旧モンスター地域復興〜空より来る〜



<オープニング>


 貧しい村であった。
 荒れ果てた土地に、かろうじて築いた集落で身を寄せ合うようにして人々は暮らしている。モンスター地域には、こうした、難民同然の人々が多くいる。むろん、先祖代々住んでいるというわけではなくて、新たに土地を切り拓いて住みかをもとめたわけだが、それにしても、もうすこしましな場所はなかったのだろうか。
 偶然、土地を訪れた無風之鬼・テンユウ(a32534)が、そんなことを思っていると、村人のひとりが、ぽつりと、漏らした。
 ほんのすこし、行った場所に、広く開けている原野がある。
 そこなら土壌も豊かで、水源もあるらしく、人が住むにはずっと適した土地であろう、と。ではなぜそこへ行かないのか、という問いは、愚問である。まだまだこの地域を統べているのが、モンスターであることの証左だからだ――。

「空から……襲いかかってくるそうだ。だから、地上に生き物はいない」
 村人から聞いた話を、テンユウは仲間たちに伝える。
 三対六枚の翼をそなえた異形の猛禽であるという。おそらく眼も効くのだろう、見晴らしのよい野原は、さながら、モンスターの猟場になっているのだ。
 身を隠すものひとつない平地で、空からやってくる敵に相対する――。決して有利な闘いにはならないだろうが、冒険者である以上、それに挑まねばならないのだ。

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参加者
ブラッディ・ジョーカー(a30860)
死ぬまで不死身・ランブル(a31922)
黒禍・クアトロ(a32272)
守護者・ガルスタ(a32308)
悪鬼羅刹・テンユウ(a32534)
博士・ユル(a32671)
夢幻の彷徨い人・エリシャ(a34062)
天を穿つ紫電の鎚・ツヴァイ(a36737)


<リプレイ>

●猛禽の猟場を往け
 足元には、小さな花が揺れている。まだしも、ここは豊かな土地なのだ。空から人々を襲い来る、モンスターさえいなければ。
 無風之鬼・テンユウ(a32534)は、遠眼鏡で旧モンスター地域の空を睨んでいる。
 いまだ、敵影は見えぬようだ。
「……空から、か。随分と厄介な敵だな」
 天を穿つ紫電の鎚・ツヴァイ(a36737)が呟いた。
「以前はどんな冒険者の方だったのでしょうねぇ」
 と、夢幻の彷徨い人・エリシャ(a34062)。この地域に棲むモンスターは、かつての東方ソルレオン王国の冒険者たちのなれの果てだというが……。
「だが今はモンスターだ。あちらには悪いが、勝たねばならん……か。これも生存競争……だな」
「村の人たち、モンスターのおかげで貧しい土地に追いやられているんだしネ。モンスターを倒せたら、このあたりも切り拓けるよナ。どうせなら住みやすい土地のほうがいいもんナ♪」
 櫻を愛した栗鼠・ガルスタ(a32308)とブラッディ・ジョーカー(a30860)が、村人のことを思って、そんな言葉をかわした。
「ところで、クアトロさんは傷のほうはいいのですか」
 ガルスタが、仲間の様子を気遣った。
 先の冒険で重傷を負った黒き大鴉・クアトロ(a32272)である。
「なに、攻撃される間もなく倒してしまえばどうということもない」
 ドリアッドの邪竜導士は片頬をゆるめた。
 モンスターが出現するという領域に入って、しばらく、経った。
「ふむ。まだ、あらわれませんね」
 博士・ユル(a32671)が顎に手をやりながら、澄んだ冬空を見上げた。
「かなり好戦的と聞いていますから、向こうから見つけてくれると思ったのですが」
 と、エリシャ。
「鋭い爪で攻撃してくるらしいな。今のうちに、護りの力を施しておいては?」
 ガルスタが提案した。
「そうだな。だが……」
 死ぬまで不死身・ランブル(a31922)は思案顔で応じる。
 『君を守ると誓う』や『鎧聖降臨』といったアビリティは、ひとつの戦闘のあいだは充分でも、実際、持続するのは時間にして10分。ガルスタとランブルが用意しているすべての『君を守ると誓う』を費やしても、5人の仲間を30分護れるだけしかない。30分以内に敵を見つけられるか否か。冒険者たちは意見を交わしたが、視界の効く平野でのこと、敵発見から接触までに多少の時間はあると思われることから、アビリティの温存を考えることになった。
 だが、そうこうしているうちに、やはり敵は、おのが支配地への侵入者をかぎつけたようである。
「来たか」
 テンユウが、接近してくる敵影をみとめた。
 彼は『ウェポンオーバーロード』で武器を召喚した。手元に出現したのは、巨きな岩の塊。これをブーメランとして投げつけるのが、彼の戦法だ。
 そのあいだに、ランブルはテンユウ、エリシャ、ジョーカーに『鎧聖降臨』を。
 ガルスタはまずクアトロに『君を護ると誓う』を施した。本来ならユル、ツヴァイにもそうしたかったところだが、そうすると、それだけで接敵することになるとみてアビリティを切り替え、クアトロとツヴァイに『鎧聖降臨』をかけることにした。
「己が想いを示せ、纏いて鎧と為せ、其が汝の力なり」
 加護の力が威力をあらわし、ふたりの鎧が変化して強度を増す。
「あんな距離だったのに……もうすぐそこまで来ている。……敵は速いぞ……位置取りに注意しろ……」
 ランブルの言葉に応えて、かねての打ち合わせ通り、冒険者は4人ずつの組にわかれる。2つの集団で、敵を挟み込むように展開するつもりだ。
 テンユウはジョーカー、ランブル、エリシャとの組。
 先頭に立つ彼は、しかし一見、無防備な体勢である。『無風の構え』だ。敵の攻撃を避けにくくなるが、ひきかえに、避けた攻撃をおのれの力に変換できる。
「……さて」
 ツヴァイは、ガルスタ、クアトロ、ユルとともに立ち、『スーパースポットライト』の力を使った。まばゆい光が、灯台のようにモンスター地域の原野に閃く。

●電光石火の爪を止めろ
 そのときちょうど、敵は矢が届く程度の距離にさしかかっていた。
 すかさず、テンユウがブーメラン――いや、岩の塊を放った。ぶん、と放たれた、目を見張らんばかりの巨石は、豪速で空に放物線を描いた。
 テンユウは相手の出方を見るつもりで放ったようだが、突然の思いもかけぬ攻撃だったせいか、意外といい線を飛んで、敵の異形の翼を岩はかすめた。羽毛が散る。
 耳障りな声をあげながら、猛禽を思わせるモンスターが旋回する。
「そっちだぞ!」
 敵が目指しているのはテンユウとは反対側のもうひとつの班だ。いや、あるいは最初からそうだったのかもしれない。凶悪な眼は、まっすぐに、ツヴァイの『スーパースポットライト』の輝きを見据えている!
 敵の襲来に、冒険者たちのあいだに緊張が走った。まだアビリティの届く距離でないため、この時間を使ってガルスタはユルに『鎧聖降臨』を、ランブルはエリシャに『君を守ると誓う』を施す。
 そして――
「素早い相手は足止めする。兵法の基本だな」
「絡みつけェ!」
 クアトロとジョーカーから『暗黒縛鎖』が放たれる。ユルからは『緑の束縛』が。
 まがまがしい二連の、黒い鎖。クアトロのそれはかわされてしまい、ジョーカーのそれは敵をうちのめし、傷を与えたものの捕らえはしない。だが、ユルの『緑の束縛』は、三対六枚の翼を木の葉で封じ込めることに成功した。
 墜落する敵を横目に、エリシャは『高らかな凱歌』により、アビリティの反動でマヒを被っているクアトロとジョーカーを癒す。
 地面の上に落下したモンスター。
 そこへ、テンユウと、好機と見たランブルが呼吸を合わせて躍りかかった。
 巨岩を、今度は投げることなくそのまま棍棒のようにして『デストロイブレード』を放つテンユウ。ランブルは大鉈から『ホーリースマッシュ』を喰らわせた。
 『デストロイブレード』の爆音と、『ホーリースマッシュ』の副次効果としてあらわれた『護りの天使』の姿とは、戦いが優勢な証。冒険者たちの士気を高揚させるに充分だった。しかし、次の瞬間。
 木の葉がふきとび、敵は翼を大きく広げた。拘束を脱したのだ。
 そのまま空中に一直線に真上の空へと舞い上がる。
 まさか逃げるのか、と、冒険者たちが息を吸い込んだとき、モンスターは鋭角的に軌道を変え、稲妻のような速さで舞い降りてきた。
 その鈎爪は、当初の執念を忘れることなく、ツヴァイに向けられている。
 その猛スピードを到底避けられないと判断したか、ツヴァイは手にしたナイフを放った。紫色の刀身が、『チェインシュート』の鎖を引いて飛ぶ。カウンターを狙ったが、敵は速度を保ったままきりもみ状態で飛行し、鎖を避けて獲物に達した。
「……ッ!」
 ダークネスクロークが翻るのもむなしく、死角から放たれた攻撃は彼の身を切り裂き、血の花を咲かせた。
「だが――」
 ユルが、ジョーカーとクアトロが、再び、敵の拘束を図る。
「その行動も予測の内です」
 しかし、今度はいずれのアビリティも振り切って、敵の翼は戦場を駆ける。
「ほう、今のを避ける……その羽も飾りではないということか……」
 ユルの言葉を後に残し、またも、モンスターは高空へと舞い上がった。

●混乱の翼に克て
 冒険者たちは再び、二班で敵を挟み込むよう布陣すべく、駆け出した。
 だが、拘束した敵を叩くため一度は結集したあとだ。位置取りするより敵の一手が早かった。
 バサバサ――、と、6枚の翼がはばたく。
 鳥というより蛾か何かのような、小刻みで、複雑な動きだった。
「気をつけろ……!」
 テンユウの警告が飛んだ。が。
 そのはばたきを見上げた冒険者たちの頭の中で、翼がはばたく音は幾重にもこだまし、それが舞い飛ぶ姿は残像をつくる。
 あやしい力の及ぶ範囲には、エリシャとガルスタをのぞく皆が含まれていた。
 そのうち、正気を保つことができたのはテンユウとユルだけだ。
「ツヴァイさん!」
 ガルスタは、ツヴァイが自分に向かってナイフの切っ先を突きつけてくるのをかろうじてかわした。
 モンスターのはばたきに混乱を誘われているのだ。
 ユルも、クアトロから放たれた衝撃波をそらすのに成功したが、ジョーカーとランブルの同士討ちは互いを傷つける結果になった。もっとも、ジョーカーの衝撃波はランブルの鱗をさして損ないはしなかったけれども、ランブルの重い一撃はジョーカーには深手だった。さいわいなのは、ある意味で皮肉なことに、他ならぬランブルが施した『鎧聖降臨』の効果があったことか。
「みなさん、しっかりしてください!」
 エリシャの『高らかな凱歌』が混乱を解除していく。
 テンユウが、空へと岩を投げつけた。
 ユルも宙に紋章を描き出す。
「長引かせてくれるな……」
 ブーメランが命中し、ついで、『エンブレムノヴァ』の爆発が敵を巻き込む。
 これらの攻撃で、敵はかなりのダメージを負ったようだ。
 だがそれでも、モンスターはあくまでも好戦的であり、なおかつ、残忍だった。
 敵の爪はこの期に及んで、執拗にツヴァイを狙ったのである。
 混乱から醒めたばかりのツヴァイの身体に再び爪が突き立ち、高く血飛沫をあげる。
 しかしこの急降下は、モンスターにとっても不利な行動だった。ユルの『緑の束縛』が、再びその身を呪縛したからである。動けなくなった敵に、テンユウがとどめを刺すことは容易であった。

「……まだ未熟、だな……」
 帰途。
 仲間に肩を貸してもらいながら、ツヴァイは呟く。
 高速で空から襲いくる敵を、ひとりで引き付ける役を担ったのだから、やむなき結果だった。
「名誉の負傷ってところかナ」
 ジョーカーが言った。
「俺なんかランブルに殺されかけたんだゼ」
「いや、待て……それはだな……」
 困った顔のランブル。
 混乱の影響を受けてしまったことはともかくとして――。
 他にも細かい読み違いはあったにせよ、結果として、かれらの冒険は成功であった。
「あとは、あの村が無事に発展していくことを願うばかりだな」
 とクアトロ。
 その言葉に仲間たちは頷いた。
 モンスターがいなくなったこの土地に、あの村の人々は入植できるだろう。
「よし。帰るか」
 武器を担ぎ上げながら、テンユウは言うのだった。


マスター:彼方星一 紹介ページ
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