<リプレイ>
●第零作戦『お断りのポーズ』 「ふふふ……ミッドナーさ、ワチキに良い策があるんぎゃ」 「はぁ」 赤い風・セナ(a07132)の言葉に、生返事を返す夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)。 「お断りするならば……このポーズでお断りするんぎゃー!」 体を惜しげも無く極限にまで捻った、人体の稼動範囲ギリギリのポーズ。 しかし、惜しむらくは。 「い、今なんかグキッて言ったぎゃー! 関節がグキッて〜!」 何かアクシデントが起こると、使用者がこうなる事であった。
●第一作戦『偽家族が反対』 その日も青年オゥモィは、酒樽亭の扉をくぐった。 いつもと違っていたことは……そう、扉の前に、変な銅像が立っていた事くらいだろうか。 それが漢・アナボリック(a00210)のボディペイントした姿である事など、知る術もないが。 「ミッドナーさん、おはようございます!」 「姉さんお嫁に行かないでーーー!」 いきなり、未完成少年・ニイナ(a16149)のそんな声が響く。 弟役として妨害に参加したニイナ、13歳。身長169.5cm。 対するミッドナー、20歳。身長140.4cm。 「お……大きい弟さんですね」 どうせ私は小さいですよ。放っておいてください。というか、私はそもそも……。 台詞をグッと飲み込む。 「ええ、ところで。どちらさまでしたっけ?」 よろめくオゥモィ。しかし、この程度で諦める男であれば世話は無い。 「ねっ……義姉さんが何処の誰だか分からない人と結婚だなんて……わ、わたしは嫌ですっ…ね、義兄さん!」 ぱんだ様と夢合わせ・ニコル(a33267)の言葉に復活する。 「義兄と……呼んでくれるのですね。ええ、ミッドナーさんは他の誰にも渡しません!」 宣言するオゥモィの後ろ。酒樽亭の扉が大きく開いたのはその次の瞬間であった。 そこから現れたのは、颯爽という言葉の似合いそうな姿をした快傑・デュランダール(a03764)。 「やあ! 私の名は快傑デュランダール! 世界を駆け巡るミッドナーの兄さ!」 キラリと歯を輝かせながら出てきた次の言葉は、颯爽とは程遠く。 「ウホッ! いい男……Myシスターに手を出すぐらいなら」 私 に 手 を 出 さ な い か
「……は?」 デュランダールの作戦は、すなわち。こんな変な奴が義理の兄になるのは耐えられまい、という作戦だ。 決して、そういう趣味があるわけではない。念のため。 「……兄さんは、あーゆー趣味の方でして。貴方を気に入られたようですけど」 とりあえず、真っ先に回復して演技を続行するミッドナー。 「あ……愛があれば、どんな障害も……!」 「いきなり親も通さずに結婚など何事ですか? そんな礼儀のなっていない人に娘は差し上げられません」 その台詞を最後まで言わせずに立ちはだかる永久に幸多き日を・クラリス(a43646)。 「お義母様、お言葉ですが。例え親といえど、愛し合う者を邪魔する権利がありましょうか!」 正論である。問題は、前提が間違っていることだが。 「ミッドナー、結婚を前提に付き合ってくれ」 「……はい?」 そこに現れた煉獄の修羅・タダシ(a06685)が、打ち合わせ通りにミッドナーと台詞を交わす。 「どうだ、俺が言っても同じ返事が返ってきたぞ。誰が言っても同じ返事が返ってきたろうな。これで結婚前提に付き合えるなら、俺もそうだって事になるぞ?」 上手いやり方である。だが、思い込みの強さは青年の記憶を微妙に変えていた。 「いいえ、確か僕の時にはもっと情感の籠もった「はい」でしたよ」 勝ち誇るように言うオゥモィ青年。どうやら、正論では通じないようだ。 こういう相手を言い負かすには、相手の土俵で叩き落さなければならないのだ。
●第二作戦『ミッドナーが同姓趣味だと発表』 「オゥモィ……実は……ミッドナーは、女性しか愛せないんだ」 鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)の台詞は、次の作戦の合図であった。 すなわち、嗜好の面で諦めさせる作戦である。 上手くいけば、簡単に諦めさせる事が出来るであろう。 問題はミッドナーは嗜好がノーマルな事であるが。 縁側で昼寝するドリアッド・イクス(a20482)がミッドナーをフォローしていた。 「拙者のミッドナー殿へ思いよりもオウモィ殿の想いが深くなければ拙者はミッドナー殿の思いを断ち切ることはできないでござる!」 最初に現れた叫ぶ風の向くまま気の向くままに・ファンレイ(a38279)のせいで、オゥモィは中々ミッドナーに近づけず、その間に他の女性陣がミッドナーに近寄る。 「それで、あの時のことじゃがな……」 楽しそうに話す光牙咆震閃烈の双刃・プラチナ(a41265)を撫でるミッドナー。 それを優しく……いや、楽しげに見守る夜蝶嬢王・ペテネーラ(a41119)。 勿論、ミッドナーにもある程度の作戦は話してある。 彼女自身の協力を引き出せた作戦は真実味を持たせていた。 「そ……そんな……いや、まさか」 頭の中で整理を始めるオゥモィ。どうやら、いきなりの衝撃に混乱しているようだ。 「と、いうわけで……ミッドナーさんは男性への興味が無いんです……諦めてもらえないでしょうか……」 尚も何事か呟くオゥモィに背を向けて、黒百合・シオン(a06641)が小声で呟く。 「ミッドナーさん……スミマセンが大人しく私のキスを受けなさい……」 「ヤです」 あっさりとミッドナーが拒否する。 「申し訳ありませんけど。そーゆーのは一番好きな人とするって決めてますから」 仮定の話であるが。ここでミッドナーとシオンのキスが成立していれば、思い込みの強いオゥモィは完全に落ちていたろう。 だが、それは仮定である。 現実としてキスは成立しなかった。 「ミッドナーさんは身長165cm以下の子しか眼中になしだそうで。それ以上の子はあ・そ・び」 皆殺・シー(a29392)が慌ててフォローを入れるが、オゥモィは聞いていない。 「そ、そうか。なーんだ、冗談だったんですね。あはは……」 自己完結するオゥモィ。こうなった以上、もはやこの作戦も使えまい。 「ところで……あなた方は何なんですか、さっきから……」 今更目に入るというのも相当なものだが、オゥモィが酒樽亭に居た冒険者達をグルっと見回した。 「君が心配なんだよ」 彩雲追月・ユーセシル(a38825)がオゥモィに近づいていく。 「いいかい、ミッドナーはとても足が臭いし、彼女が入った後のトイレはカブトムシの匂いがする」 真顔でスラスラと嘘を並べるユーセシル。 その嘘はどんどんエスカレートしていき、最高潮を迎える。 「呪いによって今の姿に変えられているんだ。呪いは真実の愛によってしか解けない。今解けていないということはあなたの愛は真実じゃない。そして呪いが解けた後も愛せるのか」 言いながら見せた絵は、一本毛のマッチョな男の姿絵である。 「いや、そんなわけないでしょう」 当然ではあるが。信じるはずもなかった。 「それもどうだろうなあ」 無造作紳士・ヒースクリフ(a05907)が苦笑するが、やっぱりオゥモィは聞いていなかった。
●第三作戦『争奪戦』 「そんじゃあ、お前が負けたらミッドナーは諦めろよ」 「誓約書を書いて貰おうかのぅ」 悪をぶっ飛ばす疾風怒濤・コータロー(a05774)とプラチナが、オゥモィに誓約書を書かせている間にも、着々と進行していた。 「そもそも、ミッドナーのどんな所が良いんだ?」 「全部です」 紅蓮昂翼天使の翼・シオン(a37824)の言葉に答えるオゥモィ。 そのオゥモィに、何やらごっつい鎧姿が近づく。 「ミッドナー殿……残念だが、オウモィ殿のことは諦めてもらおう。彼は我輩のベストフレンドになると、前世からの宿命で決まっておるのだ! 我輩とオウモィ殿は、離れられない運命なんだよ! 星海の主サンデル様のお告げによってな!」 「あの……サンデルさまって……」 それは逆方向から強い思い込みを演じる事で、2人を引き離そうとする中の人などいない・ディスティン(a12529)。 しかし、色んな方向で間違っている。 「はいはい、こっちに行こうぜ」 ミッドナーにアビは使うなと釘を刺された永久の紅き輪廻・リク(a32513)と艶・ハギリ(a35857)が、ディスティンを引っ張っていく。 「キミは僕にとっての輝く明けの明星。キミと共に居るためなら、僕は世界を敵に回しても構わない」 ノソリン状態の桃ノソリンの行かず後家・トロンボーン(a34491)に寄りかかったミッドナーに朗々と告げる邪炎を纏いし背約者・レヴィアタン(a38708)。 深淵の流れに願う・カラシャ(a41931)が、ここで3点の札をあげる。 「例えこの身が久遠の業火に焼かれようと、必ずキミのことを守ることを約束するよ」 カラシャが、あまりの台詞のクサさに悶絶する。 空賊団の犬・グラリア(a44018)がミッドナーに鎧聖降臨をかける……が、その姿に変化は見られない。 「ち、違いますわ……これは……スーツが卸したてのようにパリっと……」 オゥモィに「男性としての魅力2点」という紙を張っていた声無き癒しの調・ハーティア(a44260)が紙に書いた言葉を、ハギリが情緒たっぷりに読み上げる。 続けて叫ぶ白塵の・ゼラン(a44038)にも、次々と札が上がっていく。 「私も一度こんなこと言われてみたいですね……」 蒼の歌姫・メビウス(a35783)が札をあげながら呟く。 「ミッドナーさんラヴ!」 おでこを突っつくようにして、黒百合纏いし希望の翼を護る盾・ゼソラ(a27083)が拳で語った途端、ブックハビタントがミッドナーの体に潜り込む。 「……あぅ」 あっさり気絶してしまったミッドナーを介抱した後。ついにオゥモィの出番が訪れた。 「ミッドナーさん……一緒に式場に行きましょう!」 「ヤです」 あっさり拒絶。次々と0点の札もあがる。 「それじゃあ、これで解決なぁ〜んね」 トロンボーンが、争奪戦の終わりを告げる。 「そ……そんな。こんなの、出来試合だ!」 実の所。一部はその通りである。 だが、オゥモィが試合を受けて誓約書を書いた以上、これ以上の駄々は許されない。 それは彼も分かっている。 追い詰められたオゥモィは、ミッドナーに救いを求めた。 「ミッドナーさん……僕は、本当に貴女を……!」 恐らく、それは真実であろう。 経過がどうであれ。 青年は、確かにミッドナーに恋をしていた。 ならば、きっと。その始まりは、綺麗なものだったろう。 「オゥモィ、お前は……」 未だ、恋愛を語る地点にすら居ない。 その事実を征炎壁鋼・アガート(a01736)が告げようとした時、ミッドナーがそれを押しとどめる。 最終作戦。ミッドナーが直接「嫌い」と告げること。 それを、誰もが予測した。
●最終作戦「嫌いです」 「……オゥモィさん」 ミッドナーは、そっと彼の頭に手をのせた。 「ありがとうございます……でも、お付き合いはできません」 「どうして……!」 顔をあげたオゥモィの頬に、何か。熱い雫が落ちた。 それは、見上げた少女から流れ落ちた……ただ一滴の涙。 「……嫌いだからです」 言葉は作戦で立てたものと同じ。でも、それは。対象が違っていた。 「ごめんなさい。今日のこれは、全部私が皆さんに頼んだ事です。貴方を遠ざける為だけに」 それは、独白のように続いていく。 「貴方だって、分かってくれたかもしれないのに。私はそれを信じる事を放棄しました。自分の唯一出来る事さえ捨てて姑息な手段を取る。そんな最低な女が、私の正体です」 そんな自分が嫌いです。だから、諦めてください。私と居ても、幸せにはなれません。 ……まるで。憑き物が落ちたかのような目を、オゥモィ青年はしていた。 「僕が……追い詰めたんですね」 走り去ったミッドナーの背中を見つめるかのように、呟く。 「一度断られたんだろ? それが彼女にとってどの位苦痛な事だったから判ってるのか?」 笑顔の剣士・リュウ(a36407)の辛らつな言葉は、今のオゥモィに深く突き刺さっていく。 「そうですね。僕は……最低だ」 静まり返った酒樽亭に、カラン、という音が響く。 その方向に視線を向けると、椅子に座ってグラスを傾ける甲斐の・チアキ(a07495)が居た。 「坊主、一番最初に何故ミッドナーに断られたかわかるか?」 それは、問い。 最初のオゥモィ青年であれば、断られた事は否定したであろう。 だが、今は。 「ええ、僕は……自分の想いだけで突っ走っていました」 再び、チアキの持つグラスの氷が音を立てる。中の琥珀色の液体が揺れる様を、誰もが静かに見守った。 「……自分を磨いて出直してくるんじゃな」 「ええ、そうします。ところで皆さん、この最低な男から……1つだけ、お願いがあります」 オゥモィが発したその言葉を聞くと、冒険者達は駆け出していくのを見守ると、チアキはグラスの中身を一気に飲み干した。 「プハーッ! 飲んだぜ!」 チアキ・クズノハ15歳。飲んでいたのはコーヒー山羊乳であった。
●特別作戦「どうか、ミッドナーさんを追いかけてあげてください」 走って、転んだ。 そのまま地面に寝転がって、空を見上げた。 スーツはきっと、土だらけになってしまっているだろう。 でも、きっと。こんな汚れきった自分には似合いだ。 「……最低ですね、私」 そう言って、目を閉じる。 もう1度目を開けた時。幾つもの顔が、自分を覗き込んでいた。 「……お疲れさん」 そういってコータローが、ミッドナーの頭を撫でる。 「こんな事で頼ってくるのは意外だったけど……楽しかったよ」 そう言って、ユーセシルが笑う、皆が笑う。 「恨んで……ないんですか?」 呆けたような、そんな顔で言うミッドナー。 「私……自分の為だけに皆さんを利用したのに。好きでもない相手に、好きだって言わせるような事まで……」 辺りを見回すと、リュウと目が合う。 「大丈夫、ミッドナーさん自分では判ってないけど素敵だから」 それに答えるように、イクスが笑う。 「いつか、貴女が好きになる人が見つかると思いますよ。そして、その人も貴女の事を好きになってくれると思います。ミッドナーさんて魅力的ですし」 「え……その……」 ほんの一瞬だけ、顔を赤らめるミッドナー。 「そんな事言われても……その、困りますけど。でもきっと私よりも、皆さんのほうがずっと素敵で魅力的です。だから、こんな最低な私ですけれど……皆さんを、信じていてもいいですか?」 それは、彼女なりの誓い。そして契約。 青年オゥモィの事を経て1つ成長した彼女、ミッドナーの新たな一歩。 言葉にする者は居ないが。その笑顔が、返答の内容を雄弁に語っていた。 「よっし、んじゃ成人組は酒盛りだ! 酒樽亭に戻るぞ!」 タダシの言葉に、歓声が上がる。
夜の闇が明けぬ事はないように。 いつか、夜明けがくるように。 だからミッドナーは、これからも。 自分の出会っていく全てを。 夜明けを運んでくる太陽のような人達を、信じていく。

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参加者:32人
作成日:2006/03/26
得票数:恋愛5
ほのぼの45
コメディ4
えっち2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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