旧モンスター地域復興〜巨獣〜



<オープニング>


●襲来
 旧モンスター地域の一角にある小さな村。
 夕刻迫る村に冒険者一行が立ち寄った時、村中をひっくり返す勢いで、村人達が避難の準備を始めていた。
「……何かあったのですか?」
 慌ただしく走り回る村人の一人を捕まえながら、キング・アルトリア(a19094)が事情を聞く。
 その若者は、アルトリアの服装を一瞥するが。
「冒険者か……?
 あんた達も逃げた方がいい。この村は、もうじき滅ぶ」
「……滅ぶ?」
 言われて、アルトリアは目をぱちくりさせる。冒険者が目の前にいるのなら、頼ってもいいだろうに。
「ああ。バカでかい化け物がこの村目掛けて歩いている……いや、たまたま進路上に俺達の村があったんだろう。明け方にはここを通る……悪いことは言わない、あんた達も逃げな」
 そう言って、若者は家財道具を運び出すために戻っていった。
「……巨大なモンスター、ですか」
 相手としては、不足はない。仲間達の様子を伺うが、退くつもりはないようである。
「選択肢は……言わずもがなですね」
 ただ、約束された勝利を得るために。
 この村で、明日も、明後日も、人々が笑って暮らせるように。
 何よりも、旧モンスター地域の復興のために。
「行きましょう!」
 彼等は剣を取り、迫り来る巨獣へと挑む――。

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参加者
紅蓮と白銀の翔剣士・カイ(a03487)
囁かれし者・テスタロッサ(a08188)
紫剣の舞姫・サーラ(a09005)
となりの・トトギ(a10087)
闇夜の銀星・レイラ(a16693)
蒼月・ハーウェル(a18412)
白い七翼の闘姫・アルトリア(a19094)
男爵・クッカード(a21051)


<リプレイ>

●咆哮
 慌ただしく駆け回る村人達の姿を前に、冒険者達は行動を開始していた。
「ボク達ヴァルキュリア・ナイツの力を見せるよ、みんなっ!」
 夜の帳が降りた村。明け方には、ここは戦場になる。そうなる前に、村人の避難を少しでも手助けしようと、紫剣の舞姫・サーラ(a09005)の掛け声と共に彼等は駆け出していく。
 最初は戸惑っていた村人達も、猫の手も借りたい状況だけに、冒険者の助力を受け入れていた。それも、彼等が召喚獣を事前に隠していたから。
 召喚獣の姿を村人が見れば、パニックがパニックを呼び村は大混乱に陥っていただろう。
「帰る場所が無くなる以前に、帰る人がいなくなったら話にならないわね」
 女子供の避難誘導を手伝いながら、黒閃の闘姫・レイラ(a16693)が呟いていた。
 小さな村とはいえ、中にはお年寄りや子供の姿もある。彼等の避難を手伝うのは、容易ではない。
「急ぐ必要はない。足下に気を付けて、グループになって避難するのじゃ」
 慌てて転んだ子供を抱き起こしつつ、となりの・トトギ(a10087)は子供達の避難を手伝っていた。とにかく、まだ時間はある。焦っても仕方ない。
「村は私達が必ず守ります! 荷物は構わず早く避難して下さい!」
 何を血迷ったのか、奥さんと子供を放置し、一人で箪笥を運び出そうとする男に、蒼枷月響・ハーウェル(a18412)が注意を促す。
「あんた達、あいつと戦うのか……?」
「当然です! 敵が目の前まで迫っているのに、冒険者がはいそうですかと逃げ出す訳にはいきません!」
 半信半疑の男に、囁かれし者・テスタロッサ(a08188)は訴えていた。その、少女らしからぬ迫力に気圧されて、男は仕方なしに箪笥を置く。
 そうして、改めて奥さんと子供と、僅かばかりの荷物を手に、彼等は村外れへと歩いていた。
 そちらの方向では、紅蓮と新緑の翔剣士・カイ(a03487)と村人の代表が何やら話し合っている。
「ああ、この辺に小さな洞窟があるんだ。側には泉もあるし、そこに避難しようかと……」
「そうですか。ならば……少し待って下さいね」
 言いながら、カイは仲間の元へと戻っていく。
 キング・アルトリア(a19094)や、男爵・クッカード(a21051)と話し合うが。
「そうですね……万が一のことを考えて、村人にはその洞窟に避難して頂きましょう。付き添いは、私が……」
「マドモアゼル・アルトリアが行くなら、私は残りましょう。念のため、あと一人か二人は一緒に行った方がよろしいですな」
 彼等の中でも双璧と呼べる、防御を担当する二人が同時にこの場を離れる訳にはいかない。クッカードの言葉に頷くと、アルトリアはテスタロッサとレイラを連れて村人の避難誘導に向かう。
「明け方までには必ず戻ります……ご無事で」
 その後も、色々と混乱はあったが、村外れに村人が全員集合したのを確認し、アルトリア達は避難誘導を開始した。
 残ったメンバーも明け方までにやることは残っている。
「さて、迎撃準備を整えないと……」
 ハーウェル達は家々を確認しつつ、残った者が居ないか確かめていく。大丈夫だ、人の姿はない。
 無人の村と化した家々を見渡し、彼等は安堵した。
 とりあえず、これで人的被害は防げるだろう。冒険者の活躍により、避難は迅速に進んでいた。
 やがて、空が静かに白みはじめ、地平線の彼方から太陽が……いや。
「あれは……!?」
 戦場の見定めをしつつ、敵の襲撃を警戒していたサーラが、地平線から現れる巨体に目を丸くする。
 次の瞬間、自らの来訪を告げるように、モンスターの発した巨大な咆哮が大気を振るわせ、無人の家々を揺り動かしていた。

●破壊
 モンスターの咆哮と、サーラの鳴らしたトランペットの音色を聞き付け、クッカード達が駆け付ける。
「アルトリアさん達は……?」
「まだ、戻ってませんね。おそらく、もう来る頃だと思いますが……」
 サーラの質問にクッカードが答え、迫り来るモンスターに目を向けた。直立したトカゲが前屈姿勢で突進してくる。決して、移動速度は速いとは言えないが、あの巨体。一階建ての建物など優に見下ろせる巨体と、全身を覆う鋼鉄のような分厚い装甲は、見る者を圧倒していた。
 その姿は、正しく巨獣の名に相応しい。
 果たして、あれを止められるだろうか……?
 疑問が口を吐いて出るよりも早く、彼等は冒険者の本能によって動き出す。
「守護聖人よ……その鎧に宿れ」
 ハーウェルとクッカード、二人の発動した鎧聖降臨が、その場にいる仲間達の身を包み、鎧を神々しい姿へと変貌させる。
「……何とも凄いデカブツじゃのー」
 呆れたような顔をしてモンスターを見上げていたトトギだが、気を引き締めると、黒炎覚醒を発動していた。漆黒の炎が全身を覆い、蛇のようにのたうち回る。
 そうして、邪竜の力を身に纏ったトトギは、目の前まで迫った巨獣にデモニックフレイムを放っていた。
 悪魔の炎が直撃し、モンスターの装甲を焦がしていくが、モンスターは動じることもなく、むしろ、痛みを怒りに変えると、巨大な顎を開いてカイに襲い掛かる。
「……っ、重い!?」
 ライクアフェザーの助けを借り、カイは巨大な顎の一撃を受け止めた。だが、受け止めたはずの巨大な顎の一撃は、その鉄壁の守りすら上回りカイの体力を奪い取る。
 防御に失敗していれば、上半身くらいは持って行かれただろう。
 それでも、何とか巨大な顎を押し返すと、返す刀でソニックウェーブを放つ。
「当たれ……!」
 気合いの言葉に応じるかの如く、音速の衝撃波が、モンスターの装甲を貫いていた。
 分厚い装甲すら気にもとめず、巨獣の肉を深々と抉り苦痛を与えていく。だが、モンスターの体格を考慮すると、それは微々たるモノかも知れない。
 それでも。
「こっちです!」
 再度カイに襲い掛かろうとした巨獣に、サーラのスーパースポットライトが放たれていた。閃光に目が眩むことはないが、自然と意識はそちらに向かう。
 再度、開かれた巨大な顎の一撃に、
「……頼りにしてるわよ、アヴァロン!」
 サーラの背後からダークネスクロークがマントを翻す。イリュージョンステップの助けも借り、技が力を凌駕すると、まるでマタドールの闘牛のように、行き場を失った破壊の一撃は大地を穿ち、爆発を引き起こしていた。
 地面にポッカリと開いた大穴に、サーラは思わず息を呑む。まともに食らえば、ただでは済まない。
「それでも……っ!」
 自分達は冒険者として退く訳にはいかない……人々の、かけがえのない生活を背負っているのだ。
 再度、トトギの放ったデモニックフレイムが、巨獣を呑み込もうと襲い掛かる。悪魔の炎が、モンスターの装甲を焼き払うが、それだけでは足りない。
 カイの再度のソニックウェーブが巨獣を貫き、苦痛に顔をしかめたモンスターは、その巨大な体躯を捻ると、尻尾の一振りで目の前の冒険者を跳ね飛ばした。
「……っ!?」
 巨大なハンマーを叩き付けられたような衝撃が、ハーウェルの全身を圧迫する。一瞬、呼吸が止まりそうになりながらも、ハーウェルは意識を繋ぎ止め、倒れた仲間にヒーリングウェーブを飛ばしていく。
 癒しの波動が周囲に満ち溢れ、彼等を奮い立たせていた。
 だが、モンスターも立て直す隙は与えない。巨大な顎が、倒れたサーラに襲い掛かり――。
「マドモワゼルばかりを狙うとは、あまり、よろしくないですな」
「クッカートさん……!?」
 倒れたサーラを庇うように、スーパースポットライトを放ったクッカートは、破壊の一撃をまともに食らい、彼の身体が宙を舞う。
 だが、巨獣の暴走は止まらない。
 続けざまに放った巨大な顎の一撃は、しかし――。
「させません、よ……」
 駆け付けた、アルトリアの剣がしっかりと受け止めていた。

●猛攻
「シャイニング・エクスカリバーーーーーッ!!」
 掛け声に応じるように、アルトリアの剣が輝きを増し、より神々しい姿へと変貌する。
 既に鎧聖降臨は準備済み。ウエポン・オーバーロードで力を増した剣で巨獣の顎を押し戻すと、彼女は次なる攻撃に身構えていた。
「皆さん、大丈夫ですか!?」
 心配そうな表情を見せながらも、テスタロッサはヒーリングウェーブを発動し、その隙にレイラがウエポン・オーバーロードで強化した獲物を手に達人の一撃を放つ。
「……っ、硬い!?」
 巨獣の装甲はレイラの鍛え上げられた一撃をも跳ね返し、跡には傷一つも見当たらない。だが、それで諦める訳にはいかない。
 巨大な顎がレイラに襲い掛かる。破壊の一撃を受け、レイラは苦痛に顔をしかめるものの、何とかその場に踏み止まっていた。肉体を凌駕する魂が、彼女を戦場に引き戻す。
 ハーウェルとトトギ、二人のヒーリングウェーブが飛び交い、その体力を取り戻していた。
「あまり、手間をかけさせないで下さい!」
 サーラが放ったソニックウェーブが、巨獣の肉を深々と抉る。更に、遅れて駆け寄ったアルトリアが、兜割りを叩き付けた。
「この……っ!」
 やはり、力で巨獣の装甲を貫くのは、容易ではない。
 分厚い装甲に弾き返され、アルトリアは体勢を立て直す。そこに、巨獣の尻尾の一撃が襲い掛かった。
 そこにある全てのものを薙ぎ払うように、振り回された尻尾はその場に居合わせた冒険者を巻き込んでいく。
「回復、を……」
 再度の一撃にあがなうことも出来ず、ハーウェルの意識が闇に落ちた。
 テスタロッサとトトギ、二人のヒーリングウェーブが何とか残る仲間を洗浄に繋ぎ止める。
「……圧倒的ですね」
 ソニックウェーブで巨獣の体力を削りながら、カイが呻いていた。彼等が圧されてるのは、すぐ背後に建物が迫っていることでも分かる。これ以上、戦いを長引かせる訳にはいかない。
「守ると決めたのよ。どんなに見苦しくても、足掻いてみせるわ!」
 言い放ちながら、レイラの放った達人の一撃が、今度こそ巨獣の装甲の隙間を縫って突き刺さっていた。
 それでも、分厚い装甲にダメージはそれほどでもないが、華麗な剣捌きは巨獣から戦意を喪失させる。
 それを見計らったように。
「貴方はここから先へは絶対に行かせない!」
「そうじゃの。そろそろ、退場してもらうか」
 テスタロッサの放ったエンブレムノヴァが、巨獣へと叩き付けられた。分厚い装甲すら打ち砕くように、虹色に輝く巨大な火球はモンスターを焼き払う。
 そこに、トトギの暗黒縛鎖が解き放たれ、虹色に輝く鎖の群れは巨獣の巨大な体躯をも絡め取っていた。
「今じゃ!」
 暗黒縛鎖の反動にマヒしながらも、トトギが仲間に合図を送る。それを見逃す冒険者ではない。立て続けに放たれるソニックウェーブが巨獣の肉を抉り、その命を吹き飛ばそうとする。
 それでも。
「……な!?」
 戦意を喪失し、エゴの鎖に絡め取られながらも、巨獣は最後の力を振り絞り、自由を取り戻していた。
 巨獣は邪魔な敵を蹴散らすように、巨大な尻尾を振り回す。その一撃に、背後の建物が破壊されるが……それに、先程までの力はない。
「これなら……!」
 何とかなる。これ以上、一歩も退く訳にはいかない。
 サーラは意を決し、ソニックウェーブを放っていた。音速の衝撃波が巨獣の喉元を貫いていく。更に、カイのソニックウェーブが追い打ちをかけた。
 まだだ。
 まだ、倒れない。
 恐るべき生命力。果てることのない生きることへの執念が、巨獣の身体を突き動かしていた。
 巨大な顎の一撃を、しかし、アルトリアは篭手で受け止め――。
「……この時を待ってました」
 肩口に巨獣の鋭利な牙を突き立てられながらも、アルトリアは手足を使って巨獣の顎を支え持つ。そして、がら空きになった口の中に、
「冒険者の力は伊達ではありません、よ……」
 渾身の一撃を叩き込んでいた。

●陽光
 旧モンスター地域に朝日が昇る。
 空を白に染めながら、地平線から顔を覗かせた太陽は、瞬く間に不毛の荒野を明るく照らし出していた。
「……何とか一件落着、かな?」
 サーラは巨獣が動かなくなったのを確認し、一息吐く。
 他の仲間達も、力を使い果たしてその場にへたり込んでいた。巨体が地面に倒れ込んだ時の砂埃が舞っているが、それすらも気にならないくらいに。
「クッカートさんと……ハーウェルさんは?」
 倒れた二人の様子を確認しながら、テスタロッサが呟いていた。良かった、息はある。二人の安否を確認し、彼女は安堵の溜息を漏らしていた。
 暫し、沈黙がその場を支配する。
 とにかく、村は守られた。これで、村人達の笑顔も次世代に引き継がれるだろう……そう、願って。
「さて、村人を呼び戻さないといけませんね」
 言いながら、アルトリアは立ち上がった。まだ、仕事は残っている。彼等を呼び戻し、壊れた建物を補修し……色々と大変だ。
 だが、彼等の手の中には、見えない勝利が確かに掴まれていた――。


マスター:内海直人 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/02/09
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