<リプレイ>
●今はまだ平穏な村 「おぬしら、急ぎすぎると肝心なときにへたばるぞ?」 「だからといって、のんびりしていられる場合でもないのでしょう?」 「違いない。ヒェッヒェッヒェ!」 駆け出し冒険者・クリストファ(a30176)は老婆の言葉に肩をすくめ、仲間たちと共に酒場を後にする。 歩くこと数刻。とある峠に差し掛かったところで、いったん一休みする者と別れる。 「急ぎましょう。一刻の猶予もありません」 共に先を急ぐのは希望を拓く騎士・シエラ(a39018)。 「ふむ、2人だけでは不安も残るのう。致し方あるまい、わしも急ぐとしよう」 と、孤山の老木・ヴァルター(a34611)は立ち上がった。 「お気をつけて。私たちもなるべく……遅れぬように後を追います」 「頼む。盗賊どもがいつ村を襲うのか……正確な日取りがわかっておるわけではないからのう」 「えぇ……気をつけます」 ふらんそわ〜ず・サガン(a18767)は頷いた。 彼らと別れ、クリストファら3人は先を急ぐ。 「間に合うかどうか、霊査士を信じるしかないのう」 重い鎧は歩みの妨げとなる。ヴァルターは鎧も背に負って進む。他の2人も、それに倣った。 急ぐと言っても、まったく食わず休まず眠らずゆけるわけではない。が、それも最低限にとどめて村へと向かう。。 そして、ついに3人はムリアスにたどり着いた。 「……今のところは、平穏な村に見えますね」 クリストファの眼前に広がる光景は、これと言って特別なもののない農村のそれである。 「だれか! だれかいませんか!」 シエラが大声で叫ぶと、村の住民が何事かと姿を見せた。 「なんだ、あんたたち? ずいぶん疲れてるみたいだけど、大丈夫か?」 「それどころではないのです。この村が盗賊に狙われていると、霊査士から聞きました!」 「な、なんだって!?」 心配してくれた若者の言葉を遮り、シエラは訴える。傍目にもわかるほど疲労困憊している彼らだが、これを伝えることが先決なのだ。 当然ながら、若者は目を見開いて驚きを露わにした。彼ばかりではない。村の人々はそれぞれ顔を見合わせ、表情を曇らせる。 そして、現れた3人が冒険者だとわかると、その知らせが現実の物だと実感し、騒ぎ始めた。 「盗賊だって! いったいどうすればいいんだ!」 しばらくの間、騒ぎは収まらなかったが、村人たちは結局は村長の家に集まり、その土間や倉庫に寝泊まりをすることになった。 「盗賊だって? 本当かい?」 村には他に、冒険者クラウディアもいた。彼も加わり、村人を避難させる。 そして、日が暮れた。 「お〜い、待たせたなぁ!」 又鬼・コロクル(a08067)が松明を掲げて姿を見せた。その後ろには、 「まだ、現れてはいませんか!?」 流転の灯・シリア(a42531)や黒包帯の怪人・ソベル(a40744)、世界を駆巡る暴風・ノーラ(a40336)、そしてサガンの姿もある。 これで全員が揃った。 「あとは僕が見張っとくわ。ちょっとでも休んどき」 コロクルは先に到着した3人に声をかけ、火の見櫓に登って辺りを遠望する。 「任せてください。皆さんの安全は絶対に保障しますよ」 「心配いらないなぁ〜ん」 ソベルとノーラも村人たちを励ましつつ、襲撃を今か今かと待ちかまえた。 夜が更ける。月のない晩である。 「嫌な夜やな……」 コロクルが天を仰いで呟いた、そのとき。
●思い悩むばかり 「どうも、隠し事があるような気がするなぁ」 町の大通りを往くのは焔雷・フタバ(a39298)。向かう先は商人クラウ・ソラスの構える店である。 「なにやら困っとるんかな? それなら力になってやってもえぇけど……悪巧みしよるんなら、かまぁかけて墓穴掘らしたろか」 と、考えながら口をへの字に曲げたまま歩く。 などと、あれこれ思ってはみたものの。 いったい「何を」「どうやって」聞き出そうというのか? 言いくるめるにしたところで、彼自身にも深い考えはまとまっていないようである。 もっとも、 「旦那様に面会を? ……失礼ながら、旦那様はここしばらく体調を崩され、面会はお断りしております」 と、店の者にすげなく断られて。それっきり打つ手を無くしてしまい、結局のところなんの違いもなかったのであるが……。
●学者の邸宅 その町の、こちらは領主の館にも近い宮門のそば。そこを歩いているのは、腐海の朽ちなし千年樹・メロゥフフラン(a38433)。 「ここですか……なるほど、確かに名士みたいですね」 とある屋敷の前に立ち止まる。ひときわ立派な門。ここがウスキアスの屋敷であるという。 町の人間に尋ねると、すぐにわかった。どうやらウスキアスは、町の人間にも畏敬の念を抱かれているようだ。 ある意味、領主以上に。 昔、この地に暴戻な領主がいたという。 それに諫言を呈したのがウスキアスの祖先であった。しかしそれは受け入れられず、領主は悪政を続けた。その結果、領主の弟がついに領主を殺し、その座に着いたという事件が起こったのである。新しく立った領主はウスキアスの祖先を尊び、師としたのだという。 そうしたことがあったから、ウスキアスの家は代々領主に尊ばれているのだという。 駄目でもともと、メロゥフフランは「大学者にお会いしたい」という名目で、門扉を叩く。 すると。 「ようこそ、このような弊宅においでくだされた」 容易くウスキアスと面会することがかなった。初老の男は丁重にメロゥフフランを出迎えたのである。 「ほう、天候を……。ならば農学者でいらっしゃるのかな? 農は国の基。私も大いに興味があります。是非、今日は先生のご高説をお聞かせ願いたい」 と、席を勧めたのである。 「あの、いえ、そんな大層なものでは……」 思いもよらぬ歓待にメロゥフフランはむしろ恐縮したのだが。 何とかそれっぽく話をしていく。そしてその中に、聞きたいことを交える。 「ところで、最近この辺りでは盗賊が横行しているそうですが……なんでも、1人残らず殺された村もあるとか」 「おぉ。それは私も気に病んでいることです。しかし備えをする以上の良策を献言することも出来ず、心苦しい」 だとか、 「そういえば、町に、不思議な歌を歌っている少女がいるそうですが」 「ほう。それはどういう歌なのですか? ……ほう、確かに変わった歌ですな」 などとやりとりをしつつ、ウスキアスの顔色を窺うが。終始、穏やかな表情を見せているが、心の奥底までは見通せない。 まぁ、それはこちらも同じかもしれないが。 「いや、今日は私に耳を潤す時間を与えていただき感謝します。よろしければ、弊宅でおくつろぎください」 どうやらこの屋敷には、そうした客も多くいるらしい。
●炎、炎、炎 闇に沈んでいた草原から、ぱッと明るく光が生まれた。 ひとつだけではない。ふたつ、みっつ。それも村の四方からである。 「来よった!」 コロクルが叫ぶ。その声で、うとうととしていた者たちも慌てて武器を取った。 そうしている間にも、光は増え続ける。 光とは、炎。闇を切り裂いて飛来する。襲撃してきた者どもは次々と火矢を放ってきたのだ。 たっぷりと油を含んで燃える火矢が、枯れ草を燃え上がらせる。ときおり、陶器の割れる音も混じった。油壺を投げつけてきたのだ。 「村を襲うにしては……徹底しすぎています……!」 シリアは炎の飛来してくる方に向かって走りつつ、唇を噛んだ。 炎は村の四方を舐め尽くしている。……いや、一方のみが開いている。しかし、炎を避けてそこから逃げ出せば、敵が待ちかまえているのではないか? そもそも、盗賊の目的は何だ。焼き尽くした村から、何が略奪できるというのであろう。 しかし、シリアの思考はそこまでで中断する。 「いよいよ来るか!?」 少しばかり手際の良い盗賊だからとて、遅れをとりはしない。ヴァルターは敵が前進してくる気配を感じ、得物を構えた。 シエラもまた、蛮刀を構える。正直なところ、うとうととしたくらいでは疲れは取れていない。が、しかし。襲ってくる者は皆、斬るという気構えで待ち受ける。 村の側からも、炎が飛んだ。ノーラの『エンブレムノヴァ未完成』である。至近に落ちた火球が、襲撃者の姿を浮かび上がらせた。 「諦めるなぁ〜ん! 今度は当てるなぁ〜ん!」 襲撃者どもの、たじろぐ気配。 「村を襲うの、やめてもらえません? それとも私たち冒険者を相手に、あくまでもやりますか?」 炎とは違う、赤い光に浮かび上がるサガンの姿。この、自然にはあり得ない明かりを見れば、彼が冒険者であることも一目瞭然であろう。 すると、なんと。盗賊どもは襲撃を諦めたのか、次々と闇の中に消えていったではないか! 「まさか、本当に諦めるとは……」 当のサガンも、拍子抜けした様子である。 「それどころじゃありません。火が……!」 シリアが急ぎ、井戸から水を汲んできた。 燃え上がった炎はどんどんと広がり、村の家屋を燃やし始めているのだ。 冒険者たちは慌てて火を消し止めにかかる。 どうやら、何か裏のありそうな襲撃である。もし、奴らを捕らえることが出来れば何か聞き出せたかもしれないのであるが。 ……盗賊が退いたのは、それを嫌ってのことなのか。
●不可解な死 「ほう……これは、また」 「皆様、ご無事でしょうか……」 「実に興味深いですね」 「シトリークさん?」 とある村では凄惨な事件が起ころうとしているのに、理を秘めたる紫紺・シトリーク(a02700)の一行は実にのどかに発掘作業を続けていた。呼びかける紫銀の蒼晶華・アオイ(a07743)の声に、やっと振り向く。 「失礼……好奇心が」 ばつの悪そうな顔で、アオイにわびる。 シトリークらはエスラスの弟子たちとともに、再発掘を行っている。モンスターが倒された遺跡は平穏そのもの。天気も良く、「もしかしたらまだ」という心配も杞憂のようだ。 「はぁ……。それで、シトリークさんはどうお考えです?」 「そうですね、人に何かを伝えようとする方法が文字ばかりとは限りません。なにか、そう、この遺跡そのものに、何か秘密があるのかもしれませんよ」 とはいえ、それも地道な発掘作業をしてみないことにはわからない。護衛役にとどまらず、2人も作業に加わる。 ふと、アオイが顔を上げた。 「そういえば。あの石板と鼎の見つかったこの場所、お墓だったのでしょう?」 「えぇ。なんでもモールフィースの高弟の墓らしいですが……あぁ」 後世に伝えるべく遺しておくようなものは、家の台所にはない。墓の中、副葬品にこそ見つかるだろう。 シトリークは『クリスタルインセクト奥義』を呼び出し、慎重に地の隙間に潜らせた。 そして、いつの時代かの地殻の変動によって移ってしまったであろう、石棺を発見したのである。 「これこそ、この墓の主。モールフィースの高弟に違いないでしょう」 弟子たちと共に、石棺を開く。 「……なんです、これは」 その骨の傷みは風化によるものだけでなく、明らかに不自然な傷み方をしていたのである。そう、毒でも盛られたかのような。 「見てください、シトリーク」 アオイが、棺に刻まれた文字を指し示す。 モールフィースの高弟。年は、かなり下である。なのに……没年はわずかに遅れただけ。師の亡くなったすぐ後に、この弟子は。
●小さな村の、末裔 「ありがとうございます。おかげで……みな助かりました」 火が消し止められたのは日が昇った後だった。村人総出で消し止めた後、若者が一息入れている冒険者たちのところにやって来て、礼を述べる。 シエラたちを気遣ってくれた若者である。クラウディアが肩をすくめる。 「なに、たいしたことはしてないよ。ところで、セーウィアスって人はいるかい?」 すると若者は、 「あ、俺ですが」 と、怪訝な顔をした。 「あぁ、あなたが。実は僕がこの村にやって来たのは警告をするだけじゃないんですよ」 ソベルは「ご先祖の墓を調べさせて欲しい」と、頼み込む。セーウィアスは驚いたようではあったが、その理由を説明すると納得してくれた。 そうして、重たい石を動かして墓の中を調べてみると。 それがわかったのはエスラスが到着してからのことになるが、その墓に眠る人物はやはり、モールフィースの高弟の1人であった。『経』の編纂を手伝ったに違いない人物である。 しかし残念なことに、ここにも『経』そのものは残されていなかった。その子孫であるセーウィアスにも、 「『経』か……。やっぱり、すごく偉い人のお弟子さんだったんだなぁ。知らなくて、恥ずかしいよ」 と、事績は伝わっていなかったのだ。 「見てのとおり、うちは決して立派な名家なんかじゃなくてただの農民なんだ。そんな大切な物は……見たことないなぁ。申し訳ない、助けてもらったのに」 「いえいえ、とんでもない。それよりも妹さんが結婚されると聞きました。おめでとうございます」 冒険者たちは普通の生活を送るセーウィアスに祝辞を述べたのだった。 エスラスは残念そうな顔を少ししたものの、すぐに気を取り直したようだ。 「ここにも『経』はありませんでしたか……。いえ、すぐに見つかるなどとは思っていませんでした。この村も調べれば、何らかの手がかりが見つかるでしょう! 間違いなく、『経』に近づいていると思います!」 だが、『経』に関わる様々な問題が複雑に絡み合ってきたことも、冒険者は感じたのだった。
(つづく)

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参加者:12人
作成日:2006/03/27
得票数:冒険活劇1
ミステリ8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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