明けの朝粥



<オープニング>


「暫く姿を見ないと思っていたら……戦に紛れて、重傷とはな」
「なンだよ。久し振りに顔合わせたってのに、もうちっと労ってくれても良いんじゃねェのか?」
「――全く、呆れ果てる」
 黯き虎魄の霊査士・イャト(a90119)は本日二度目の溜息を零し、溜息に出迎えられた十拍戯剣・グラツィエルはまるで気にせず屈託無い笑みを浮かべていた。
 辺りを見回し、変わらないイャトと酒場の様子に安堵しているのかもしれない。
 だとしたら、それも彼を呆れさせる一因になっていることだろう。

 前にこうして酒場で話をしたのは、雪が降る前だった。季節はもう春である。
 冬の間、どこで何をしていたのか。もっとも、帰還したその姿を見れば何となく予想もつくのだが。
「冬眠していたとは言わんだろうな」
「惜しいね。山篭りはしてたが、寝てた訳じゃねェ。どっちかっつゥと、逆だな。あんま、寝てねェ」
 ――ちーとも惜しくないではないか。
 皮肉も通じず三度目の溜息。詰る所、このデカイ赤戌は今まで鍛錬に勤しんでいたらしい。
 その際、滝壷に落ちて川流れ、漂流したりもしたらしい。かなり、胡散臭い話だが。
「……で、ついでに言うとロクなモン食ってねェんだわ」
「四の五の言わずに頼めば良いだろう」
 ボロボロの身体で酒場まで何をしに来たのかと思えば、目的は食事。そんなもの、一々宣言などせず好きにすれば良い。とんだ時間の浪費をしてしまったものだ。
 イャトが意識を逸らしたため、次ぐグラツィエルの一言は完全に不意打ちとなった。
「作ってくれ」
「――はあ?」
 イャトは、かろうじて発声を制御した。声は、運良く裏返らずにいてくれた。
 今日まで積み上げてきたものを守る様に、喉元を押さえて己の(捨てた筈の)感情を自覚する。
 この男は一体何を言っているのだ? 正気か?
 料理だの何だの、その手の趣味はまるで持たないド素人に何を作れと?
 そんなものプロに頼め――と言おうとするが、聞く耳持たないグラツィエル。
「美味くないのが良い。味も見栄えも何か、『あ〜、頑張ってるな』って感じの家庭的なヤツ」
「なら不味く作れと注文――」
「匙加減じゃねェんだって、俺が食いたいのは。……っ。あー粥食いてェ〜……」
 ――と。言うなり、グラツィエルはその場に盛大にぶっ倒れてしまった。
 ずごしゃあ、だの云う音を立ててテーブルと椅子を巻き込みつつ。
 迷惑極まりない。
 が、これでもこの男は怪我人だ。無理を圧して来たのかも知れない。
 ……いや、待て。寝ていないとも、言っていたような。
「…………」
 小さく息を吐く。とりあえず、引きずり起こして椅子にでも座らせておくか。このままにしておくと店に迷惑がかかる事だけは必至。
 躊躇いなくグラツィエルの胸倉に伸ばされるイャトの両手が、ごくごく自然に宙で交差するのを見て、近くに居た冒険者が思わず止めた。
「――何か?」
 向けられるイャトの怜悧な視線よりも、その直前に聞こえた気がする舌打ちの方が引っかかる。
 冒険者達がそれを問う間もなくイャトは口を開いた。好都合と思ったようだ。
「手が空いていたら、この男を部屋に運ぶのを手伝ってくれないか。個人的な頼みだ。それから……いや、――何でもない」
 後半は、口が裂けても言うまいと決意したのだろうか、何か言葉を封じる様に唇を噛み締め、血を吐く様な声を出すイャトの姿に、冒険者達は初めて彼の感情らしきものを見た。
 そして、イャトの口からは五度目の溜息が――長々と吐き出されたのだった。

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参加者
NPC:黯き虎魄の霊査士・イャト(a90119)



<リプレイ>

 イャトの胡散げな半眼が、目の前で一筆走らせているセイレーンの少女を見つめる。
 彼女は流れる様にイャトの手を握り、二つ折りにしたメモを霊視の腕輪に挟んで微笑んだ。
「困った時はそのメモが役に立つかもしれないわよ。それじゃ」
 掌を振りながら。身を翻して酒場を後にする少女――フォミリンス(a46419)。
「………」
「今の誰? これ何〜?」
 つつ、と歩み寄って来たルシエラ(a03407)がそのメモを抜き取って開く。はらり、と落ちる青葉。
「え〜と何々……『おいしいお粥の作り方』??」
 読み上げられる表題を聞いて、イャトは眩暈を覚えた。

●ぐーすかぴーひょる
(「良かった、思ったより元気そう…」)
 話を聞いてあれこれ深刻に考えてしまったが、飲まず食わずで重傷……の割に血色が良いその穏やかな寝顔を見て少しだけ、ティトレット(a11702)は心配を和らげた。
「ええと、では私は皆さんが運び易い様に荷物を――」
「左に同じく、ですなぁん」
 体格的な問題もあってティトレットとメロディ(a14800)は、彼の装備を運ぶ事にした。ソードホルダーをガチャガチャやりながら双剣を各々一本ずつ、丁寧に外して抱えた所で、ぽつりと声。
「……追剥が居る」
 二人は思わず、ぎくり、と動きを止めた。グラツィエルを背負おうとしたジーニアス(a02228)が音も無く潰されているが、タイミング悪く、皆声のした方に気を取られていてすぐには助けて貰えない。
「ぬぅう、ううう…!」
 気づいて貰おうと必死のジーニアス。
「イャトさん、こ、これはそのっ。そういう事ではなくて!」
「お手伝いですなぁん。皆で運ぼうとしてるトコですなぁ〜ん!」
「ああ、……任せる」
 イャトは何事も無かった様に言い退けて、踵を返した。
「お供します、イャトさん。当然『厨房に』行かれるんですよね?」
 担架代わりのフワリンを召喚しながら、シュシュ(a09463)の笑顔が牽制。イャトが足を止めたのは、のみならずその退路にリリエラ(a09529)を始めとする何人かが控えていたからでもあった。
「………」

 ユート(a45902)とリュウ(a36407)が二人がかりでグラツィエルをフワリンに乗せた。背中に横から覆い被せる様な格好である。
「よし。では行くか。道案内を頼む……私では先導は務まらない、から」
 気掛かりな事でもあるのかユートはもじもじしながら言うと、ふと気づいてグラツィエルのゴーグルを外した。コートやブーツは着せたままでも良いとして、これが落ちて壊れたりしたら大変だ。

 ――かくして、彼らの長くて短い朝が始まる。

●お粥を作ろう!
 エプロンを身に着け、髪を一つにまとめたセレーネ(a40522)は、そうするのが当然とばかりにイャトにブラシを差し出した。突っ立ったままの彼を、上機嫌で見遣る。
「うむ。髪を梳かしてこれを着なされ。今から料理をする者がそんなボサ頭では、不衛生極まりないからのぅ。エプロンも貴殿にと用意して来たのじゃ」
「……女物に見えるが」
「何か問題かぇ?」
 婉曲に『不要』と告げられるもセレーネは意に介さず、即答してにこやかに、ハートと星が舞い散る柄のエプロンを――イャトがたっぷりの間でもって「別に」と答えてくる間に自らの手で着せ、ついでに彼の髪にブラシを通す。さくり。刺さって止まる櫛。
「「………」」

 一階は食事も提供する酒場で、二階に休める部屋がある。
 有体にはそんな造りの、取り立てて珍しくも大きくもない宿である。その中の一室。
 ストラタム(a42014)は、先ず窓を開けて換気した。広くない部屋を更に狭く見せる大きなベッドは、よく見ればシングルベッドを2つ並べたものだと解る。寝に帰るだけの場所なのか、他にはほとんど何もない。私物らしき物と言えば、隅に立て掛けられているなめした革のロールや切れ端、それを加工する為の道具が少々。勝手に部屋に入った気まずさも手伝って、どうにも落ち着かないが……
 ともあれ、ベッドメイクを終え、この部屋を借りている主が運ばれて来る頃には、冷えた空気に満ちていた埃っぽさと独特の革臭さも薄らいでいた。
「……全く。重いったらありゃしない!」
 入室するなりナオ(a26636)はグラツィエルをベッドに乱暴に放り出す。どうやら、道中でフワリンが消えてしまい、代わりに彼が背負って来たらしい。依然寝こけているグラツィエルに呆れる一同。
「……いたた、さすがにちょっと響いたかなぁ」
 隣の部屋を借りて休む事にしたリュウに、ストラタムが付き添った。

 材料を全てぶち込んで雑炊にするも良し、白粥にしてトッピング用の具材を添えるも良し。
 卵に海鮮、シンプルに梅だけ、はたまた芋粥なんてのも捨て難い。

 ウロウロしながら他の人の鍋を覗き込んだり、こっそり取り替えようとしてみたり……
(「ぅぅ、でもちゃんとマスターしなきゃ、ケガした時にごはんが食べられなくー…」)
 沸騰する粥鍋を前に、半泣きで葛藤している猫尻尾。見様見真似で挑戦している粥作り。思えば今までマトモに料理などした事がないアッシュ(a41845)は、せめて自炊くらいは出来る様になっておきたかった。何をどれだけ入れれば良いものやら、ずらり並んだ調味料を見ていて気付いた怪しい遮光瓶。中身を示すラベルもない。振ってみると、たぷたぷ音がした。
「……その手の物は何だ?」
 すう、と包丁を突きつけられ、小瓶を取り落としそうになりながらアッシュは諸手を挙げた。
「知りません。私にも解りませんっ」
「怪しい。さっきから貴様、挙動が不審だ」
「これ、私のじゃないですからっ」
「――どーれどれ?」
 ユートとアッシュの横から顔を出したバリー(a45990)がひょい、と瓶を取り上げた。蓋を開け、臭いを嗅ぎ、指先にちょっと付けて舐めてみる。
「ん。ラー油だな」
「らーゆ?」
 植物油に唐辛子の辛味を加えた調味油だ。
「適量なら粥がぐっと美味くなるぞ。ま、作る物にもよるんだが」
 そんな会話の程近く、イャトは黙々と人参を刻んでいる。かなり緩慢な動作で、ざくざくと乱切りのみじん切り。何を考えているのか顔色までは読めないが、その格好が。丁寧に梳かれた髪はさらさらと艶を放ち、身に着けているのは女物のエプロンで、それをどうこうするのも面倒だったのか、そのまま現れた彼が無言で米を研ぎ始めた時には、笑い死ぬかと思った。
「………」
 まだ小刻みに身体を震わせているシュシュを、彼は一瞥もしない。

 その頃、厨房のとある窓の外。
 道端の蒲公英をぶちぶち千切りながら、ふくよかなリザードマンが打ちひしがれている。
(「ラー油……おら騙されたべ……」)
 放心状態のアカネ(a43373)の心は田舎を駆ける。
 中には自前の調理道具を持ち込む程、料理が得意な冒険者も混ざっている。彼らが自分で使う調味料の中身の確認を怠る事はなく、悪戯を仕掛けた所で未然に防がれていただろうが……何にせよ今更現場に顔も出せない。
 遠い二階の窓を見上げ、彼女は揺れ惑う想いを花に問う事にした。愛するか憎むべきか。
 蒲公英の花びらをむしりながら交互に唱える言葉は、先の視えない花占い。

 ――へぶっ。
「あー……何か、軽……っ?」
 変なくしゃみをして起きたグラツィエルが、違和感の正体を確かめる様にまず触れようとした先には何もなかった。ソードホルダーごと外された剣は壁際に在る。
「……。普段、剣でも抱いて寝てるのか」
「――あァ? 何言ってンだ。って、あれ。此処ァ……ひててててッ!?」
 部屋に居座りグラリア(a44018)は、手持ち無沙汰にグラツィエルの頬をつねり上げていた。
「弱い癖に前線に出るからこんな大怪我をして……」
「痛つつつ有り得ねェ! 有り得ねェだろって…! あ、メガネもねェ!」
 グラリアの手を振り解いたグラツィエルは「メガネが!」だの、横で寝ているメロディを見て「誰か居る!」だの一通り大騒ぎした後、枕元のサイドテーブルにゴーグルを見つけて胸を撫で下ろした。
「で、何だって?」
 改めて聞く姿勢を作られても繰り返すつもりはなかった。自身も重傷を負っている以上あまり大層な事も言えない。再びベッドに寝転がるグラツィエルの足先がベッドの端からはみ出しているのを見、
「……少しは自覚したら? 縦幅」
 堪え切れずにグラリアは呟いた。

●お粥が出来た!
 それぞれが特製の粥を作ろうと心血を注いでいる厨房の片隅――フォミリンスのメモを片手に、粥作りを手伝っていたメビウス(a35783)は、最終的な味の調整にかかっている。彼女が鍋に掛りっきりなのを良い事に、ふらりとその場から消えようとしたイャトの尻尾をナオがむんずと掴まえた。
「に゛ゃあ!」
「あ」
「――あ」
 口を押さえて立ち尽くすイャト。
「……にゃにする――」
 尻尾を握られて力が入らないせいで、特定言語の発音がおかしな事になっている。が、努めて気にせず、ナオは自らが守りをしている薬膳粥の味見。うむ、と頷いてクコの実を散らした。
「持って行っておあげなさいな。――ちゃんと完成させて、そのお粥。ね?」
「………」
「……セレーネさん?」
 お粥に添える季節のもの、菜の花のお浸しをヴァイナ(a15850)と共に小皿に盛り付けていたセレーネの眼光がきらり。彼女はしかと聞き耳を立てていたとか、いないとか。

「ん? ガルスタさんも何か作りに来たのか?」
 足音を忍ばせてやって来た厨房で、知り合いと鉢合わせてしまったガルスタ(a32308)は一瞬肩を竦めたが、それがテンユウ(a32534)だと解ると、けろりと開き直った。
「いや、まさか。……上で寝ていたんだが、小腹が空いてな。美味そうな匂いに呼ばれて――」
「それはまた、狙い済ました様なタイミングだな」
 丁度、頃合に煮えた粥。互いに大怪我をしているというのに、こういう時は元気な時の数倍腹が減る気がする不思議。かき混ぜると刻み葱の間に肉団子がごろりと顔を覗かせる。良い水を使っている贔屓目を抜きにしても、美味くない訳がない。「滋養にも良いぞ」とテンユウは、ガルスタの肩を叩いた。

 ――仕上げに青葉を加えて『あまり煮込み過ぎない様に』。
 ほとんど最後はメビウスが作った様な物だが、本人はあくまでも手伝っただけのつもりでいた。ぐつぐつと美味しそうな音を立てる鍋を前に、彼女はイャトの様子を窺う。
「あの……イャトさんのお粥、私にも……た、食べ、……食べ……っ」
 口ごもる彼女。癒えない身体で頑張りすぎたのか、それ以上に恥ずかしかったのか、最後にはとうとう顔を真っ赤にして倒れてしまった。その身体を支えてイャトは、やれやれ、と嘆息。
 そして言うのだ。
「……手が空いていたら誰か、この女を部屋に運ぶのを手伝ってくれないか」

●お粥を食べよう!
 明けたというには遅い朝。宿の一室で――
 ザスバ(a19785)はカーテンを開ける音と、そこから差込む光の目映さを瞼に感じて目を覚ました。
「お早うございます」
 カタン、と盆を置く音。ふわりと香る柔らかな湯気の匂いと聞き慣れた声に口元を歪める。
「もう昼だな」
 明るさで解る。寝過ぎたか……と思っていると、ヴァイナがくすと笑みを零す気配。
「朝餉をお持ちしました……傷の具合はいかがですか?」
 具合を問われて意識する傷の痛み。敵軍勢への憎さもあって、疼痛は中々治まってはくれない。
 が、昼まで休んで、至れり尽くせり――美味そうな粥とヴァイナを見ていると……
「悪くねえ」
「は? それは――」
 気にするなと手を振ろうとして、ヴァイナに止められた。彼女は粥を匙でひと掬いして自分の息で冷まし始める。ザスバは妙な気恥ずかしさを覚えたが、幸い他の奴らは別室だ。
「………」
 あーん、と匙をザスバの口まで運ぶヴァイナの頬も心持ち紅く見える。
「……いかがですか?」
「ん、うめえ」
 その一言にヴァイナは微笑んで、「傷が治るまでは安静にしていて下さいね」と言いながら、その間の禁酒に釘を刺すことも忘れなかった。

 開いた扉を横切って、隣室にセレーネがお粥を運ぶ姿が見えた。
 身体の内に染み込む様な、温かくやわらかなお粥の優しい熱が広がる。
「んー。……美味いなぁ」
 何故かグラツィエルの声のトーンが下がった気がして、シュシュは首を傾げる。労いと共に近況を告げ、その事が何か翳りを招いてしまったかと訝ったが、「何?」と向けられた笑顔にその影はない。
 乳粥に始まり、徐々に量を増やして色んな種類のお粥を食べる。ベッドの上で気を抜いてほのぼのしているグラツィエルの隣に座り、一緒にお粥を食べながらリリエラは大仰に溜息を吐く。
「まったく。私の周りには無茶しぃが多くて困りますわね」
 角の取れた瞳に、ゆるり、と見返されてリリエラは焦った。
「な、何ですの?」
「うん。君もね」
 言葉少なに目を伏せるグラツィエル、どうやら彼の目も節穴ではないらしい。
「……。あ、そういえばそのブーツ」
 リリエラは話題を逸らして誤魔化した。
「よーし、グーぱん。何も言わずにこれを食べるんだ!」
 ジーニアスがお粥と共にやって来た。カリカリのベーコンとキャベツ炒めが乗っかっている。療養食を作ってもらった記憶がなくとも、気持ちは込められる。心配している誰かの事を忘れないで、と。
 「絶妙」とか呟く輩に「何も言うなって言ったのに」とジーニアスは八つ当たり気味にツッコんだ。

 小さな器が空になる。ルシエラは、「おかわり、する?」とイャトを見上げた。答えない彼の視線の先には、怪我はしていてもいつも通りの冒険者達の姿。感慨に耽るほどそれは長い時間ではなかったが、ルシエラはかけがえなく思っていた。
「イャトさ…霊査士さんは、いっつも待ってる側だったね。心配させてたら、ごめんね?」
 ぽつりと呟けば、イャトは相変わらず淡白な答えを返してくる。
「どうという事はない」
 それが自分の仕事の一端で、今の自分に出来るのもそれ位だと思っている。痛くも痒くも無いと言わんばかりの語調の裏で、帰還を信じて疑わないからこそ揺るぎもしない声音で、彼は言い切った。
「お前達が還らなければ、困る者が大勢いるからな」
 私情の見えない返事。

 ちなみに。
 イャトが作った粥は美味かった。戦々恐々としていたティトレットもようやく笑顔を零し、メビウスやメロディらもそれをしっかり堪能したが、一人だけトドメを刺された様にベッドに崩れ落ちていた。彼が旨としている悪食上等の心には、美味しいお粥達は高尚過ぎたのだ。
「文句なら、ノリが良すぎるこいつらに言え」
「………」
 美味しいお粥を作れたのは冒険者達の協力があったからこそ。
 せめてもの救いは、次にまた同じ様に作れる保障は何処にもないという事、だろうか。
 十拍戯剣の意に副う結果にならなかった事に、少なくともイャトは満足していた。
 皆の善意の協力に感謝を。

 エプロンを着けたままでいる事に本人が気付くのは、果たしていつの事か。


マスター:宇世真 紹介ページ
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星影・ルシエラ(a03407)  2009年12月19日 16時  通報
なごやかに楽しいお粥作り。宙でクロスされた手も好き♪
捨てたはずの感情ーなら、
感情は捨てるべきだったって思う傷(傷にあてる言葉は何をセレクトかなぁ?)が残ってるのかな
霊査と帰り待ちの日常どんなかな?霊査士さんって思った。

ルシは、しっとりずっしり待つのは無理だし、
的確に細かい情報を逃がさぬようにも冒険者に伝えられない。

冒険者より、霊査士(+感情捨てる)の方をイャトさんは選んだ
選べるのは、すごい。 …