約束の詩は丘の風に乗せて



<オープニング>


 荒野西部の霊査士・ライト(a90286)のもとに、1人の女性が来ていた。彼女の名はリリン。様々の街や村の酒場を転々としながら、歌を歌っているという、いわゆる『歌姫』だ。
 そんな彼女、今日は冒険者の酒場へ歌を歌いに来た……わけではなく、依頼をしに来ていた。
「あー……つまりあれか、幼馴染みとの約束を果たす為に、村近くの丘へ行きたい……と?」
 話を聞くと、リリンには幼馴染みであるファイという男性がおり、子供の頃に約束していた『大人になったらファイへの気持ちを詩にして、丘の上で歌う』……という事らしい。
「はい、そうなんですけど……その丘へと行く唯一の道に、普通より大きな蜂がたくさんいまして……。お願いです、大きな蜂を退治しつつ、私をその丘まで護衛してもらえますか? ファイにはどうしても……気持ちを伝えたいんです!」
 懇願するリリンに、ライトはみなまで言うなという風に真っ直ぐ見据えている。
 少しの沈黙……だがそれは、ライトによってすぐかき消された。
「わかった、すぐに声をかけてやる。ちょっと待っててくれ」
 ライトはそう言うと、すぐさま冒険者達に声を掛けだすのであった。

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参加者
ストライダーの翔剣士・マユラ(a35188)
エレメンタルディア・ティー(a35847)
蒼海を吹くは若き烈風・レナ(a37023)
蒼月の調・ステラ(a38779)
爆ぜる剣・テッセン(a44094)
暁を見届ける黒狐・スイ(a44262)
漆黒の狩人・シャルティナ(a44513)
暗殺者志願・スレイズ(a44816)


<リプレイ>

●獣道護衛活劇
「依頼、受けてくれてありがとうございます。今日は護衛の方、よろしくお願いしますね」
 リリンが冒険者達に、丁寧をお辞儀をして挨拶をする。気のせいか、面持ちに緊張が見え隠れしている。
「こちらこそ、全力で護衛致しますわ」
 蒼海を吹くは若き烈風・レナ(a37023)が、リリンの挨拶にそう返す。
 丘までリリン護衛する事となった冒険者達は、蜂対策の為に準備を怠らなかった。
 チャドルやマント、厚手の服などで極力肌の露出を防ぎ、蜂の相手を受け持つ先行班と、リリンの護衛を行う護衛班に分かれて行動する事となった。
「よーし、リリンの人生の晴れ舞台だ。いっちょ気合い入れて送り届けてやるぞー!!」
 爆ぜる剣・テッセン(a44094)の声に頷く冒険者達。かくして、丘へ向けてのリリン護衛が始まった。

 獣道を進んで行く冒険者達とリリン。先行班は先に行ってしまっている為、リリンの周囲には護衛班であるストライダーの翔剣士・マユラ(a35188)、ストライダーの武道家・スイ(a44262)、ストライダーの牙狩人・シャルティナ(a44513)、ストライダーの忍び・スレイズ(a44816)の4人が護衛に当たっていた。
 道中の道の草を、マユラが薙ぎ払いながら、リリンに気をかけていく。
「何か困った事があれば、何でもすぐに言って下さいね!」
 マユラの言葉に、微笑んで応えるリリン。
 その横で少し距離を取りながら周辺を警戒しているのはスレイズ。
 初の依頼のという事もあり、リリン同様緊張を隠せずにいるが……無事送り届けたい気持ちのもと、同様に初依頼となるスイと共に、蜂が近づいてきた時の為の松明を持ってさらに警戒を続けていく。
「ところで……ファイとはどのような奴だ? よければ、聞かせて欲しい」
 リリンの緊張そうにしている不安な顔をみてか、シャルティナがリリンの気を紛らわせようと話し掛ける。どうやら、マユラも気になっていたのか、聞き役に徹するつもりのようだ。
「ファイは……私の昔からの幼馴染みで、すぐに私の事を気にかけてくれてたんです。子供の頃はよく一緒にこの丘へ遊びに来ていました……」
 そう話を続けるも、今の整備されていない丘の道を見て、寂しそうな顔をするリリン。
「村を旅立ってから数年……やっと、ファイとの約束を果たせるんです……」
 ようやく約束を果たせる……リリンは軽い微笑を浮かべて、道を歩いていく。
 リリンの緊張をほぐせた事が分かると、護衛班も笑みを浮かべ護衛を続けるのであった。

●先行班、変異蜂との闘い
 一方その頃、先行班として護衛班よりも先に進んでいたレナ、テッセン、幸せの運び手・ティー(a35847)、光の奇跡・ステラ(a38779)の4人。
 早速周辺警戒に出ていると思われる一匹の変異蜂を発見。すぐ近くには変異蜂のと思われる巨大な蜂の巣もある。
「今の内に準備を済ませておきましょう」
 レナはそう言いながら覆面を被り、本格的に戦う前に他のメンバーに鎧聖降臨改を使っていく。最後に自分に使い終わったその時、巣の方から大きな羽音が聞こえてきた。どうやら、周辺警戒をしていた変異蜂が先行班の存在に気付いたようだ。
「凄い数……これだけ蜂がいれば、たくさん滋養強壮の薬が作れるわね。とにかく……できるだけ数を減らします!!」
 ステラがこちらへと向かってくる変異蜂の大群を見てそう呟くと素早く空中に紋章を描き、エンブレムシャワー奥義を繰り出す!
 エンブレムシャワー奥義を受け、次々に落とされていく変異蜂。だが、数はまだ相当数生き残っている。
「このまま、先陣を切るっ!! 援護を頼んだっ!」
 テッセンがそう叫びながら巣に向かって走り出す。援護にはティーの眠りの歌奥義。
 眠りの歌奥義が決まり、その場に落ちながら眠りへと誘われる変異蜂達。そこへテッセンの流水撃奥義が繰り出されていき、変異蜂達を倒していく。

 ―――と、そこへリリンを伴った護衛班が先行班と合流しようとしていた……その時である。
 護衛班の後方から、別の周辺警戒と思われる数匹の変異蜂が姿を現したのだ!
「くそっ!!」
 すかさずスレイズとスイが松明の煙を使って変異蜂に牽制していく。
 何とか煙の牽制で変異蜂を留める事に成功した護衛班。そしてそのままシャルティナがホーミングアローやスレイズの飛燕刃で確実に変異蜂を落としていく!
「リリンさん、離れてっ!!」
 マユラは何とかリリンを変異蜂から離そうと、リリンの手を引いて道を走る。ある程度離れた所で、リリンを伏せさせ、その上にマユラが覆い被さってリリンを守っていく。
 と……覆い被さったその時、リリンの顔にマユラの大きな胸が覆ってしまっていた。そんな多少息苦しい状態が少しの間。
 先行班の方でも、大部分の変異蜂を落としきったところで、レナが爆砕拳奥義で巣の破壊を試みる。ステラもエンブレムシュート奥義、テッセンの攻撃で巣にダメージを与えていった!
 その波状攻撃に巣はそのまま崩れ去っていく。残された変異蜂は怒り狂い、そのまま冒険者達に突っ込んできた!!
「後一息……頑張らなきゃ……!」
 ティーはそう言いながら、もうひと踏ん張りといった感じで突っ込んでくる変異蜂の群れにエンブレムシャワー奥義を繰り出していった!
 数度に渡る変異蜂の群れの特攻……だが、全て冒険者達の手によって落とされ、変異蜂は殲滅したのであった……。

●風よ、想いを詩に乗せて運べ
「あ、ありがとうございます……」
 戦闘が終了し、覆い被さっていたマユラが立ち上がる。それに合わせてリリンも同じ様に立ち上がり、マユラにそう御礼を言う。だが、何故かリリンは少し顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。
 同様に、マユラも恥ずかしそうに顔を俯かせていた。自分の胸のせいでリリンを困らせたと思っているらしい。
 何とか被害も無く、変異蜂を退けた冒険者達は、そのまま目的の丘へと向かいなおす。
 暫く獣道を歩いていく一行。……不意に目の前が開けた。
 視界に入るのは、澄み切った風景。眼下にはリリンの故郷でもある小さな村があり、丘には澄みやかな風が優しく吹いていた。
「ここまで護衛してくださり、本当にありがとうございました。少々お待ちいただけますか……約束を、果たしてきます」
 リリンはそう言うと、丘の一番先まで歩いていった。
「私は同じことをしたいとは思えないですけど……ちょっぴり、羨ましいですわ」
 丘の先へと歩いていくリリンの背中を見ながら、レナがそう小さく呟く。
「想いが叶えられるよう……頑張ってください……」
 ティーもそう呟きながら祈っている。他の冒険者達も声には出さないものの、心の中で同じ事を祈っていた。

 ……丘の先に着いたリリン。深呼吸し、さらに一呼吸を置くと……静かに、約束の詩を歌いだした。

 想う心は 幾千万の星々
 互いに編みゆく 満たされた薄布の心
 貴方の紡ぐ糸と共に 織られゆくは重なり合う心
 今貴方に伝えよう 刻を共にした者と行く 女神の祈りたる祝福を……

 詩の内容を聞いて、驚きを隠せない冒険者達。
 リリンが戻ってくるのと同時に、ステラが問いただす。
「え、気持ちを伝えるって……告白の詩を歌うつもりでここへ来たんじゃ……!?」
「告白の詩っ……!? そ、そんな……ちがいますっ!! 私はファイの結婚を祝福する為にここへ来たのです……」
 顔を俯かせながら、なぜこうなったのかを話し出すリリン。
 『大人になったらファイへの気持ちを詩にして、丘の上で歌う』……確かに、この約束は告白をしようという意思の表れだった。
 だが、旅に出ていた数年の間にファイは他の女性と婚約。自分への気持ちを伝えきれぬまま、『告白』の約束は『祝福』の気持ちを伝えるものとなってしまった……。
「……でも、いいんです。ファイの幸せ……それは私の幸せでもありますから」
 そう言うリリンの瞳にわずかな寂しさはあったが、その笑顔に迷いは存在しなかった。
「リリンさん……」
 想いを見届けた故に分かる事……リリンの祝福する想いは本当だと知り、冒険者達は頷くのであった。

 リリンが丘の先から下がった後……入れ替わるようにして、ティーが丘の先にへと立つ。
 そして……同じ様に一呼吸おくと、その口から詩を紡ぎだした………。

「懐かしき想い……過ぎ去りし時……大切なあなたへ歌紡ぎ……感謝の言葉風に乗せ……心の音色響かせん……」

 丘の風より届けられる2つの詩……詩がその者へ届いた時、その純粋な想いは心の奥底にまで無事に届くと言われている……。


マスター:秋みかん 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/03/11
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重傷者:なし
死亡者:なし
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