≪ハールファウス修道会≫びばオショーが2!



<オープニング>


「たらいま〜〜」
 えっちらおっちらと、何だか重そうな背負い籠を持って現れたのは、疾風怒濤の三十路こと、アンジーだった。
「えふぅ〜〜。楓華列島特産、お正月セットやでぇぇぇ」
 修道会の建物に入ったところで、崩れ落ちるようにして倒れ込んだ人物を囲むようにして、十重二十重で棒で突っつく団長以下数名達。
「をぉ〜い。アンジー、ココで死ぬなよ〜」
「クリスちゃん。それは酷いのね。せめて『畳の上で死ね』とか、『料理は前のめり』とか」
「というか、このまま置いておいても腐りはしねぇだろ」
「お餅、お餅〜〜♪」
「をぉ! でかした! 今夜はお餅パーティーだ!」
「年始の御馳走にも飽きていたんですよねぇ。たまには質素に善哉とか」
「マウサツ茶もあるのね〜〜。暖炉でぬくぬく美味しい湯加減で〜〜」
「寝るなよ。歩くのに邪魔だ」
「死んだなぁ〜ん?」
「いや、まだ生きてるだろ」
「ちっ、なぁ〜ん♪」
「お鍋、お鍋〜〜」
 ・
 ・
 ・

 数分後。

「ふっか〜〜〜つ!」
 何となく叫んで食堂の扉を思い切り開け放つと、そこはめくるめくお餅パーティの真っ最中。
「をお。なんだ生きとったか」
「えらい言われようやな。まぁ、ええけど」
 いいんかい!
 素で突っ込まれないのは役得なのか、既に諦められているのか良く分からないアンジーである。
「ところでな。ふーがれっとーには面白い風習があると、ねー様から聞いたのだが?」
「うん?」
 とりあえず質問に答えるために、伸ばした箸を止める横から、狙っていた巾着が奪われる。
「なんでも、年の初めには「ふでおろし」だの「ひめはじめ」だのという、非常に独特な……」
「きしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
 何だか、年の初めから大暴れする奴が居たものだ。
 食器が吹っ飛び、デザート皿の上から食後の皮や穿りだした種やら食べ終わった鳥の脚やらが中庭の残飯置き場に吹っ飛ばされていく。
 暴れても、非常にエコロジーな怪物だ。
「……ふむ?」
 非常事態にもかかわらず、食堂の隅っこに逃げた団長は、ズゾズゾと音を立てながらお餅を箸で喉に送っていた。
「様するに、だ。楓華列島とは、アンジーが狂う程にこれまた難儀な文化があると言うことなのだな、きっと」
「そうなのね。あ。もっともあれは、アンジーちゃんではなく、ムチャリンなのね」
「そうなのか?」
「そうなぁ〜ん?」
「そうなんだろうなぁ……」
 何に対して納得しているのかは兎も角。
 かなり遅れたけれど、年の初めはお祝いしなければいけないだろうと。
 ついでに楓華列島の2月頭にあるという、邪悪なモノを退ける祭りも一緒に入れてしまえと言う、非常に厄介なお祭りがハ(中略)会で行われるのであった。

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参加者
月は魂鎮めの赫き赫き・クリスティナ(a00280)
星射抜く赫き十字架・プミニヤ(a00584)
天狼の黒魔女・サクヤ(a02328)
気紛れなそよ風・アリステア(a04106)
緑風の探求者・アリア(a05963)
天吹春風・フェルル(a14997)
悠幻なる蒼き月・ルナ(a36959)

NPC:鉄拳調理師・アンジー(a90073)



<リプレイ>

●お正月に
 無限に広がる大倉庫。
 見つけ出される物もあれば、消えていくゴミもある。
 そう、ココはまさしく時のロストワールドっぽい、謎の空間。未知とも遭遇できそうな……。≪ハールファウス修道会≫なのだ。
「まぁさて、早速あんじぃの持って来たお正月ボックス(?)の中身を確かめるとしようか……」
「わーい、なのね」
 ガサゴソガサ。
 新感覚弄られ系魔法少女・クリスティナ(a00280)と共に、星射抜く赫き十字架・プミニヤ(a00584)が炬燵からやんやとヤジを飛ばしている。
 プミニヤの傍らには、外に白い世界を作り始めた雪の中を喜んで走ろうとしない『金と銀のキルドレッドブルー』がのへ〜んと炬燵に下半身を突っ込んで転がっている。
 その口元には半分剥かれた蜜柑が転がっており、契約者が休み呆けでダレ切っているのを正しく表現しているような有様だ。
「ふーがれっとうでは今年は狗が主演を張る年なのでキルドレッドブルーが最強!」
「体制の狗とかやろ?」
 主演を張ると聞いて、鉄拳調理師・アンジー(a90073)がひねた風に言う。
「アンジーちゃんもひねた性格になったにゃりね〜〜」
 と、炬燵の上にあごを乗せて呟いたプミニヤがあっと声を上げる。
「そういえば、もうそろそろ『デス』の付くランララや、そのお返しで忙しい時期にゃりね……」
 と、ひねたオバ(自主規制)ちゃんの心中を察したつもりで涙を押さえるふりのプミニヤ。
「ま、何と言いますか既に新年って季節じゃないですが」
 パタンと、手にした本の背表紙を閉じて気紛れなそよ風・アリステア(a04106)がにっこり笑う。
「どこぞの国の、旧正月位遅いお正月ですね」
「そやろ」
 えっへんと、胸を張るアンジーを見てアリステアの笑顔の端の方に、小さくバッテンが浮いたような気がしないような訳もなく……。
「……ま、楽しきゃどうでも良いんですが」
 スゥッと、氷点下にまで冷え込んだ周囲の空気が、やや暖かくなった気がする。
「そうそうクリスティナ団長。ちなみに「ひめはじめ」とは、「姫飯(ひめいい)」、つまりやわらかいご飯を食べ始める日ということで、姫飯の反対語は「強飯(こわいい)」つまり「御強(おこわ)」です」
「……あ……アリステアが……真面目な話をぉぉうっつ!?」
 間一髪。
 こめかみの横、音もなく飛んで消える何かを避けて、クリスティナは胸を押さえながら恐怖と戦っていた。
「これは、一般に節句には『おこわ』を食べるので、節句が終わったら姫飯に戻すということで、この言葉が生まれたとされます。むろん、お正月の場合は1日は餅を食べるので、2日普通のご飯に戻すのが『姫初め』になります」
「そ、そうなのかー」
 お分かりですかと、笑顔の下に何かが隠れているアリステアに棒読みの返事をして、クリスティナは物色を再開する。
「昨今は、別の意味で良く使われますけどね……縁遠い方も居らっしゃるご様子で……」
「うき?」
 野生の本能で、アリステアの言葉に反応するアレ。

●そのころ一方、ヒトノソリンは!
「わ〜い、新年会なぁ〜ん♪」
 なんな、なんな、なぁ〜んと、歩く片っ端からヒトノソ時空に巻き込みそうなノンビリさんな声。
「…。……。新年会って何するものなぁ〜んか?」
 ぴったりんこ。
 一瞬、考え始めると思考の渦が止まらない天吹春風・フェルル(a14997)。
 無限に循環する輪っかのように、自分の思考だけが加速度的にノンビリ(?)回り始める。
「……とりあえず。ご馳走は出るらしいなぁ〜んね!」
 泣いたカラスがすぐ笑うように。
「おせちとか、お汁粉とかなぁ〜ん!!!」
 幸せな風景だけが、走馬燈となってそのまま無限の輪を描くフェルルの脳内。
「わ〜いわ〜いご馳走ぅ〜なぁ〜ん♪」
 現実と、虚構の狭間で喜べるリーズナブルなフェルルである。
「……それ以前に……此処、何処なぁ〜ん?」
 かっくん。
 小首を傾げて、ようやく自分が迷子の様な何かになっていることを認識してみた。

●そのころ一方アレの後ろでは!
「うき?」
 変な声を上げるアレを、少し離れた位置で発見したフェルルは、姿形だけで一瞬惑わされていたのに、声を聞いてソレが知り合いの変わり果てた姿だったと、ようやく気付いた。
「ぇ〜っと…ぁ、アンジー……ってあんなに太ってたかなぁん……? む、むぅぅ〜〜」
 いくら成長期だからと言っても、あれ程までにふくよか……を、通り越してデカい存在になろうとは、着ぐるみだなんてとんでもないと、フェルルの脳内で端から除外されていたりする。
「……取り敢えず。付いてくなぁ〜ん! 違っていても上手く辿り着くなぁ〜ん!」
 かな〜り、アバウトなことこの上ない。
「自分だけを信じるのなぁ〜ん!」
 と、目の前に先導役を置いている割に、言っていることはかなり辛辣だったりする。
「皆様……何をするおつもりでしょうか……」
 そんな周辺の状況を見ながら、悠幻なる蒼き月・ルナ(a36959)は小首を傾げて考え込んでいる風情だ。
「時期的に言いますと……節分でしょうか……?」
 怪しげな本を見開きながら、フムフムと納得している。
「では豆撒きでも致しましょうか…?」
 パタン。
 本を閉じて立ち上がってみる。
「鬼は……誰なのか知りませんが……」
 じーっと。
 誰なのか知らないと言いつつもトラ被っているプミニヤや、ムチャ被っているアンジーを、それとなく目で追う辺りがルナの言いたいことを表している風に思える。
「うにゃ?」
「うき?」
「……後は、恵方巻きですか……昔は……こんなモノ食べる習慣は……なかったと記憶していますが……いつから食べる様になったんでしょうか……?」
 にっこりと、アリステアに微笑むルナの手に、『取り敢えず』準備された巨大恵方巻きが在る。
 誰かの口にでも押し込むつもりなのか、周囲をそつなく見渡す瞳には、やる気が溢れていたりする。
「お正月、ですか。……このような物が残っていたなんて、さすが修道会ですわね」
 緑風の探求者・アリア(a05963)もルナ達が読みふけっていた本に目を通して興味津々といった風情だ。
「ですが……」
 おやっと、間を置いたアリアに皆の視線が集中する。
「せっかくの機会ですから、色々と楽しみたいと思います。この良く分からない板でスポーツですね」
「ほほう」
 ニヤリと、クリスティナの目が邪悪に歪む。
 己の目標を見いだしたような狩人の目に、幼い団長の瞳が変化して、手に獲物を構えて仁王立ちになる。
「HA−GO−I−TA!? 刃子板……之で子供を追い掛け回す習慣がアルとか、ナイとか。丁度持ちやすいグリップも在ることだしなぁ〜〜。恐い所だな、楓華列島って」
 言いながら、既に素振りを何度も初めてアリアへの宣戦布告の準備オッケーな状態だったりする。
「やんや、やんや〜〜。その間に、プミニヤちゃんはオセチ料理に挑戦にゃ〜〜とりあえず肉料理中心で!!」
 おこたの中から、ヤジと共に微妙な台詞が迸る。
「えっと……取り扱い説明書によると? ……羽を打って遊び、羽を落としたら相手の顔に墨を塗る……とありますね」
 成る程と、得心して手元に準備する墨と筆。
 既にアリアは不退転の覚悟を決めた様子だった。

ズゴゴゴゴゴ(……墨で相手の顔におひげをかいて、そしてイヌ耳をつければ……)ゴゴゴ!!

 と、緑の髪の後ろに何かが燃えさかっている気配。
「……ばっちりですわ」
 計画を気付かれないようにする為に、笑顔で皆を誘うアリア。
 だが、ふと周りを見てみると、何かが足りない気がした。
「……一、二、三、四……八人?」
 一人足りない。
「どなたか、お捜しでしょうか……?」
 微笑んで小首を傾げている。
 その手には、小さく折り畳まれた紙が。
「……じーなぁ〜ん」
 いかにも『何かありそうな感じ』で見せられた紙に、フェルルが近寄っていく。
「なになになぁ〜ん?」
 もぞもぞもぞ。
「……『勝訴!』なぁ〜ん!」

 げし!
 ドゲシ!
 ドバキ!

 手紙を広げて走り出したフェルルに飛んで来る、羽子板とかおせちとか蹴り……。
「痛いなぁ〜ん。ヒトノソリン風味のジョークなぁ〜んよ」
 フリフリフリ。
 尻尾を揺すって自己アピールしているフェルルは置いて、ルナの手に残っていた手紙をそーっと覗き込む七人達。
「……『 後 は 任 せ た 思 う 存 分 ハ ッ チ ャ ケ ろ ! 』……サクヤか」
 その場には居ない天狼の黒魔女・サクヤ(a02328)を草葉の陰から思い出してみる団長その壱の横で、書き付けを覗き込む者達が居る。
「そうみたいにゃね〜」
「あらあら」
 プミニヤ、ルナと、おっとりそのまま流す人達が居れば……。
「……デスランララや〜〜〜!!!」
「良く分かんないけど、踊っとくなぁ〜ん!」
 フィーバーする二人も居る。
「さて。準備は宜しいですわね?」
「ええ、これで団長も安心ですわ」
 謎のオーパーツ【おむつ】を入手する為にと、微笑んでアリステアがクリスティナに『2006 最新おむつカタログ』なる本をプレゼントする。
「をお? お正月に貰う物は全て『OTOSI−DAMA』と……」
 どさ。
 一目だけ覗き込んで、クリスティナの手元から落っこちる怪しい本。
 そのページの全てにカラフルかつ、わんだほーな『おむつ』『OMUTU』『オムツ』。
「さ〜て次……」
 皆がその本に注視する間に、一人だけまっとうな人間を装って背を向ける団長様を、修道会の面々が十重二十重と取り囲む。
 そして、血に飢えた野獣のように、機会を計り……。
「……お、之は知っているぞ。凧だな〜。風に向って揚げるんだろ? 人を括りつけて降りる時がでんぢゃあなスポーツらしいな。私はいいや〜」
 修道会の倉庫で見つかった謎の『いぶんか【お正月のひみつ】(富岡書房刊)』を覗き込んでいるプミニヤに延びる手、手、手。
「よっしゃ」
 わっし。
 さぁ遊ぼうと、振り返ったところを鷲掴みにされて、クリスティナの身体が軽々と抱え上げられる。
「あ、あんじぃ、雑煮はSOYソース仕立ては駄目だ! 私はSOYソースの御吸い物が好きではないのだ! MISOペーストで頼むぅぅ〜〜」
 退場。
 そして暫く時が流れ……。
「きしゃ〜〜〜〜!!!」
「え〜〜〜ん! ね〜さまも当たれ〜〜!」
「年の数だけ食べるのね〜〜!」
 庭に立たされて、豆をぶつけられること数時間。
 何故か豆はピーナッツだったり。
 しかもこの場合、殻を踏み破ったのは良いのだけれど、その割れた殻が脚に刺さるわ撥ねて目に飛び込む話の大騒ぎ。
 特に、身長が一番低い人の所に集中砲火。
「うぬぬぬ、こ〜〜なったら! アンジー、鬼は恵方巻きで豆を打ち返すのだろう?」
「そうなんか?」
「そうなのね!」
 きっと、こうして異文化は曲解されていくのだろう。
 近年大流行の恵方巻きバットを振りかぶり、一刀両断の勢いで振り抜くクリスティナとプミニヤに、巻いては渡し、渡しては巻きとアンジーが大量生産の恵方巻きを準備している。
 徐々に豆の砲火も止み始めたところ、反撃の機会とばかりにトラさん着ぐるみが立ち上がる。
「まだまだなのねーー! ふーがれっとうではこの節分という荒行事で、オセチ料理をぶん投げて戦うという試練をくぐり抜けるのにゃ〜〜!!」
「ちなみに、きっとプミニヤさんの脳内では……」
「ええ『おせちぶん投げる→せちぶん投げる→せちぶん→せつぶん→オムツ』となっていますわね。これがきっと楓華列島での常識ですわ」
 アリアとアリステアの問答無用の勢いで、尾ひれと背びれと胸びれのついでに羽と触手が付いてきそうな解説に、うんうんと頷いて聞いているルナ。
「ぇ〜っと、新年会と言ったら〜」
 クリスティナが読んでいた怪しげな本を読み出すフェルルの目が真剣な色をたたえている。
「い……祝うこと〜〜……」
 一瞬、ページに置かれた指先が停止している。
「ボツなぁ〜んね」
 ぼそりと呟いて本を閉ざしてしまう。
 表情はとても平坦で、何が書かれてあったのか彼女の表情から読み取ることはピルグリムグドンでも難しいだろう。
 きっと。
「ぇ〜っと……よく判んないなぁ〜ん!」
 ポーイと、考えることと本を放棄して、すっかりマイペースに戻るフェルル。
「やっぱり此処だし、もうノリなぁんね! ノリでゴーゴーなぁん!!」
 言っていることから既にノリだけのようだと、こっそり突っ込みを忘れないルナを尻目に、回りにあった酒瓶を手にするフェルル。
「素顔を捨てるってことなぁ〜ん! じゃあ、お酒なぁ〜ん……」

 フッツ!
 ドカパコーーーーーーーーーン!

 飲み干そうとしたマグが、一瞬の元に取っ手の部分を残して粉砕されている。
 光り輝く閃光を描いて、振り上げられたムチャリンの蹴りによる破壊工作だった。
「けーっけっけっけーーーーーー! ふぇぇるぅるぅ〜〜!!? 悪いごはいねが〜〜〜〜〜!!!」
「うきゃきゃ〜〜〜なぁ〜ん!!」
 残った取っ手を放り投げて脱走するフェルルと、それを追いかける三十路。
 今日も、ハールファウス修道会は平和(?)だったとさ。

【おしまい】


マスター:IGO 紹介ページ
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参加者:7人
作成日:2006/02/17
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