狙猴、月を取る。



<オープニング>


●月影
 僕は価値のない男だ。
 そんなことは自分が一番よく知っている。
 僕の皮膚の内側には、灰色の砂漠が広がっている。冬空の一番感情のない部分を流し込んだような、岩と砂だけの果てしない世界だ。太陽も星もない。寒気がする。
 どれだけ歩いても、どれほど城から離れても、僕はその寒気を取り除くことはできない。やかましい黄昏に染まった森。黄金の光を鏤めたせせらぎ。さざめいて透き通る風。みんなが僕を指差して笑っている。うるさい。黙れ。うるさい!
 ――少し休みましょう、とエーファが言った。
 森が途切れた先に、ひっそりと湖が佇んでいた。畔の下草に腰掛けて、僕は彼女の肩を抱く。針金のように痩せて、二の腕には可哀想なくらい肉がなく、樹々の隙間で心細げに浮遊する三日月の形に似ている。けれど両腕の中の彼女は産まれ立ての鶏の卵みたいにとても温かくて、僕の鼻の奥を刺激する。彼女が微笑みかけてくれる。生きていることを実感できる。
 僕は価値のない男だ。
 だから、どうか――僕から、僕に残った最後のものを、奪わないでください。

●狙猴、月を取る。
「思春期のガキが家出した。人生たぁ何だとか、馬鹿なことばかり考えてる時期があるから子供は大人に成長する。その過程で家から逃げ出すことぐらい、お前らだって一度は経験したことあるだろう? よくある話さ」

 冒険者たちを呼び集めるなり、酒盃の霊査士・ラターグ(a90223)がしたり顔で銚子を鳴らした。酒が空になっているのに気付いて露骨に眉根を寄せる。その難しい顔を作った拍子に、「ただな」と付け加えた。

「今回の場合は、ガキの身分と、逃げた相手と、向かった場所が悪かった。このガキんちょ、アドルフは、さる領主の大切なご子息様らしい。厳格な父に、過度のプレッシャー。思春期で人生に惑うのには充分すぎる条件だな。
 父親はかんかんだ。家出したこともそうだが、大事な大事な箱入り息子がよりにもよって、なんてくだらない女に引っ掛かったものだと激怒している。読み書きはできない、数も数えられない、親の顔すら知らない卑しい娘だ。不憫に思って城で使ってやっていたのがアダになったってな。
 で、その二人は、城の裏手の深い森を抜けて湖の畔に居る。今夜はここに落ち着くつもりらしい。
……だが、湖の真ん中に月が映し出される頃合になると、湖中からでっかい化け物が現れるんだ。猿の姿形をしてるが、立派なモンスターだよ。氷のブレスに、伸縮自在の腕。しかも湖から地面に這い上がっちまったら、それでアウトだ。奴さんの蹴りを喰らえば、どんな冒険者だって一撃で沈んでしまう。結構な強敵さ。
 今から急げば、モンスターのお出まし前にちょうどアドルフと話す時間ぐらいはとれるはずだ。化け物が湖面から姿を現す前にアドルフの安全を確保しなきゃならんが、こいつの眼にはお前らが、どうしたって父の差し向けた追っ手と映るだろう。逃げ出すかもしれないし、抵抗するかもしれないし、血迷ったら――アドルフはナイフを携帯しているからな。注意しろ。
 やるべきことは一つ。アドルフを無事に居城へ送り届けることだ。エーファという連れの女中の生死は問わない、と領主は言っている。……というか、どうでもいいと思ってるみたいだな。一緒に戻ってきても勿論仕事はクビにするし、二度と息子に会わせないよう手を講じるだろう。
 ま、そっちは俺ら――いや、少なくとも、俺の知ったことじゃないな」

 一息に要点を述べて、ラターグはほらほら、と冒険者たちを手で送り出す仕草をした。何とも慌しい依頼だった。

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参加者
荒野の黒鷹・グリット(a00160)
六風の・ソルトムーン(a00180)
たれ・マモ(a00315)
藍鉄の静謐・アレキス(a02702)
狩人・ルスト(a10900)
白色のココロ・アリサ(a12096)
月宮弓姫・ルナ(a24728)
春暁薫風・ファニ(a27388)
恋する女将・ヴィオラ(a31688)
永久の紅き輪廻・リク(a32513)


<リプレイ>

●哀れなる咎人
 静かな夜だった。湖畔が騒音を吸い込んで、代わりに静寂を吐き出しているような、安息に満ちた夜だった。
 追っ手の影に怯える少年は少女を抱きしめて離さず、少女は少年の背中を優しく撫で続けていた。それでも少年の震えは止まなかった。
「……エーファ」
「はい、ここに居ます」
 穏やかな声音を聴いて、アドルフは小さく頷いた。人差し指で中空に昇る細月を示す。
「あの月が、もしも沈まなかったらさ」
 間近で微笑むエーファの横顔と、月のそれとを見比べたアドルフは、ささやかな願い事を言おうとして――楽園の終焉を報せるような足音に遮られた。
 追跡者にとって、差し伸べられた月光の弱さは好都合だった。幾人かの者は黒の外衣を背負い、またランタンの光に工夫を凝らしていた。神経が過敏になっていたアドルフといえども、森に紛れた冒険者たちの気配を悟るのは不可能だった。
 だからこそ、森の出口から走り出た何人もの下草を踏む足音はアドルフの耳を唐突に襲った。森の途切れた先から水際までは距離があり、アドルフが冒険者の接近を認識するのは当然のことだったのかもしれない。彼はひどく狼狽したようだった。弾けるように立ち上がって、身体を強張らせた。
 既に逃げる時間はなかった。相手は大人数で抵抗できるはずもなかった。彼に残された道は、もはや一つしかなかったのだ。
「く、来るな!」
 がちがちと歯の根を鳴らし、アドルフは抜き身のナイフを月影に煌かせた。湖の畔に立った彼は、エーファの手を引いて抱き寄せ、その首筋に刃先を当てていた。
 たれ・マモ(a00315)たちの足が一様に止まった。歩数にして、10歩ほどの間隔が両者を隔てている。一足飛びに近付ける距離ではない。
「ね、ちょっと待って」
「うるさい! 僕は、僕は本気だぞ!」
 マモの声を振り払うようにして、アドルフは眼を見開いた。神経質な瞳が月光を照り返している。ナイフを首に突き付けられて、唇を噛んだエーファは錯乱する少年をじっと見上げた。
 ほとんど思いつきの行動だったのだろう。赤子が駄々をこねるように、然したる勝算も理屈もなかったのに違いない。ナイフを持つ彼の指はがたがたと震え、それゆえに白ばむほどに強く柄を握り込んでいた。
 冒険者たちは誰も、誰一人として、少年に対して説得する言葉を知らなかったし、そもそも説得する意思もなかった。何にせよ、強引にでも保護をするつもりだったからだ。
 緋炎断罪・ゴウラン(a05773)と緋天の一刀・ルガート(a03470)が一歩、前に出る。途端に、「動くな!」とヒステリックな悲鳴が上がった。二人は顔を見合わせる。ルガートの用意した紅蓮の咆哮では、とても彼にまで裂帛の気合は届くまい。ゴウランも同じく、こんなに距離が開いていては何をするべくもなかった。
 マモたちだって、無論このような事態は想定していた。だから問答無用に捕縛したい、と考えたのだ。けれど、具体的な実行方法への検討を伴っていなかったことが今更ながらに悔やまれる。
 アドルフは刃物の扱いに慣れていないだろう。彼をこれ以上興奮させることは危険な賭けにチップを払うことに他ならない。エーファの生命を犠牲にしてでも、アドルフを無理やり確保するべきなのだろうか? この問いについて思考することを、冒険者たちは無意識のうちに避けていたのかもしれない。
 永久の紅き輪廻・リク(a32513)の小さな舌打ちが響いた。良くない気分だ。苛立ちが足踏みに表れる。ともかく、アドルフたちを遠距離から拘束できれば何も問題はなかったのだ。その手立てを携えていなかった――もしくは、それの使用を思い浮かべるまでに至らなかった――ことが、限られた貴重な時間を刻一刻と浪費させていく。
「まずいね、時間がないな……」
 荒野の黒鷹・グリット(a00160)が呟いた。抵抗するようなら当身を考えていたが、アドルフへの接近の段取りを考案する前にモンスターが湖より現出してしまうだろう。あえて倒さなくても良い、と霊査士が暗に述べていた強敵が。
 緊迫した時間が流出していく。保護されるべき人間が、依頼主から見捨てられた人間を人質に取っている。それは滑稽な情景であった。そうして、冒険者たちはその矛盾に対しても行動する指針を持っていないのだ。
「……疾きを以って好しとせねば」
 予想せぬ保護の手間取りに、六風の・ソルトムーン(a00180)が眉を顰めながら土塊の下僕を召喚した。藍鉄の静謐・アレキス(a02702)も続いて下僕を創生する。狩人・ルスト(a10900)とマモはクリスタルインセクトを生み出した。
 それらは何れも、彼らの作戦において、モンスターから安全に撤退するには欠かせないものだった。時期を誤れば無為に終わる類の行動であるから、これは止むを得ない選択だった。ソルトムーンは後になって振り返った際も、そう明言できる。
 だが――この時のアドルフの眼には、確かに動揺が走った。
 異様な土塊と、異様な水晶が、彼を遠巻きにして湖の周辺を走り出すのと同時に、「何をした、今、何をした、動くなと言っただろう!」とアドルフが金切り声で叫んだ。刃先が皮膚を抉るようにエーファの首をなぞる。つぷり、と朱の雫が流れ落ちる。
 咄嗟に、恋する女将・ヴィオラ(a31688)が駆け出そうとした時だった。痛みを気遣うこともなく、むしろ白い首筋をナイフの前に反らすようにして、エーファが厳しい視線でアドルフを見上げた。彼が今までに見たことのないような、はっきりとした意志を込めた眼差しだった。
「アドルフ様。もう止めましょう。このようなことをされても、何の意味も、価値も、後に残るものは一切ありません。お父様だって」
「うるさい、黙れ! うるさい!」
「アドルフ様っ」
 穏やかに諭すエーファと対照的に、アドルフは絶叫した。彼も理解していないはずがなかった。自分が如何に愚かな行為をしているかということ。エーファに取り返しのつかないことをしようとしているということ。我を見失い、混乱しているだけなのだ。
 グリットたちがじりじりと詰め寄ってくる。残る距離は既に5歩か、6歩か。水晶と下僕が走り続けている。エーファが真剣な表情で訴えかけている。
「うるさい……」
 声を詰まらせながら、アドルフは全てのものから逃げるように、エーファを抱えて水際に後退りした。
 ゆっくりと一歩。
 月宮弓姫・ルナ(a24728)には、それがまるでスローモーションのように感じられた。
 アドルフが湿地に足を取られる。
 バランスを崩す。
 ナイフを握る彼の手と、エーファを支える彼の腕とが、僅かばかり引き攣って。
 エーファの膝が落ちる。断頭台に身を投げ出すように。喉を切り裂く一筋の線。
 鮮血が、噴水の如く宙を舞った。

●狙猴の月
 駆け寄ったグリットにナイフを叩き落されても、アドルフは反応すらしなかった。座り込む身体の正面に紅を浴びて、呆然とエーファを眺めていた。
 白色のココロ・アリサ(a12096)が蒼白な顔で、エーファのぱっくりと無残に割れた喉元に包帯代わりの霊布を当てていた。その隙間からも、とめどなく血潮が漏れていた。
 エーファは魚のように痙攣していた。月光に似合っていた金髪が醜く汚れ、虚ろな瞳は青白い月だけを映し込んでいた。春暁薫風・ファニ(a27388)は必死に呼びかけながら命の抱擁を施そうとしたけれど、何もかも手遅れであることは明らかだった。
 温かい血の匂いと、立ち昇る湯気。喪われ往く生命の重さが鼻の最奥を揺り動かして、ルナはどうしようもなく吐き気を催した。
「なんてことを……!」
 何をすることもできずに、リクが拳を固めた。今や眼球が転がり出そうなほどに眼を見開いて、硬直していたアドルフは、その言葉が引き金となったのだろうか、
「ああ、あ、あははあははあははははっはははははっはははははっ!」
 狂ったように笑い始めた。あるいは泣き叫んでいたのかもしれない。どうでも良いことだった。
 そんなことは、どうでも良い。今は。
 豊かな髭の奥から、ソルトムーンが唸り声を上げる。
「撤退すべし!」
 その言葉に皆が顔を上げた。ヴィオラは中空に浮かぶ月を見上げ、さっと湖に視線を走らせる。
 中央が丘のように盛り上がっていた。湖水がその頂上から流れ落ちていく。灰色の毛が最初に見えた。次いで、月光を反射して輝く赤い顔。
 湖に浮かぶ月を割いて、闇に浮かぶ月に届かせるかのような咆哮が響く。湖上を漂う長い腕。狙猴がその異形の半身を湖から現していた。
 湖の周辺を滑る水晶はそろそろ半周に届こうかというところだったが、ランタンを持って走る下僕は、その足取りの覚束なさのせいか、湖の1/4周にも走行距離が届いていなかった。
 ルストとマモが即座にクリスタルインセクトから集中を切る。しかし、それが奏でる雑音は、とても湖を越えて狙猴に届くほどの大きさにはならない。むしろ眩いランタンに注意を惹かれて、狙猴は湖中を泳ぐように移動する。モンスターが頬を膨らませた次の瞬間、絶対的な冷気が下僕を土に還した。
 情勢が切迫していることは言葉に出すまでもなかった。ルストの背筋に悪寒が走る。長らく狩人として鍛えたその勘が、圧倒的な危機を警告している。下僕の動く速度が遅かったせいで、狙猴は次にすぐさま冒険者たち――そしてアドルフを目標とできる位置に付けているのだ。
 歪んだ笑い声を止めないアドルフの腹をグリットが打った。潰れた蛙のような声を残してアドルフが頭を地面に落とす。ゴウラン、ルガートの手伝いを受けて、マモは朱に濡れた彼を担ぎ上げた。少しでも狙猴から離れなければ。
「……っ、ダメ、時間稼ぎしないと!」
 痙攣すらも永遠に停止したエーファを地面にそっと横たえて、ファニがバックステップで湖から距離を取る。紅が一面に滲んだ霊布を強く握り締め、アリサもそれに倣った。グリットが霧のカーテンを大気に展開させる。
 月明かりが失われる。濃い闇の中で、湖水を掻き分けるように泳ぐモンスターの気配がする。そこに向かって透徹なる音を凛と響かせた、ルナの炎の矢は視界が悪化したせいか、着弾した様子を感じ取れなかった。稲光に似て射られたルストのボウも狙猴を貫くに至らない。唯一、アレキスの満月を模したチャクラムが放った、霧を切り裂く光の軌道だけが狙猴の泳ぐスピードを鈍らせたようだった。
 大きな山が迫ってくるような悪寒がヴィオラたちを包んでいる。穏やかな表情を常とする彼女は微かに喉を上下させた。焦りから闇雲に投げた蜘蛛糸は、狙猴を避けるように湖へ着水した。
 純粋なる愛を唄う苺姫・ヤツキ(a21261)と聖なる光を望む罪深き堕天使・ヒメ(a14600)は立て続けに光のシャワーを降らせる。攻撃しなければ。そして中てなければならない。幾本かは、しっかりとモンスターの身体を撃ち抜いたようだった。狙猴の動きが止まる。
 だが、こちらの攻撃が届くのならば、彼の呼気が届くのも道理。空気を冷やして飛礫とするような、氷のブレス。飛来する冷気は全員の身体を傷つけながら、リクの足を凍らせ、ルストの腕を麻痺させる。
 瞬間、グリットは振り返った。アドルフは? 冷気が届いていたら、とぞっとする思いに応えるように「森に入った!」と叫ぶマモの声が聞こえた。
「良かった……」
 息を吐き出すグリットに頷いて、ファニは高らかに凱歌を歌い上げる。リクの足が再び大地を強く踏みしめる。ルストはボウを手元に引き寄せる。
「抗戦は無駄也」
 冷静に述べるソルトムーンに、リクが同意する。
「全力で逃げるぞ!」
「よし、撤退しよう」とグリットが言うが早いが、狙猴の脅威を後ろに背負いながら皆は踵を返した。
 離脱する合図には誰もが敏感だった。下草を踏み走り、霧中に息を殺しながら三々五々に森へと全速力で分け入っていく。再びのブレスが地面を這って敵を襲わんとするが、冒険者たちの逃げ足の方が些か勝っているようだった。逃げる相手を追う習性はないのか、湖から離れるつもりがないのか、モンスターが森の奥まで追撃してくる気配はなかった。
 所々に差し込む月光を頼りに森中を走りながら、アリサはエーファの亡骸を想った。
 最期の言葉を残すこともできず、ただ野良犬のように死んだ彼女は、埋葬されることもなく湖畔に朽ちていくのだろうか。それとも、月光に照らされるたびに現れる狙猴に、畜生のように遺骸を蹂躙され続けるのだろうか。
 どちらにせよ、最低の閉幕だった。

●片足は墓穴にありて
 城を来訪した冒険者たちを、依頼人である領主――アロイスは夜半だというのに上機嫌で労った。
 彼の隣には、大事な一人息子のアドルフが五体満足で立っているのだから、それも当然だろう。よくやってくれた、とソルトムーンたちに握手を求めた。
 その一方で、アドルフの顔は能面のように感情の色を喪失していた。森から城に向かう道中で眼を覚ましてからというもの、一切の言葉を喋ることはなかった。顔にこびり付いた血を洗い流し、汚れた衣服を水で精一杯ヴィオラが拭ってやっても木像のように無反応だった。
 城に戻る直前、何も言えずにアドルフの手を握ったファニに対しても、彼は一瞥をくれることもなく為すがままになっていた。それは魂の抜けた空虚な祠を思わせた。
 アレキスは幾多の台詞を脳裏に過ぎらせる。言おうと考えていたこと。若い二人に伝えたかったこと。言葉は全て無意味と化して、彼の前を横切っていった。
 笑みの絶えないアロイスに、抵抗するようにルナがぽつりと呟く。
「エーファが」
「ああ、そういえば戻っていないようだな。何、霊査士どのにも伝えてあったように、彼女については最早私は関知せぬ」
 その台詞の終わりまで聞こうともせずに、アロイスは肩をすくめた。昨日の天気は雨だった、とでも述べる口調に似ていた。彼にとって、エーファは既に薄い夜の向こうに置き去りにした存在なのだろう。
「しかしまあ、こんな馬鹿な真似はこれっきりにしてほしいものだな。お前もそろそろ分別がついてもおかしくない年頃だ。卑しい娘に惑わされるのは恥ずかしいことだぞ。そうだろう?」
 からからと笑うアロイスに肩を叩かれて、初めてアドルフが俯いた顔を上げた。彼は無表情のまま父を眺め、冒険者たちを眺めた。それから、窓の外に心細げに浮かんでいる、針金のように痩せた月に眼を向ける。
「……はい、父さん」
 応える少年の声は奇妙に平坦で、壊れた楽器のようにどこかが軋んでいた。


マスター:わや 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2006/02/28
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