青槍卿の城



<オープニング>


「依頼です」
 遙を見晴るかすかのような眼差しを傾けて、薄明の霊査士・ベベウは手元に広げられた大判の羊皮紙を見つめている。そこには、流麗な筆致で描かれた『青槍卿の城』なる文字列が踊っている。どうやらそれは、うら寂れた古城の見取り図であるらしかった。
「ご覧の通り、この城は奇妙な形状をしています。まるで槍のように、長い柄にあたる部分と、鋭い穂先の部分によって構成されている。その理由は明快なもの、中州の、細長い土地の上に建てられているからなのです」
 北から南へと流れる川へ、『青槍卿の城』はまるで挑みかかるかのようにそびえているという。柄の部分は南から北へと伸ばされており、また、二等辺三角形の穂先は流れに逆らうかのように突きたてられているからだ。
「穂先の尖端は、まるで舟の舳先のように尖っているそうです。そして、高い城壁が未だに現存しています。高さは十メートルにも及ぶそうですね」
 城の内部へと侵入するためには、柄の底の部分、つまり、城の南端に設けられた城門をくぐらねばならない。以前は、川の両岸から石の橋が伸ばされていたが、大雨によって流されてしまい、渡河の手段としては使用できない。泳いで渡るか、小舟を調達する必要があるだろう。
 また、その他の出入り口としては、穂先の根本にあたる部分、その東側と西側に小さな通用門がある。そこへ舟でつけるには、操舵の技術が必要であるという。水の流れが渦巻いているために困難なのだ。
「さて、皆さんに討伐していただきたい敵についてなのですが……」
 人差し指で柄の部分をなぞって、ベベウは言った。
「二百ほどに達するであろう死者たちが、この箇所にひしめきあっているのです。すべてがアンデッドと化したわけではないのでしょうが、この城に葬り去られた者たちとっても災難と申し上げることができるでしょうね。無論、近隣で暮らす人々にとってもですが……」
 そして――と口にしながら、ベベウは指先を穂先の部分へと移した。
「この高い城壁の上、それも、穂先の尖端にあたる部分に、巨大な槍を手にした魔物が腰を降ろしているようなのです。その生気に招き寄せられたか、多くの亡者たちがその足下に集っている。その様は、さながら救世主を求める迷える民衆たち、といったところでしょうか」
 しかも――ベベウは言った。
「魔物の数は一体だけではありません。穂先の根本の部分、つまり、柄と穂先とを繋ぎ合わせる部分にも、小さな槍を持った二体の魔物が城壁に腰掛けているのです。柄の部分から穂先の部分へと足を踏み入れる際には、この二体からの挟撃にも注意する必要があるでしょうね」
 城の屋根はことごとく落ちており、頭上の視界を遮るものはわずかであろうことを告げた後、霊査士は灰の瞳を険しくして言った。
「経験の多寡などには関係なく、この青槍卿の城での戦いは……相当に危険なものなるでしょう。どうか、ご武運を。そして、無事の帰還を……」

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参加者
西の白き城壁・ダンドリオ(a14681)
自然の使い人・ラーレ(a16657)
霧よりの使者・ミストリード(a16661)
闇に悟られし物・ユダ(a16662)
白妙の巫女姫・ミラ(a19499)
山猫・クレイ(a19535)
黒狼・セイリオス(a19769)
うさまんの侍・イザヨイ(a20879)
闇夜に虚ろう漆黒・ハルト(a21320)
武士見習い・シロウ(a26228)
偽ノソどじぇろりまま冬将軍・フィード(a29126)
月が照らし出す世界・ハイン(a31516)
悪鬼羅刹・テンユウ(a32534)
同盟の白い悪魔・エスティア(a33574)
角殴の蒼き風・サードムーン(a33583)
幻想舞踏・フィニス(a33737)
不移黎明・クロノス(a33979)
深淵の水晶・フューリー(a36535)
世界を駆巡る暴風・ノーラ(a40336)
多装武具装士・レクス(a41968)


<リプレイ>

 澱んだ流れにたゆたう小舟が五艘、『青槍卿の城』と呼ばれる遺構へと向かっている。陽射しを浴びてもなお、暗闇にあるがごとくそびえたつ褐色の、見る者を戦慄へと至らしめる偉容に比べて、舟たちは運命にもてあそばれる木の葉さながらであった。
「重傷者半分か……遠征の痛手は各所で見られるな……」
 腰に下げた長剣の柄に掌を預け、揺れる小舟の縁へと足をかけて、あたりを見渡しながら呟いたのは、多装武具装士・レクス(a41968)だ。城門の名残は両側の獅子と槍を象った彫刻だけとなっている。その合間に、蠢く死人の姿を認め、「死の闇には囚われぬよう……」と囁くなり、血に濡れし孤高なる漆黒の影・ハルト(a21320)は跳躍した。宙を滑るように進み、指先から白光を帯びる糸の束を、死衣の群へと舞わせる。続いて中州の城へと飛び移ったレクスは銀の長剣を振るい、波濤のごとき斬撃を敵に浴びせかけた。
「……ゲート・オープン……コード『リベレイション』」
 小舟から陸へと飛び移る仲間たちを瞳で追い、深淵の水晶・フューリー(a36535)はそう呟いた。抑揚の押し殺された、氷の響きがこめられた言葉が済むなり、足下から噴きあがった紅蓮の魔炎に華奢な身体が包み込まれる。
 駄侍・イザヨイ(a20879)は戦槌を振り抜き、わずかな皮膚を頬に貼りつけただけの少女やその家族かもしれない亡者たちを、無数の白い骨が堆く積もれたものへと変えた。門があった場所からその内奥、大小の瓦礫が山積する城の胎内を見つめ、彼は呟きを漏らす。
「兵どもが夢の跡……すべてが終わったら……」
 他の冒険者たちとともに小舟から城塞の南端へと移り、武士見習い・シロウ(a26228)は門の亡骸を越えて、多くの歪んだ姿が立ち尽くす廃墟の内部へと足を踏み入れた。千塵刀が一閃した相手は、地に伏してもなお、かたかたと空虚な顎を鳴らしている。
 瓦礫の影にひそむものを含め、数十のアンデッドを視界に捉えながら、山猫・クレイ(a19535)は「重傷者だらけだな。アンデットと間違えて攻撃しないよう」、と口にした。キルドレッドブルーと融合した姿で戦う彼は、けっして冗談を仄めかしたわけではない。だが、ドーナツの・エスティア(a33574)は少し誤解したようだ。目を見張り、驚いた様子を繕いながら、「ふむふむ、参考になります〜」と明るい調子で言ってのける。枯れた体躯が刻まれ、あるいは、貫かれる空虚な音に混じって、生者の鼻や口から漏れる笑い声が聞こえ、彼女は口の端を波立たせた。星天弓から光の矢を射る少女は、もっとも笑顔を必要とするのは妹を失った自分自身であると、今はまだ気づいていない。
 槍の形状をとる古城、その『柄』の中程までには到達しただろうか。封水寝の名を持つ杖を手に、自然の使い人・ラーレ(a16657)はきょろきょろと視界の左右を閉ざす城壁を見上げている。突然に腕が引かれ、両方の爪先が宙に浮いた。
「うおぉぉぉぉ〜、行くです〜、わくわくです〜!」
 そう大声を発しながら、西の白き城壁・ダンドリオ(a14681)はラーレの腕を取り、瓦礫の山を駆けあがった。向こう側にひしめきあっていた亡者の群に瞳を丸くするなり、リザードマンの少年は怒号を発した。溜息混じりに封水寝で空を払い、ラーレは宙に描いた紋章からの光の雨で、足下の敵影を打ち据えた。
 瓦礫のてっぺんで揺れ動くダンドリオの白い尾をロープ代わりに掴んで、霧よりの使者・ミストリード(a16661)は天井の成れの果てを登った。「うぉぉぉ〜」と驚きの声を発した友人にはかまうことなく、彼は地面に残されたまま憮然としているエルフの少女に、片方の手を差しだした。一瞬だけ口元を緩めてしまったが、闇より悟られし物・ユダ(a16662)はすぐに眉宇を険しくし、ミストリードに避難の眼差しを向け直した。敵を絡めとる糸の束を指先から放射しながら、ミストリードは未だに理由をわかっていない。唇を尖らせたままぷいと横を向いて、ユダは亡者たちへ斬りかかるべく瓦礫の傾斜を駆けおりた。
「引きずるのはよくないよ。戦争は戦争……依頼は依頼だよ」
 明るい笑みを目尻や頬に綻ばせたまま、紫風纏・クロノス(a33979)はどこか真面目な口調で仲間たちに告げたのだが、紺碧の双眸は赤くなっている。昨夜、目元を拭いすぎたせいだった。
「そちら! 気をつけて!」
 空と大地を彷徨う者・フィニス(a33737)は天藍色の刀身を誇る曲刀――セレスティアルエッジ――を掲げ、瓦礫から身を乗りだす死者の存在を仲間たちに伝えた。
「本当に数が多いですねっ! 魔物との戦いを考えると温存しなくてはならないのにっ!」
 新雪を思わせる白亜の手套に宙を彷徨わせ、光り耀う黄金の紋章を描きあげた深淵に臨む者・フィード(a29126)は、目映い弧からなる光の驟雨をあたりに瞬かせた。煌々と降る雨を続けたのはクロノス、光が止むなり瓦礫を駆けあがり、難を逃れていた死者を葬り去ったのはセレスティアルエッジを振るうフィニスだった。
 亡者が織りなす灰色の隊列との戦いにも、幾分かの激しさをしのげば、わずかにではあるが余裕を持ってあたりを見渡すだけの余地が生じた。黒筒の遠眼鏡を用いて、無風之鬼・テンユウ(a32534)は左右の城壁を見た。門をくぐった直後には、黒ずんだ岩の突起にしか見えなかった影も、いまや彫像のような姿形をした魔物であるとわかる。魔物の肩が動いたように思えた。彼はダンドリオたちに鎧聖の力を与えるべく、右の掌に力をこめた。遠眼鏡のレンズが捉えていた城壁の影が、どこかへと去ったとは知らずに――。
 青槍城の『穂先』、その根本の部分へと近づいたことに、闇夜の葬月・ハイン(a31516)は気づいていた。崩れかけた城壁の向こうに、緑の木々すら生い茂る広がる開けた場所が見えていたからだ。仲間たちへ三手に分かれるよう指示を送った直後、彼女は黒桜の鎖と名づけられた、紅玉の面に散る花びらが彫刻された杖を空へと掲げ、「……あまり俺に歯向かうな……」とかすかに震える声で囁いた。宙に浮かんだ紋章から降る瑠璃の細雨を、ハインはいつもより目映く感じながら見つめた。光に貫かれた亡者たちが次々と折り重なってゆく様に哀れさを感じていた。
「油断するな、奴等がいつ現れたとしてもおかしくはない!」
 声を荒げ、そう冒険者たちに伝えたのは、戦帥の蒼き風・サードムーン(a33583)である。彼がわずかに反る長大な刃の太刀――武御雷をもって、死者の体躯もろとも中空に鮮やかな曲線を描きあげた、その直後だった。『穂先』の内部へと侵入するべく、黒衣を翻す忍びの少女が、狭隘な壁面の亀裂を目指して、疾手のように駆けたかと思うと、途端に足の運びを緩め、薄暗闇へとその身を溶けこませる。先陣を務めることの意味とその代価について、黒狼・セイリオス(a19769)に理解がなかったわけではない。静かな足の運びで、彼女は緑が広がる城の内奥を目指した。だが、その行く手は頭上から落下した巨躯によって遮られてしまう。最初の侵入者を、魔物たちは待ち構えていたのだ。
 右方からはすべてを巻き込む闘気の嵐が吹き荒れ、左方からは尖塔の頂点を思わせる穂先の槍によって、熾烈な突きが見舞われた。高砂の舞姫・ミラ(a19499)の歓心は肌に浮かんだ赤い傷口でも、胸の鼓動を速める痛みでもなかった。闇へと姿を消え入らせた直後、奇襲を浴びたセイリオスの安否が気にかかっていた。視界を彷徨わせる――瓦礫の縁に指先をかけ、忍びの少女は自らの足で立ちあがっていた。つややかな表面に水を思わせる紋章を浮かべた宝玉が、ミラノ手にする杖の先端で輝いている。彼女は心の力を開放した。浅からぬ傷を負った仲間たちに、少しでも早く穏やかな癒しの波動を届けたかった。
 出鼻は確かにくじかれたが、それで臆する理由は、ハルトたちに存在しない。「貴様らにやる命など無い、消される前に消す。それだけだ」、吐き捨てるように言うなり、彼は指の合間に生じさせた歪んだ影の描かれたカードを投擲した。音もなく魔物へと向かったカードは、石柱を思わせる胸部に吸いこまれるようにして突き立ち、石のごとき肌に生じさせた亀裂に闇の色を滲ませた。
 城の最深部にひそむ魔物の元へと向かう仲間たちを援護すべく、フューリーは鍵の姿を象る杖――アビスゲートに向け言葉を紡いだ。
「……ゲート・オープン……コード『ラフレシア』」
 紅蓮の魔炎に縁取られた無数の木の葉が、複雑な形状の杖が傾けられた一点へと向け、岩の亀裂から清水が湧きだすように現れ、渦巻くようにして魔物へと向かってゆく。
「先に行ってください!」
 琥珀色の瞳に強い光を浮かべ、シロウは穂先に向かう仲間へ声を張った。自らは燃え盛る風に吹きつけられ、上体を揺らがせた巨躯の魔物へと斬りかかり、城の最深部へと続く亀裂を塞がれぬよう振る舞った。像を分かった主と同様、千塵刀は幻像の眷族を従えて空を切り裂き、人の背丈ほどの槍を手にする魔物の腰を断つ。
 槍を手にして肩をそびやかす魔物の合間を、七名の冒険者たちが駆け抜けてゆく。壁の亀裂から奥へ、巨大な槍を所持する魔物の元へ向かったのだ。シロウたちが左方の門団を抑えている間、右方に立つ魔物は、紅蓮の魔炎に縁取られた無数の木の葉からなる、火焔の渦に取り巻かれていた。炎の舌先をまるで桜の花のように上肢に揺らめかせる魔物を、真摯な色を浮かべた瞳で睨め付けるのは世界を駆巡る暴風・ノーラ(a40336)である。少年は魔物に対し、幼さの残る口元から酷薄な言葉を吐いた。
「さっさと消し炭になるなぁん」
 冷たく輝く泡沫をあたりへと散らすようにして、ミラがフェアリーワルツで空を撫でると、華奢な少女の細い腰から、淡い癒しの光が広がって戦場を包み込んだ。セイリオスは肩で息をしていた。脈打つ度に伝わる激痛が、魔物の刺突によって風穴を穿たれた脇腹から滲む。穏やかな光を浴びても、その傷は容易く癒えはしなかった。だが、それでも……彼女は天狼と渾名される短剣の鏡のように滑らかな刀身を逆手に構え、魔物の身を果敢な斬撃によって刻み続けていた。抜け落ちて失われた天蓋へと立ちあがる、苛烈な闘気の渦巻が、その身に幾度目かの過酷な痛みをもたらすまでは……。
 槍を振りまわす魔物のそばから、セイリオスの身体が風にもてあそばれる木の葉のように吹き飛ばされた。サードムーンは暗くなりかけた視界を、頭を左右に振って維持した。傍らには彼にもたらされた痛みを誓いの言葉によって共有する、狂風の・ジョジョ(a12711)の姿があった。彼のおかげで倒れずに済んだのだ。背伸びをしたノーラの胴から、穏やかな癒しの波動が広がる。冷たい輝きを帯びた爪先で、サードムーンは魔物の腹部に亀裂を生じさせた。その黒い弧は笑う唇のようにも見える。
 戦槌を頭上に旋回させ、さらには自分の身もひねりながら、イザヨイは魔物に尋ねた。
「最後に拙者と遊んではくれぬか?」
 爆発音に続き、轟音が響いてきた。仲間たちが門番の片割れを討ち、巨大な躯が城壁の名残を巻き込みながら倒れたのだ。ユダはまだ唇を尖らせたままだった。奇妙な影を浮かんだカードを生成したミストリードの横顔を睨みつけている。彼の右腕が振り抜かれ、魔物の肩に重たげな闇が滲み出ると、ユダは蛇光の名を冠する槍で空を一閃、羽根のように軽やかな跳躍で敵の懐に飛びこみ、天へと向けて傾かせた穂先を顎の裏側に突き刺した。
 清冽な冬の朝日にも似た輝きを帯びた刀身を従え、駆けだしたフィニスの周囲に夢幻の薔薇が漂う。彼は美しい帳を通り抜けて巨躯をそびやかす魔物の正面に躍りでた。彼は剣戟を振るった。青薔薇よ舞え奇跡の花言葉の元に、刃よ照らせ僕らが進むべき道を――と、そう呟きながら。
 苔生した家屋の残骸から現れたアンデッドの数は、二十ほどに過ぎず、フィードたちは十分な力を湛えたまま、青槍城の主となった異形の元へ辿り着くことができていた。それでも、その戦いが過酷なものとなるであろうことは自明の理と思われた。瓦礫の王座で微動だにしない、城壁の上端にも届こうかという巨大な槍を手にする魔物からの威圧は、死地をくぐり抜けた者であればこその戦慄をその身に覚えさせるに足るものだったのだ。
 この戦いの火蓋が切って落とされた直後のことだった。歓喜の雄叫びをあげるなり、ダンドリオが過ぎ去りし時のジャイアントソードに闘気を注ぎ込み、宙に飛びあがっての斬撃を魔物の頭部に叩きこもうとした。だが、敵は右手で巨大な槍を傾け、少年がありったけの力をこめた一撃を横手に弾き飛ばしてしまった。やおら立ちあがった魔物は、闘気をまとう槍を振りまわし、竜巻という手荒い歓迎を冒険者たちにもたらした。
 それでも、この強敵と対峙する冒険者たちが、ほぼ互角の戦いを繰り広げることができたのは、吹き荒れる闘気の嵐に肌を裂かれても前線に踏み止まり続け、音撃棒によって虚空を打ち据えては、その鍛え抜かれた体躯から癒しの光を拡散させるテンユウがあったこと、そして、ラーレが撃ち続けた、薄藍から七色へと移ろう不可思議な輝きによって構築された光の塊が、魔物の体躯に甚大な衝撃をもたらしたためだった。
 歪んだ輪郭の巨大な影を城壁に投げかける、青光りする魔物の槍が、まずはダンドリオの肩を貫き、テンユウの腹部を穿って戦線から退かせても、冒険者たちは果敢な挑戦を続行させた。そして――クロノスとミストリードを従えてフィニスが姿を現し、癒しの力を携えるノーラが、疾手のごとく駆けるサードムーンが、難敵を封じるための布陣に力を添えた。さしもの巨大な突撃兵とて、それだけの数を相手取るには力が及ばなかった。
 けっして魔物の攻撃が届くことのない位置から矢を射続けていたエスティアが、勝機を悟ったか、稲妻の光を迸らせる矢を掌に生成して星天弓の弦を震わせた。前衛とした戦うクレイが、幽玄の薔薇をあたりにちりばめ、ダークセイバーの黒い刀身で闇色の弧を宙に刻んで、魔物の巨躯に数度の痙攣を強いる。古城の偉容、ひしめく亡者たち、門番らの奇襲、そして、魔物が繰りだす刺突の苛烈さを思い起こしながら、レクスは長きに渡った戦いの終止符を打つべく、青い衝撃を帯びた長剣を魔物の腹部に打ちこんだ。
 凍える銀と陽光の金を身にまとい、さらには、邪竜の黒炎をも肌に蔓延らせた姿で、フィードは蛇の姿を象る魔炎を撃ちだした。巨躯の半身を玲瓏な魔氷によって覆われ、敵はその場に立ち尽くした。
「滅するがいいっ」
 黒桜の鎖を手に、そう言い放ったのはハインだった。少女の頭上から飛びたった瑠璃色の輝きを滴らせる球体は、彼女の言葉通りに巨大な武具を支える肉体を滅ぼした。穂先から地面へと落ちた青い槍は、巨大な亡骸の足下にそびえる勇壮な眺めの墓標へと、その役目を変えた。


マスター:水原曜 紹介ページ
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作成日:2006/03/29
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