初花月のハルモニウム



<オープニング>


 山から海へ、河から平原を踏破し、街から街を旅芸人は巡る。
 幾つもの橋を越え、渡りの舟に手を振り、陽の光と――時に月明かりを頼りに。
 旅芸人達は歌と楽の音を引き連れて、白紙の世界に道を刻む。
 辿り付いた村で奏でられる叙事詩。恋物語。世の移ろいを伝える歌。
 とても嬉しそうにそれらを聞く村の皆を、一人離れた場所で少しだけ醒めた風に見ていた。
 涼風が吹きぬける野外、篝火の明かりと、温む大気を震わせて夜闇に響き渡る放浪の民の舞踊と鈴の音と――。
 翌日、去って行く旅芸人達を村外れのずっと先まで追い掛けて行った。
 一緒に行ければ何かが変わるのかも知れないと思いながらも、小さくなる背中をただずっと見ていた。

「そんな夢を見たんです。子供の頃の夢なのですけれど。その中で奏でられていた楽器の音が忘れられなくて、楽器が弾けるバルバラさんなら知ってるかな……と」

 冷たい風が戸口の隙間から部屋の中へも吹き込み、深々と冷え渡る冬の宵。
 夢の話を語り終え、答えを待つ様に此方を見詰めるセイモアの、矢車草の青の瞳を見返した後、バルバラはふいと目線を逸らす。

「楽器が弾ける程度で大した知識は無いが、何だ?」

 何時もの様に濃い琥珀色の酒を啜るバルバラ。促され、セイモアは過去の記憶の更に深い場所まで語り出す。野外の大気を柔らかく震わす楽器の音色と、篝火が地へ投げかける橙色の光の環の中で仄かに輝いていた楽器の姿、胡坐をかいた奏者が朗々と歌い上げながら鍵盤を叩く様を、ゆっくりと、そして細かく物語った。
 一頻り話を聞いたバルバラはグラスの酒を一啜り、乾いた音を立ててグラスを卓上へ戻す。
 口を噤んで暫し考えた後、ハルモニウムだ、と呟いた。

「ハルモニウム?」
「ふいごの様な物の付いた鍵盤楽器だ。簡単な作りの楽器で、アコーディオンに似ている」

 幼子が好きな玩具の話をする様に、似合わない素直さを見せて件の楽器の良さを語るバルバラ。過去を夢見る様な水の表の如き眼差しをバルバラのグラスへ向けたまま、セイモアはじっと話を聞いていた。

「もう一度、聴けたらいいなと思うのですが……」

 彼らはどこにいるだろうか。
 今も旅の空の下、道々に灯火を燈す村々へと喜びを届けているのだろうか。
 セイモアは遥か遠き旅芸人を思って双眸を伏せ、薄い香草茶を啜る。
 バルバラは瓶からグラスへ酒を注ぎ足す。
 空になった酒瓶を振って最後の一滴までグラスへ注ぎ、何もない瓶の底を覗き込んでいたバルバラは、やがてセイモアに目を戻すと口の端を擡げた。

「聴けるよ。初花月には幻の市が立つ。楽器を扱う者達が、引き取り手を求めて集まるんだ。楽器は想いが篭りやすいから奏でる手を失っても捨てたり壊したりし難いらしくてね。きっとあるだろう。色々な楽器が集まる場所だから」

 年に何度かある市なのだけれどね、毎年行くんだ、お前も行くか? とバルバラは笑う。
 じゃあ、皆さんを誘って行きましょう、とセイモアも微笑む。
 話をする内降り始めた雨は益々強さを増し、地を打つ冴え冴えとした雨音を酒場の中へも届けた。
 幻の市がたつ頃には、きっと止むだろう。
 その雨音は、市の日の美しい青空を約束している様にも思えた。

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参加者
NPC:牢屋番・セイモア(a90290)



<リプレイ>

 早朝の丘陵に冷たい風が吹き渡る。足の下で霜が砕ける。登り詰めた丘の向こうに更に広がる草原には象牙色の天幕が群れ集い、様々な種族、様々な容貌、様々な形の――けれど一様に春の花めいて色鮮やかな晴れ着を身に纏った流浪の民達が、持ち寄った楽器を朝陽の元に並べ出していた。
 これが初花月に立つ幻の市さ。
 皆を案内して来た吟遊詩人の女は、そう言って笑った。

●蒼天に幻の市が立つ
「……凄いものだな」
 楽の音に導かれる様にして天幕の群れへと溶け入って行く冒険者達。感嘆の溜息を漏らすクロスもまた、心魅かれる音に導かれる様に歩みを進める。生きる限り共に在れる、そんな楽器を探して冬の早朝の陽に煌く楽器の群れへ視線を巡らすベリル。
「譲り受ける者は相手と、楽器の誇りを大事にしなくては……ね」
 だからこそ唯一の楽器を探し、これも違うとベリルは深茶の胡弓を敷布の上に戻す。揺れるウィンドチャイム。優しい音に、風が植物の実りを伝える音を思う。野生の自然を吹き渡る風と共に奏でられる音色を聞きたいと、ファオはチャイムを手に取り。嘗て去り行く旅芸人の一人だったチェリートが奏でるコンサーティナ。聞く者の心を歌に――それ以外には体と音楽だけを両手に抱いて旅から旅へ。
「大事に仕舞わないで、一緒に歌うですから」
 共に歌う心地良さに連れて帰りたいと言えば、浅黒い肌の少女はにっこり笑って頷いた。
「表面の丁寧な彫り込みは職人の拘りがあり、澄んだ音色が耳に心地よく、小柄で。こういう楽器を探していたのです。このハープ以上に素晴らしい楽器はもはや出会う事叶わぬやもしれません!! この子を私めに譲って頂けませんか!?」
 アルレットの熱い思いを延々とぶつけられ、持ち主に否やは無く。奏でるチェロの艶やかな音色に暫し時間を忘れるイロゥス。
「この音色、決して無駄にはしない心算だ。だから……もし良ければこの楽器を僕に――」
 イロゥスの言葉に手を振る老婆。小さな街で歌姫と呼ばれた美声の老婆は、歌わせてやってくれと鷹揚に笑う。スキンシップは苦手だけれど楽器を通して人に触れるのは好き。声に出来ない事も音は伝えてくれる。自分を作ってくれる。イーチェンはリュートの弦を震わせる。今必要なのは、わたしが、音を作ること――リュートを手に、思い巡らすイーチェン。遠くで太鼓の音がした。元々演奏する事は好きだったが、長い間戦に明け暮れて楽器を手にする事も無く剣を手に取っていたのだと、赤毛の女に語り聞かせながらアレグロは桴で太鼓をもう一打ちする。深い手ごたえ。思う名の通り厳かな音が響き。
「今、北の方へ行っている人がいるんです。もし彼が帰ってきたら、その人と共に一曲奏でたいのです」
 マイトの手にはサクソフォン。真剣な様子に頷いた男は、『もし』なんて言うんじゃねえ、信じてやれと口の端を擡げる。友人へのプレゼントを探すヘルディスター。大切に磨かれたフルートを見つけ、きっと君の心も同じ位綺麗だね、僕の大切な友達と一緒に歌ってくれるかい? と心で問い掛け微笑む。一目で惹かれたトランペットを手に取るワンダ。自身のマウスピースを嵌めて吹き鳴らせば、贈りたい彼女へ抱く日頃の感謝と思いを伝えるに相応しい、素晴らしい音色が響き渡った。
 お星さまの音だ――……吹き鳴らす大好きなトランペットから溢れ出た音に、クリームソーダはきらきらと夜天に輝く星を見る。ドンが奏でるリュート。黒髪の女がハルモニウムの鍵を叩く。合わせて紡がれる曲は、巡る村祭りの楽しい思い出と祭りの終わり、皆と別れ一人で旅を続ける淋しさを含んで午前の大気を震わせる。
「良かったらそのアコーディオン譲ってもらえませんか? 頑張って練習してうまく弾ける様になります!」
 出逢った楽器の音色に聞き惚れていたクロウは、気付いたらそう口にしていた。肩口の羽に埋もれていた子猫が同意する様ににゃあと鳴いた。求めていたリュートを見出したトウヤもまた思いを伝える。
「これなら……演奏を形に出来そうだ……譲り受けて良いかな?」
 夜空を思わす装飾に指を滑らせトウヤは応えを待つ。師匠の持っていた笛に良く似ていると、譲ってくれるよう正座して懇願するカムロ。思わず同じ様に正座した少年は笑んで、名前を言う様に促す。
「――白敷晩夏」
 人から人へ、手から手へ楽器が渡って行く。
 新たな奏者に命を吹き込まれて全身で喜びを奏でる。
 欲しい欲しいと駄々を捏ねていたラティメリアも、しょうがないねぇと横笛を手渡され、巡り合った不思議な運命を思いながら最初の一音を何とか奏でるべく歌口に唇を寄せ。
「幼い頃から慣れ親しんだ楽器だ。こう見えても目は確かだぞ」
 ようやく見つけたヴァイオリンを手に微笑むリュー。即興で奏でだす曲にバンジョーの音が乗る。
「うん、キミってとっても素敵だね!」
 最後の一音が消える前に満面の笑みを咲かすパライバ。シルルはその胡弓を一目見て心奪われた。胸がぎゅっと掴まれて、鼓動は早まり。きっと上手にひけるようになるからと、初老の奏手に約束する。
「歌いたいって言ってるもの。私は楽器じゃないけれど、鳥だから」
 分かるのと微笑むシルルに、そうじゃなと奏手も笑顔で応えた。
「こういう、貝でできたものなら、音も綺麗だし……使い込む程、音に深みが出るってきいたのですよね」
 鈴舞に使える鈴を探していたアルネイアの手の内で、鈴が涼やかな音を立てる。虚実綯い交ぜの楽器に纏わる物語を聞きながら、竪琴の月の紋様と月長石を指で辿るユズリア。きっと月光の名前を持つのだろうと心で問い掛け。
 様々な音が風に乗り吹き渡るのに、幻のという言葉に相応しく奇妙に静かな印象を残す市だった。溢れる音と語られ消えゆく物語。
「うたうたいの、骨を、つちに、まぜて、やいた、ひとが、いたんだ……。骨に、なっても、うたえる、ように――」
 そうだよと、男は言う。欲しそうな様子に、一緒に歌っておやりと、オカリナを手に乗せ頭を撫ぜた。
「どうしても、私と、このフルートのそばにいてもらいたいのです」
 ピッコロを手に真摯に願い、微笑む店主に問われるままに、ひとひらの雪の名を与えるスノー。
「良人がそれぞれの音色を聞き比べしてがってましてねぇ……」
 カンノンは見出した三味線を掻き鳴らす。良人は既に他界しているけれど墓前で聞かせてあげたいのですよと、カンノンは柔らかく微笑んだ。永遠の黄昏の内で憩う神さびた村々を思わせる簫の音。二胡と合わせて奏でながら、ああ、永い時を生きているうちに、緩やかなうたを紡げればどんなに良いだろうかとザザは思いを馳せ。どこか寄る辺無い印象を受けるハープを手に取りコチョウはこの子が欲しいと願う。ややもしてから持ち主は、そいつは対の楽器と奏手を喪って久しい、大切にしてくれよと物悲しい笑みを浮かべて。遠い雪融けの春を願い楽器の物語が、陽の光に惹かれているのに痛みばかり覚えて、影の下からいつまでも願うばかりの自分にどこか重なる気がして、ユディエトはふと気が着けば願い出ていた。
「……私に、この物語を継がせてもらえませんか?」
 楽器の持つ幾多の物語。
 持ち手にも求め手にも、同じ数だけ物語りは宿り。
 嘗て旅の途中に魔物に全てを奪われた。僕がもう少し強ければと思うけれど――いまはせめて、人々のささやかな、痛みと悦びに満ちた自由が奪われないように、哀しい生き物達に鎮魂歌を歌えるように、これをとユーイェンは夜色のバンドネオンを手にする。ナチは風の名を与えた琴を胸に抱いた。何故と問う若い女に、とってもとっても大切にされて、弾き手さんと一緒に一杯いっぱいお歌うたったこの琴の音色が、どこまでもずーっと聞えて欲しいからです、とナチは笑う。
 木製の竪琴の素朴な音色とメイの歌声がどこからか聞えて来た。
 歌は物語る。
 大地から与う命と滴り楽しげに弾ける水。
 弾んで音が生まれ風が幾つもの音を流して行く。
 音は光と成り灯火を失った者達の心へ染み渡り楽しびを生んで。
 それ即ち――楽の音と。

●楽の音は万色と煌いて
 昔は歌うのが嫌いだったとズュースカイトは言う。道を別たれ生死も分からない友が好きだった歌を歌う内、好きになっていた、その楽器と歌い継ぎたいと青年は真摯に願い。これがずっと共に出来る楽器だとティセラは巡り合い永遠の希望の名を冠したハープを爪弾く。
「この子をつれて帰りたいの」
 ユリリスは今まで不思議な音階の曲を奏でていたヴァイオリンを手に、じっと老人の双眸を見詰める。名前、名前と必死で頭を絞るリカルがギターの色から思い付き『暁蓮のギター』と告げれば、まあ良いだろうと長身の女は大口を開けて笑う。カランコロンと牧歌的な音はリョクが振るハンドベルの音。屋台が来る合図なんです、大切なんですよとリョクが熱心に語れば、食を運ぶのは何時だって大切だと老婆は言い。この楽の音を聞くと、思い出す事の出来ない家族と友人とに触れた気がするのだとヒューバートは言う。音を聴いてその欠片だけでも身近に感じていたいのです、どうか私にお譲り下さい、『家族』を私に――と。
「綺麗な音……透きとおってて……でも色んな想いが詰まってる……」
 竪琴の音に心震わせるシルヴィア。絶対に詰まっている思いを無駄にはしないから譲って欲しいと、思いを込めて願い出る。
「私はかつて戦に明け暮れ、自分の陣営と居場所が滅びる様を目にして、剣を封じました――」
 今はただ広がる世界と出会いと、楽しきも哀しきも等しく、歌と楽の音で伝えたい。だからこそと土下座するイサリの肩を叩いて、無心に伝えなさいと中年女は言う。何時かの旅人が持っていた楽器を見出したダウは、その楽器の全てを持ち主から聞き出し、革ケース作りたいと申し出た。風変わりな申し出に戸惑った店主も、いつか満たされた音色を奏でられるよう努力すると言い募るダウの熱意に押されて仕舞には頷き。パイプに纏わる物語の礼に、ストラタムは音色が未だ逢えぬ姉を思い出すのだと語る。巡り会い背負ってきた歴史の全てを大切にするから、と老翁に願い出るストラタム。まず縁を感じた。だから欲しくなった。リュートを手にニコラシカは淡く微笑む。楽器に与えた名――朝霧草に良く似た笑みだった。
 きっと大切にされて来たのだろう。楽器に篭る思いと、それを表す音色に響き合うものを感じて、無心にヴァイオリンを奏でていたセナは目を細め優しく微笑む。来歴は分からないけれど、煌く楽器に息を吹き込むと、涙を思わす柔らかく物哀しい音が溢れ、ヨルは思わずきゅっと胸を押さえた。ヨルは眦に涙を留め、哀しい夜、泣く代わりにこの子を奏でたいのだと真っ直ぐに少年を見詰め。
「棄てきれない楽器の音色は、遠い故郷の日々を思い起こさせてくれるのですね。もうずっと忘れていました……」
 ルニアはハルモニウムの鍵を1つ押して呟く。変わるもの変わらないもの、胸の内に留まる何か。その全てが愛しく。セイモアと音色に耳を澄ます。
 音を奏でるのは大好き。一杯になってしまった頭や心を、ぱぁっと綺麗にしてくれたり楽しい気分にしてくれたり、自分に元気をくれるから――淡い色のオカリナの音を聴いて、奏でる喜びを思い出すアンジェリカ。昔大切にしていた笛を見た気がした。思わず願って吹き鳴らしてみれば、澄んだ音色はやはりどこか懐かしく、アレンは思わず笑みを零す。遣り取りの後に名を問われ、
「カエルム。空をさすことばだよ」
 そう、青年は笑みを深めた。
 ああきっと、きっととっても幸せだろう。この子と何時までも歌っていられたら。コンサーティナを弾くミソラは、弾き終わったら絶対にそう伝えようと目を伏せる。その嬉しそうな様子に、この子に手渡そうと青い髪の女は目を細め。
「名前……『尊い思い出』って意味のものを、付けても構わないか? どうしてそうしたいのかは、思い出せないのだけれど」
 薄い表情を微かに揺らがせ、ドアはぽつりとそう言った。この子といて幸せだったかと問われ勿論だと答えた男は、大切にな、と何とは言わず応えを返す。
 昔石笛を鳥の声に似せて吹き、青い底へ音を飛ばした。懐かしい、郷里の空の響きだ。今はもう帰る事の出来ないあの場所を、今でも夢にまで思い出す。
「こんな、晴れた日は特に――」
 蒼穹の下でハートレスは手にした石笛を一吹き。それは遥かな故郷の音がした。別の場所で笛が鳴る。大切にされていたのだろう、暖かく軽やかな音がして。
「ボクはこの楽器と一緒に世界をまわってみたいって、そう思ったんです……」
 エルクルードの言葉に、見せてやってくれ、元の持ち主だった病弱な娘の代わりになと、男は少女の頭を撫ぜる。ライエルを手に、聞いた話を思い出すクララ。
「『不思議な老人、私はお前について行く。私の歌にお前のライエルの調べを合わせてくれるか』……ですか」
 失恋した男と老人の話。彼の様に、終わらずの冬の旅、共に行こうとクララがハンドルを回せば、擦られた弦が迫る夕闇に似て物悲しく鳴いた。

 宵の草原に焚火の橙が揺れ幻の市の終わりを告げる。
 酒と詩を愛して、風のように生きて、暁に死んだ女と、最期まで共に在った相棒だと聞いたライエルを回すアージェシカ。何時もならば一笑に付す話も何故か信じられる気がして、暁の名を与えた。バルバラも、どこからか手に入れて来たサーランギに弓を滑らす。黄昏と夕食時、物悲しさと暖かさが相半ばする旋律に、ジェネシスが奏でるハルモニウムの音が重なる。潰える太陽の残滓に照らされたジェネシスの横顔を見遣り、恋の歌は好きじゃないが、お前には似合いなのかも知れないなとバルバラは浅く笑った。そっと心で寄り添う様に後を付いて来ていたナーテュへ横に座るよう促して、セイモアは僕もまったく楽器が得意では無いのです、一緒に弾きましょう、と微笑む。2人で奏でる単調なリズム。焚火の周りに出来つつある即席の楽団に溶け入って行く。箱に刻まれた風を思わせる装飾にどこか懐かしいものを感じながら、チャンダナが奏でるハルモニウム。体温を失ってなお、歌を紡ぎ続けるそれらは素晴らしく、また羨ましくもあり。何時までも楽の音と共にと、女は奏でる手に祈りを乗せて。
 偶然同じ店で別々に手に取ったソーアとヴァンシュの兄弟笛。春を思わせるヴァンシュの笛が、冬の夜の大気に似て深閑たる音を響かせるソーアの笛を絡み合い、冬と春の合間のこの季節に相応しく夜天を彩った。絡み合う妙なる音色は、楽団を一つに纏めて行く。

 天幕をそのままに、元の持ち主達が焚火の周囲に集い、誰からとも無く踊りだす。少女は冒険者の一人に、これが楽しみなのだと笑って言った。新たな手の内で憩い、音色を紡ぐ無数の楽器達。
 高らかに歌い上げる喜びと共に、初花月の市の夜は更けて行くのだった。


マスター:中原塔子 紹介ページ
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参加者:59人
作成日:2006/02/25
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