<リプレイ>
●雪上に咲く花 深く深く降り積もった雪が、冒険者一行の行く手を阻む。 普段なら3時間で辿り着くという山道も、この様子なら10時間は必要だろう。 「日が落ちる前に辿り着くといいですの……」 暗雲に覆われた冬の空を見上げながら、笑顔の約束・ソレイユ(a06226)はポツリと呟いていた。先程から降り続いている雪は、夜になると吹雪くだろう。彼女の甥、星天弓・エトワール(a07250)の天候予測はそう告げていた。 そうなる前に、村に救援物資を届けなければいけない。 長丁場になる予感を抑え込みつつ、ソレイユ達は一路、山間にある村を目指す。 「シャアさん、大丈夫でしょうか……?」 不安な表情で行く手を見詰めるのは、エトワールである。以前の冒険で少しは成長したかと思ったのだが、あんまり変わっていないらしい。 「大丈夫です、シャアさんはエトよりも頼りになりますの」 「…………」 ソレイユの一言に、エトワールは無言で涙を流していた。涙が凍り付き、エトワールの表情に二条のラインを描くが、ソレイユは構うことなく、行く手を見上げる。 そこには、先行偵察を務める、本気狩救兎・シャア(a12391)の姿があった。 ソリから50m程度先行して、行く手に障害がないか遠眼鏡を駆使して警戒しているシャアの姿を確認し、ソレイユは目を細める。 『ソレイユ様のお手伝いが出来るなら、雪の中だって平気ですわ』 そう言って、シャアは先行偵察を買って出たのだ。確かに危険な仕事であるが、敵の早期発見を考えると、必要な仕事だろう。 「あの……ボクもお手伝い……した方がいい?」 破壊竜・バジリスク(a10588)がソリを引く隣では、混沌の闇に舞う光の風花・クローネ(a27721)が声をかけていた。 「問題ない……」 バジリスクはぶっきらぼうに応えるが、この中でノソリンの代わりが務まるのは彼くらいだろう。少なくとも、クローネの体力では心許ない。 まあ、当の本人は、病み上がりに重労働を強いる仲間達に色々思うところがあるようだが。 「本当に真っ白だな……」 雪に覆われた景色を見渡しながら、蒼衣の夜猟者・ヤト(a31720)が呟く。 絶海の孤島で育った彼は、これほどの雪景色は見たことがない。慣れぬ雪中の行軍に、思わぬ苦戦を強いられている。 そうこうするうちに、前方から高らかに合図の笛が鳴り響いていた。
遠眼鏡で前方を警戒するシャアの視界の片隅で、何かが動いたような気がした。 「敵でしょうか……?」 シャアは肉眼と遠眼鏡、交互に観察を繰り返している。 先程も、キツネの親子に遭遇してちょっとした騒ぎになったりしたのだが……(主に女性中心に) 「女の子?」 そこにいたのは、小さな女の子だった。村娘だろうか……? まるで、雪の上で無邪気に遊ぶように、雪玉を転がして雪だるまを作っている。それが、まるで意思のある生物のように動き出すのを確認し。 「モンスター、ですわね」 確信し、シャアは用意しておいた合図の笛を吹き鳴らす。 「……ッ、出て来ましたか!?」 ソリの方へと駆け戻ってくるシャアの姿を確認し、エトワールはウエポン・オーバーロードを発動していた。 シャアを追うように、数匹の雪だるまが追っている。その中の一体に狙いを付け、 (「当たれ……!」) 心の中で呟きながら、放ったライトニングアローは、一番大きな雪だるまを貫いていく。 だが、崩れない。 顔の一部を吹き飛ばされ、それでも、シャアに追いすがる雪だるまだが、シャアの背後に浮かぶダークネスクロークが、マントを翻し攻撃を凌ぐ。 「今の内に!」 慧眼の静風・キルレイン(a12779)やクローネが弓矢で支援射撃を行うと、そのうち、シャアはソリの前方に築かれた防衛ラインに合流していた。 「シャアさん、大丈夫ですの!?」 「極光の鎧よ、彼の者を……守れ!」 ウエポン・オーバーロードを発動したソレイユの癒しの聖女と、エトワールの鎧聖降臨がシャアの身体を包み込む。燦然と輝く鎧を身に纏ったシャアは、イリュージョンステップを発動すると、向かい来る雪だるまの軍団と、その後方から迫り来るモンスターに向き直っていた。 「いけるか……?」 襲い掛かる大型の雪だるまの攻撃を防ぎ、夜纏・クルード(a34055)がデストロイブレードを叩き込む。雪崩を引き起こさぬよう、水平に振り払った破壊の一撃は、ウエポン・オーバーロードの裏打ちもあり、雪だるまの頭部を爆砕する。 動かなくなり、雪の塊に戻った雪だるまだが、後方ではモンスターが雪だるまを召喚していた。 補充された雪だるまは、防衛ラインを築いた冒険者の前まで転がってくると、そのままの勢いで体当たりを仕掛けてくる。 「……っ」 その一撃を何とか受け止め、バジリスクは呻いていた。密度の高い雪というのは、洒落にならないくらい重い。加えて、バジリスクは先程まで救援物資を積んだ重いソリを引いていたのだ。寒さも相まって、低下した体力では厳しいものがある。 「バジリスクさん!」 クローネの放ったライトニングアローが、バジリスクの相手をしている雪だるまを貫いていた。 更に、ヤトの放った粘り蜘蛛糸が、詰め掛けていた雪だるまの動きを封じていく。 その隙に、バジリスクは自分に覆い被さる雪だるまを押し返すと、倒れた雪だるまにデストロイブレードを叩き込んでいた。
●雪を溶かす熱い心 雪だるまの侵攻はソリから15mの位置に築かれた防衛ラインで食い止められているものの、数の多さと、雪上という地理的条件で冒険者を苦しめていた。 「これだけの図体のくせに、早いな」 ヤトが粘り蜘蛛糸で雪だるまの動きを封じながら、思わず呟いている。 エトワールやキルレインの鎧聖降臨、それに、ソレイユの回復支援で持ち堪え、何とか突破を阻止しているが、油断することは出来ない。 「本体を仕留められれば……いいんだかな!」 言いながら、キルレインは後方で雪だるまを召喚し続けるモンスターに、ライトニングアローを放っていた。 光の尾を引きながら撃ち出された雷の矢が、モンスターに迫っていく。 だが、新たに生み出された雪だるまが、その一撃を受け止めていた。と言うより、出現した瞬間に打ち砕かれたのだが。 「止まってぇーっ!」 クローネの放った影縫いの矢が、続けざまに襲い掛かる。だが、薄暗い天候の中、雪面には影らしい影もなく、あったとしてもモンスター相手に効果を期待するにはあまりにも頼りない。 そんな油断を突いたのか、2匹の雪だるまが防衛ラインを突破していた。 「待て!」 クルードのデストロイブレードが、背後から雪だるまに襲い掛かる。それでも、雪だるまは止まらない。 「……逃がすか!」 ヤトの放った飛燕連撃が、次々と突き刺さり雪だるまの片方を仕留める。 だが、もう一匹には追い付けない。 「エンブレムノヴァ!!」 雪山に凛とした声が響き、飛来した巨大な火球がソリに迫る雪だるまを焼き尽くす。 そこに、エトワールの放った貫き通す矢が突き刺さり、雪だるまは耐えきれずに雪へと戻っていた。 「この調子なら、何とかなりそうだな……」 言いながら、鉄の魔女・マグナス(a90244)は前方を見詰める。まだ、半数の雪だるまが残っているが、数が減ったことにより、対処しやすくなっている。 「構いませんわ! 先に本体を!」 ダークネスクロークと鎧聖降臨、それに、イリュージョンステップの三段構えで雪だるまの攻撃を凌ぎ、シャドウスラッシュで切り裂きながらシャアは叫ぶ。 その言葉に応えるように、エトワールは雪だるまの後方で様子を見ているモンスターに狙いを定めていた。 「早めに終わらせましょう!」 ライトニングアローが、モンスターを貫く。 更に、キルレインやクローネの攻撃が降り注ぐのを確認し、モンスターは雪だるまの召喚から攻撃に転じていた。 無音の叫びがモンスターの口から漏れ、大気が凍り付き無数の氷の槍へと変化する。 「……む!」 飛来する氷の槍を受け、他の仲間はダークネスクロークの翻したマントで弾いたものの、バジリスクだけは防ぐことが出来ない。 「まずい……!」 倒れたバジリスクの姿を見て、ヤトが咄嗟に間に入り、襲い掛かる雪だるまの首をシャドウスラッシュで跳ね飛ばしていく。 だが、モンスターはその様子を確認し、大きく息を吸い込んでいた。 「……な!?」 モンスターの眼前に、巨大な雪玉が生まれ出る。モンスターの小柄な体格を簡単に隠してしまえるほどの巨大な雪玉は、それだけで冒険者と、その後ろにあるソリを簡単に押し潰せるだろう。 戸惑う冒険者を余所に、バジリスクは咄嗟に前に出る。 「バジルさん!?」 「下がってろ!!」 心配そうに声を上げるソレイユの言葉に耳を貸さず、バジリスクは巨大剣を盾のように身体の前に構えると、モンスターと巨大な雪玉の前に立ちはだかった。 容赦なく吐き出された巨大な雪玉が、途中にいる雪だるまをも押し潰すのを見詰めながら。 「明・鏡・止・水!」 巨大な雪玉が衝突する寸前、雪の上を旋回したバジリスクのヘルハザードが、周囲に降り積もった雪を巻き上げると、巨大な雪玉の動きが止まる。そのままの勢いで振り払った一撃は、爆発的な旋風を巻き起こし、巨大な雪玉を押し返していた。 殲術の構え。 術攻撃を跳ね返す起死回生の一撃は、巨大な雪玉を巻き込み、それを放ったモンスターを呑み込んでいた。 「やったか!?」 雪面に膝を突き、荒い息を吐き出しながら、バジリスクが呟いている。 だが、暫くして雪煙がおさまったあと、そこには、その場に立ち上がったままのモンスターの姿があった。だが――。 「そこまでですわ……!」 背後から繰り出された、シャアの無音の刃が。 今度こそ、小さな女の子の姿をしたモンスターの息の根を、完全に止めるのだった。
●絆を結ぶ温かい手 闇の帳が雪山を覆い、吹雪が本格化する頃、山間の村に冒険者一行の姿があった。 「遠いところを、わざわざお越し下さいまして、本当にありがとうございました」 「いえいえ、礼には及びませんの〜♪」 麓の村からの救援物資を受け取り、ひたすら頭を下げる村人達に、ソレイユは元気に応えている。 「運んだのは僕なんだけどな……」 救援物資を積んだソリを引き続け、もはや虫の息のバジリスクの抗議の声は届かない。 「そちらの方は、大丈夫でしょうか?」 「平気ですの、ユンボですし」 「バジルさんはユンボですからね」 「ユンボですわ」 「この人達、鬼だ……」 ユンボユンボ言われてバジリスクが思わず涙する。その様子に、他の仲間は彼が普段どんな扱いを受けているのだろうと心配になっていたりするが。 「……動物虐待?」 「うわーん」 クローネの言葉が、落ち込むバジリスクにとどめを刺していた。 まあ、何とか無事に成功したのだから、よしとしよう。
――ちなみに。 山が吹雪いたため、冒険者一行はこの村に一泊させてもらうことになった。 温かい鍋をご馳走になった上、どうやら温泉も出るらしく、エトワールなどは露天風呂を楽しんでいたりするが。 翌朝、昨夜の吹雪は何処に行ったのやら、天候にも恵まれ、冒険者は一宿一飯のお返しとばかりに、雪かきの手伝いをしていた。 「エト様、エト様。雪うさぎ作ってみましたの〜♪」 と、シャアは雪うさぎを作ってエトワールに見せびらかしている。 (「シャアさんが子供みたいにはしゃぐのは珍しいですね……」) その様子を、エトワールは優しく見守っていた。 だが、楽しい時間は過ぎ去るのも早い。 「それでは、またですの〜♪」 村人総出で見送られ、ソレイユ達は山を下りていく。 「思ったより早いんだね」 バジリスクの引くソリの荷台には、何故かクローネが乗っていた……まあ、一晩休んで、バジリスクも体力が回復しているし、下りなので楽だろう。 何より、軽いので問題ない。 「この冬が、早く終わるといいですね……」 バジリスクが見上げる空には、太陽が顔を覗かせている。 まるで、深く降り積もった雪を溶かすように、春の訪れを予感させるように、暖かい日差しがいつまでも降り注いでいるのだった――。

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参加者:8人
作成日:2006/02/02
得票数:冒険活劇12
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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