<リプレイ>
●豆ー! 「随分な迷惑ぶりだし……しかも食べれないんですか……」 村を巡りながら呟くは潤心の治療師・ダフネ(a05226)、今回は豆を撒きまくる変異植物の退治にやってきた冒険者たちだった。とりあえず変異植物の探索を兼ね、村人たちに家に閉じ篭っているように呼びかけながら村を巡っている。 「村中を走り回って豆を撒きまくる豆の木も相当迷惑なぁんね」 答えるように言う歌って踊れる武道家・フィフィ(a37159)、ヒトの邪竜導士・シュアリィ(a40106)も、 「走る豆の木退治に来ました。村人の皆さんは危険無きように隠れてください」 と外出しないよう呼びかけながら、変異体の出現を警戒して視線を巡らせている。 「あれは!」 言ってダフネが走り出す。通りの向こうを通過する何物かを発見したのだ。おそらくは問題の変異豆。 急いで追跡する3人、バラバラと豆を撒きながら走り去ってゆく存在を追い、角を曲がって……。 「危ないなぁん!」 がががっ、とフィフィのかざした盾に豆がぶつかる。人型の豆の木は頭、右手、左手から所構わず豆をばら撒いていた。それはもう滅茶苦茶で乱射と言っていいほどに。 「これは……たまりませんね」 腕をかざして目を守りながら呟くシュアリィ。ダメージというほどでは無いが、とりあえず痛い。 「とにかく、いきますよ!」 ダフネの発動させるディバインチャージがフィフィの蛮刀に力を与える。盾を構えたそのままで、神々しく輝き始めた武器を手にフィフィが地を蹴った! 「さっさと下がるなぁん!」 鋭く振り下ろす電刃衝が豆の左腕を見事に斬り飛ばす、ダメージに怯んだか、慌てて逃げ出す変異豆の木。 「豆とはいえ、ぶつけられた者の痛みを思い知りなさい」 蛇の杖を両手で構え、ブラックフレイムで追撃するシュアリィ! 黒き炎が変異豆の木を捕らえ、豆の木は衝撃に身を揺るがす。そしてお返しとばかりに豆を打ち出してきた! しかしその程度で怯む冒険者では無い、漣響杖カレイドリウムを構え、ダフネが慈悲の聖槍を撃ち放つ。その白い光槍はミレナリィドールと融合し、七色の輝きを持って豆の木を貫く。 「これで終わりなぁんっ!」 ざんっ! 稲妻の闘気を込めたフィフィの一撃が、見事に豆の木を両断するのだった。
「大砲娘・ドミノばばーんと参上ー! 村人が困っているなら、変異体をしっかりと退治いたしまーす」 颯爽と現れるのは大砲娘・ドミノ(a36487)、変異豆の木は霊査によると3体。冒険者たちはそれに対応するために班を3つに分けていたのだ。 「迷惑豆撒き、早いトコやめて頂かなくてはです」 おマグロくわえたトラねこ・ソア(a32648)も住民に戦闘の可能性があることを伝えながら、周囲に出歩いている人が居ないか通りを見回していた。 「当たり所によっては『痛い』じゃ済まないんじゃない? コレ」 周囲にばら撒かれて落ちたままになっている豆を調べつつ呟く蒼き疾風の弓士・リャン(a40065)、少々心配そうではあったが、その痕跡から豆の木を追跡するように進んでいた。 びしびしびしっ! 「いたっ!」 それが「居た」だったのか「痛い」だったのかは不明だが、リャンに向けて豆が打ち出されていた。急ぎ駆けつけながらストリームフィールドを発動させるドミノ。周囲の風がぶわ……と静かに流れ始めた。 「これで怯んでくれると良いんだけど……」 盾を構えるドミノにも豆が飛来する。ダークネスクロークがばさりとドミノをかばい、ストリームフィールドに巻き上げられた豆はそのまま変異豆の木に直撃する! 「これは良い、大人しくしてもらいましょう!」 防御に成功し、ソアも豆を反射させつつ気高き銀狼を解き放つ。あわせるようにリャンも豆の木の影を射抜く! びくん! 気高き銀狼に組み伏せられ、影縫いの矢に影を射抜かれた豆の木は麻痺し、豆の発射も一時ストップする。その好機にソアが駆け出し、ドミノも慈悲の聖槍を放つ! ざざっ、慈悲の聖槍とリャンのホーミングアローが交差するように豆の木を貫き、ソアも踏み込む。 「食べれん豆はいらんのですよ!」 ずばんと蹴り上げる斬鉄蹴が眩い軌跡を描き、変異豆の木を打ち砕くのだった。
「騒がしいですね……他の班はもう戦闘に入っているのかな……こちらも頑張りましょう」 他の班の戦闘の音が耳に入ったか、歩・ヒノト(a08542)は豆の木を探しながら仲間達の位置も確認しつつ呟いていた。 「はい皆さんー、ただいま村内清掃中〜、犬猫子豚もお家の中に、窓から顔など出さぬよう〜♪」 歌うように警戒を呼びかけるはセイレーンの医術士・アノニム(a41796)。炎熱の賭博師・ジョーラム(a05559)も「しばらく家の奥で我慢してくれなー!」と家々を巡っていた。 「好き勝手に移動していると思うのですが……」 呟くヒノトの足元に、バラバラと転がってくる何個かの豆。振り返ればそこに変異豆の木が居た。 「うわっ!?」 デタラメに打ち出される豆の連射から咄嗟に身をかわすヒノト、呼びかけ途中だったアノニム、ジョーラムもそれに気付いて駆け付ける。 「大丈夫? ……あー、痛そ」 何発か喰らったヒノトに癒しの水滴を施して、アノニムは豆の木から逃れるように物陰へと位置取る。 「よし、俺が引きつける!」 カッ! とスーパースポットライトを発動させ、眩いばかりの光を放ったのはジョーラム! そのまま村の外へと誘導するために踵を返して駆けて行く。 「あ、待って――……」 アノニムが叫ぶ、ジョーラムは振り返って……変異豆の木が追って来ていないことに気が付いた。 「麻痺したみたいですね」 強弓『翆』で動かなくなった豆の木を狙撃しつつヒノトが言う。スーパースポットライトは相手に麻痺を与える効果も持っている。ジョーラムの方を向いてはいるものの、麻痺した状態では追いかけられなかったのだろう。 「ちっ、だらしない奴め」 こうなればもうこの場で倒した方が早い。ジョーラムはまたまた振り返ってイリュージョンステップの巧みな足捌きを取りながら、急ぎ豆の木の方へと詰め寄る。アノニムは攻撃をあまり考えていなかったので、今はヒノトがチクチクと弓で狙撃を続けていた。 「……とっ、動き始めましたか」 素早く身を伏せるヒノトの頭上を豆が通過する。丁度ジョーラムが間合いの一歩手前に差し掛かったその時に変異豆の木の麻痺が解け、再び豆を撒き始めたのである! 「そんなもの、当たるかよ!」 巧みなステップで難なく間合いに踏み込み、盾の炎蛇、シャウトソードを使って飛来する豆を叩き落すジョーラム。 「静かで深い……んー、いいリズムね」 そんなジョーラムの実力……先輩冒険者の戦いぶりを目の当たりにしながら、見事に刻まれるステップ、武器捌きにアノニムが感嘆の声を漏らしていた。 「オラオラオラオラ! 同じ植物でもこっちは大輪の薔薇だ!」 ざざざざざんっ! 振るうサーベルは花弁を散らし、死の連撃が大輪の薔薇を形作っていた。ジョーラムの薔薇の剣戟は華麗に4連撃を決め、変異豆の木を打ち倒すのだった。 「あら素敵、見事な薔薇ね」 無事に退治できたことにほっと息をつきながら、アノニムは小さく呟くのだった。
●豆撒き 「そこら中に撒き散らされた豆の回収ですか……大変ですが頑張りましょう」 箒を借りて掃き集めながら言うヒノトを始め、合流した冒険者一同はワイワイと村の掃除のお手伝いを行っていた。 「随分と散らかして行きましたねぇ……」 集めた豆を運びやすいよう袋に詰めながらソアが呟く。冒険者の手伝いもあってかなりのスピードで豆は集められていたが、まだまだ視界には豆が溢れている様子だ。 「でも、これ以上増えることは無いから片付けるだけなぁん」 フィフィも箒と袋を持って豆を掃除してゆくのだった。 「……ふむ、破損なんかは大したことないみたいだな」 壊れた建築物、主に窓などの被害状況を確認し、修理を手伝っていたのはジョーラム。その目に中々面白い光景が映ってきた。 「みんなー、あのお兄ちゃん冒険者だからコレぶつけても痛くないんだよー? ほら!」 村の子供達を集めながら言うのはアノニムだ。握った豆を投げつけられているのは……シュアリィ? 「ちょっ、何するんですか? ちゃんと掃除しないと……」 豆をぶつけられて抗議するシュアリィだが、アノニムは続けて投げつけながら、 「相変わらず真面目ねー、これで皆楽しく豆を村の外へ投げ捨てるのよ。……ほら、あっちに走って!」 「そんな……ちょ、痛いですからっ」 何だか貧乏クジを引かされたっぽいシュアリィだったが、このままではせっかく掃除したのに豆がまた散らかると村の外へと走る。それを追いながら豆を投げ捨てる子供達のアノニム。その一部始終を見ていたジョーラムはニッと笑みを浮かべた。 「投げ捨てる……そうですね、村の外へ出して燃やすのはどうでしょう」 豆の処分法を考えていたダフネも了解し、ヒノトも「やはり豆撒きしかないのかな」と集めた豆を見て頷く。 「はい、それじゃーちゃきちゃきとやるよー」 ドミノもその案……『豆を村の外に投げ捨て、その後燃やす』ということを了解し、バラバラと投げ出し始めていた。こうして村人達、冒険者たち共に協力して豆を村の外へと撒いてゆく。 「なんだかスッキリするかも、ストレス解消?」 思いっきり豆を投げつけながらリャンが楽しそうに言うのに、 「この村に、これからいいコトありますよーにっ♪」 ソアの元気良い声に、村人達もこれからの幸福を祈りながら豆を撒くのであった。
こうして村の外へと楽しく撒き出された豆は後に焼却され、村には平穏が戻ったという。 記念に硬い豆を持ち帰った冒険者たちも居たが、彼らはそれを見る度に、皆で豆を撒いた楽しい記憶を思い出し、これからも人々の幸せを祈る気持ちを大切にしたいと微笑むのだった。

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参加者:9人
作成日:2006/02/02
得票数:冒険活劇2
ほのぼの15
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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