猫招きを倒せ!



<オープニング>


●猫招きが現れた
「みんな猫は好き? 今回は猫招きを倒して欲しいんだよ」
 ルラルがみかんジュース片手に話し出す。
 猫招き? 何だそれは?
 冒険者達は一様に怪訝な顔をした。

 ある町に魔物が現れた。それは大きなぶち猫の人形といった外見をしており、常に片手を上げてくいくいと何かを招く動作をしているという。
 猫招きモンスターは平和な町を緊張感のない姿で踊りながらねり歩いた。すると町中の猫達がいつしか呼び寄せられて魔物の周りに群がり、しかも住人が追い払おうとすると襲い掛かってくるようになったのだ。魔物に操られているらしい。魔物は現在、広場の演説台の上に陣取っているようだ。その周りを目付きのおかしくなった30匹もの猫、子猫が取り巻き、ぎゃーぎゃーと息巻いている。

「要はその魔物と猫を倒せばいいって事だろ」
 尾黒の戦士・ローゼ(a90029)が事も無げに言うと、ルラルは首を振った。
「ううん。猫は半分くらいが町の人のペットだから、死なせたらだめなんだよ。魔物を守る為に猫達も向かってくると思うけど、そこは何とかして欲しいんだよ」
 住人の生活を守る為に戦うというのに悲しませてしまっては元も子もない。ローゼは頷くと精悍な目になり、さらなる情報を求めた。
「で、敵の能力は? 猫を操るだけなのか?」
「あとねー、金色のお金をばら撒くよ」
「何?」
「お金はただの幻なんだけど、それがばら撒かれた一帯に居る人はみんな運が良くなるみたい」
「……そうか」
「頑張ってね」
「……」
 ストライダーの狂戦士、ローゼ・ローゼ30歳。
 無邪気な少女の繰り出す緊張感のない依頼に、何故か急に疲れを覚えるのだった。

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参加者
猫の日広報活動中・ヨナタン(a00117)
氷舞狼姫・レイル(a12761)
煌く星を纏う翼・エンジュ(a18575)
一生紫を愛す司書・コハク(a39685)
金木犀ノ絃奏人・スランドゥイル(a39689)
ランドアースブレイク工業・ユキト(a41908)
闇夜に咲く華・ヒバナ(a42108)
不羈なる蒼月・ヒサギ(a43024)
白雪・スノー(a43210)
葬騎士・ザイル(a43779)
NPC:尾黒の戦士・ローゼ(a90029)



<リプレイ>

●憎めない悪もある
「うわー、目付き悪いな〜」
 ランドアースブレイク工業・ユキト(a41908)は、目の前の光景にたじろいだ。
 町の中央にある石畳で舗装された広場には、猫達が周囲を威嚇するような唸り声や叫び声を上げながら徘徊している。
「あんなちっちゃな子まで……。待ってて、すぐに自由にしてあげる」
 30匹ばかりもいるという猫の群れの中に愛らしい子猫が何匹かいるのを見つけ、競演者・エンジュ(a18575)は正義感を燃やす。
「彼らにも一匹一匹楽しく長く生きる権利はあるはずだしね……猫達は全員助けたいものだね」
 余裕たっぷりに言うとエルフの武人・スランドゥイル(a39689)は、猫海原の向こうを眺め遣った。
 猫達の中央に鎮座ましましているのは、つるりとした質感の人形のような、巨大なぶち猫型モンスターだった。
 演説台の上にどっかと座って右手を上げ、それをしきりにくいくいと動かして時折大きな口を開け「ナ〜〜ゴ」としわがれ声で鳴く姿は……憎めない悪もあるのだなあと妙な感慨を冒険者達に抱かせた。
(「猫招き……そう言えばおじいさんの家にもあんな人形があったのう。おじいさん元気かな……」)
 猫を愛でる司書・コハク(a39685)はその緊張感のない魔物の顔を見て一瞬追憶に浸り、いやいや猫を操って人を襲わせるとは猫招き許すまじ、と己に言い聞かせて戦闘態勢に入るのだった。
 猫の日普及活動中・ヨナタン(a00117)が一先ずスランドゥイルに聖なる鎧を呼び下ろす。その防御力は猫達の爪や牙には完璧な迄の威力を発揮するだろう。ヨナタンは続けて、年季の若い仲間達へと護りの力を施していった。

●歌う部隊
「さあ、怪我をしないためにもお休みなさ〜い」
 聖雪の歌姫・レイル(a12761)が両手を広げて歌声を張ると、猫のうちの何匹かがふらりと倒れ、すやすやと寝息を立て始めた。続いてエンジュの芸人一座で鍛えた伸びやかな声にまたも何匹かが丸くなる。
 そう、総勢11人の冒険者達のうち7名までが、吟遊詩人であるなしに関わらず眠りの歌を活性化していたのだ。尾黒の戦士・ローゼ(a90029)も例外ではなく、仲間から譲り受けた道具に付与された能力を活性化していた。
 30匹の猫達は眠りの歌の一斉射撃にひとたまりもなくぱたぱたと眠りに落ちていく。獣のような能力の低い敵には、状態異常攻撃はてきめんによく効いた。
「さ、かかるとするかの」
 コハクはチキンスピードを用い、少しでも早く全ての猫を安全な場所に避難させようとする。
 癒しの雪・スノー(a43210)とヒトの邪竜導士・ザイル(a43779)は顔を見合わせると、累々と丸くなる猫達をそっと持ち上げ、スノーの背負い袋に入れ始めた。触られたことで目を覚ましてしまうものもあってなかなか思うようには捗らないけれど、沢山の猫に触れられるだけでスノーは内心幸せになってしまう。ちなみにスノーもザイルもヨナタンの鎧聖降臨に守られているのに加え、スノーは護りの天使まで召喚していた。猫相手には過剰ともいえる周到な防御である。
 ユキトは水を甕に何杯か用意していた。回収班が触れた途端に目を覚ました猫が襲い掛かってきたら水をかけて正気に戻そうと考えていたのだが、案に相違して猫は凶暴化状態からも回復していた。目を覚ました猫がすぐに何処かへ逃げてくれれば戦闘に巻き込む心配は無いが、残念ながらそういったものはあまりおらず、何やら珍しい状況に興味津々で居座ってしまうものが多かった。魔物は猫に好かれる能力もあったのかもしれない、猫の親和性とか……
 コハクがこれもユキトの用意した魚で猫を釣ろうと試みる。食い意地の張った奴、飼い猫と思しき懐こい奴が餌に釣られて広場の端まで離脱する。スノーの用意した麻袋に捕えると猫は中でいくらか暴れたが、ザイルは巾着状に袋の口を縛り上げて閉じ込めた。勿論怪我など無い様留意の上だ。
「みんなで必ず護るから」
(「少しだけ、我慢していてね…」)
 猫達の体温で温かく、ふもふも動く袋に触れながらスノーは小声であやすように話しかけた。

●猫と小判
 魔物も、手下達が奪われるのを黙って見ている訳ではなかった。きらりと金色の目を光らせると「ウミャ〜!」とまるで必殺技の名を叫ぶような声を上げ、右手をさっと宙に振り上げたのだ。

   ちゃり〜ん、ちゃりり〜ん

 小判型の金色の貨幣が肉球辺りからばら撒かれ、辺りが金色の光に包まれると、折角寝付いた猫達が次々と目を覚まし始める。ザイルが慌てて眠りの歌を用いるが、何度眠らせても既に幸運の陣が敷かれてしまっているのではすぐに眠りから覚めてしまう。猫達には状態異常もよく効く代わりに、幸運度合いの変化もまた目覚しい効果をもたらすのだった。
「もう一度眠らせても同じ事か……なら次はあいつだぜ!」
 ローゼが皆に声をかけ、戦闘班が猫を踏まないように注意しつつ前進する。未だ魔物の支配から逃れられない猫達が飛び掛ってくるのを冒険者の多くは手を出す事もせずに攻撃を受け止めた。また、正気に返っている猫達はくねくねとした身のこなしで冒険者達をよけながら不思議そうに彼らを見上げるのだった。

●猫乱舞
「ニ゛ャー!!」
「はっはっは、これはまずかったねぇー」
 足元の猫を踏んでしまい、スランドゥイルは笑って誤魔化す。しかしびくりと飛び退いてしまったその態度から、彼本来の優しさは明らかだ。意外に動物好きらしい。
(「こいつを倒せば……猫ちゃんみんな自由になれるよねっ!」)
 エンジュはキッと猫招きを睨むと紫電を纏うワルーンソードの狙いを定めた。振りかぶり、踏込み、叩き込む……
「……危ない!」
 誰かが割込んでくる。エンジュも慌てて刃を引いた。操られた猫が主を守ろうと飛び込んできたのを、ザイルが飛びついて捕まえたのだ。抱き竦めた猫が鋭い爪を振りかざすがPガード発動により全くの無傷……と安心する間もなくすぐ脇から丸まっちい巨大な拳が、ザイルの顔面に命中した。
「はうっ」
 猫パンチを命中させ、魔物は得意気に声を上げる。
「ゴロニャ〜ン♪」
 まともに食らった黒髪の若者は石畳に倒れてどくどくと血を流す。駆け寄る彷徨える龍の器・ヒサギ(a43024)に向かい、
「あは……全然大丈夫です……よ」
 明らかに痛そうだ。しかし腕の中の猫が無事な事に彼は安堵する。
「私にお任せなのです〜」
 レイルが光の波を発しその傷を癒す。
「うわっ!?」
 突如聞こえた男の悲鳴に、やはり猫を保護しようと格闘しながらユキトが振り向く。そこには自慢のふさふさ尻尾に数匹の猫をぶら下げたローゼが尾をぶんぶんと振って魂消ていた。
 戦場と呼ぶにはやや緊張感に欠ける戦場。それでも猫を愛する冒険者達は乱舞する猫を守る為に奮戦する。

●悪よ滅べ!
 闇夜に咲く華・ヒバナ(a42108)がその優雅な姿からは想像も付かない咆哮を放った。猫招きはふてぶてしい顔を驚愕させてほんの一瞬立ち竦む。しかし猫達以上に回復は素早く、まずは魔物を拘束して猫班を助けようと考えていた戦闘班の思惑は外れた。ヒサギが剛鬼投げを用いても、ローゼの咆哮を受けても、ヨナタンの緑の束縛にしたところで結果は同じ事だ。
 そして猫招きが右手をくいくいと動かす独特の動作をする度に、猫達は己の意思を失い、凶暴化して襲い掛かる。
 それでも……何度でも、諦める事無く。全ての猫を安全な場所に遠ざけるまでは。冒険者達は拘束攻撃を繰り返す。そして猫の安全を第一に考え、攻め手を緩めても守りに徹した冒険者達の思いはついに、成就する時が来た。
 猫班が全ての猫を戦場から遠ざけ終えたのだ。もう何一つ遠慮することはない。
「これからが本番よ!」
 エンジュの繰り出す電刃衝が魔物の巨体に食い込み、その全身に電光が走る。びりびりと痺れた魔物にヒバナの巨大剣が振り下ろされると同時に爆発、猫招きは「ニ゛ョ〜!!」と絶叫する。
「頑張って下さいよ〜」
 レイルが聖なる力を注ぎ込んだヨナタンのミトンから輝く紋章が浮かび上がる。猫っ毛で猫好きのエルフは紳士的な足取りで踏み込むと、
(「猫さんを操らなければ可愛い魔物だったろうに……」)
「残念です……!」
紋章の力を込めた拳を叩き込む。ちなみにヨナタンの今の格好は鎧聖降臨によって綿入りのふかふか猫の着ぐるみとなっている。巨大な猫同士の一騎打ちは、魔物がゆっくりと地に倒れて終りを告げた。猫招きは全身を硬直させ、最後の鳴き声を発する。
「…………ニ゛ャ、ニ゛ャ〜ン……」
 がくり。
 勝負が決した瞬間だった。

●猫別れ
 町の住人達が冒険者を讃えて集まってきた。自分の飼い猫を見つけて嬉しそうに抱き上げる飼い主の姿も見られる。
 冒険者達はもう一仕事、とばかりに猫達の怪我の具合を調べては癒してやったり、飼い主に引渡したり。
「さあ、みんなご主人様のところに帰りな。沢山甘えるんだよ〜。……はわ……可愛い……うちに来る?」
 レイルは愛猫の養子候補を見つけたようだ。
 傍らでは歌声が響く。
「♪− 驚かせてごめんね。君達を護りたかったんだよ −♪」
 ヨナタンが獣達の歌で気持を伝えると、振り向いた何匹もの猫から「気にするニャ〜」と返事が返った。
「さようなら、元気でね……」
「よかったね〜」
 沢山の猫に囲まれていた間に何となく愛着の涌いていたスノーは寂しげに、エンジュは全ての猫を守れた嬉しさににこにこと気ままな友人達の後ろ姿を見送る。
「……ん? お主、わしが好きかの?」
 コハクは、町の人々が去った後も自分の足元から離れない、しなやかな尾を持つ虎猫を抱き上げた。虎猫は金色の艶かしい目つきで「ニャア!」と鳴く。コハクは目を細めて話しかけた。
「よしよし。これから宜しく頼むの」

 こうして、この町の猫達に平穏な日々が戻ったのだった。


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