並んで立つラグニスも、一緒に袖を振り振りお別れだ!
有難う冒険者! 君達の新年の抱負を忘れない!

|
|
参加者:10人
作成日:2006/01/22
得票数:冒険活劇1
コメディ10
|
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
|
|
あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
|
|
|
シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|
|
 |
|
|