密林の覇者



<オープニング>


●林の忍び
「素早い動きを得意とする、忍びタイプのモンスターが確認されました」
 真実求む霊査士・ゼロ(a90250)の言葉に冒険者たちの視線も集まる。
「情報では未だ人的被害などは出ていませんが……これから先がどうなるかは分かりません。人里などに侵入し、被害が出る前に討ち取って頂きたいと思います」
 頷く冒険者たちに、ゼロはその力の説明を開始していた。
「霊査によりますとモンスターは鋼糸のような武器を持っており、素早い動きでかく乱するような戦いを得意とするタイプのようですね。林の中という戦場を活かし、影から影へと移動するようです」
 林? とオウム返しに問う冒険者たちにゼロは頷く。
「えぇ、説明が遅れましたが……そのモンスターは深い林の中に潜んでいます」
 ならば相手は地の利を利用してくるのだろう。冒険者たちの表情が引き締まる。
「林の影から音も無く忍び寄り、鋭く鋼糸で一閃してきます。そして一撃を放って即座に影へと身を潜める……かく乱されないように十分に警戒が必要でしょう。あと、幻覚によって木を身代わりにし、攻撃を軽減させることも可能な様子です」
 幻覚はそんなに連続で発生するものでは無いが、相手の姿を捉えられなければかなりの脅威になるだろうというゼロ。
「仲間達で力を合わせて討伐に当たっていただきたいと思います」
 ゼロはそう言って、冒険者たちを送り出すのだった。

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参加者
若草の翔剣士・オリエル(a00348)
君の幸せの為に愛を謳うよ・ニオス(a04450)
蒼銀葬華・クロノ(a07763)
絶対零度の剃刀・ヨイヤミ(a12048)
四神を司りし紅き魂の聖魔・レツヤ(a12580)
紅舞・メイア(a29279)
蒼天の守護者・ツカサ(a30890)
激剣・ウル(a36246)


<リプレイ>

●静かなる林で
「随分と厄介な敵みたいで……」
 深い林へと足を踏み入れた冒険者たち、誰よりも愛し幸せにしてみせる・ニオス(a04450)は視界には邪魔な枝をぱしっと切り払いながら進んでいた。
 この林の何処かにモンスターが潜んでおり、その退治のために冒険者たちはやってきただのだが……今はまだその気配は無い。
「シャドウのワタシ達相手に隠れて斗おうだなんて……」
 この子の七つのお祝いに・ヨイヤミ(a12048)はそう言って地面に粘り蜘蛛糸を放ち、進行方向の様子を注意深く窺っている。静かな林とはいえ、何の気配も無いわけではない。風が吹けば草や葉が揺れて音を立て、小動物でも居るのか軽い影もよぎる。念のために視線を向ければ一匹の小鳥がバサバサと飛び去っていく所だった。
「敵が圧倒的に有利な場所での戦いか……」
 少しでも障害物を無くしておこうと流水撃で木々に攻撃する四神を司りし紅き魂の聖魔・レツヤ(a12580)に続き、紅舞・メイア(a29279)も巨大剣『華紅衝薙』を掲げ上げた!
 ごっ!
 レイジングサイクロンの烈風が木々を薙ぐ、倒れた木々がずしんと音を立てたその時、無音の刃は繰り出されていた。
「くっ!?」
 レツヤの脇腹が黒い刃に切り裂かれ、鮮血が噴き出していた。周囲を警戒していた冒険者たちだが、その忍びモンスターの気配を察知することは出来ず、攻撃と同時に出現したようにしか見えなかった。
 しかしこれで、相手の姿は確認できている。チキンスピードを発動させる若草の翔剣士・オリエル(a00348)に続き、冒険者達も迎撃体勢を取った。
 攻撃を受けたレツヤの両側に位置する者が攻撃を加える手筈になっていたが、メイアはレイジングサイクロンの反動で麻痺しており、ヨイヤミは丁度粘り蜘蛛糸を放ち終えた所だった。ざっと跳び退る忍びモンスターの足元でにちゃりと残った粘り蜘蛛糸が音を立てるが、地面に放った状態では相手を拘束する効果は見られない。
「まるで忍びですね、気配を感じさせない……」
 蒼天の守護者・ツカサ(a30890)は蒼幻葬送・クロノ(a07763)へと「君を守ると誓う」を発動させる。
「何としても勝利を勝ち取らないとな」
 クロノは別の依頼の傷が癒え切っていない様子だったが、それでも仲間達の為に尽力したいと自身に鎧聖降臨を使用していた。
「いきナりの襲撃が……ちょっト怖いネ」
 二オスへと「君を守ると誓う」を使用するのは激剣・ウル(a36246)だ。こうして一人が受けるダメージを分散させ、致命傷を避けようというのも冒険者たちの作戦だった。

「Ho−Ho!」
 呼気と共に、ヨイヤミは鋼糸を振り抜いてソニックゥエーブを放つ! 生まれた音速の衝撃波をバキッと丸太が受け止めて威力を減じ、そのまま下がって逃げようとする忍びモンスター、倒されていない木の影に滑り込んでその気配を消し去った。
 そのヨイヤミの背に駆け寄ってレツヤは「君を守ると誓う」を発動させ、緑の記憶・リョク(a21145)は高らかな凱歌によってレツヤのダメージとメイアの麻痺を解除する。
「今のうちに陣形を整えるんだ」
 メイアに「君を守ると誓う」を発動しつつ言うオリエルに答えるように背を向け合った円陣のように位置する冒険者たち。麻痺から回復したメイアはレツヤに、ツカサはオリエルに「君を守ると誓う」を発動させて位置につく。
 クロノはウルに鎧聖降臨を発動させて、ウルはリングスラッシャーを召喚する。

 静かな林には何者の気配も無いが……何処かに敵は存在している筈。冒険者達は神経を研ぎ澄ましていた。
 ざっ
 響いた音は刃が振り抜かれた音では無く、肉が裂ける音。肩口から斜めに切り裂かれたのはニオス、ダークネスクロークの自動防御も間に合っていなかった。
「………!!」
 痛みがニオスと「君を守ると誓う」で負担しているウルに襲い掛かる。ニオスは正面の相手に向かって双頭剣を振り抜くも、バックステップで難なく回避する忍びモンスター。
「私が相手です」
 ニオスの両側に位置していたのはツカサとウルだった。ウルはリングスラッシャーの動きで敵の出現を察知しようと考えていた様子だが、リングスラッシャーとウル自身ではイニシアチブの差もあり圧倒的にウルの方が先に動ける筈である。それをわざわざ遅い方の反応を見てから自分が動こうとしていたので出遅れてしまい、ツカサは踏み込んで儀礼用長剣を振りかぶる!
「いっけぇ!」
 同時にオリエルがスーパースポットライトを輝かせていた。しかし忍びは麻痺した様子は無く、一足跳びでオリエルの方へ跳躍するようにしてツカサの攻撃を回避する。
 ばきっ、と続けて打ち下ろされたウルの蛮刀を出現した丸太が受け止め、忍びの肩には浅くしか入らない。
 だがその瞬間を見逃さず、ニオスは飛燕刃を放っていた。斬られた痛みに耐えながら放った気の刃は忍びに叩き付けられ、ぐらりとバランスを崩す。
「その隙! 頂くわ!」
 振り下ろされるメイアの巨大剣! がきん、と忍びの手にした闇色の刃がそれを受け止めてギリギリと悲鳴を上げていた。メイアの目にそれは短剣ほどの長さを持つ武器で、一筋の光沢も無く深い闇をたたえていたように見えた。
「……ムシが良過ぎるにも程が有るんじゃないかしらん」
 メイアと押し合うことで忍びモンスターの足は止まっている。そこをヨイヤミのソニックウェーブが突き抜けて揺るがし、この一撃は痛かったのか大きく跳び退る。
「逃がさんっ!」
 クロノが粘り蜘蛛糸を放つ! 振りかかる糸を刃で振り払い、そのまま木の影へと入り込む忍びモンスター。
 ごっ!
 その木にレツヤのスキュラフレイムが着弾して焼き折るが……そこには既にモンスターの姿は無かった。気配を消してしまったのだろう。
(「木々たち……すまない」)
 敵を見つける為とはいえ、自然を破壊する行為に心を痛めるレツヤだった。

「攪乱サれて陣形が乱れテ相手のペースにナらないヨうに」
 攻撃の為に円陣の配置が乱れている。立ち位置を直すように呼びかけるウルに答えて元の配置に戻る冒険者たち、ツカサも今のうちにヒーリングウェーブでニオス、ウルが受けたダメージを回復させている。
「どこからでもかかって来い」
 レツヤは周囲を注意深く警戒し、オリエルはチキンスピードを掛け直す。
「特技フル活用でサーチかしらん」
 声と同時にヨイヤミが飛燕刃を撃ち放つ! 跳躍で避けるは忍びモンスター、気配を消しているとはいえ慎重に探れば発見できることもある。今回はヨイヤミが発見に成功し、気の刃を叩き付けたのだ。
 ざっ!
 攻撃を避けてそのまま駆け込んでくる忍び、ウルに正面から刃を振り抜いた!
「……くっ!?」
 盾と剣で急所を避けるウルだが、深々と縦に真っ直ぐ傷が走る。姿が見えているので防御困難の効果は無く鎧聖降臨で防御も強化されているが、それでも「君を守ると誓う」を受けていないウルにとっては十分なダメージが刻み付けられる。
「……自分のやれる事を」
 ニオスが双頭剣『生削一角』を繰り出した。闇色の闘気が込められたシャドウスラッシュはガキンと闇のダガーに受け止められ、そのまま軌道を逸らして払われる。
 囲んでゆくように回り込むツカサが水の剣を振り下ろす。儀礼用長剣から放たれる『心』衝撃波を横に跳んで回避する忍びだが、そちらにはオリエルが回り込んでいる! 半円を描く陣形で包囲する作戦の第二段階だ。
「絶対に負けねぇ!」
 サーベルに切り裂かれるは……丸太。しかしオリエルの一撃はそれを貫き、忍びの腕にまで刃を走らせている。キルドレッドブルーの魔氷、魔炎が襲い掛かるが、忍びは腕を振り払って包み込むまではいかなかった。
「いくわよっ!」
 そこへ放たれるレイジングサイクロン! 闘気の竜巻は忍びを呑み込んで、メイアは反動で麻痺に陥る。
「一瞬の油断が命取りになるな」
 警戒を促しながらスキュラフレイムを放ち、包囲を狭めるように駆け込むレツヤ。しかし半円状という包囲網なので、空いている方へ忍びモンスターは逃げに掛かる。
「さぁ……本番と行くか……」
 だがその逃げ道に、クロノから粘り蜘蛛糸が浴びせられていた。レツヤのスキュラフレイムを回避するために方向が限られている、そのお陰で忍びモンスターは拘束されるか、包囲網の中に戻るかの二択を迫られた。
 忍びは走った。蜘蛛糸から逃れて前へと進み、真っ直ぐウルへと刃を突き出す!
「ひたスら切り付ケる!」
 蛮刀『フレイムヴァルキリー』でウルが迎え撃つ、闇の刃と片刃の蛮刀が交差した。
「……いけない」
 急ぎヒーリングウェーブを使用するツカサ。お互いに肩口が切り裂かれ、忍びはバックステップで離れてウルはその場に膝を付いていた。
「釘付けにするよん」
 怯んだ忍びモンスターに向けてヨイヤミが飛燕刃を放つ、ぼうっと出現した丸太がバキッと受け止めて消滅した。その間にリョクが静謐の祈りでメイアの麻痺を解除しに掛かる。
 ぎぃん!
 そこに踏み込んだのはニオスだ。ウル、ヨイヤミの攻撃に続いて双頭剣を繰り出し、忍びの注意を引いて足を止めさせる。
「いい加減、かくれんぼは止めにしないか!?」
 ニオスが下がると同時に粘り蜘蛛糸が襲い掛かっていた。三人の攻撃で気を引いていたお陰でクロノの白い糸は絡み付き、忍びの動きを拘束していた。
「よっしゃ! 畳み掛けるぞ!」
 オリエルの駆け抜けざまにサーベルが閃き、レツヤが深く間合いへと踏み込んだ。
「一気に決める」
 ざっ!
 抜き打ち放たれるは電刃居合い斬り、稲妻の闘気を纏う一撃が蜘蛛糸、キルドレッドブルーの魔氷に動きを閉ざされた忍びモンスターに叩き付けられるが……電刃居合い斬りは『体』の属性を持つアビリティ。レツヤの装備する白虎光輝は儀礼用長剣なので『体』の攻撃力はそれほど高くはないのだ。アビリティ自体の破壊力が強力なので無視は出来ないだろうが、致命傷とまでは至らずに忍びモンスターは蜘蛛糸の中でもがき苦しんでいる。
「Ho−Ho!」
 ヨイヤミのソニックウェーブが襲い掛かり、氷の中でバキバキと軋むような音が響いていた。
「はっ!」
 叩き付けられるメイアの巨大剣! ガキンと硬い音を立てて、闇の刃がデストロイブレードを受け止めた! 魔氷、粘り蜘蛛糸の拘束が切れてしまったのである。
「逃がすなっ!」
 衝撃を受け流すように後退る忍びに向けて粘り蜘蛛糸を放つクロノ。レツヤも同時にスキュラフレイムを撃ち放っていた。
 ごっ
 糸はかわすが炎からは逃れられず、獅子、山羊、蛇を象る炎が忍びモンスターを包み燃え上がる。
「残念ですがここまでです」
 そこに駆け込んだツカサの衝撃波が、再び忍びを魔氷の中に閉ざしていた。
「……ちゃんとやりきればそれで十分だ……」
 ざっ、と静かな音を立てて闇色の刃が振り抜かれる。それは忍びのものではなく、ニオスの繰り出したシャドウスラッシュ。
 戦いは始まりと同じく、静かにその幕を下ろすのだった。

 こうして林は静けさを取り戻す。その中を駆け行く忍びを倒した冒険者たちは、小さく息を着いて帰路に着くのだった。


マスター:零風堂 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/03/10
得票数:戦闘17 
冒険結果:成功!
重傷者:激剣・ウル(a36246) 
死亡者:なし
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