結輪亭茶話 〜フレグランス・コサージュ〜



<オープニング>


「ランララ聖花祭といえば、お菓子の祭典ですが……『花』も、祭りに冠されているんですよね」
「お菓子の祭典……まあ、せやな」
 微妙にずれた感想がこの藤色の髪のエンジェルらしいなぁと、リス尻尾霊査士は思ったりした訳で。
「聖花祭なら、春の方が華やぐでしょうに」
「まあ、ドリアッドの聖域には年中咲き乱れとる花園があるって話やし?」
 そう言えば、自分も目の前でまったり茶を啜っていたりするエンジェルも、ランララ祭の意義(?)には程遠い所におるなぁと……寂しい事を考えてみたりする。
(「別に、興味がない事もないんやけどなぁ……」)
 茶飲みエンジェルはいざ知らず、殊自分に関してその類から縁遠い元凶の一角を眺めやり思わず溜息。
「ララン、では、頼まれてくれるかな?」
「へぇへぇ……」
 彼の笑顔は、本当に歯もキラリと光りそう……その二重人格張りの変身振りは何とかならんのかと内心で呟いて、おざなりに頷く明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)だった。

「フレグランス……コサージュ?」
「せや」
 頷いたラランは、ちょっぴり溜息混じりだったり。
 コサージュとは装身花の事。元はドレスの身ごろという意味だったという。その昔、小さな花束を胸元に飾ったのが始まりで、今は上半身に付ける花飾りの事を指す。
「御存知の通り、とても華やかなアクセサリーですが……実は私、そのコサージュに常日頃より物足りなさを感じておりまして」
 ラランの後を続けたのは……非常に爽やかなヒトの青年だった。金髪の巻き毛は綺麗に撫で付けられ、モノクル越しの灰色の瞳は涼やか。シルクハットに三揃えのスーツ、ピカピカに磨き上げられた革靴。象眼の握りのステッキを手に、上品な微笑を浮かべている。如何にも絵に描いたような紳士ぶりだ……いっそやり過ぎでさえありそうな。
「申し遅れました。私はミランと申します」
「職業は香水屋や」
「どうぞ、皆さんは調香師とお呼び下さい」
 ラランの投げ遣りちっくな呟きをやんわりと、しかし断固として訂正する……何処かで見たよーなやり取りかも知れないが、それはさて置いて。
「コサージュは謂わば『花』飾り。花の魅力はその美しい容姿もさる事ながら……『香り』も重要なファクターといえます」
「ですから、『香り』も楽しめるコサージュがあったら素敵じゃないかと思いまして」
 ノンビリ口を挟んだエルフの青年は、ミランの仰々しい物言いに笑みを浮かべたようだった。こちらは、栗色の髪と切れ長の灰褐色の瞳が柔和な雰囲気。『結輪亭』の細工師、シードルである。
「仕掛けはそんなに難しい物でもなくて。香りが長く楽しめるように、香水を仕込むポットをコサージュに取り付けるだけなんですけどね」
「まあ、簡単な仕掛けやから、誰でも手作りの香り付コサージュが楽しめるって事やな」
「その『簡単な』仕掛けを考案した私とシードルの努力は、承知して戴きたい所ですが」
「へぇへぇ」
 得意げに胸を張るミランに、おざなりに頷くララン。シードルは2人を見比べて困ったように頬をかいている。
「まあ、早い話が香り付コサージュを一緒に作らへんかってお誘いなんよ。ほら、ランララ聖花祭も近いし。手作りのお菓子に手作りの花を添えるっていうのも洒落てるやん?」
「コサージュの材料なら結輪亭に揃えていますし、作り方は僕がお教えしますから」
「勿論、御希望の香水の小瓶もお付け致しましょう」
 穏やかな笑顔のシードルと、鷹揚に頷いてみせるミラン。彼らをちらりと見上げて、ラランは「気軽に参加してな」とフワンとリス尻尾を振ったのだった。

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参加者
NPC:明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)



<リプレイ>

 真冬に在って、今日の結輪亭は二足程速い春の気配。柔らかな色が溢れ、ふんわり優しい香りがそこはかとなく。
「これは何処に……?」
「せやな、そっちのテーブルでええんちゃうか」
 シードル達が2階の工房で用意の間、明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)はパフィシェと準備中。はさみや小刀を並べていると、カランコロンとドアベルの音。
「おはよー。その……ランララ聖花祭には関係ないけど、作りたいならいいよねー?」
「おはようございます」
 3番手は屈託のないミルッヒの笑顔。その後ろからひょっこり顔を見せたのはネイネージュで、どうやら彼女に誘われたらしい。
「あ、そうだ。ラランちゃん、その……ごめんなさい」
「?」
 ふと表情を曇らせたミルッヒの謝罪に、首を傾げるララン。同じく眉を顰めたネイネージュはただ一言、亡失の、と呟いた。
「……ああ」
 合点の行ったラランは、困ったように頬をかく。
「うちかて冒険者やさかい、立場は同じなんやけどな」
 不首尾の結果は忘れずに、でも今日という日は楽しく過ごそうという霊査士の言葉に、彼女は小さく頷いたのだった。

 賑やかなお喋りの声。三々五々、集まってきた冒険者達はコサージュ作りに早速取り掛かる。
「香りも楽しめるコサージュだなんて、素晴らしいアイデアです♪」
 嬉々として、菫色の生地を型取りするヴァイオレット。慣れない手つきで、シードルに1つ1つ手順を請う。懸命なのは一重にマスターの為。想いを香りに代えて、ずっと傍にいられるように……。
「香り付きって聞いたから、てっきりノーズゲイだと思ってたんだけど」
「ノーズゲイ?」
「香りの良いハーブの花束の事ですよ」
 首を傾げるラランに、ネイネージュの補足。サクヤはうんうんと快活に頷く。
「まさか香水使うとはね……あ、だからフレグランス・コサージュなのか」
 彼が作るのはコサージュのブレスレット。艶やかなダッチェスチューリップのピンク色が春らしい。
「香りは鈴蘭とか出来るかなー? 5月の誕生花だからさ」
「香水もあまり詳しくないのだが……桜の香りとかあるのだろうか?」
 一方、ガルスタのコサージュは白薔薇。以前に求めた物をイメージしているらしく、時折考え込んでいる。
 コサージュと香り、違う花の組み合わせも……まあ、ありかもしれない。
「こんなノンビリした気分暫く味わえませんから、今日はゆっくり時間をかけましょうか……」
 窓際で差し向かい。長い銀髪の青年と朱髪長身の少年は、各々慎重な手付きで黙々と。
「今からの時季なら、春らしい色もきっと似合うよね?」
 クリスマスローズも姫林檎も、どちらも大切な人への花飾り。本当ならランララのお祭りに渡せれば良かった。でも、その頃2人がいるのは北の荒野。無事に戻って来られたら、きっとその時に。
「あちらではランララをやる余裕もないでしょうから。まあ、願掛けでしょうかね?」
「でも、ちょっと残念かも」
 お互い顔を見合わせて、オラトリオとバーミリオンはフフッと小さく笑み零れた。

「にゅー、上手く作れると良いのですがねぇ……」
 何がともあれ、まずは香水選びから。
 ゼソラはトントンと階段を上る。今回は1階のダイニングが作業場、2階の工房が調香室らしい。
「こんにちはですよー」
「いらっしゃぁい! どんな香水がお望みやろか!」
「……は?」
 ハイテンションな出迎えに、流石のゼソラも思わず唖然。
 大きなテーブルに並ぶ様々な香水瓶。そのテーブルの向こうでは、奔放に飛び跳ねる金髪を無造作に束ね、ツギハギのシャツ、擦り切れたズボン、ドタ靴が如何にも野良仕事なあんちゃんが大歓迎ムードで両手を広げている。
「……えっと」
「もしかせんでも、酒場でめかしこんどった香水屋や」
「調香師って呼んでぇや」
 小瓶の箱を持って来たラランはげんなりした面持ち。ゼソラには「まあ悪い人やないから」と苦笑混じりに肩を竦める。
「そしたら、後は宜しゅうに」
 そそくさと下に戻った所からして……実兄と紹介するのだけは嫌だった模様。
「ラランちゃん、今日もツレナイなぁ。まあ、そこも可愛いんやけど……あ、どんな香りがええんやろか?」
「その……爽やかな香りで、快活な感じが」
「はいはいっと。すぐ合せるさかい、ちょい待っといてな」
 ……冒険者の酒場にわざわざ一張羅でめかし込んで来たミランは、その実都言葉バリバリの気のいい兄ちゃんだった。

 その後も入れ替わり立ち代り、2階の工房に人の出入りは絶えず。その度に違った残り香がふんわりと階段に漂う。
「えーっと……あんまり香りが強くならないように出来るでしょうか? 顔を近付けた時に、微かに香るくらいでいいんです。プレゼントする方が、あんまり香水が似合うって感じじゃないので」
 何気に失礼な事を言ってのけたキニーネの希望は水仙の香り。
(「プレゼントなのに……自分の好きな花くらいしか思いつかないー」)
 内心の悩みはさて置いて。僅かながらでも、香りと花が心の慰めになればと願う。
「香水屋さ……でなくて、調香師さん、林檎の香水ないですか?」
 ユーニスは好きな林檎をコサージュに。本当はお友達と一緒の予定だったけど……楽しいお出かけはまた次の機会までお預け。
「僕、ケーキみたいな甘い香りが大好きなんです。生クリームみたいなフンワリした感じがあったら、是非使いたいな」
 ノヴァーリスのデザインは柊の葉に可憐な白い花。細いリボンで纏めた清楚なコサージュに、甘い香りはきっと似合うだろう。
「わたくしの髪の白薔薇と同じコサージュを作りたく存じます」
 恋人のプレゼントの為と、フェアは真剣な面持ち。危険な戦いにも臆せず最前線へ赴くあの人。いつも帰りを待つばかりの身で、せめて香りだけでも傍にいられたら……。
「もし調香に必要でしたら、髪の花を全て取っても構いません!」
 今にも髪に咲く薔薇に手を掛けそうな彼女を、ミランはやんわり押し留めた。
「調香師の鼻を信頼してえな。嬢ちゃんの使とる香りでええんやな?」
 にっこり笑顔で、早速調香に取り掛かる。尤も、ドリアッドの髪の花は体の一部。本物の花のように匂わないからでもあるけれど。
「これが、きっと幸福の薫りなのでしょうね……」
『誠実』の菫に茉莉花の白を合せる。誠実はパフィシェ自身を表す言葉。理想通りの香りにうっとり犬尻尾を揺らし、大切な時に着けたいものですと微笑を浮かべた。

 やはり来るランララ聖花祭の為が多いようだけど、贈り物の機会はそれだけじゃなくて。
「お世話になってる人の、お誕生日が、もうすぐなので……プレゼント作るぞー!なのです」
 その心意気や申し分なし。イーチェンはググッと拳を握って……。
「こ、こうですよね! えい、やぁっ!」
 ブンッと振り下ろした小刀が、見事に布地を断ち割り下の木板に突き刺さる。
「……う、うーん?」
 周囲は思わず唖然呆然。物騒な物音に慌てて飛んできたシードルに、イーチェンは不思議そうに小首を傾げる。
(「おやおや」)
 顔見知りを遠目に、微笑ましげに唇を綻ばせたクララは、シルクの白いリボンを弄りながらデザインを思案中。
「黒髪ですと明るめの赤も綺麗、かしら」
 香水なんて付けないけれど、良い香りは心が落ち着くもの。素敵な香りのコサージュをお誕生日のお返しに……結局、甘い香りの香雪蘭――フリージアに決めたようだ。
「香り、後からでも足せるからちょっと先のプレゼントでも平気だよね?」
 ミルッヒは大切な主の誕生日祝いに。いと誇り高き君へ、気高く清楚な薫香纏う八重白梅のコサージュを……フォーナ感謝祭、ランララ聖花祭と贈り物を手作りする機会が多いのが嬉しい。
「〜〜♪」
 ナコは終始上機嫌だ。ビーズを苺に見立て真っ白な花のコサージュを作りながら、ずっと渡す時を考えているらしい。
(「きっと似合うのです♪」)
 大好きな友達の為に……その横顔は本当に楽しそう。
「……ふぅ」
 ユファは疲れた眼を瞬かせた。細かな作業は虫眼鏡を使って……見かねたシードルが両手を使える拡大鏡を貸してくれたので、作業は大分楽になったけれど。
「似合うといいなぁ」
 コサージュは小さな百合の花束。慎重に丁寧に心を込めて、もう一頑張り。
「皆、こぉいうの上手ですょねぅ……」
 周りを見回したイヴは、自分の手元を見下ろした。淡い青紫の花に透き通った綺麗な石、白い小花とピンクのリボンを飾って……香りは強くない紫陽花が良いだろうか?
「ネイネージュにゅ」
「何でしょう?」
 隣の青年は白い花を作っていた。八重咲の梔子だろうか。
「ぇと、出来上がったら……もらってくださいにゃぁ」
「そうですね、楽しみにしています……私もお返ししないといけませんね」
 恥ずかしそうな少女の言葉に、ネイネージュは穏やかな笑みを浮かべた。

 右、左、右、左――。
「へぇ、やっぱりプレゼントなんや」
「恥ずかしいから、恋人の事は触れないでな」
 右、左、右、左――。
「けど、ええ人がおるんは羨ましいわ」
「ラランは可愛いから、きっといい人に逢えるさ」
「あはは、おおきに」
 右、左、右、左――。
 ラランとレイ、リス尻尾の少女2人並んで作業中。雑談の間も尻尾がフワリフワリと揺れている。
「……」
「? どないしたん?」
「い、いや……何でも」
 背後の視線に振り向けば、スティファノの取って付けたような笑顔。
(「何しに来てるんだ、私。ラランの尻尾観察じゃなかった気がするんだけど……」)
 でも、ちまちまと単調な作業に飽きる内、ついつい視線はフワフワのリス尻尾に……。
 右、左、右、左――。

 さざめく乙女達の笑い声は賑やか。フィニスが心配する程、男性陣の参加が少ないでもなかったが、ついつい隅っこの席に固まったのは仕方ないだろうか?
 フィズはモスローズに銀鎖と十字を取り付ける。その花言葉の通り、尊敬する人を思い微笑を浮かべる。
「結局は自己満足……かも知れないけど」
 大切な人達に『大好きです』とこっそり伝える為に。かけがえのないものをくれた人へ……コサージュのささやかな主張は届くだろうか。
 アスカのコサージュは桜がモチーフ。1番に思い浮かんだあの子の緑髪に咲く可憐な花。……けして、単純と言ってはいけない。
(「喜んでくれるかなぁ」)
 細かい作業は些か苦手なので、作業は真剣そのもの。多少いびつな桜があるが……そこは手作りの風合いと納得する。
 セイルも大切な恋人の為に。ピンクローズの花言葉は『優しい心』。自分を優しく包んでくれる彼女を、これからも守る誓いを込めて。
「よし、こんな感じかな」
 喜ぶ時の可愛い笑顔を思い浮かべ、思わず笑み零れる。
 フィードの微笑みはどこか切ない。秘かに想うあの人の髪に咲く真紅の菫。時折淋しげに揺れるその花を思い出しながら……受け取って貰えるかは判らないけれど。何かせずにはいられない、そんな気持ちこそが大切。
 細やかな花弁作りに苦心するのはバルトだ。好きなあの子に贈る撫子は彼女の誕生花だ。その花言葉は『思慕』。恥ずかしい思いをしてまで図書館で調べたのだから、間違いない。
「ご、ご都合主義な意味合いだよな」
 今更のように思い出して赤面する山犬尻尾の青年を、セイレーンの青年は面白そうに眺めている。
「ねぇ、キミも誰かへのプレゼントかい?」
「それは秘密です」
 向き直ったナジュムの物怖じしない質問を、鷹揚な微笑でかわすフィニス。丁寧な手付きでポットを取り付けているのは、青い薔薇のようだ。
「ふーん、皆真剣だね。何事にも真剣なのは良い事さ」
 お気楽な軽口と裏腹に、ふと羨ましそうに目を細めたナジュムだけど。
「やっぱりこういう事は向き不向きがあるねぇ」
 気付かれる前にころっと明るい表情に戻る。
 試行錯誤しながら、何とか形になったのは蔓薔薇のコサージュ。1人の少女の面影がちらつく事に戸惑いを覚えながらも。

 時季が時季だけに熱心なプレゼント作りが多い中、マイペースに勤しむのも何人か。
 ファオが作るのは日向色のミモザの飾り。まだ外は雪も残っているけれど、春に向けて温かい気持ちになれるように。
「お花も香りも両方楽しめるって、素敵ですよね」
 ふんわり柔らかな笑顔は、ポットに仕込んだミモザの香りにも似て。春のお日様を浴びた香りが、今から待ち遠しい。
「香りのするコサージュなんて、本当に素敵なのですっ! オリジナルコサージュをいっぱい作ってみたいのです♪」
 アクセサリーを見るのも集めるのも大好きなマサキは、ウキウキと楽しそう。選んだ花は淡紅の椿。大好きな花が纏うのは、憧れも入り混じる女性らしい甘い香り。
 ストラタムは純白のコサージュを。思い描くのは何時か見た草原での結婚式。花嫁の胸元に舞う白い花のコサージュが新緑に輝いて、まるで幸せの象徴のように思えたから。
(「香る花飾り……人の手で生み出された造花でも、自然の生花に劣らぬ麗しい魂を持つような気がします」)
 今から白い服に合せるのが楽しみの様子。
 レラも同じくドレスの花飾りを。自分の髪に咲く花と同じ梅花を選んだ。
「梅のコサージュなんて、あまり聞きませんけど……こんな感じでしょうか?」
 物作りに慣れない心配も悪戦苦闘も束の間、今ではそれなりに器用に香りのポットを取り付けている。
「菫はウチの、思い出の花やから、ね……」
 はんなり笑顔を浮かべたヴィオラは、大分完成した紫の花弁をそっと撫でた。
 特に器用でもないけれど、特別な思い入れのある花だから。細部まで細かく、一生懸命作り上げたその造形は、本物と見紛うばかり。
 何かと周囲を気にして見て回っていたシルルは、漸く腰を落ち着け仕上げに取り掛かる。
「ジャスミンの花を髪に飾るのは、恋人に永遠の愛を誓う事なんだって」
 だから、髪飾り。ポットには同じく茉莉花の香水を仕込む。贈り物にするか、自分で使うかは……後でのお楽しみ?
 一方、セロは気難しい表情。不器用な手付きで慎重に白の薄片を重ねる。
「贈り物ではないんです……変でしょうか?」
 女性らしくとか、今までは考えた事はなかったけれど……彼の目には少しでも綺麗に映りたい、そんな大切な人が出来たから。
「これも虚栄心、と言うのでしょうか……?」
 ついついの後ろ向きを、真っ直ぐ向き合う勇気に変えたくて。花の彩りや香りで自分を飾るのは、きっと素敵な第1歩。
「よし、完成です♪」
 メイのコサージュは上品な香りが馥郁と漂う薔薇と茉莉花。普段も花々の香りを集めて小物や化粧品を作っているので、今回も中々の出来だ。
「どちらも、落ち込んだ気分を癒してくれる花です。特に薔薇は、女性らしさを高めるんですよ♪」
 これをチョレート一緒に贈るのはどうかと思ったので……今回は自分用という事で。

 ――こうして、コサージュが出来上がる頃には黄昏時。斜陽差し込む結輪亭に、優しい香りと色彩と、冒険者の笑顔が溢れていた。


マスター:柊透胡 紹介ページ
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作成日:2006/02/20
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