たゆたうモノ



<オープニング>


 月夜。
 けれど、晴れて満天の星空が見えるわけではなく、ところどころ雲があり、月はその雲に見え隠れしていた。
 そんな夜の森、蠢くモノが居た。
 蠢くモノの身体は、赤い。そして、形は無いに等しい。
 這いずるように動き回り、得物を探す。
 ズルッ、ズルッ……。
 そんな音を立てながら、蠢くモノが進む先、1匹の鹿が飛び出す。
 蠢くモノは、形無き身体を触手のごとく伸ばすと、飛び出した鹿へと取り付いた。
 残っている身体の部分も引き寄せ、完全に鹿へと取り付き、その首筋を締める。
 締め付けられた鹿が息絶えると、蠢くモノは身体の一部で無数の針を作り出し、その鹿の身体に突き刺した。
 徐々に鹿の血が吸われ、蠢くモノは益々赤みを増す。
 鹿の血の全てを吸い尽くした蠢くモノは、また森を這いずるように移動し始めた。


「依頼なの……」
 灰狐の霊査士・ヴァルナ(a90183)は青ざめた顔で、集まった冒険者へと依頼の話を始めた。
「ある森の動物たちが次々と殺されているの。人の手じゃなくて、モンスターの手によって。そのモンスターははっきりとした形は無くて、まるで血がゼリーになったかのような、そんな姿をしているの。森を這いずり回っていて、動物を見つけたら、首を締め上げ、最後に血を啜っていくの……。今はまだ、森の動物にしか被害はないけど、そのモンスターが森を抜けて、村や町に来る可能性だって、なくはないの。そうなる前に、このモンスターを食い止めて欲しいの。お願いね」
 ヴァルナは冒険者たちに頭を下げた。

マスター:暁ゆか 紹介ページ
 暁ゆかです。
 久々の通常依頼は、モンスター退治です。

 ヴィジュアルはレッドウーズを更に真っ赤にしたような感じ、と思ってください。
 離れていると身体の一部を射出して、チェインシュートの如く攻撃を行ってきます。
 近づいているときは、身体の一部を針のように細く尖らせ、刺して攻撃してきます。

 森は普段はあまり人は入り込みません。
 獣道はありますが、人が通りやすい道は無いに等しいです。

 それでは皆さんの参加、お待ちしています。

参加者
ちっちゃな重騎士・パン(a00909)
白鴉・シルヴァ(a13552)
艶風に舞う煌紫の華・アコ(a14384)
獅天咆哮・プルー(a19651)
戦慄の翼・ハクホウ(a23008)
鈴の音を友に舞唄う栗鼠・ハナメ(a25460)
桜にとまりし蝶に焦がれる狩人・アイリ(a31666)
ヒトの武道家・セツハ(a37324)
陽光に輝く魔弾の射手・ソフィア(a40878)
肉体を凌駕せしネタ魂を持つ・シュトロハイム(a41059)


<リプレイ>

●元気を出して
「ご依頼……引き受けたです……」
 依頼の話を霊査士から聞いたちっちゃな重騎士・パン(a00909)は口を開くとそう言った。そして、霊査士へと微笑む。
「元気出すのです……僕たちは……負けないのです……! 安心して……帰りを待っていて欲しいのです……」

●魔の巣食う森
(「これ以上の被害拡大と村への影響が及ばぬよう、何としてでも赤のブヨブヨちゃんを退治しなければ、ですわね!」)
 心の中で意気込んで、艶風に舞う煌紫の華・アコ(a14384)は動物の死骸がないかを探す。
(「弱きものの剣として失敗するわけにはいかないから」)
 仲間達が動物や死骸を探す中、獅天咆哮・プルー(a19651)は辺りに気を配り、自分達以外の物音がしないか注意していた。もちろん、頭上に枝葉を伸ばす木々にも気をつける。
「これは……大して新しくなさそうだよね」
 干からび掛けた動物の死骸を見つけた強き絆を求めし炎氷の狩人・アイリ(a31666)は「残念……」とため息をつきながら呟く。
 片手には、いつ敵が現れてもいいように、弓を握っていた。
 時折全員の姿を確認しながら、動物の死骸を探すのは白鴉・シルヴァ(a13552)だ。特に、誰かの背後に敵が迫ってないか、警戒しながら探していた。
「♪リスさん、リスさん。襲われた動物を知らない?」
「ちぃ?」
 歌いながら鈴の音を友に舞唄う栗鼠・ハナメ(a25460)は小枝に座る2匹のリスへと訊ねた。顔を見合わせたリスは、森を少し奥へ入ったところに動物が倒れていたと教えてくれる。
「♪ありがとう」
 ハナメが礼を言うとリスたちは去っていく。
「奥か。気をつけて進もう」
 説明を受けた戦慄の翼・ハクホウ(a23008)は、森の奥を見て呟く。
「……探すのは一苦労ですね」
 苦笑を漏らしながらも奥へと踏み出す暗黒呪殺魔術師・シュトロハイム(a41059)。歩きながらでも上下左右を警戒することは忘れない。
「ここ……何かがはいずったような感じではないでしょうか?」
 奥へ進むと、真新しい死骸があった。その周りを見ていたヒトの武道家・セツハ(a37324)が、不自然な跡を見つける。
「何か……、聞こえます」
 不意打ちを喰らわないよう注意していた陽光に輝く魔弾の射手・ソフィア(a40878)が、跡や死骸を見ている仲間達に告げる。
 ……、ズルッ、ズルッ。
 そんな音がしたと同時に、森の奥から真っ赤な触手のようなものが伸びてきた。

●たゆたうモノ
「きゃっ!」
 伸びてきた触手は、ソフィアの腕を絡め取ると、一気に傍まで近づいてくる。
「失礼しますわよっ!」
 ソフィアの腕を取ったままのモンスターの一部をアコが強靭な蹴りで外そうと試みる。
 光の弧を描いて、繰り出された一撃は絡みついた部分に当たり、モンスターはソフィアの腕から離れた。
「術士と同じ……という訳には行かないが……これでっ」
 プルーは手にした杖に新たな外装を取り付け、その杖の威力を引き上げる。
 戦闘体勢が整っていないことを確認したアイリは、弓に矢を番え、放つ。矢はアイリが纏った魔氷と魔炎を兼ね備えて飛んで行き、モンスターに命中すると、氷と炎で包み込む。
 傷を負ったものが居ないと確認したミラ(a19499)はセツハの拘束服へ強大な力を注ぎ込んだ。形状が変わり、鎧の強度も増す。
 赤く透き通った、炎の矢を作り出し、ハクホウはそれを放つ。モンスターの傍に着弾したその矢は爆発し、ダメージを与えた。
 シルヴァは巨大剣を構えると、その剣を上から下へ振り下ろした。ダメージを与えると共に、彼の纏う魔炎と魔氷が、モンスターを包む。
「動物さんたちの敵……必ず討つです……!」
 パンはそう言って、地を踏みしめた。
「木が邪魔、だな」
 セツハは呟くと、乱立している木の一つをまっすぐ殴った。力の込められた拳で殴られた木は、他の木の葉と擦れる音を立て、地へと倒れる。
「ここは貴方のいて良い場所ではない、排除させて頂く」
 モンスターと十分な間を取って、シュトロハイムは黒い炎を作り出した。その炎は悪魔のような形をしていて、七色に光りながらモンスターへと向かっていく。
(「あなたの命を奪う権利は……、誰にもありませんが……ごめんなさい……。あなたが生きていた事……忘れませんよ」)
 心の中で呟き、ソフィアは先端に炎のついた矢を放った。着弾した矢は、モンスターを巻き込んで爆発を起こす。けれど、彼女の思いからか、大した傷を与えることが出来なかった。
 炎と氷を振り払い、モンスターは身体の一部を固くし針のように尖らせると、近接してきていたアコに向かって突き出した。
「っ!」
 盾で受け止めるも、その端、ギリギリで止めた針は、ずれてアコの腕へと突き刺さる。
「これ以上の動物の犠牲は許しませんわっ!」
 バランスを崩しながら裂帛の気合と共にアコは叫ぶ。けれど、モンスターは麻痺せず、戦場を動き回った。
「大丈夫!? 今、助けるからね!!」
 声をあげ、ハナメは励ましの歌を歌う。その歌はアコの傷口を癒した。
「あまり舐めてくれるな!」
 回復の手は要らないと判断したプルーは炎に包まれた木の葉を作り出すと、それをモンスターに向かわせる。
 その木の葉は命中すると、再度モンスターを炎で包み込んだ。
「この矢はそう簡単に抜けないよっ!」
 鋭い、逆とげの生えた矢を弓に番えながら、アイリが声を張り上げる。放ったその矢がモンスターを貫くと、傷口から血が噴き出した。大きなダメージを喰らい、モンスターは回復源を求めて、ズルズルと音を立てながら、戦場内を動き回る。
 ミラは次にアコの鎧へと力を注ぎ込んだ。注ぎ込まれる力と共に、強度が増して行く。
「厄介な敵だね……。思っていた以上だよ」
 呟き、ハクホウもまた、逆とげの生えた矢を放った。回復源を求めて動き回るモンスターを回復させないために、その力を封じる。
 先ほど、攻撃を仕掛けてくるのに、固くなったところを見逃さず、シルヴァはそこを狙って剣を振り上げる。炎と氷を纏ったその一撃は、モンスターの身体の一部を切り離した。切り離された一部は、しばしぴくぴくと動いているもすぐに動かなくなった。
 パンは、更に自身のスーツアーマーに力を注ぎ込む。形状を大きく変えたスーツアーマーは、その強度を増した。準備の整ったパンは、モンスターから皆を守るように、最前線に立つ。
 木を倒し、開けた場所を作り出したセツハは、モンスターへと接近するとその身体を掴み上げた。宙へ上げられたモンスターの身体は、ドロッと地の方へ垂れる。けれど、セツハは素早くその身体を足元へと投げ落とした。微力ながらもその攻撃はモンスターへとダメージを与える。
「悪く思うなよ、こちらにも余裕はないんだ……」
 シュトロハイムは再度、黒い炎を打ち出した。七色に光りながら、悪魔を模した炎はモンスターを包む。
 ソフィアの放った闇色の矢がモンスターの身体を貫く。
 ズルズルと、獲物を探しながら動き回るモンスター。不意に、身体の一部を固くし、針のように尖った一撃をパンへと与えてくる。
 鎧の強度を引き上げた彼には、その攻撃も大したことはなく、かすり傷を与える程度だった。
 ハナメがパンの傷を癒すため、身体から淡く光る波を発する。そのタイミングに合わせて、アコはモンスターへ強靭な蹴りを放った。
 再び炎に包まれた木の葉を作り出したプルーは、それをモンスターへと放つ。木の葉はモンスターをつつみ、ダメージと炎を与えた。
「雷の力を秘めし矢よ! 奴を貫け!」
 アイリの放った矢は、稲妻のごとく雷光を描いて飛ぶ。その矢はモンスターを貫くと大きなダメージを与えた。
 ミラは更に、シルヴァの鎧へと力を注ぎ込んでいく。
 その隣で、ハクホウは狙いを定めて赤く透き通った矢を放った。爆発がモンスターを包み込む。
 後衛へと攻撃を仕掛けようかと、身体の一部を長く伸ばそうとするモンスターに、シルヴァは手にした剣に極限まで闘気を詰め込み、大きく振り下ろした。モンスターに触れた箇所が爆発を起こし、大ダメージを与える。
 セツハは、モンスターへ蹴りを入れた。鋭く強靭な一撃はまばゆい光の弧を描いて繰り出される。
 周りが攻撃をしている間に、少し観察していたパンは、握った長剣を大上段の構えに持ってくると、強力な一撃を打ち下ろした。
 その一撃にモンスターは息絶え、真っ二つに一刀両断された。

●戦いの後……
 真っ二つになったモンスターの身体から、それまで吸っていた動物達の血がどろりと流れ出す。血は、じわりと少しずつ地面へと吸われていった。
「どうにか……終わったね……お疲れ様でした!」
 その様子を見守って、アイリは皆に声をかけた。
(「いつまで経っても……、慣れませんね」)
 モンスターの最後を見取り、ソフィアは心の中で呟く。
 一行は動物達に死骸の在り処を聞いて回ると、それを集め、一箇所に埋めた。
(「次は……平和な世の中に……生まれてくるのです……。それまで……安らかに……眠ってですよ……」)
 動物達の墓を前にパンは瞳を閉じて祈る。
 アコもその隣で祈った。
「♪危機は去ったからね……」
 その様子を見に、集まってくる動物達にハナメは安全になったことを告げる。
 動物達は喜んだ様子を見せた。
 森の奥へと帰っていく動物達を見送って、一行はその森を後にした。

終。


マスター:暁ゆか 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2006/03/21
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