金の短剣



<オープニング>


●金色に輝く短剣
「依頼です」
 静かに告げる真実求む霊査士・ゼロ(a90250)。言葉は短いが、それだけでも冒険者たちは霊査士へと向き直る。
「今回の相手はモンスター。体が金で出来たかのような外観をしており、両手には同じく金色の短剣を携えています」
 その金モンスターを退治して欲しいと言うゼロに、冒険者たちも頷く。
「モンスターが手にしている短剣からは眩いばかりの光が放たれ、相手の目をくらませて斬りつける攻撃を得意とする様子です。光の範囲は広範囲に渡り、ちょうど翔剣士の冒険者が使うアビリティの強力版といったイメージでしょうか」
 この光は厄介だが、行動パターンは多く無いだろうから、対策を立てて向かって欲しいとゼロは言う。
「光を放つと同時に一人に斬りつけるようで、行動不能の効果とダメージを一度受ける危険性があるでしょう。油断無く当たるようにしてください」
 ゼロはそう言って、冒険者たちを送り出すのだった。

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参加者
希望への導き手・フィリア(a11714)
大天使長・ホカゲ(a18714)
灰十字・セザリア(a21213)
うたかたのゆめ・ロン(a33766)
鋼紅・カイ(a36945)
激流の少年・ヴィアローネ(a38562)
世界を駆巡る暴風・ノーラ(a40336)
無垢なる翼・マリー(a40890)


<リプレイ>

●眩い輝き
「体が金っぽい……何だか、好事家さんの家とかにそういう彫像がありそうですね」
 希望への導き手・フィリア(a11714)の言葉を聞いて頷く冒険者たち。今回は金色のモンスター退治ということで、道を進みながらも各々がその姿を想像している様子であった。
「……お久しぶりですね、カイさん。しばらく見ぬうちに、随分と腕を上げられているのを感じます」
 微笑みながら天使長・ホカゲ(a18714)が語りかけるは鋼紅・カイ(a36945)。昔同じ旅団に所属していた間柄だそうで、戦闘前ということで世間話とはいかないが、少しだけ言葉を交わしている。
「短剣を持った金の人形、ね……全く、そういうものは鑑賞用にだけあればいいのよ、動いて害をなすものなんて、いらないわ」
 モンスターの被害を懸念して、うんざりと呟く噂の物知り先生・セザリア(a21213)に、白龍の友達・マリー(a40890)も同意した様子で、
「そんなモンスターがもし、人里にでも現れたらと思うと落ち着いてはいられないわ。今ここで、退治させていただきます」
 一刻も早く退治せねばと頷くのだった。
「一般の人に被害が出る前に、サクッと倒しちゃおう!」
 と激流の少女少年・ヴィアローネ(a38562)も意気込んでいる様子だ。
「き、緊張するなぁ〜ん」
 緊張の面持ちで仲間達についてゆく奔放な紋章術士・ノーラ(a40336)は、足手まといにならないように頑張ろうと胸中で思うのだった。

 カッ!
 眩い閃光が冒険者たちの眼を灼くように、その動きを麻痺させる。金色人形は遭遇と同時にその光を使って冒険者たちの動きを封じ、一気に間合いを詰めにかかる。
 立ちすくむフィリア、ホカゲ。いち早く麻痺から逃れたセザリアは毒消しの風を発動させつつ、モンスターを迎え撃つように一歩前に出て大地を踏みしめる。
「白龍の主、幸運の女神よ……。この地に集いし勇士たちに、祝福の歌を届けたまえ……」
 毒消しの風を受けて行動を可能としたマリーは静謐の祈りを捧げ、未だ動けずに居た仲間達の麻痺を一気に取り除いていた。
「聞いた以上に、品の無い色の人形だ。……いくぞ」
 金色の人形を睨み付けながら呟き、カイは黒炎覚醒を使用する。邪竜の力が黒き炎となってその場に溢れ出し、カイのミレナリィドールが融合して七色の光を放つ。それは静かにカイの身に纏われていった。
「あの短剣を振るえないように……」
 うたかたのゆめ・ロン(a33766)は粘り蜘蛛糸を放ち、金色人形の動きを封じにかかる。しかし金色人形は片手の短剣を一閃させてそれを振り払い、そのままヴィアローネの方へと向かう。
「そう簡単に突破はさせないよ!」
 マッスルチャージを使用している所だったヴィアローネだったが、巨大剣を横に寝かせるようにして金の短剣を受け止めガードする。
「ノーラにはこれしか能が無いなぁ〜ん」
 ヴィアローネと剣をぶつけ合い、動きの止まった金色人形にノーラが束縛の木の葉を放つ! きぃん、と短剣で巨大剣を弾くと同時に跳び退り、金色人形は緑の束縛を回避して間合いを取った。

「……させませんよ……!」
 すっと金色人形が短剣を掲げようとする所へフィリアが木の葉を放つ。それはミレナリィドールと融合して七色に輝き、緑の業火となって金色人形を包み込んだ!
「……光、あれ」
 先制で足並みを乱されてしまったが、ホカゲはウェポン・オーバーロードを発動させつつ金色人形へと走っていた。その姿を視界に捉え、剣を振りかぶり……。
 カッ!
 緑の業火の炎を振り払い、掲げ上げられた短剣が光を放っていた。立ちすくむ冒険者たちの隙に、流れる動作でホカゲへと二本の短剣が襲い掛かる。
「……くっ」
 斬撃を受ける仲間のフォローに行こうにも、体が麻痺して動かない。セザリアは胸中だけで息を吐く。マリーの静謐の祈りも中断させられていた。
「即座に体勢を立て直せるようにしないとな」
 カイが高らかな凱歌を発動し、ホカゲのダメージと仲間達の麻痺を回復に掛かっていた。ロンもまだ麻痺の残る仲間が居ることを確認して毒消しの風を使用している。
「金の人形……何だか悪趣味……だね!」
 ぎぃん!
 動きを取り戻したヴィアローネがデストロイブレードを振り下ろすも、金色人形は短剣の一本でそれをガードし、横手から飛来するノーラの緑の束縛はもう片方の短剣で斬り落とされる。そのままギリっとヴィアローネの剣を抑えて無理やり下げさせ、滑るように二本の短剣で斬り付ける!

「うくっ!?」
 舞い散る鮮血、受けるダメージにヴィアローネの体勢が崩れかかる。
「しっかり……!」
 即座にライティール=ミレイを振り抜き、癒しの聖女を飛ばしてヴィアローネを回復させるフィリア。ホカゲもフォローに飛び込んで剣を構える。
「……大した動きですね。ですが、予想範囲内です」
 金色人形の足元を狙ってデストロイブレードを叩きつけるが、やはり特定のポイントを狙うことは難しいせいか、金色人形は一歩下がって回避する。ホカゲの一撃は大地を叩いた。
「甘いわよっ!」
 ホカゲと並ぶようにして踏み込んでいたセザリアが蹴りを繰り出していた。ホカゲの攻撃を回避した瞬間を狙って回し蹴りのような斬鉄蹴が叩き込まれる!
 みしぃっ
 腕を曲げてガードするように構え、ボディへの直撃を避けた金色人形ではあったが、斬鉄蹴を受けたその腕から軋むような音が漏れていた。腕を狙おうと考えていたセザリアに取ってはラッキーな展開だっただろう。
(「……今の私には、これくらいしか……」)
 マリーは静謐の祈りを捧げ続けていた。今現在麻痺している仲間は居ないものの、バッドステータス回復に専念するためマリーは攻撃力のある武器も、鎧強度のある防具も持ってきては居なかったのだ。自分の役割を果たすべく、マリーは祈り続ける。
 ホカゲとセザリアの攻撃に一瞬怯んだ金色人形。そこへ白い糸が絡み付いていた。ロンの放った粘り蜘蛛糸である。
「多勢に無勢だが、文句は無いだろうな!?」
 動きの止まった金色人形に、深緋の右手が向けられる! カイのデモニックフレイムが悪魔の如き形を取り、ミレナリィドールの光と共にモンスターを包み込んで燃え盛る!
「今のうちにっ!」
 そこへ剣を振りかぶるヴィアローネ。大上段から振り下ろされるデストロイブレードが……
 き、きぃん!
 掲げた二本の短剣で止められる。ぎりぎりと押し合う巨大剣と交差した短剣二本、ヴィアローネの目には、その短剣がぼんやりと輝き始めているように見えた。
 あるいはそれは、金色人形が短剣から光を放つ前触れだったのかもしれないが、それを確認することは出来なかった。ノーラの緑の束縛が、金色人形に纏わり付いてその動きを止めたのである。

「皆さん、大丈夫ですか!?」
 フィリアは皆の体力を確認し、ヒーリングウェーブでその疲労を回復させてゆく。その後押しを受けるようにホカゲ、セザリアは地を蹴った!
「……動けぬのでしたら、スピードも意味を成しませんね」
 ウェポン・オーバーロードの力で一回り大きくなった天使長の剣を振るい、金色人形の脚を叩くホカゲ。切り裂くことは出来なかった様子だが、確かな手応えがホカゲの手には伝わっている。
「さよなら、人形さん」
 蹴り上げるように斬鉄蹴を繰り出すセザリア。束縛された金色人形が衝撃でざっ……と大地を鳴らした。
 ひゅぅんっ
 ロンが駆け込み、蛇腹剣『深淵の影』を振り下ろす。鋭く繰り出される斬撃は、金色人形にとっても当たれば致命傷だっただろう。
 カッ!
 緑の束縛から逃れ、突き出された金の短剣が眩い輝きを放つ!
「うっ!?」
 攻撃の寸前で動きを止められたロンへ、左右から短剣の刃が襲い掛かった!
 じゃ、じゃっ という音に少し遅れて痛みが広がってゆく。ヴィアローネもノーラも麻痺していてフォローに動くことは出来なかった。
「……まだです。モンスターと化した哀れな者の魂を、開放してあげないと……」
 タイミングを計っていたマリーの静謐の祈りが浄化の力となって、仲間達の麻痺を解除してゆく。モンスターを倒し、その者に安らぎを与えよと呼びかけるように。

 フィリアはダメージを受けたロンを確認し、癒しの聖女でその傷を回復させる。ロンは小さく頷くと体勢を立て直すべく金色人形から跳び退った。
 カッ!
 眩い閃光に冒険者たちの足が止まる。金色人形もダメージに焦ったのか、そのまま背を向けて逃げ出そうと走り出していた。
 ホカゲ、セザリア、マリー、カイは追おうにも麻痺して動けず、一刻も早くその効果を振り払おうともがいていた。何とか動きを取り戻したロンは金色人形の背に向けて粘り蜘蛛糸を放ち、ヴィアローネは毒消しの風を振り撒いた!
「清めの微風よ、僕らに再び戦う力を!」
 粘り蜘蛛糸が一瞬、金色人形の逃走を阻むように絡みつくが、毒消しの風の効果でその拘束も解除される。再び逃げる金色人形に、追う冒険者たち。
「これで最後なぁん!」
 ノーラの放つ緑の束縛が、逃げる金色人形の背に纏わり付いて足を止めさせるのであった。

「ここで、一気に決めましょう……」
 フィリアが放つ木の葉にミレナリィドールが融合し、七色の輝きを以て業火となり、金色を包んで燃え盛る!
「……そろそろ、金色の輝きも最後でしょうか?」
 じゃりっ! と踏み込むホカゲの足、その勢いを全て乗せるように体を捻り、振り抜くようにデストロイブレードを放った!
「全く、目に痛いってね!」
 畳み掛けるように下から蹴り上げるセザリアだが、間一髪で束縛から逃れた金色人形は体勢を立て直しながら身をそらして回避し、両手の短剣を振りかぶる。
「させませんよ」
 きん、と片方の短剣はロンの蛇腹剣が弾き、もう片方はヴィアローネの巨大剣が受け止める。そのまま掻い潜るように懐へともぐりこんだロンは、超至近距離から連続で気の刃を撃ち出した!
 飛燕連撃に怯んだ金色人形は後退りながら両手を交差させて防御体勢を取る。少しでもダメージを減らそうというのだろうか。
「……気になるが、まずは沈黙してもらおうか」
 カイの打ち出す悪魔の炎が、腕を交差させたままの金色人形を包み込む。人形の体は限界が近いのか、ビシビシとヒビ割れるような音が鳴り出し始めていた。
 炎に包まれる腕を前にして、掲げられる巨大剣に闘気が凝縮されてゆく。
 ………づどん!
 デストロイブレードの爆発は、金色の体を粉々に粉砕するのであった。

「何だか目が痛くなった気がしますね……」
 フィリアの言葉に、一同は小さく息をつきながら頷いていた。金色人形は微塵に砕け散り、その退治が完了したことも安心の一因だろう。
「哀れなるこの者の魂に安らぎを……」
 マリーはかつて冒険者だった者へ祈りを捧げ、その魂に安らぎあれと思うのだった。破片は拾い集められないほどに細かく散乱していたので埋葬は出来なかったものの、ヴィアローネも一つの破片を握り締めながら祈りを捧げる。
「皆お疲れ様なぁん。無事で何よりなぁん」
 そう言うノーラに心から同意する冒険者たち。戦った冒険者たち、これからモンスターの犠牲になったかもしれない人々の無事を喜びながら、冒険者たちは帰路につくのだった。


マスター:零風堂 紹介ページ
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