ミッドナーと恋の大作戦



<オープニング>


「僕と……結婚を前提にしたお付き合いをしてください!」
「……はい?」
「おお、快く承諾を……! やったー!」
 走り去っていく青年を、わけも分からず見送る夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)。
 ……これが、今回の騒動の発端だったのである。

 そして、数日後。
「皆さんの力をお借りしたいんです」
 疲れた表情で言うミッドナー。
 青年の名前はオウモィ・コミー。騒動の発端となった日以来、何処にでもついて回ってくるのだという。
「放っておけば諦めるかと思ったんですけれど……」
 そうはならなかったわけである。
「断っても引いてくれませんし……ね。出来る限り穏便な手段でスッパリ諦めさせたいんです」
 そう言うとミッドナーは、大きく溜息をつくのだった。

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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

●第零作戦『お断りのポーズ』
「ふふふ……ミッドナーさ、ワチキに良い策があるんぎゃ」
「はぁ」
 赤い風・セナ(a07132)の言葉に、生返事を返す夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)。
「お断りするならば……このポーズでお断りするんぎゃー!」
 体を惜しげも無く極限にまで捻った、人体の稼動範囲ギリギリのポーズ。
 しかし、惜しむらくは。
「い、今なんかグキッて言ったぎゃー! 関節がグキッて〜!」
 何かアクシデントが起こると、使用者がこうなる事であった。

●第一作戦『偽家族が反対』
 その日も青年オゥモィは、酒樽亭の扉をくぐった。
 いつもと違っていたことは……そう、扉の前に、変な銅像が立っていた事くらいだろうか。
 それが漢・アナボリック(a00210)のボディペイントした姿である事など、知る術もないが。
「ミッドナーさん、おはようございます!」
「姉さんお嫁に行かないでーーー!」
 いきなり、未完成少年・ニイナ(a16149)のそんな声が響く。
 弟役として妨害に参加したニイナ、13歳。身長169.5cm。
 対するミッドナー、20歳。身長140.4cm。
「お……大きい弟さんですね」
 どうせ私は小さいですよ。放っておいてください。というか、私はそもそも……。
 台詞をグッと飲み込む。
「ええ、ところで。どちらさまでしたっけ?」
 よろめくオゥモィ。しかし、この程度で諦める男であれば世話は無い。
「ねっ……義姉さんが何処の誰だか分からない人と結婚だなんて……わ、わたしは嫌ですっ…ね、義兄さん!」
 ぱんだ様と夢合わせ・ニコル(a33267)の言葉に復活する。
「義兄と……呼んでくれるのですね。ええ、ミッドナーさんは他の誰にも渡しません!」
 宣言するオゥモィの後ろ。酒樽亭の扉が大きく開いたのはその次の瞬間であった。
 そこから現れたのは、颯爽という言葉の似合いそうな姿をした快傑・デュランダール(a03764)。
「やあ! 私の名は快傑デュランダール! 世界を駆け巡るミッドナーの兄さ!」
 キラリと歯を輝かせながら出てきた次の言葉は、颯爽とは程遠く。
「ウホッ! いい男……Myシスターに手を出すぐらいなら」
 
 私 に 手 を 出 さ な い か

「……は?」
 デュランダールの作戦は、すなわち。こんな変な奴が義理の兄になるのは耐えられまい、という作戦だ。
 決して、そういう趣味があるわけではない。念のため。
「……兄さんは、あーゆー趣味の方でして。貴方を気に入られたようですけど」
 とりあえず、真っ先に回復して演技を続行するミッドナー。
「あ……愛があれば、どんな障害も……!」
「いきなり親も通さずに結婚など何事ですか? そんな礼儀のなっていない人に娘は差し上げられません」
 その台詞を最後まで言わせずに立ちはだかる永久に幸多き日を・クラリス(a43646)。
「お義母様、お言葉ですが。例え親といえど、愛し合う者を邪魔する権利がありましょうか!」
 正論である。問題は、前提が間違っていることだが。
「ミッドナー、結婚を前提に付き合ってくれ」
「……はい?」
 そこに現れた煉獄の修羅・タダシ(a06685)が、打ち合わせ通りにミッドナーと台詞を交わす。
「どうだ、俺が言っても同じ返事が返ってきたぞ。誰が言っても同じ返事が返ってきたろうな。これで結婚前提に付き合えるなら、俺もそうだって事になるぞ?」
 上手いやり方である。だが、思い込みの強さは青年の記憶を微妙に変えていた。
「いいえ、確か僕の時にはもっと情感の籠もった「はい」でしたよ」
 勝ち誇るように言うオゥモィ青年。どうやら、正論では通じないようだ。
 こういう相手を言い負かすには、相手の土俵で叩き落さなければならないのだ。

●第二作戦『ミッドナーが同姓趣味だと発表』
 「オゥモィ……実は……ミッドナーは、女性しか愛せないんだ」
 鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)の台詞は、次の作戦の合図であった。
 すなわち、嗜好の面で諦めさせる作戦である。
 上手くいけば、簡単に諦めさせる事が出来るであろう。
 問題はミッドナーは嗜好がノーマルな事であるが。
 縁側で昼寝するドリアッド・イクス(a20482)がミッドナーをフォローしていた。
「拙者のミッドナー殿へ思いよりもオウモィ殿の想いが深くなければ拙者はミッドナー殿の思いを断ち切ることはできないでござる!」
 最初に現れた叫ぶ風の向くまま気の向くままに・ファンレイ(a38279)のせいで、オゥモィは中々ミッドナーに近づけず、その間に他の女性陣がミッドナーに近寄る。
「それで、あの時のことじゃがな……」
 楽しそうに話す光牙咆震閃烈の双刃・プラチナ(a41265)を撫でるミッドナー。
 それを優しく……いや、楽しげに見守る夜蝶嬢王・ペテネーラ(a41119)。
 勿論、ミッドナーにもある程度の作戦は話してある。
 彼女自身の協力を引き出せた作戦は真実味を持たせていた。
「そ……そんな……いや、まさか」
 頭の中で整理を始めるオゥモィ。どうやら、いきなりの衝撃に混乱しているようだ。
「と、いうわけで……ミッドナーさんは男性への興味が無いんです……諦めてもらえないでしょうか……」
 尚も何事か呟くオゥモィに背を向けて、黒百合・シオン(a06641)が小声で呟く。
「ミッドナーさん……スミマセンが大人しく私のキスを受けなさい……」
「ヤです」
 あっさりとミッドナーが拒否する。
「申し訳ありませんけど。そーゆーのは一番好きな人とするって決めてますから」
 仮定の話であるが。ここでミッドナーとシオンのキスが成立していれば、思い込みの強いオゥモィは完全に落ちていたろう。
 だが、それは仮定である。
 現実としてキスは成立しなかった。
「ミッドナーさんは身長165cm以下の子しか眼中になしだそうで。それ以上の子はあ・そ・び」
 皆殺・シー(a29392)が慌ててフォローを入れるが、オゥモィは聞いていない。
「そ、そうか。なーんだ、冗談だったんですね。あはは……」
 自己完結するオゥモィ。こうなった以上、もはやこの作戦も使えまい。
「ところで……あなた方は何なんですか、さっきから……」
 今更目に入るというのも相当なものだが、オゥモィが酒樽亭に居た冒険者達をグルっと見回した。
「君が心配なんだよ」
 彩雲追月・ユーセシル(a38825)がオゥモィに近づいていく。
「いいかい、ミッドナーはとても足が臭いし、彼女が入った後のトイレはカブトムシの匂いがする」
 真顔でスラスラと嘘を並べるユーセシル。
 その嘘はどんどんエスカレートしていき、最高潮を迎える。
「呪いによって今の姿に変えられているんだ。呪いは真実の愛によってしか解けない。今解けていないということはあなたの愛は真実じゃない。そして呪いが解けた後も愛せるのか」
 言いながら見せた絵は、一本毛のマッチョな男の姿絵である。
「いや、そんなわけないでしょう」
 当然ではあるが。信じるはずもなかった。
「それもどうだろうなあ」
 無造作紳士・ヒースクリフ(a05907)が苦笑するが、やっぱりオゥモィは聞いていなかった。

●第三作戦『争奪戦』
「そんじゃあ、お前が負けたらミッドナーは諦めろよ」
「誓約書を書いて貰おうかのぅ」
 悪をぶっ飛ばす疾風怒濤・コータロー(a05774)とプラチナが、オゥモィに誓約書を書かせている間にも、着々と進行していた。
「そもそも、ミッドナーのどんな所が良いんだ?」
「全部です」
 紅蓮昂翼天使の翼・シオン(a37824)の言葉に答えるオゥモィ。
 そのオゥモィに、何やらごっつい鎧姿が近づく。
「ミッドナー殿……残念だが、オウモィ殿のことは諦めてもらおう。彼は我輩のベストフレンドになると、前世からの宿命で決まっておるのだ! 我輩とオウモィ殿は、離れられない運命なんだよ! 星海の主サンデル様のお告げによってな!」
「あの……サンデルさまって……」
 それは逆方向から強い思い込みを演じる事で、2人を引き離そうとする中の人などいない・ディスティン(a12529)。
 しかし、色んな方向で間違っている。
「はいはい、こっちに行こうぜ」
 ミッドナーにアビは使うなと釘を刺された永久の紅き輪廻・リク(a32513)と艶・ハギリ(a35857)が、ディスティンを引っ張っていく。
「キミは僕にとっての輝く明けの明星。キミと共に居るためなら、僕は世界を敵に回しても構わない」
 ノソリン状態の桃ノソリンの行かず後家・トロンボーン(a34491)に寄りかかったミッドナーに朗々と告げる邪炎を纏いし背約者・レヴィアタン(a38708)。
 深淵の流れに願う・カラシャ(a41931)が、ここで3点の札をあげる。
「例えこの身が久遠の業火に焼かれようと、必ずキミのことを守ることを約束するよ」
 カラシャが、あまりの台詞のクサさに悶絶する。
 空賊団の犬・グラリア(a44018)がミッドナーに鎧聖降臨をかける……が、その姿に変化は見られない。
「ち、違いますわ……これは……スーツが卸したてのようにパリっと……」
 オゥモィに「男性としての魅力2点」という紙を張っていた声無き癒しの調・ハーティア(a44260)が紙に書いた言葉を、ハギリが情緒たっぷりに読み上げる。
 続けて叫ぶ白塵の・ゼラン(a44038)にも、次々と札が上がっていく。
「私も一度こんなこと言われてみたいですね……」
 蒼の歌姫・メビウス(a35783)が札をあげながら呟く。
「ミッドナーさんラヴ!」
 おでこを突っつくようにして、黒百合纏いし希望の翼を護る盾・ゼソラ(a27083)が拳で語った途端、ブックハビタントがミッドナーの体に潜り込む。
「……あぅ」
 あっさり気絶してしまったミッドナーを介抱した後。ついにオゥモィの出番が訪れた。
「ミッドナーさん……一緒に式場に行きましょう!」
「ヤです」
 あっさり拒絶。次々と0点の札もあがる。
「それじゃあ、これで解決なぁ〜んね」
 トロンボーンが、争奪戦の終わりを告げる。
「そ……そんな。こんなの、出来試合だ!」
 実の所。一部はその通りである。
 だが、オゥモィが試合を受けて誓約書を書いた以上、これ以上の駄々は許されない。
 それは彼も分かっている。
 追い詰められたオゥモィは、ミッドナーに救いを求めた。
「ミッドナーさん……僕は、本当に貴女を……!」
 恐らく、それは真実であろう。
 経過がどうであれ。
 青年は、確かにミッドナーに恋をしていた。
 ならば、きっと。その始まりは、綺麗なものだったろう。
「オゥモィ、お前は……」
 未だ、恋愛を語る地点にすら居ない。
 その事実を征炎壁鋼・アガート(a01736)が告げようとした時、ミッドナーがそれを押しとどめる。
 最終作戦。ミッドナーが直接「嫌い」と告げること。
 それを、誰もが予測した。

●最終作戦「嫌いです」
「……オゥモィさん」
 ミッドナーは、そっと彼の頭に手をのせた。
「ありがとうございます……でも、お付き合いはできません」
「どうして……!」
 顔をあげたオゥモィの頬に、何か。熱い雫が落ちた。
 それは、見上げた少女から流れ落ちた……ただ一滴の涙。
「……嫌いだからです」
 言葉は作戦で立てたものと同じ。でも、それは。対象が違っていた。
「ごめんなさい。今日のこれは、全部私が皆さんに頼んだ事です。貴方を遠ざける為だけに」
 それは、独白のように続いていく。
「貴方だって、分かってくれたかもしれないのに。私はそれを信じる事を放棄しました。自分の唯一出来る事さえ捨てて姑息な手段を取る。そんな最低な女が、私の正体です」
 そんな自分が嫌いです。だから、諦めてください。私と居ても、幸せにはなれません。
 
 ……まるで。憑き物が落ちたかのような目を、オゥモィ青年はしていた。
「僕が……追い詰めたんですね」
 走り去ったミッドナーの背中を見つめるかのように、呟く。
「一度断られたんだろ? それが彼女にとってどの位苦痛な事だったから判ってるのか?」
 笑顔の剣士・リュウ(a36407)の辛らつな言葉は、今のオゥモィに深く突き刺さっていく。
「そうですね。僕は……最低だ」
 静まり返った酒樽亭に、カラン、という音が響く。
 その方向に視線を向けると、椅子に座ってグラスを傾ける甲斐の・チアキ(a07495)が居た。
「坊主、一番最初に何故ミッドナーに断られたかわかるか?」
 それは、問い。
 最初のオゥモィ青年であれば、断られた事は否定したであろう。
 だが、今は。
「ええ、僕は……自分の想いだけで突っ走っていました」
 再び、チアキの持つグラスの氷が音を立てる。中の琥珀色の液体が揺れる様を、誰もが静かに見守った。
「……自分を磨いて出直してくるんじゃな」
「ええ、そうします。ところで皆さん、この最低な男から……1つだけ、お願いがあります」
 オゥモィが発したその言葉を聞くと、冒険者達は駆け出していくのを見守ると、チアキはグラスの中身を一気に飲み干した。
「プハーッ! 飲んだぜ!」
 チアキ・クズノハ15歳。飲んでいたのはコーヒー山羊乳であった。

●特別作戦「どうか、ミッドナーさんを追いかけてあげてください」
 走って、転んだ。
 そのまま地面に寝転がって、空を見上げた。
 スーツはきっと、土だらけになってしまっているだろう。
 でも、きっと。こんな汚れきった自分には似合いだ。
「……最低ですね、私」
 そう言って、目を閉じる。
 もう1度目を開けた時。幾つもの顔が、自分を覗き込んでいた。
「……お疲れさん」
 そういってコータローが、ミッドナーの頭を撫でる。
「こんな事で頼ってくるのは意外だったけど……楽しかったよ」
 そう言って、ユーセシルが笑う、皆が笑う。
「恨んで……ないんですか?」
 呆けたような、そんな顔で言うミッドナー。
「私……自分の為だけに皆さんを利用したのに。好きでもない相手に、好きだって言わせるような事まで……」
 辺りを見回すと、リュウと目が合う。
「大丈夫、ミッドナーさん自分では判ってないけど素敵だから」
 それに答えるように、イクスが笑う。
「いつか、貴女が好きになる人が見つかると思いますよ。そして、その人も貴女の事を好きになってくれると思います。ミッドナーさんて魅力的ですし」
「え……その……」
 ほんの一瞬だけ、顔を赤らめるミッドナー。
「そんな事言われても……その、困りますけど。でもきっと私よりも、皆さんのほうがずっと素敵で魅力的です。だから、こんな最低な私ですけれど……皆さんを、信じていてもいいですか?」
 それは、彼女なりの誓い。そして契約。
 青年オゥモィの事を経て1つ成長した彼女、ミッドナーの新たな一歩。
 言葉にする者は居ないが。その笑顔が、返答の内容を雄弁に語っていた。
「よっし、んじゃ成人組は酒盛りだ! 酒樽亭に戻るぞ!」
 タダシの言葉に、歓声が上がる。

 夜の闇が明けぬ事はないように。
 いつか、夜明けがくるように。
 だからミッドナーは、これからも。
 自分の出会っていく全てを。
 夜明けを運んでくる太陽のような人達を、信じていく。


マスター:じぇい 紹介ページ
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