【謎の洞窟】地下2階



<オープニング>


「前回は何もなくて残念でしたね。今回は発見があればよいのですが」
 ドリアッドの霊査士・シィル(a90170)が励ますように言って、前回階段に近い場所より採取された岩の破片から霊査した結果を伝える。
「さて、謎の洞窟の地下二階ですが、どうやら大量に蠢くものがいるようです。モンスターではなく普通の小さな動物のようですが……。ジメジメ暗いところだから繁殖しやすいんでしょう。種類は色々ですね」
 普通の動物ならば何であろうと冒険者の相手ではない。前回のモンスターよりは幾分か楽だろう。気持ち悪いかもしれないが。
「ぱぱっと倒して、探索頑張ってくださいね。何らかの発見を祈ってます」

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参加者
蒼碧の焔麗刃・セント(a00260)
邪龍導師・ムーンリーズ(a02581)
親愛なる隣りの魔王・マオーガー(a17833)
自由の翼・ヨウ(a30238)
根無し草・サムソン(a32206)
紅蓮の兎・ソロネ(a32518)
神秘の青き彗星・スラー(a37663)
闇鍛冶屋・ロッカク(a38620)
無限夢想・メリッサ(a41912)
葬刃・イスズ(a42819)
ヒトの盗賊・ソラ(a43235)
豪華絢爛疾風怒濤・レイム(a43749)


<リプレイ>


 暖かな春の気候もこの場所では無関係だ。謎の洞窟に入り込んだ途端に一行は寒気を感じる。体の内側に侵略するような肌寒さだ。
「この雰囲気には到底慣れそうにないな」
 魔弾の射手・スラー(a37663)が目を細める。カンテラの光も頼もしいとは言えず、ちらちら断続的に照らされる暗い壁面は、時に怪しい文様のように見えたりして、むしろ一層の不気味さを醸し出している。
「まったく、たまらないわねこの湿気は。傷に堪えるわ」
「空気の流れなどほとんどないでしょうからね……」
 怪我の癒えない蒼碧の焔麗刃・セント(a00260)と月喰・ムーンリーズ(a02581)も明るいとはいえない表情だ。外に比べ、空気も悪い。あまり長い間いると気が滅入ってしまいそうだ。
「まあ、そんなに強敵はいないって話だし、のんびりと探索しようじゃないか」
「せやせや。お宝ザクザクとは言わずとも、きっとオモロイもんを見つけられる!」
 自由の翼・ヨウ(a30238)と根無し草・サムソン(a32206)が気合を振りまくように声を出した。まずは明るい気持ちを保つのも冒険者の基本だ。
 前回くまなく調査して何もなかった地下1階。ここは脇目も振らずに素通りして、その先の階段を下っていった。
 階段はすぐに終わり、地下1階と同じような広い空間が眼前に出現した。中央には古びた木製の多人数用テーブル、椅子があり、生活の痕跡が窺えた。目を凝らせば、いくつかの小部屋らしい穴も散見される。
 ――。
 小さいものが動く音が聞こえたような気がした。だが姿は見えない。闇鍛冶屋・ロッカク(a38620)は早くも太刀を抜いている。
「むう、何がいるのでござるか……?」
「……気になりますけど、行く手を阻むのがいたら、各自適当に切り払うということで。さあ始めましょうか」
 ファントムドール・メリッサ(a41912)が言った。冒険者たちは予定通りに3つのチームに分かれ、行動開始した。


 Aチームは左側を担当する。親愛なる隣りの魔王・マオーガー(a17833)が光石ランタンを持って先頭に立ち、常に左に壁を確認しつつ、周囲の注視を怠らずに進んでいく。
 ほどなくして小部屋のひとつに行き当たる。扉はない。何の障害もなく入り込めた。
 だがすぐに足止めされた。
 部屋の中に――細長く、上品とはいえない光沢があり、グネグネと曲がっている体の持ち主があった。大量に。
「うわ、ヘビかこれは」
 マオーガーがすぐさまニードルスピアを飛ばした。その一撃で大半が消し飛んだ。続いてセントは紅蓮の咆哮で後方から援護し、葬刃・イスズ(a42819)が大地も砕く斬撃で麻痺したヘビを跡形もなく叩き潰す。
「おお、まだいたでござる」
 右の壁に張り付いているヘビに、ロッカクが粘り蜘蛛糸を投げかけた。またマオーガーがニードルスピアで一掃すると、地面にたくさんのヘビの破片が散らばった。あまりいい眺めではない。早く探索を終えて出ようと思った。改めて部屋の内装に目を移す。
「……誰かの部屋だったみたいだな。一人用の」
 イスズが言った。棚があり、机があり、椅子があり、寝台があった。
 机と椅子、寝台には異常はなかったが、棚の中には額らしき四角いものがあった。マオーガーが光石ランタンをかざしながらそれを手に取る。
「……これは、絵じゃあないか?」
 額には紙が嵌められており、優しげな顔で微笑む女性が描かれていた。そしてその耳はとがっている。

 B班は正面に進んだ。地下3階へと続く下り階段があったがこれは放っておいて、その隣の洞穴へと入った。
「さて、何が出るやら……」
 ヨウはウェポン・オーバーロードを発動させて剣を強化している。出来るならこれを振るう必要のないようにと考えた。
 一段と湿気の強くなる洞穴内部をカンテラで照らすと――キチキチと耳に障る鳴き声と羽音が聞こえた。
「コウモリや!」
 サムソンが苦虫噛み潰したように口元を歪める。
「うーん、ぬめぬめした奴じゃないだけマシか。さっさとカタをつけよう」
「せやね。嫌な奴に変わりはあらへんけど」
 ヨウが流水撃でコウモリの大群を薙ぎ払い、一気に数を減らした。サムソンは短槍を繰り出すが上手く当たらない。次々と体当たりしてくるコウモリ。痛くはないが嫌悪感が増幅する。
「ったく、素早さだけは一級やね。腹立つわ〜」
「コウモリ、みんな大嫌いみたいですね。僕もですが!」
 涙色の結晶・ソラ(a43235)は飛燕連撃で立て続けに攻撃した。さすがのコウモリもこの素早い一撃をかわしきることはかなわず、次々と撃ち落とされた。
「あ、まだ生きてるのがいますね」
 メリッサが居合い斬りで死に損ないの1匹を両断した。一瞬、断末魔のようなか細い悲鳴が聞こえ、短い戦闘は終了した。
 ヨウたちは数多のコウモリの死骸を踏み散らかしながら洞穴の探索を行った。
 奥に木箱が置かれていた。メリッサが罠かもと思いつつ、慎重に蓋を開く。
 収められていたのは本だった。ソラがめくってみる。日付が目に付いた。
「本というよりは……日誌ですね」
 ここの住民が書き記したものに違いなかった。この洞窟の秘密の鍵を握るはずと確信した。

 右手には一見、何もなかった。C班はしかし何か怪しい部分があるはずだと断定し、決してそれを見逃さないように、壁の不自然なズレや凹凸、色の違いなどを見極めようとした。
「……む、これは?」
 ムーンリーズが縦に伸びる割れ目を見つけた。さらに引き戸のようなへこんだ取っ手もある。引いてみると――スムーズに壁が移動した。やけに軽いのは当然で、この部分だけが岩に見せかけた別の軽い素材で出来ていた。
 心躍らせるC班。こんなややこしい場所に、何もないわけはない。
 一行が最初に発見したのは、気味の悪い体色をした、足の多いモノだった。数は数十はあるだろうか。
「蜘蛛ね」
 紅蓮の兎・ソロネ(a32518)がやれやれといった感じに息をつく。地面に這い蹲るそれは、とにかく生理的に嫌悪感を及ぼした。
 ポタ。
「うわあ!」
 絶叫する豪華絢爛疾風怒濤・レイム(a43749)。何と蜘蛛は天井からもいくらか落ちてきた。慌てて振り払うが、わずかにかゆみが発生する。
「いけない、毒があるかもしれません」
 ムーンリーズは無理せず下がって、高らかな凱歌を歌う。その声に励まされ、一気にやる気が上がる。
「……こういうの、苦手」
 スラーは叫びたい気持ちを抑えながら、最大出力でライトニングアローをぶっ放した。敵の中心にどかーんと白熱させる。
「みんなまとめてやってあげるわ。任せて」
 ソロネが歯を食いしばり、己が魔剣に闘気を込める。振るわれた刃からレイジングサイクロンが巻き起こり、多くの蜘蛛をその餌食にした。
「お見事……って、まだいるね。ああもう、殲滅殲滅!」
 レイムがニードルスピアを放出した。ズバズバズバっと敵が刻まれていく様は爽快ではあったが、不快でもあった。醜悪でグロテスクな体が飛び散る光景はグドンやモンスター以上の気持ち悪さである。
 そう時間はかからず、彼らは蜘蛛を全滅させた。力を使い果たしてへたりこんでいるソロネをひとまず外で休ませ、汚らしい残骸は黒炎覚醒したムーンリーズが1匹1匹焼却していった。スラーとレイムはそのうちに、部屋をくまなく調べた。また何かが出て来ないことを祈りつつ。
 そして、隅に安置されていた宝箱を発見した。
「わあ、お宝があるかなあ?」
 レイムがさっそく開ける。
 その瞬間、輝いた。金貨の山だった。うわあ、とたまらず歓声を上げるレイム。
「? まだ何かある」
 スラーが金貨の底からそれを引きずり出す。それは丸められた羊皮紙だった。


 地下2階での探索を終えた冒険者たちは、地上へと戻った。何日ぶりかの気さえする眩しい太陽を胸いっぱいに浴びてから、収穫物の検討を始めた。
「どうやらここの住民は、エルフだったようだね」
 自身もエルフであるマオーガーが肖像画を見せながら言った。耳の尖った優しげな少女の絵。絵の右下には『愛する娘へ』というメッセージと共に署名がされている。
「エルフは他の種族と違って周りが暗くても状況把握が可能ですから、たいした照明のない洞窟暮らしでも不便はなかったでしょうね」
「なるほどねー。ボクも住処に困ったら洞窟で暮らそうかな」
 ムーンリーズとレイムは自分の尖った耳を触ってみる。洞窟の住民が同じエルフと知って、親近感が沸いてきた。それがなぜ消えたのか、同情も感じた。
「それより、その日誌には何が書いてあるの?」
 セントが聞いた。一同、B班の見つけた日誌に釘付けになる。
「読んでみるぞ」
 ヨウがページを開く。最初から中盤までは特筆することもない日常が書き留められているだけだったが、最後のページに答えがあった。

 ○月×日
 私たちが長年ひっそりと住んで来たこの洞窟に侵略者が来た。
 どうにも例えられない、恐ろしい姿形のモンスターだ。
 妻、子供たち、親兄弟、皆その手にかかってしまった。
 奴は最下層の地下4階に居座ったようだ。
 私は一命を取り留めたが、構わない。
 これから玉砕しに行く。それが一家の主の使命だ。

 じっくりと書く気力もなかったのだろう、要点だけがまとめられてあった。ここの住民たちはモンスターの襲撃に遭って全滅したのだ。
 もっともそのモンスターが今もいるかはわからない。これはだいぶ昔の話のようだ。
「玉砕とは……なぜ逃げなかったのか……」
 イスズは不思議そうだった。ソロネがたぶん、と前置きしてから言った。
「家族を殺された以上、自分だけ生きてても仕方ないと思ったんじゃないかしら。無駄でも立ち向かって、せめて傷のひとつでも負わせて死のうと……」
「なんて悲しいんでしょう……」
 メリッサは涙が出そうになった。あまりに尊い生き様だった。
「で、その羊皮紙は何なのでござるか?」
 ロッカクはスラーの持っている羊皮紙に目をやる。
「その敵を倒して欲しい、と記されてあった。金貨と一緒にしまってあったのは、これを見つけた人よ金貨はあげるからその代わりに――ということだろう」
「モンスターが今もいるというのが前提ですが、引き受けないわけにはいきませんね」
「ここで退いたら冒険者の名折れや」
 ソラとサムソンが張り切って拳を固める。
 だが今は準備と休息が必要だ。すぐに無念を晴らしに来ると誓い、冒険者たちはその場を立ち去った。


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