巨大パフェ試食会



<オープニング>


「君達の中に、甘い物が好きな人っているかい?」
 その日、酒場にいた冒険者達に、そう呼びかけたのはストライダーの霊査士・キーゼル(a90046)だった。
「実はさ……知り合いが今度、店に出す新メニューとして、巨大パフェっていうのを考えてるらしいんだけど……その試食に付き合って欲しいって頼まれてるんだよ」
 その際に、一人よりも二人三人……できれば大勢の意見を聞きたいから、誰か一緒に連れて来て欲しいと、そう頼まれたらしい。
「試食するなら、確かに大勢の意見を聞いた方が良さそうだからね。……それに、かなり大きいパフェらしくてさ。とてもじゃないけど、根本的に僕一人じゃ食べきれそうにないんだよ」
 その言葉を聞いて、思わずどれ位の大きさなのかと問いかけた冒険者達に、キーゼルは「1m」と短く答える。
「……まだ改良中だって話だったから、当日行ったら変わってるかもしれないけど……確か、その位は無いと面白味がないとか何とか言ってたんだよね……。だから、パフェが大きくなる事はあっても、きっと小さくなるような事は、無いと思うよ」
 そりゃ、確かにキーゼル一人で食べるのは無理だろう。というか、無茶だ。
 ……それが、その場に居合わせた冒険者達の、共通した見解だった。

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参加者
NPC:ストライダーの霊査士・キーゼル(a90046)



<リプレイ>

●試食会へようこそ
 その日、本日特別試食会につき休業と札が出されたレストランの前には、キーゼルの誘いに応じて五十人以上の冒険者が集まっていた。
「あれ、何でキーゼルさんがいるんです?」
「何でって……」
 そんな中、キーゼルを見てしれっと言い放ったのは『真っ先にキーゼルを凹ませるぞ大作戦』を実行した、無垢なる銀穢す紫藍の十字架・アコナイト(a03039)だった。
「だってキーゼルさんは話しだけで、今日はエルルちゃんが来るんじゃ……」
「元から僕だけだって」
 その言葉に溜息混じりに返すキーゼル。だが様子を見る限り、目論見ほど打撃は与えられなかったようだ。
「どんなパフェなのか楽しみですわね」
 そんなやり取りを余所に、まだ見ぬ巨大パフェに期待に胸を膨らませているのは大地の歌い手・フェンネル(a02415)。いつも無表情な不破の剣士・アマネ(a01528)も、今日ばかりは今にもスキップしそうな程、足取り軽やかに店内へ向かっている。
「キーゼルさん、ご無沙汰を……あら?」
 茨の導士・アキレギア(a04072)は、ふいに鼻先を掠めた甘い香りに顔を上げる。視線の先には……今日の目的でもある巨大パフェが並んでいた。
「でっけ――――っ!」
 目をキラキラと輝かせて喰い盛りの牙狩人・ジャム(a00470)は巨大パフェに駆け寄る。装飾のフルーツなども含めると、ジャムと同じくらいの大きさだろうか。
「一体何人分あるんでしょうか……」
 食べ甲斐がありそうだと期待していた射干玉の捜索者・カルーア(a01502)も、直にパフェを見て冷汗を浮かべる。
「いらっしゃいませ〜。さ、どうぞ食べて。食べたら感想を聞かせてね」
 支配人らしき女性が出て来ると、冒険者達に微笑む。……その直後、キーゼルに詰め寄るなり「こんなに連れて来るなんて聞いてないわ」と物凄い形相で睨んでいるが……まぁ、それはそれ。
「夢みたい……」
 天真爛漫な人形遣い・シャラ(a01317)は、うるうると感動しながら、完食目指して巨大パフェの一つに手を伸ばす。
(「これだけ豪気な試食会を開いて、店は大丈夫なのか……?」)
 これにかかる費用を考えて心配になる朽澄楔・ティキ(a02763)だったが、試食会に協力するのが何よりも一番だろうと、持参したハーブとの食べ合わせを試しながらパフェを食べ始める。
「冬のパフェは、また格別じゃの」
 体が冷えないよう暖炉側の席を確保した氷雪の淑女・シュエ(a03114)は、ゆっくりとパフェを口に運び、その味を堪能している。
「キムチとかお好み焼きとかは無いみたいだな」
「うん、普通のパフェみたいだね」
 もしかしたら奇妙奇怪なパフェが出てくるのではと不安がっていた、ストライダーの武道家・フレイ(a04939)、のーテンキしっぽ忍び・キアフェス(a05003)の二人は安堵に胸を撫で下ろす。
 が。
「うん、見事に真っ黒ね」
 隣のテーブルにいた紅魔医師・ルビナ(a00869)の前には、彼女がリクエストしたイカスミ明太子パフェが置かれる。
「さ、食べて食べて」
 さも当然かのように、隣にいた深遠なる森の守護者・ウメ(a04589)にスプーンを差し出すルビナだが、ウメの方は死んでも御免だと一目散に逃げ出していく。
「じゃあ……」
 別の人に、と周囲を見回すが……その時にはもう周囲にいた冒険者達は、ルビナの側から逃げ出していた。

●給仕いたします?
 その頃、優しき雫の・エレアノーラ(a01907)と薫風詩・ファミリア(a03208)は、厨房でパフェ作りを手伝っていた。
「お姉ちゃん。つまみ食いしちゃダメよ」
「ごめん、美味しそうでつい……」
 果物の皮むきをしていたファミリアがつまみ食いをして、エレアノーラに怒られるような一幕もあったが、忙しいながらも二人はどこか楽しそうだ。
「一つ出来ました〜」
「わかった、持ってく……」
 出来上がったパフェを運ぶのは可愛いウェイトレスさん……ではなく。ふりふりで可愛らしいウェイトレス服に身を包んだ、漢・アナボリック(a00210)だ。
 といっても、この格好は彼の趣味ではなく……。
「時代は、個性でございますから」
 そうにっこり微笑みながら、戦闘執事・リース(a03126)が、給仕を名乗り出た男性にウェイトレス、女性のボーイの格好をさせたからだった。
「……これが個性か?」
 非常に着心地が悪いのか、アナボリックの顔色は悪く元気がない。……まあ、無理も無いだろう。
「ふぅ……」
 ウサギさんエプロンを着けた微笑みの風を歌う者・メルヴィル(a02418)は、巨大パフェを完成させると、それを凱風の・アゼル(a00468)とザウス大祭の思い出をしているキーゼルの元へと運んでいく。
「大丈夫かい?」
「は、はい、なんとか……」
 といっても1m超の巨大パフェ。彼女には少し重かったようだ。足元がフラついているメルヴィルを支えると、キーゼルはパフェをテーブルに置き、ありがとうと微笑みつつスプーンを口へ運ぶ。
「どうでしょう?」
「ん、美味しいよ」
 その返事に胸を撫で下ろすメルヴィル……と、そこに。
「シュウちゃん、可愛くしてあげる〜♪」
 ウェイトレス服を抱えた百合の導き手・シンシア(a04647)に追われながら、蒼の閃剣・シュウ(a00014)が逃げて来る。
「つっかまーえた〜♪」
「ま、待った。違う、シュウはあっち!」
 シュウの体を押さえ込み、脱がせて着替えを……と試みようとしていたシンシアだが、その声にあらと顔を上げる。彼女が捕まえたのは、シュウに身代わりにされたキーゼルだったからだ。
 当のシュウ自身は逃げ続け、どんどんと遠ざかっていく。
「シュウさん、逃げちゃダメですよ!」
 だが、それを遮る人影――。放浪せし孤高の影・クレス(a04821)の給仕をしていた、ドリアッドの吟遊詩人・フィオナ(a05336)だ。
「腕によりをかけてメイクしてあげますね〜」
「いや、ちょ……待って……」
 キーゼルを生贄にした行為も虚しく、フィオナにがっちりと腕を掴まれてしまったシュウは、彼女に引きずられて店の奥へ連れて行かれてしまい……
「んー、キーゼルさんも案外似合うかもねぇ」
「……は?」
「衣装も二人分あるし、丁度いいわ。さ、行きましょ♪」
 そして、これで解放されると安堵したのも束の間、キーゼルもシンシアに店の奥へ連れて行かれ……しばらくして、二人は戻って来た。そりゃもう可愛らしいウェイトレスさんになって。

●貴方とパフェを
「私も女子の端くれ。甘い物には少しうるさいぞ」
 栗鼠忍・ガートルード(a01713)はパフェを試食しながら、味や装飾について意見をいくつか出していた。
「あ……」
 と、そんな中ガートルードが見つけたのは、料理人としての技術向上の為に訪れ、真剣な様子でパフェを食べていた空を望む者・シエルリード(a02850)の姿だった。
「……ん?」
 シエルリードの方も彼女に気付いたらしく、スプーン片手にガートルードの方に近付いて来る。
「見てても、僕の分のパフェはあげないよー?」
「別にそんなんじゃ……あ!」
 ひょいっとパフェに乗っていたサクランボを取ると口に放り込むシエルリード。大好きなサクランボを奪われたのだ、ガートルードも黙っては引き下がれない。シエルリードのパフェからサクランボを奪還し……二人はなし崩し的に、お互いのパフェに手を出し合いながら一緒に食べる事になる。
「ヒカリさん、あーんして?」
「あーん」
 一方では蒼夜・キリ(a00339)と妖度卵・ヒカリ(a00382)の二人が、お互いにパフェを食べさせあいっこしている。その姿は見るからに幸せそうだ。
 幸せそうだといえば、その隣のテーブルも負けてはいない。
「フィルさん、ついてますよ?」
 青の剣士・サリア(a03777)は、炎髪の大番長・フィル(a00166)の口元についていたクリームを指先で拭うと、それをぺろりと舐め取る。
「悪いな……ああサリア、この部分が美味しいぜ」
「アニタさん、一緒に食べませんか?」
 フィルがサリアにスプーンを差し出す傍らでは、蒼き堕天使・イル(a01415)が戦に舞う白い妖精・アニタ(a02614)にクリームを乗せたウェハースを差し出している。
 彼ら四人は元から面識がある事もあって、Wデートと洒落こんでいた。……四人とも自分の恋人しか目に入っていない為、Wデートの意味があるかどうかは微妙な所だったが。
「ニー、このイチゴ美味しいよ」
「本当?」
 別のテーブルでは、東雲色ノ術士・ピート(a02226)が雪白の術士・ニクス(a00506)に、パフェに乗っていたイチゴを食べさせていた。
「ねぇピート、こっちの桃も美味しいよ?」
「どれ……」
 イチゴを食べ終わったニクスは、桃を刺したフォークをピートの口元へ運びながら微笑むと、今度は逆に、彼に桃を食べさせる。
「すみません、心配をかけて……」
「ううん、いいっスよ〜。ゲンヤさんが元気になって良かったっス〜♪」
 罪と罰を狩り取る黒き鳳凰・ゲンヤ(a02757)が微笑むのを見た、紅ひげ盗賊団だんじきエース・カリン(a00669)は嬉しそうに笑う。
 最近ゲンヤの元気が無いのを気にして、甘い物でも食べたら良いのではないかと、今日は彼を引っ張ってここまで来たカリンだが……どうやら、無事にゲンヤは元気を取り戻してくれたようだ。
「あ、ついてますよ」
「ん?」
 そんな中、不意にゲンヤはカリンの頬についたクリームに手を伸ばし……手だけでなく口元も近づけると、そっと頬のクリームを舐め取りながら囁いた。
「……愛してますよ」

●お腹いっぱい
 そんな恋人達の熱い空気もなんのその。雷火武侠・マサカズ(a04969)は、黙々とパフェを食べ続ていた。近くテーブルでは、黒のコートとサングラスを纏った怪しい男……もとい変装した神音騎士・サファイ(a00625)が、こっそりとパフェを食べている。とにかく食べて食べて食べまくっている彼は、一人で巨大パフェを空にしそうな勢いだ。
「んー……幸せ〜……」
 たっぷりのクリームとスポンジを頬張りながら、紫の蝶を纏い愛剣と歩く少女・リゼン(a01291)は実に幸せそうに笑みを零す。日頃あまり甘い物を食べられない反動か、彼女も目前のパフェを一人で空にしそうな勢いである。
「普通の女の子を目指して、頑張るでござるよ」
 紫尾の発破娘・スイシャ(a01547)は何か間違った『普通の女の子』像を持っているのか、巨大パフェの完食に挑んでいる。量の多さに苦しさを感じない訳ではないけれど……けれど、それを越える程、生まれて初めて食べるパフェは美味しかった。
「大食いチャンピオンの座は俺が貰った!」
 スイシャ以上に何か間違っているように見えるのは守護の拳士・ガイアス(a00761)だ。怒涛の勢いでパフェを胃袋に流し込み、おかわりまでしている彼は、これをパフェの大食い大会だと勘違いしているようだ。
「ボクは食い倒れたりなんかしないよ。逆にパフェを食い倒す!」
 隠鬼落忍者・パーク(a04979)は『食い倒れるな食い倒せ』をモットーに、ガツガツと物音を立てながら豪快にパフェを食べていくと、空になった器をドンと置いて「おかわり!」と声を上げる。
「もう勘弁して―――っ!」
 彼らとは逆に、音を上げてテーブルに突っ伏したのは疾風の戦姫・フィア(a05367)だ。彼女の目には、うっすらと涙すら浮かんでいた。
「も、駄目……」
「……」
 月桜の舞踏家・リーザ(a03988)とドリアッドの武人・マイハ(a05381)に至っては、食べ過のあまり倒れてしまい、ウェイトレス姿で給仕をしていたストライダーの翔剣士・マーク(a05390)に介抱されている。
「とりあえず薬草の用意はしてあるけど……いる?」
 夜闇と朝霧を纏し姑娘・フーリィ(a00685)は予め用意しておいた薬草を取り出すと、食べ過ぎで苦しんでいる皆にそれを配って回る。
「う……!」
 そんな中、また新たに倒れた者がいた。終焉を告げる穢れ無き死神・シェーラ(a04437)だ。
 だが、彼の場合は先の二人とは少し事情が違った。何故なら、彼が倒れたのは特注の巨大パフェを食べた直後だったからだ。
 ちなみに彼が頼んだのは海産物パフェ。海老に昆布に珊瑚と海の物が無差別に突っ込まれ、その上味付けが大量の塩とくれば……まあ、その味の不味さだけでも倒れる要素としては十分だろう。
「すっごい美味しいけど、でも大き過ぎて……ふにぃ〜」
 一方、流離う太陽・フィー(a02072)はもう駄目だと言いながら大きく息を吐き出す。死を司る紅き華月・リィズ(a01358)と二人で、どちらがより多く食べられるか競っていたフィーだが、どうやら相手には勝てなかったようだ。
「……幸せ……」
 巨大パフェを食べ残して苦しげにしているフィーと違い、リィズの方は巨大パフェを完食すると、それどころか心から幸せそうな表情で、そう呟いたのだから。
「こんなの食べきれないって……」
 死なない程度に完食を目指していた香辛料の魔術士・アルテア(a02573)は、あと少しという所で苦しげに溜息をついた。無理すれば食べられない事も無いかもしれないが、そこまでして完食するような理由はアルテアにはない。
「兄さん、残したら駄目でしょう」
「え、ちょ……!」
 隣でパフェを食べていた純粋無垢なる透明が歌い人・ライラブーケ(a04505)は、咎めるようにそう言いながら立ち上がると、フールダンス♪を使って強制的に、おしおきのダンスをアルテアに踊らせる。
「実用性を重視するあまり、器の芸術性が軽視されていますね……味の方も甘さがくどい。もう少し工夫しなければ、客の足は離れていくでしょう……」
 そんな中、妙に威厳溢れる着物姿で現れた、千変・ギネット(a02508)は、パフェをゆっくりと試食し、そう述べると、威厳溢れる姿を保ちながら店を去って行った。彼がいる間だけ、店内の空気が張り詰めていたのは気のせいではない……はずだ。
「ごちそうさま」
 パフェの試食を終えた欲望の使徒・シヴァ(a04547)は、紙の束を支配人に差し出した。それは、彼がパフェを食べながら述べた感想を、紋章筆記を用いて記録した物である。
「へえ、面白い事が出来るのね……読ませて貰うわ」
 支配人は感心した様子で紙束を受け取ると、それに目を通し始めた。

●ごちそうさまでした
 やがて全ての冒険者達がパフェを食べ終えた頃。
「お陰で、色々な意見を聞く事が出来たわ。色々と改善の余地もあるみたいだし、参考にさせて頂くわね。今日は、本当にありがとう」
 支配人は冒険者達に礼を言うと、最後に優雅に一礼してみせる。
「いえ、気にしないで」
「そうそう。こちらこそごちそうさま」
 冒険者達の方こそ、心行くまでパフェを食べさせて貰ったのだ。礼こそ言えど、文句など出るはずも無い。
 一行は最後に支配人と店員達に礼を述べると、たっぷりとパフェを食べたという満足感と共に、レストランを後にした。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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蒼炎の戦姫・フィア(a05367)  2009年08月31日 17時  通報
初依頼がパフェの大食い大会だったんだね…。