全ての人に愛の手を 〜古強者の咆哮 雪降ろし職人編〜



<オープニング>


 それは、とある日常の一コマ。
「やはり冬は雪だな」
 湯気の立つカップ片手に剣振夢現・レイク(a00873)が呟いたのを耳にし、蒼穹に閃く刃・ジギィ(a34507)は外に目をやった。
「もう、春なのではありませんか?」
 うららかに降る陽射し、今にも開きそうに膨らんだ花の芽、風が巻き上げる埃さえも、春の訪れを思わせて。
「…………」
 ジギィと同じく外の風景を見やったレイクは何も言わず、ただカップに口をつけた――。


 そして数日後――。
「うむ、やはり春は雪だな」
「にょあっ! いつのまに〜?」
 突如として広がっていた雪景色に、九里香・アルエット(a90070)が目を見開く。
 一体何がどう省略されていたというのか、一行は唐突に雪深い山間の町に辿り着いていたのだった。
 平地ではもう春の色濃いというのに、この町はまだ積雪も多く、見上げれば灰色の雪雲が分厚く空を覆っている。
「さむ……」
 寒さは苦手な宵闇の黒豹・ケイ(a05527)が、ぶるっと身を震わせて腕で身体を抱くようにした。と、その目の前にどさどさと雪が降ってくる。
 すんでのところで飛び退いて難を逃れたケイに、レイクがああと思い出したように言う。
「屋根の付近に近づくと危険だ。積雪の多い時季には、上で活躍する人がいるから……」
「うえ〜?」
 あーんと口を開けて見上げるアルエットに、レイクは説明した。
 この町では、綺麗な町並みの上で活躍する職人がいるのだと。
 普段は鳶職をやっている彼らは、冬となれば屋根と家を守るための雪降ろし職人へと変身を遂げる。
 命綱もつけずに家々の屋根から屋根へと飛び歩き、一般の人では登るのすら困難な屋根や塔に積もった雪を降ろし、その重みで建物が潰れるのを防ぐのだ。その俊敏な動きは芸術ともいえる域に達しており、この町の名物ともなっている……と。
「妙に詳しいな、おい」
 すらすらと説明したレイクに、捨て身の博徒・リヴァル(a04494)が揶揄の口調でにやりと笑った。果たしてこの町に辿り着いたのは偶然なのか否か。
 だが、動物愛好魔術師・ミサリヤ(a00253)は、そんな疑念は全く持たず、感心したように屋根の上に目を凝らす。
「凄いな〜、今も上でお仕事してるのかな?」
 と、そこに。
 ドサッ。
「うわわっ!」
 落ちてきたものの下敷きになって、黒紫蝶・カナト(a00398)が叫んだ。
「大丈夫ですかぁ〜?」
 キャットレッドブルー・エリス(a00091)が心配そうに声をかけたのは、カナト……ではなく、落下物のほう。
「う……うぅ……」
 屋根から落ちてきたリザードマンの若者は、呻きながら身を起こした。幸い、カナトと積もった雪がクッションになったため、大事には至らなかったようだ。
「職人も屋根から落ちたりするン?」
 喰い盛りの牙狩人・ジャム(a00470)に尋ねられた若者は、心外だとばかりに首を振った。
「いつもだったら、こんな失態を晒したりしないさ」
 忌々しげに舌打ちすると、若者は言い訳のように、今年の冬は例年と違い、屋根での作業が大変危険なのだと述べ立てた。
 その原因は、町のシンボルである高い塔に住み着いてしまった巨大な鷲。それが屋根に上る人を襲うために作業がままならないのだと。塔の天辺にある巣を撤去してしまえば鷲もいなくなるのだろうけれど、目もくらむ高さの塔にあるのは梯子1本だけ。普通の人では鷲の攻撃に耐えつつ塔に上り巣を撤去するのは不可能だ。
 その為、雪降ろし職人たちは戦々恐々と鷲の目の隙をぬって作業することを強いられ、落下等のミスも出てしまうのだと。
 若者がなおも言葉を続けようとした時、
「あ、いたいた!」
 彼の仲間らしき男たちがばらばらと駆け寄ってきた。
「こんなトコでのんびりしてる場合じゃないぜ。オレグ爺さんが大変なんだ!」
「親方が……ってまさか?」
「ああ。とうとう業を煮やしたらしく、わしが退治してやるって言って、屋根伝いに塔に向かっちまったんだ。引退してからもう何年にもなるってのに、いつまでも血の気の多さは変わらねぇとみえる」
「そ……んな。鷲がいるっていうのに……」
 若者は唇を噛み締めると、屋根へと向かった。それを仲間が押し止める。
「おまえが行って、何になるんだよ」
「でも……でも親方が!」
 仲間の腕を振り切ろうと、若者はもがく。
「んみ? わしがわしでわしたいじ?」
 丸めかけた雪玉を手に、アルエットが首を傾げた。

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参加者
陽射の中で眠る猫・エリス(a00091)
動物愛好魔術師・ミサリヤ(a00253)
黒紫蝶・カナト(a00398)
喰い盛りの牙狩人・ジャム(a00470)
在散漂夢・レイク(a00873)
分の悪い賭けは嫌いじゃない・リヴァル(a04494)
宵闇の黒豹・ケイ(a05527)
蒼穹に閃く刃・ジギィ(a34507)
NPC:九里香・アルエット(a90070)



<リプレイ>


「おじーちゃんが鷲退治に!? 危ないよ〜!」
 話を聞いた動物愛好魔術師・ミサリヤ(a00253)は、早く止めなければと、雪降ろし職人に雪かき道具やそりを貸してくれるように頼んだ。
「今回の爺さんも頑固そうだねぇ……」
 やれやれと呟きつつ、宵闇の黒豹・ケイ(a05527)は靴にアイゼンを取り付け、もこもこ着込んだ防寒具をぎゅっと引き寄せる。寒いのは苦手なのに、何故かこの冬は寒い場所に縁があるようだ。
「急いだ方がよいですねぇ」
 鷲に襲われる前になんとしてもオレグ親方を捕まえなければと、キャットレッドブルー・エリス(a00091)は騒いでいる雪降ろし職人に塔までの地上最短ルートを尋ねた。雪多い見知らぬ町は、予想外の場所が通れなかったりすることもある。塔を目指して無闇に走って行くよりは、町の人から情報を得た方が良い。
 ミサリヤは借り受けたそりの上に九里香・アルエット(a90070)を乗せ。
「土塊の下僕をたくさん作って、そりを牽いてもらおう」
「うんっ。しっもべさ〜ん、ぽっこぽこ〜」
 アルエットはミサリヤに言われるままに、ぽこぽこと下僕を作り出した。
「出来た? じゃあ出発するよ。名づけて……わしわし大作戦!」
「わっし、わっしっ♪」
「道はこっちですよぅ。アルエットさん、誰が一番早く塔に着けるか競争です〜」
 エリスは塔がある右ではなく、左へと進路を取って走り出した。遠回りに見えるが、実はこちらが塔への最短路。
「うみょみょっ! しもべさん、いっぱいはしるの〜!」
 競争ときいてアルエットがそりの上でじたじたする。ミサリヤとケイはエリスの道案内にそって、土塊の下僕と共にそりを引いて大急ぎで塔を目指すのだった。

「鷲の方もとりあえず手荒にはしたくないもんだが……まずは爺さんの安全確保だな」
 オレグさえ抑えておけば、鷲への対処も落ち着いてできるだろうと、コインの表裏は我が掌の内に・リヴァル(a04494)は屋根を見上げた。
「スピードが重要ですよね」
 蒼穹に閃く刃・ジギィ(a34507)は、屋根ルートを行く皆にチキンスピードをかけてから、自分も屋根に上った。といっても、これで走る速度があがったり、身のこなしが速くなったりすることはないのだが。
「山猫シッポの牙狩人なめンなよ〜、いっくぞ〜っ!」
 ニワトリの着ぐるみをすっぽりと着込んだ喰い盛りの牙狩人・ジャム(a00470)は、するすると器用に近くにあった家によじ登り、塔を目指して大疾走開始。
 黒紫蝶・カナト(a00398)は細くシンプルなサングラスを装着し、屋根へ登る。懐には四葉のクローバーを忍ばせ、そして身体には黒炎覚醒の黒き炎を纏った。これで雪を溶かして突き進もうというのだ。雪が溶ければより一層滑りやすくなってしまうだろうが……本物の炎とは違い、黒炎覚醒の炎は何かを燃やしたり溶かしたりすることはない。
 ひときわ高い塔目指し、走り出したジャムとカナトだったが、屋根の上は想像以上に滑りやすい。斜めの屋根に積もった雪は、冬真っ盛りの時と違って水っぽく、走ろうと蹴りだす足を受け止められずにずるりと落ちる。その上に載った身体ごと。
 さすがは冒険者というべきか、地上に積もった雪のお陰か、屋根から落ちても怪我らしい怪我を負うこともなく、またよじ登って先を目指す。
 屋根は急斜、雪はたっぷり。走ればつるりすってんころころりん。今日の天気は晴れ時々黒炎、ところによりニワトリ。
「屋根を歩くときのコツとか、行きやすい経路があれば教えてもらえないだろうか?」
 剣振夢現・レイク(a00873)は雪降ろし職人に指南を請うた。
「滑り止めをつけた靴全体をべったりつけて、体重を分散させてなぁ、走ると落ちるから足は小またに進めてなぁ、屋根の上では身体の向きはなぁ」
 実際にやってみせながら説明してくれたが、今はゆっくり聞いている時間はない。
「これだけはというポイントはどこだろう?」
「雪降ろしが必要な屋根以外に登らないことだな」
 雪が自然に落ちるように作ってある屋根は当然滑りやすい。反対に、雪が自然に落ちると危険な屋根は人力で雪降ろしをするようにナダ止めがつけてあり、比較的滑りにくい。
 教えを参考に、レイクは歩く屋根を選んで進んでいった。そろそろと進めば落ちることはないが、オレグに追いつけないのではないかと心配になってきたレイクは一計を案ずる。ある程度加速していたら、下に落ちる力よりも横に移動する力が勝るのではないだろうか。そう、進むのは非常に大事なことだ。人は前に進むことによって生きているのだから。
「よし」
 レイクは足を速めて前へと突き進んだ。落下する力と前進する力、2つの力が合わさり……下に向いた矢印に進む力となる。すなわち――転落。
 手に巻きつけた粘り蜘蛛糸で落下を止めようとしたが、糸にくっついたのは雪。身体を支えることはできず、レイクは身を以って屋根の雪降ろしをすることとなった。
「……なるほど」
 目標修正、狙いは前斜め上方。
 冒険者であっても雪屋根歩きは初心者。身の引き締まる思いでレイクは再び屋根にチャレンジするのだった。


 途中、屋根から落ちもしたが、塔に到着したのはレイクが一番だった。行き過ぎかけて振り向けば、頭上で白いマントが翻った。緑の鱗をすっぽりと白布で覆ったオレグ親方が、塔に取り付けられた細い梯子を上りかけている。
「御老体、巣の撤去は我々に任せてくれないか?」
 レイクが呼びかけると、オレグはしっしと手を振った。
「こっちに来るでない。鷲の目につくじゃろうが」
 なおも梯子を上ろうとするオレグの足下に、暖かい光を帯びた矢が突き刺さった。
『降りてきなさ〜い! お孫さんが泣いてますよ〜っ!』
「のぁっ!?」
 聞こえてきた叫び声にオレグ親方はのけぞりかけ、慌てて梯子を掴み直した。矢の届く範囲まで追いついたジャムが、声の矢文を放ったのだ。きょろきょろと周囲を見回した後、また鷲の巣を目指しはじめた足下に、第2陣の矢が刺さる。
『グレてやる! 隠してるお酒全部飲んでやるー!』
「わしの酒じゃ!」
 オレグは思わず矢文に叫び返した。そうして動きが止まっている間に、カナトも追いついてくる。
「ちょっと待ったぁー!」
 オレグの身の安全を図る為、カナトは鎧聖降臨をかけた。
 その頭上をさっと黒い影がよぎった。鷲が塔周辺に集まっている人々に気付いたのだ。
 まだオレグ親方は梯子の上。そちらに鷲の目が向かないようにと、リヴァルは我が身を囮とする。雪玉を投げるとキルドレッドブルーが反応してしまうので、行動によって鷲の目をひきつけることしか出来ない。
 リヴァルの身を包むのは、ジャムとお揃いのふっくらとしたニワトリの着ぐるみ。ひょこひょこと屋根を動き回っては、鷲に向かって奇声を張り上げる、その雄姿。鷲につつかれて戦闘状態となっている為、着ぐるみからは魔炎と魔氷が噴出している派手っぷり。
「リ、リヴァルさん……」
 尊くも犠牲的な姿を見て、ふるふるとジギィは肩を震わせた。
「キョェェェー! ……ん、どうかしたか?」
 視線に気付いて振り返ったリヴァルの異質な……いや、可愛らしいその姿をどう言い表せば良いものか。引きつった笑いの下からやっと、
「いえ、何でも……」
 とだけ答えたジギィにリヴァルは一瞬怪訝な顔を向けたが、すぐに鷲に向き直り。
「クェーッ、ケケケッコケコッコーのコー!」
 羽振り乱してアピールを続けるのだった。

「いた!」
 怪しく響く声を頼りに見上げたミサリヤが、皆の姿を見つけて声を挙げた。下の道を迂回しながらやってきた地上組も、やっと塔に到着だ。
「下から覗かないでくださいよっ」
 エリスは騒ぎを聞きつけてやってきた町の人々に、釘を刺しておいてから屋根に上り始めた。武道着だから覗かれても大丈夫なのだが、気分的な問題だ。
 屋根から誰か落ちた時のためのクッション代わりにと、雪集めをしながらケイはアルエットに頼む。
「土塊の下僕に雪を集めるのを手伝わせてくれるかい?」
「ゆきゆきかきかきしもべさん〜♪ ケイおねーちゃんのおてつだいするの〜」
 地面にある雪をどんどん積み上げて。雪のクッションが間に合わない箇所に、ケイはどこでもフワリンを呼び出して待機させておいた。
「んしょ……雪って重いな」
 額に汗を浮かばせながら借りた道具で雪を寄せ、ミサリヤは梯子上で揉めているオレグに声をかける。
「じーちゃん、降りてきてよ〜! 鷲さんならおれの仲間が追い払うから大丈夫だよ〜!」
「アルエットも、降りてきて、って爺さんに呼びかけておくれよ」
 ケイに促され、雪をぺたぺた触っていたアルエットも上を見上げ。
「おじーちゃん、おりてきてくれないと、どっかんこしちゃうの〜♪」
「どっかんこはダメだからね?」
 放っておくとやりかねないので、ケイは急いでアルエットに言い聞かせた。
「ん〜じゃあ……おりてきてくれないと、がんごんするの〜♪」
 その擬音語は一体……?
「こーげきはなし、だよ?」
 屋根の上と下とどちらが危険なのだろうかと思いつつ、ケイは念を押しておいた。

 説得の声と飛来する矢文とで、塔を上るオレグの速度は落ちていた。
「いくら何でも、1人でどうこうしようって言うのは無茶だ。俺達がやるから降りてくれ」
「雪に慣れん奴にゃ無理じゃ」
「我々は屋根伝いにやってきて御老体に追いついた……ということは、それなりに動けると認めてはもらえないだろうか? 我々に任せて……」
 と皆を示したレイクはちょっと言いよどむ。ニワトリの着ぐるみ2体。うち1体は奇声を挙げているこの光景はオレグ親方の信頼を勝ち得るに足るものだろうか……?
「まぁ……これは我々にとっての余裕の姿だと考えてもらえれば」
 言い切ってしまえば勝ちかと、レイクは言葉を続けた。ジギィも言葉を足す。
「雪降ろし職人は雪を降ろすのが仕事ですよね。ならば、鷲の退治は俺達冒険者の仕事です。ここは俺達に任せて下さいませんか?」
「む……」
 理屈では解っている、が心が納得しない様子で黙り込んだオレグ。その足を梯子に上ってきたエリスが掴んだ。目を白黒させるオレグに、エリスはにっこり笑顔を向け。
「こんな場所で女性を足蹴にするなんてこと、しないですよねぇ?」
 足を振り払えばエリスは梯子から落ちてしまうだろう。硬直したオレグへと、またジャムの矢文が飛ぶ。
『じいちゃん、オシリ破れて丸見え……』
 女性の前にそんな姿を晒してはと、オレグは手を後ろへ回した。その勢いで梯子にかけていた手が滑り。
「ぎゃぁぁぁぁ〜」
 オレグはエリスを巻き込んで梯子から落ち、屋根を転がって地上に積まれた雪にすぽっと埋まる。
「じーちゃん、大丈夫〜?」
 ミサリヤは慌てて2人を掘り出すと、癒しの光で怪我を治した。オレグには

 2人が無事なのを確かめると、冒険者は本格的に鷲とその巣の対処に取り掛かった。
 ニワトリ2羽……いや、ジャムとリヴァルが飛び回って鷲をひきつけている隙に、カナトとジギィは塔に挑んだ。鎧聖降臨を施してはいるが、塔の梯子を上る背中が寒いのは、吹き付ける風の所為ばかりではない。
「鷲です!」
 ジギィの警告に、カナトは命綱代わりの鉄鎖を梯子に巻きつけた。ジギィは梯子をしっかり掴み、もう片手に棒を構えた。
 そこにピカッと着ぐるみ鶏の鶏冠が光る。すると……ぼとっと鷲が屋根に落ちた。
 大丈夫かと見守っていると、鷲は何事もなかったかのように再び空中に羽ばたき、リヴァルへと向かった。突付かれて鶏冠の取れた着ぐるみで逃げ回るリヴァルを助けようと、もう一度スポットライト。今度は麻痺せず向かってきた鷲を、ジャムは煙突に引っ込んでやり過ごす。次に顔を出した時には、着ぐるみはまるで黒チャボ。
 ニワトリ達の大活劇をゆっくり見物していたいけれど、と後ろ髪を引かれつつ、カナトとジギィは上へ上へと梯子を辿り。
「あった」
 大きな巣を塔から外してみると、その中には卵があった。これを守ろうとして、屋根の上の人を襲っていたのだろうか。カナトは巣を抱え、鉄鎖を伝ってするすると塔を降りた。


「これが巣ですかぁ。あ、卵もありますねぇ。卵焼きにしてみんなで有難くいただきましょうかぁ」
 巣を抱えて屋根から下りたカナトの手元を覗き込み、エリスは卵を取って巣を壊した。
 鷲は塔周辺をぐるぐると回っていたが、巣がなくなったのを理解したのか、やがて何処ともなく飛び去って行った。もう鷲が塔に執着する理由はなくなったということか。
 これで雪降ろしができる、と感無量で呟いたオレグ親方に、レイクとリヴァルは雪降ろしの手伝いを申し出た。ここまで関わったのだから、物のついで。雪国での本格的な雪降ろしを学ぶのも楽しそうだ。
「アルエットもゆきころしするの〜」
「ぐはっ」
 持ち上げた重みによろけたアルエットの手のシャベルが、リヴァルの背中にクリーンヒット。
「危ないからやめとけ。それに、こーげきすると家が壊れるから」
「や〜ん、おてつだいするの〜」
 じたじたと足を踏み鳴らすアルエットに、ミサリヤが呼びかける。
「雪だるまを作らないか? あと、みんなで雪合戦もしたいな。この冬最後の雪遊びだからね〜」
「可愛い雪兎とかも良いですね」
 雪を取ってジギィが丸めだすと、アルエットも雪降ろしよりも遊ぶ方に興味が移り、上機嫌で雪を寄せはじめた。
「こっちって雪が多いンだね。どんな遊び方があるンかな?」
 ジャムは地元の子供達に遊び方を教えてもらい、雪をどんどん山にする。春近い雪はさらさらではなかったけれど、細かな氷の粒にきらきらと光が反射してとても綺麗だ。
「ケイおねーちゃんも、いっしょにあそぶ?」
 引っ張るアルエットの手の冷たさに、ケイの尻尾の毛がぶるっと逆立った。
「……もう春だなんて、絶対嘘だよ。こんなに寒いのに……」
 アルエットを湯たんぽ代わりに抱え、ケイは寒さに震える。塔で風に晒されたカナトも、寒そうに身を竦めた。
「流石に寒いからなぁ……温かい飲み物か食べ物を食べてから帰ろうかね……」
「鷲を追い払ってくれた礼に、町名物の鍋でも御馳走しようか? 山のもんばかりの鍋だけど、食べれば身体がかっかとしてくるぜ」
 無事に事件が解決して明るい表情となった雪下ろし職人の若者が申し出る。もちろん、冒険者にそれを断る理由はない。

 赤々と燃える火。ぐらぐらと煮える鍋。立ち上る湯気。
  ――それは寒いからこそたっぷりと味わえる冬ならではの滋味。
 大きな雪だるま。小さな雪兎。飛び交う雪玉。雪山から顔を出すジャムの眉についた雪。
  ――それは雪があるからこそ楽しめる冬ならではの遊びの数々。
 寒さの中にこそある暖かさ。

 この町に来たのも何か不思議な縁の導き。今年の冬の味わい納めとばかりに、冒険者達は鍋と雪遊びを満喫するのだった。


マスター:香月深里 紹介ページ
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作成日:2006/04/22
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