<リプレイ>
●監視 「大砲娘・ドミノ、ばばーんと参上ー♪ うわーい、お祭りだ〜☆」 満面の笑みを浮かべながら、大砲娘・ドミノ(a36487)が百矢祭の行われている広場をむかう。 広場にはたんさんの見物客が集まっており、立ち入り禁止区域には目立つように赤いロープが張られている。 「たくさんの人が集まってきてますね〜」 地図を見て立ち入り禁止区域を確認し、蒼月と共に在りしもの・シエール(a32236) が溜息を漏らす。 あまりにも立ち入り禁止区域が広いため、ある程度の目星をつけておかないと監視するのは難しい。 「そう言えば毎年、怪我人が出ているって事は、無数の矢が降り注いでくる中、宝石を拾いにいく人がいるって事だよね? なんでそこまでして拾いにいくのかな? どう考えても怪我の治療費の方が宝石より高くなると思うんだけど……」 不思議そうに首を傾げ、自由気ままな風のように・エルクルード(a32527)が腕を組む。 「それだけ性格が苦しいんじゃないのか? 小粒の宝石とは言え、それなりの数が集まれば、一週間分の生活費くらいにはなるだろうからな」 フランクフルトの屋台を開き、自由の翼・ヨウ(a30238)がクスリと笑う。 広場には他にも屋台が並んでおり、たこ焼きやトウモロコシなどが売られている。 「お祭りで食べるものは普段よりも美味しいですね〜」 屋台で買ってきた綿飴を頬張りながら、シエール(a32236)がニコリと微笑んだ。 最初は真面目に広場の巡回をしていたのだが、あちこちからいい匂いがしてきたため、誘惑に負けて屋台巡りをしていたらしい。 「あー! あれもおいしそ〜!」 瞳をランランと輝かせ、エルクルードが近くの屋台を指差した。 「おいおい、ここには遊びに来ているわけじゃないんだぞ」 呆れた様子で溜息をつきながら、ヨウがエルクルード達にツッコミを入れる。 このまま仲間達を放っておくと、本来の仕事を忘れてしまうと思ったため、ヨウの口調も厳しめだ。 「あっ……! 毎年、羽目を外してはしゃぐ人がいるから、怪我をする人が出るんだっけ? も、もちろん、やる事はやるよ?」 ハッとした表情を浮かべながら、ドミノが気まずい様子で頬を掻く。 本来の仕事を忘れたわけではないのだが、屋台の誘惑に屈していたのも、まだ事実……。 「と、とりあえず土塊の下僕を召喚して監視体制を強化しておきましょうか」 持っていた綿飴を一気に平らげ、シエールが土塊の下僕を召喚した。 土塊の下僕は一定の間隔を置いて目印になっているロープの前に立ち、不審人物が禁止区域内に侵入してこないように見張っている。 「なんだ、てめぇは? 邪魔だ! どけ!」 いきなり土塊の下僕が邪魔に入ってきたため、ゴロツキ達が不機嫌な表情を浮かべて蹴りを入れた。 ゴロツキ達はシエールの存在に気づいていないせいか、土塊の下僕を蹴り倒して先に進もうとしているようだ。 「ここから先は危険なので立ち入り禁止ですよ〜。戻ってくださ〜い」 出来るだけ相手を刺激しないように笑みを浮かべ、エルクルードがゴロツキ達を優しく注意した。 「なんだと、ゴラァ! てめえらには関係ねえだろ!」 エルクルードの胸倉を掴み上げ、ゴロツキのひとりがジロリと睨む。 「それが関係あるんだよ〜♪ これが目に入らぬかぁ〜ってね☆」 満面の笑みを浮かべながら、ドミノが監視役の証を見せた。 この証はドミノが祭司に頼んで手に入れたもので、自らの身分を証明するものにもなっている。 「なんだ、こりゃ! くだらねぇ!」 ドミノから強引に証を奪って地面に叩きつけ、ゴロツキ達が文句を言いながら踏んでいく。 「あー! そんな事をしたら駄目なんだよぉ〜!」 驚いた様子で悲鳴を上げ、ドミノが慌てた様子で証を拾う。 「そのくらいにしておけ! ……怪我をしたくなかったらな」 ウェポンオーバーロードで武器を呼び出し、ヨウが面倒臭そうな表情を浮かべてゴロツキを睨む。 「面白れぇ! やってやろうじゃねえか!」 いやらしい笑みを浮かべながら、ゴロツキ達がナイフを抜く。 「緑の木の葉よ、我が望みにしたがい彼のものを束縛せよ」 それと同時にシエールが緑の束縛を使い、リーダー格のゴロツキを拘束した。 「うわあああ! ボ、ボスゥ〜!」 頼りない声を上げながら、ゴツロキ達が動揺する。 リーダー以外は雑魚ばかりだったのか、ヨウの視線に怯えてまったく目を合わそうとしない。 「ごめんなさい。しばらくの間、眠っててくださいね」 その隙をついて眠りの歌を歌い、エルクルードが疲れた様子で溜息をつく。 「……畜生。せっかくの祭りだってのに運が悪い……」 リーダー格のゴロツキも相手が冒険者だと分かり、気まずい様子で何やらブツブツと言っている。 「当たり前だよ。あたし達の警告を無視したんだからね!」 ゴロツキ達を縛り上げ、ドミノがベーッと舌を出す。 胸の証を自慢しながら……。
●祭司 「うわ〜〜、すっごい。こんなにチキンレッグっているんだ♪」 感激した様子で辺りを見つめ、蒼き疾風の弓士・リャン(a40065)が祭場にむかう。 祭場ではチキンレッグの商人達は祭司に酒を飲ませており、楽しそうに祭りの歌を歌っている。 「……百矢祭か。その年の豊作と無病息災を祈ってやるものらしいが、無病息災を祈って怪我してちゃ本末転倒だわな。ま、見物客が怪我しないように頑張りますかねっと……」 念入りに弓の調節をしながら、赤枝の騎士・セタンタ(a39514)が溜息をつく。 大半の祭司は酒の飲み過ぎで酔い潰れており、とても弓矢を射る事の出来る状況ではない。 「……弓矢を扱うのは、かなり久しぶりだから……きちんと的に……当てないとね」 遠眼鏡を覗き込みながら、氷朧の檻歌・イル(a35993)が的を確認した。 百矢祭の的は地面に描かれた真っ赤な円で、その倍の範囲が禁止区域になっている。 「それじゃ、そろそろチキンレッグの商人を祭場から出しましょうか。このまま此処に居座られたら、弓矢を射るのに集中する事が出来ませんし……」 大イビキを掻いて寝ている商人を抱き起こし、蒼空の風・ブレイズ(a34294)が祭場の外まで運んでいく。 「ついでだから酔い潰れている祭司も運んでおくか。弓矢を射っている途中で目を覚まして大声を上げられても困るしな」 苦笑いを浮かべながら、セタンタが祭司を運ぶ。 祭司が途中で目を覚ましたとしても、弓矢を射る事が出来ないため、毛布を被せて寝かせておく。 「祭りの最中に……祭司が酔うのは……どうかとも思うけど……」 苦笑いを浮かべながら、イルがズルズルと祭司を運ぶ。 祭司の中には酒瓶を抱いたまま寝ている者もいるため、どちらがメインで参加しているのか分からない。 「大丈夫や。わいも弓を射るでぇ〜」 妙にフラフラとしながら、祭司がイル達に弓矢をむける。 イル達の話し声が聞こえていたのか、妙に不機嫌そうである。 「おやおや皆様、いい御身分ですねぇ。私、弓下手ですけど……、この距離なら流石に外しませんよ?」 ゆっくりと弓を構えながら、ブレイズが笑顔を浮かべて呟いた。 「うぐっ……」 眉間に弓矢を当てられ、祭司がダラリと汗を流す。 「ほらほら、これで分かっただろ? あんたは向こうでおとなしく休んでな」 祭司の背中をポンポンと叩き、セタンタが疲れた様子で溜息をつく。 それでも祭司はセタンタに食い下がってきたが、とても祭りには参加する事が出来そうにない。 「そう言えばハートクエイクアローが使えるようになったんだけど、祭りで使ったりしたら駄目かな?」 先端にハートのついた矢を作り、リャンがニコリと微笑んだ。 「やめて……おこう……。これ以上、祭りが……混乱したら……取り返しのつかない事に……なりそうだから……」 リャンの肩をぽふりと叩き、イルが静かに首を横に振る。 「う〜、やっぱり駄目かぁ。面白いと思ったんだけどなぁ」 残念そうな表情を浮かべ、リャンがガックリと肩を落とす。 「出来るだけトラブルは避けるべきでしょう。そろそろ時間ですよ。……用意はいいですか?」 弓矢をいる時間になったため、ブレイズが仲間達を呼び集めた。 仲間達の手には花の種と宝石の入った袋が握られており、それを弓矢に括りつけ何時でも射れるように狙いを定める。 「それじゃ、わたしの合図で弓矢を射ってね。せーのっ!」 大きく深呼吸をした後、リャンが大声で叫んで弓矢を射る。 それと同時に無数の矢が的めがけて飛んでいき、次々と地面に突き刺さっていく。 「……春に、花が芽吹いて……美しく咲き誇り……人々が、幸せであるように……」 祈るような表情を浮かべ、イルが百本目の弓矢を射った。 たくさんの拍手に包まれながら……。
●禁止区域 ……5分前。 「……そろそろ弓矢が降る頃かな?」 不審人物が侵入してこないようにするため、家出少年・ハルオミ(a40005)が仲間達を連れて立ち入り禁止区域にむかう。 立ち入り禁止区域になっている場所は、雑草などが刈り取られ土が耕されているため、種を蒔くには最適である。 「それにしても、豊作・無病息災を祈る祭りなのに、怪我人とは穏やかじゃないな……。なんでも手に入れたいというのは人の性、か……。だが、拾いたい宝石の役割は『災いや穢れをこれに移す』なんだよな? 怪我をして災いを招いたら、宝石の役割もないと思うぜ」 呆れた様子で溜息をつきながら、中天懸かる清浄の皓潔・ラジシャン(a31988)が辺りを睨む。 立ち入り禁止区域内にはいくつかの木箱が置かれており、時々コソコソと動いているようだ。 「あれって間違いなく中に誰か入っているよね?」 あちこちで茂みや木箱が動いたため、重装型・ササラ(a10143)が気まずい様子で汗を流す。 ササラ達の視線がむくと、木箱の中から猫の鳴き声などが聞こえてくるが、その事で余計に怪しく感じるため、『だるまさんが転んだ』状態になっている。 「そう言えば僕の屋台で出た木箱が消えていましたね。ひょっとしてアレがそうなのかも……?」 嫌な予感が脳裏を過ぎり、遥か彼方の世界を仰ぎ見る者・レミント(a40098)が木箱を睨む。 木箱の横にはチキンレッグのマークが描かれており、レミントが道具を入れていた物にソックリだ。 「しかもあっちにあるハリボテなんて、何故かバナナの柄だよ。一体、何をしたいんだか……」 奇抜なデザインのハリボテを指差し、ハルオミが冗談まじりに微笑んだ。 「警告した方がいいですかね? あれより先に進んだら、僕の仕掛けた罠に引っかかってしまうんですが。……ほらね」 辺りから凄まじい悲鳴が聞こえたため、レミントが土塊の下僕をむかわせる。 木箱の中に隠れていた見物客は、レミントの仕掛けた落とし穴に落下し、妙な格好のまま意識を失っているようだ。 「大丈夫……?」 落とし穴から見物客を引っ張り上げ、ササラが心配した様子で首を傾げる。 見物客は落とし穴に落下して骨を折ったのか、大袈裟に悲鳴を上げて這うようにして逃げていく。 「ここは立ち入り禁止区域ですので、お引取り願います」 まわりの視線が気になったため、ラジシャンがわざと大声を上げて警告する。 そのためハリボテを被った見物客がそそくさと逃げていき、禁止区域内の見晴らしが随分と良くなった。 「……素直に帰ってくれましたね。これで戻ってこないといいんですが……」 土塊の下僕を使って怪我をした見物客を運ばせ、レミントが苦笑いを浮かべて頬を掻く。 これでしばらくは禁止区域に誰も入ってこないはずなので、レミントが再び屋台に戻って仕事を始める。 「ちょっと可愛そうだから治療をしてくるね」 運ばれていく見物客を見つめながら、ハルオミが癒しの水滴を使うため後を追う。 見物客も最初は治療を拒否したが、とても傷が痛むため最後には屈して治療を受けた。 「それじゃ、そろそろ避難するか。ここにいたらハリネズミになりそうだしな」 冗談まじりに微笑みながら、ラジシャンが安全な場所まで避難する。 無数に降り注ぐ弓矢を眺め……。

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参加者:12人
作成日:2006/01/27
得票数:冒険活劇1
ほのぼの6
コメディ3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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