<リプレイ>
● 今日はあいにくの曇りで陽の光はまったく差さない。厚い厚い灰色の雲が空一杯に垂れ込めていて、いよいよ春も本格だが若干肌寒い日である。しかし誰も気温の低さを意に介さない。 「このくらいの方がいいよ。どうせ戦えばイヤというほど熱くなるし」 「そうだな。今回はまた奇妙な形のモンスター相手だ。どういう攻略法があるかもわからないし、運動量も増えるだろう」 夢を紡ぎし青石の鍵・ソフィア(a15022)と蜂蜜騎士・エグザス(a01545)はそう言って気迫を漲らせる。少し寒いくらいで障害になりうるはずもない。 冒険者は6人づつに分かれ、街道の左右に油断なく目を凝らす。せっかく擬態という情報を得ているのに、見落として襲われたのではあまりに拙い。左側の武士見習い・シロウ(a26228)は遠眼鏡で遠くも見る。 「見つけにくい所にいるということはないと思いますよ。見つかった上で無視されるというのが奇襲の絶対条件ですから」 地味で神経のすり減る作業だったが、それにも終わりが来た。街道に入って数十分ばかりが経過した時だった。 「……あれではないですか?」 右側前方を遠眼鏡で見ていた銀の剣・ヨハン(a21564)が指差した先に、一行はゆっくり近づいていった。 そこに、縄があった。いかにも誰かが投げ捨てたような感じだった。丸まっていて長さは判然としないが、5メートルはありそうだ。――敵についてわかっているのは巻きつき攻撃をするということだけだ。蛇と戦うと思えばいいだろうが、そう単純に事は運ばないだろう。 「……では、チヨが行きますなぁ〜ん」 伝説の巨大剣の使い手を目指す・チヨ(a14014)が小声で言った。情報通りに擬態をしているのだとしたら、あちらから仕掛けに来ることはないだろう。チヨはふうと深呼吸して、デモニックフレイムを撃った。着弾し、轟と燃え上がる縄。 縄は激しくのた打ち回った。凄まじく速く回転して火を掻き消すと、蛇が鎌首をもたげるようにググッと起き上がる。擬態を解き、その凶暴性を剥き出しにした。 こうして動いているのを見ても、本当にその外見は縄であるとしか言いようがない。目や鼻や口はちゃんとあるのだろうが、小さくてどこに付いているのかよくわからない。 「ま、そう防御は固くなさそうだし、最大出力で行きましょ」 蒼く揺れる月・エクセル(a12276)がウェポン・オーバーロードを発動する。禍々しい巨大鎌がさらに異形に変化し、見る者を圧倒する。エグザスは様子見も兼ねて鎧聖降臨で防御を高める。もっとも、服の内部に入り込むというのなら、いくら鎧を強固にしても無意味ではあるが。 モンスターが動いた。するすると地面を擦り、冒険者の足元へ急接近してくる。 「……ちょっと狙いにくいなぁ〜ん」 森羅万象の野獣・グリュウ(a39510)がリングスラッシャーを飛ばすが、さっと避けられて地面を抉るばかり。モンスターは横っ飛びした不言の雄姿・バルバロス(a18154)の動きに的確に付いていき、足を絡ませて転ばせた。バルバロスは頭を打ったが、痛みを堪えてブーメランで切りつける。ほんの少しの傷を負ったモンスターは素早くバルバロスから離脱した。 「掴みづらい動きをしますね……」 ウェポン・オーバーロードで槍の穂先を変形強化するヨハン。刹那にて虚空を絶つ刃・ウルカ(a38284)は手に渾身の力を込める。 「直接切りかかりに行くのは面倒だな。遠距離攻撃に徹しよう」 刀を思い切り振り、ソニックウェーブを撃った。衝撃波は敵の体に叩き込まれ、見事吹き飛ばした。思った通り、防御は固くなさそうだ。シロウも接近戦は挑まず、リングスラッシャーで遠くから攻撃する。 「防御は低い――でも当てにくいね」 ソフィアは気高き銀狼を仕向けて拘束を試みたが、かわされてしまった。何しろ細いからそれだけで回避されやすい。 「もしあの体を千切ったら、それで絶命するのかなぁん?」 刀身に闘気を圧縮させる氷に抱かれ妖艶に煌く銀水晶・シュリ(a43321)。勢い切って飛びあがり、刀を叩きつけようとする。 爆発。凄まじい轟音が響く。 もうもうと昇る土煙の中から現れたモンスターは――健在だった。体の後方部分を失っていたが、トカゲで言えば尻尾を切ったに過ぎない。致命傷にはならなかった。 「?」 モンスターはすかさずシュリに接近して、鎧の隙間に潜った。胸がギューッと締められる。 「わ、こら、やめるなぁ〜ん!」 「むむ、この状況を脱する技は――これしかないね」 世界を駆け巡る唄歌い・ルテア(a45277)が取った行動は歌だった。眠りの歌がモンスターを覆う。下半身(?)だけ見えている敵の体はぱたりと動きを止めた。 「よし、あいつを引っ張り出せ!」 蒼炎華・ルヴェンダ(a45027)の出した土塊の下僕が、仲間の体から縄を引きずり出した。萌芽・ヴィギ(a38589)が朦朧とするシュリに毒消しの風を広げる。 「危なかったね。なかなかに好色な奴みたいだから、また女性メンバーは狙われるかもしれない」 その女性メンバーであるところのチヨは、背筋に悪寒が走るのを感じた。彼女の着ているのは単なる旅人の服。いとも簡単に入られて、大事なところを押さえつけられてしまうだろうと戦慄した。 「ぶるぶる。そーなる前に、動きを止めるなぁん!」 紅蓮の咆哮が上がった。エクセルも怒りの形相だ。 「生憎私もみんなも、そういう趣味はないのよ……さっさと逝きなさい!」 素早く低姿勢で肉薄し、デストロイブレードを斜め上から振り下ろす。闘気の爆発に地面が盛大に砕けた。モンスターはさらに全体の4分の3ほどが吹き飛ばされる。 「どれくらい失くせば死ぬのかね……。おっと!」 エグザスに鞭のような横払いの一撃が繰り出される。慌てて盾でガードするも吹っ飛ばされ、背中から落ちた。華奢なくせに力は強い。体勢を立て直したエグザスは護りの天使を召喚しながら反撃に行った。刃は確実に命中し、その部分をほつれさせる。 「心なしか、動きが鈍っているような気がするなぁ〜ん」 グリュウが言った。バルバロスも頷く。弱っているのだ。 「……よおし、来るなぁ〜ん!」 グリュウが堂々たる構えで敵の前に立つ。舐めるなとばかりにモンスターは足元に突進する。と、グリュウはがっしと縄を掴み、デンジャラススイングに持っていった。パアンと気持ちいい音が鳴って、叩きつけられたモンスターは地面で悶える。さらに先刻のリングスラッシャーが追い討ちをかけた。すぐにモンスターは起き上がったが、今度はバルバロスのブーメランが切り裂く。 「最初の半分の長さというところでしょうか?」 ヨハンが敵の体を眺める。その通り、今やずいぶん短くなっている。さらに短くせんとヨハンはチェインシュートを猛烈なスピードで繰り出した。モンスターはそれをまともに食らった。やはり反応速度も鈍っている。 ペタリと地に伏したボロ縄。だが執念か、それともよほど女性に絡まりたいのか、津波のごとき速さで押し寄せて、ウルカの裾へと侵入してきた。 「性懲りもなく……! 乙女の服の下で何をするか!」 怒髪天を突く勢いのウルカ。だが自らの手で抜き抜くのは効率が悪い。そこで刀の柄でまだ入っていない部分を押さえつけた。あとは仲間に任せるという作戦。 「引っ張りますよ!」 「うん、ウルカちゃん、ちょっと我慢してね!」 シロウとソフィアがモンスターを引っ掴み、思い切り引き抜いた。縄が暴れるものだから擦れて痛んだが、堪えた甲斐あってとうとう全部を引っ張り出した。さっきやられたシュリが即座に鉄槌を下す。 「いいかげんにするなぁ〜ん!」 再度のデストロイブレードで爆撃。モンスターの体は半ば黒コゲになった。もはや瀕死なのは間違いない。 「女性を辱めた罪はそんなもんじゃ償えないよね」 ルテアがフールダンス♪を舞い、敵をくねくねと操らせる。休むことさえ許さずに強制的に動かす。鉄板に落とされた魚のように全身をバタバタさせる。 ――と、体力が尽きたのか、やがて縄モンスターは動かなくなった。 「また擬態ということもあるかもな……確かめろ」 ルヴェンダが土塊の下僕を向かわせ、敵の体を触らせる。ピクリともしない。 「油断するな。左右に引っ張れ」 下僕は両手で敵を掴み、言われた通りにする。 その瞬間、縄が急に動いた。擬態が通じないと悟った末の悪あがきだ。 だが下僕のほうが早い。ぶちっと真ん中から千切れた。 それで縄モンスターは死に絶え、本当のボロに成り果てた。――冒険者の勝利だ。 「終わったか……傷は痛むかい?」 「ああ、大丈夫だ」 ヴィギの癒しの水滴を受け、ウルカは安心したように天を仰いだ。
● 「……とりあえず、埋めましょう……」 ヨハンが言った。念のためにとモンスターの死骸を細切れに刻み、焼却処分。それから埋葬して、戦いは完全に終わった。終われば恨みはない。次はもっと良い生であればいいなとルヴェンダは黙祷した。 一気に疲れが出て、一同その場にしゃがみこんだ。 「色々な意味でいやらしい敵だったなぁ〜ん」 「まったく、ああいう嗜好のモンスターは困るな」 嘆息しきりなシュリとウルカ。締められた感触がまだ残っている。跡はしばらく残りそうだ。 「あれも、元は冒険者だったんですよね」 と、シロウ。何の因果でああなったのか疑問は尽きない。 「(よほど縄に思い入れがある冒険者だったのかしらね?)」 エクセルはそう思ったが、ヴィギが冗談めかして答えた。 「もしかしたら、緊縛プレイが趣味だったのかもね」 みんな笑った。案外そうかもしれない。
次第に曇り空が濃くなってきた。一雨あるかもしれない。そう考えた冒険者たちは休憩を終え、戦場に背中を向けた。次はどんな変な形のモンスターかと考えながら。

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参加者:13人
作成日:2006/03/18
得票数:戦闘1
コメディ1
えっち9
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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