<リプレイ>
●ひととき 一人の冒険者は、お気に入りの窓から外を眺める。流れる雲は緩やかで、だけれど行き交う人々はどこか忙しく。その対照的な動きに少し面白さを覚えながら、軽く腰を掛け、肘をつきつつコーヒーを口に含む。 (「……少し、濃すぎましたか?」) くるくるとカップを回しながら、ゆらゆらと波立つコーヒーを眺める。それもまた彼にとっては、素敵な日常の一コマ。向かいの家には、窓枠に腰を掛けながら本を読んでいる冒険者の姿が見える。 一日が、始まる――
●おさんぽ〜街〜 パタンッ、と扉を閉めるユバ。傍らにはスケッチブック。 「それでは出発なのです」 トテトテと歩き始める。と、早速なにやら前方で大荷物を抱えた冒険者が目に入る。 「これ、もう少し安くならないのかしら? 余を誰だと思って?」 既に両腕に抱えている荷物は彼女の限界を超えているようで、時折ふらついていたりもするが、それでも眼は懸命に服やアクセサリーを追う。 (「うわぁ、すごいおしゃれさんなのですね」) きらびやかにキめたその冒険者に少し感心しながら横を通り過ぎる。 「よっ! そこの嬢ちゃん! かわいいからクッキーあげるよ!」 声がした方を振り向くと、ニコニコ笑顔でクッキーを差し出す冒険者の姿。 ちょうど屋台を出している所だったようで、その周りには人だかりが出来ている。 「あ、は、はい。あの、おいくらですか?」 ユバは突然のことに、身体中をぱんぱんと探る。 「はは、いいっていいって。タダだよ!」 「そ、そんな、悪いです!」 「気にすることはないよ! ほら!」 「あ、う、むぎゅ」 頭をくしゃくしゃと撫でられながら手渡されるクッキーの袋。少し触れた手が暖かい。 「とても美味しいです」 ポリポリとクッキーを食べながら歩く街角。 行く先ではオープンカフェでのんびりとアイスティーを飲んでいる冒険者がいたり、二人であーでもないこーでもないと顔を見合わせながら店先をのぞいている冒険者も見える。 「さて、誕生日プレゼント……流石に8歳は守備範囲外だしな」 「……我が8歳のときに貰って嬉しかったもの……練習用の木刀か? ……何か違うような……」 (「ふふ、仲がよいのはいいことなのです」) そんな二人の会話を聞きながらユバは少し微笑む。 「これください」 書店では『元祖リゼルの拳〜暗黒黙示録〜』を手にとり、店員に差し出す冒険者の姿。 (「あれは有志さんが作成したものですね。ユドーフさんも人気なのです」) それはユドーフ純正のものではないが、売れ筋なのだ。 (「私も今度読んでみるのです」) ユバは一つこくんと小さく頷くと、街を後にした。
●おさんぽ〜森〜 ガサガサガサッ 「ふわっ、な、なんでしょうか」 突然木立の中から飛び出してくる冒険者。 「うわっと! 大丈夫ユバさん? 怪我は無い?」 額に汗を光らせながら爽やか笑顔で問い掛ける。 「あ、私は平気ですが……」 視線を向ける。 「ゴメンネ。驚かせちゃったね。あ、僕? 僕は日課の鍛錬中。二山走って越えて戻って来た所だよ。これからもう少し森の中の泉に行ってそこで剣の型をさらってからまた走って戻るんだ〜」 タオルで汗を拭きながら答える冒険者。 「あ、でもみんなには言わないでね。こういうのって人に知られるのは何か恥ずかしいよ〜」 少し照れたように頭をかきながらそっぽを向く。 「は、はい、大丈夫です! 誰にも言いません!」 両拳をぐっと胸に押し当て力強く頷くユバに、にこっと笑顔を返すと、 「じゃ、僕はまた行くね! ユバさんもお散歩楽しんでね! バイバ〜イ♪」 と、その冒険者は再び森の中に消えて行った。
ふと眺めると2匹の猫と一緒に仲良くお弁当を食べる冒険者の姿。きっとその後はぽかぽか日向ぼっこをするのだろう。 (「猫さん可愛いのです。お邪魔したら悪いですね」) 猫に軽く手を振りながら通り過ぎる。 道行く先では本を読んでいる冒険者がちらほらと見える。傍らにはお茶であったりお弁当であったり。皆それぞれ思い思いの本を手に、麗らかな午後を楽しんでいる。そんな中ユバは、お互いの好きな本を語りあったり、サンドイッチや自家製ブレンドハーブティーの月香茶を御馳走になったりと、普段は依頼でしか顔を合わせない冒険者達と、別の時を楽しむ。 「リゼルはグドンの…を、あたかも…のように…に…うおぉぉぉぉ!! わかんねぇっス! 読めねぇっス!」 ばっさぁ、と本を投げ出す音と声。 (「これは……」) 声がしたほうをそっと眺めると、頭を抱えながらもう一度本に挑もうとする冒険者の姿が見える。 「そのグドンの…は、…にまみれ、あたりは…の…いがたちこめている…うおぉぉぉ!」 (「ふふ、がんばってください」) くすりと笑う。 熊と対峙する一人の冒険者。息を飲む瞬間。ジリジリと円を描くように位置を変えつつ…… 「えいっ、ほっ、えいっ、ほっ」 ダンス勝負。 ズコーッ、ドタン その場に倒れるユバ。 「あ、やっほー♪ 何してるのー?」 その音に気がついた冒険者はぶんぶか手を振る。 「あ…お、お散歩です…」 腰に手を当てながら立ち上がるユバ。 「そっかー。あ、そうだ、絵描いてるって聞いたからこれあげるねー」 そう言うと冒険者は懐から画材道具を取り出す。 「あ、す、すみません! ありがとうございます! 一生懸命練習します!」 「勝負に勝ったら蜂蜜貰って持っていくねー♪」 という声に見送られながら更に進む。 日々を森の中で過ごす冒険者は多いようで、大樹の木陰に座り込み、磨きかけの骨と布を両手に一人でぼけーっと虚空を見上げている冒険者、弦楽器を練習している冒険者、動物達と歌を歌っている冒険者、迷子になって泣きそうになっているにも関わらず強がる冒険者、皆それぞれの日常を楽しく(?)過ごしている。 「よろしかったら、しばらくご一緒しませんか?」 子供達と紙細工を折っていた冒険者が不意に話し掛ける。 「このお姉ちゃんは霊査士さんなの。困っている人や泣いている子がいるのを遠くにいても見ることが出来る、とっても偉いお仕事なのよ」 その冒険者が子供達に、そうユバを紹介すると、所々から「すげー!」「かっこいいー!」という歓声があがる。 「わわ、私はそんなに凄いものではありませんので……」 両手を振りながら照れるユバ。 「うふふ、さあ、みんなで患者さんの為に紙細工を作りましょうね?」 「はーい!」という元気な声と共にその輪の中に入るユバ。
途中、「少しおすそ分けしますよ」、と黒ずくめの冒険者から木の実をもらったり、「こんにちはなのだ♪ これあげるのだ♪」、と薬草をもらったりと、だんだんと手荷物が増えてゆく。 (「みなさん、ありがとうございます」) 少しずしりとするカバンを抱えながら歩き続ける。
●おさんぽ〜川〜 さらさらと音を立てながら流れる川。まだ少し水温が低いせいか、先程よりは周りが涼しく感じられる。 「今日こそ釣り上げたるっ、ぜよー!」 上下左右に釣り竿を振り回されながら賢明に竿を操作する冒険者。 「そろそろ大人しくお縄にかかるぜよー! よー!?」 ドポンッ (「落ちました」) 妙に冷静だなユバおい。 「うわ、ゴボガボ、ぜ、ゴボ、よー……」 そのまま下流に流されていく冒険者よ、永遠に。 周りにいた冒険者は、「またか」といった感じでそれを眺めている。どうやらいつものことのようだ。 軽く流され切ったあと、各々また本を読んだり猫と遊び始める。 「焼きたてのお魚、良かったら食べますか? よろしければみなさんも」 そう言いながら串に刺した焼き魚を5、6本持つ冒険者。香りたつ塩の匂いが、食欲をかきたてる。 「あ、美味しい〜! ほら、美味しいよね!」 猫を連れていたドリアッドの冒険者は、少し猫にお裾分けをする。 「よーし、よーし、そのままそのまま……」 もう一人、猫を連れていた冒険者は猫が魚に気を取られている隙に後ろから近付く。が、 ガバッ! サッ! 「あ、こら、鷹追い! 待て!」 にゃ〜〜ん。くあぁ。 鷹追いと呼ばれたその猫は一つ大きく欠伸をするとそのまま走り出す。 「あ〜!」 その後を追う冒険者。彼はきっと今日もまた猫を洗うことができないであろう。 「御馳走様です。とても美味しかったのです。私はこのまま少し上流に行ってみます」 ユバはそう言うと、上流に向かって歩き始める。 バシャーン、バシャーン 滝の方から音が聞こえる。 (「……? なんの音でしょう」) 音がする方を見ると、一人の冒険者が滝を蹴っている。 (「鍛錬の最中なのですね、邪魔をしたら悪いです」) そっとその場を立ち去ろうとするが、気配を感じたのか、その冒険者がユバに顔を向ける。 「あ、ご、ごめんなさい。お邪魔をするつもりはなかったのですが……」 申し訳なさそうにお辞儀をする。 「…いや…別に…構わない…」 その冒険者はそう告げると、また黙々と滝を蹴り始める。照れ隠しなのか、さっきよりも少し激しく。 (「がんばってください」) ユバは心の中でそう告げるとその場を後にした。
●おさんぽ〜丘〜 「風が気持ちいいです」 さらさらと撫でる髪をそっと抑えながら歩くユバ。 「あら、霊査士の方ですの? いつもお仕事お疲れ様です、ご一緒にお茶でもどうですか? とっても美味しいですよ。やっぱり春は素敵ですの〜」 にこにこと話し掛ける冒険者はちょうどティータイムだったのだろう。紅茶セットを開き、お菓子が並べられている。 「あ、ありがとうございます。でしたらちょっとだけお邪魔させてもらうのです」 ユバはそう言うとそそくさとスケッチブックを取り出す。またお礼に似顔絵を認めようというわけだ。しかしそんなユバに忍び寄る一つの影。 「ん、む、なかなかうまくいかないのです」 シャッシャッと何度も線を引く。 (「にやり」) ポンッ(肩に手を置いて) 「ユ〜バ〜ちゃん! こんにちは!」 「はっ、へっ、へぶっ!」 突然の後ろからの襲撃に思わず椅子から転げ落ちる。 「あら〜、びっくりさせちゃったかしら〜ごめんなさいね〜」 そんな様子を楽しそうに眺める襲撃者。 「うう、だ、大丈夫です」 パンパンと誇りを払いながら立ち上がるユバ。 「うふふ、ユバちゃん、これあげるわ〜」 そう言うとその冒険者は白い花で編んだ冠を、ユバの頭にそっと載せる。 「あわわ、ありがとうございます!」 一生懸命お辞儀をするユバ。落ちる冠。 「あらあら〜」 くすくすと笑いながらもう一度載せる。 そんな二人のやりとりをにこにこ眺めながら、 「よろしければあなた様もご一緒にいかがですか?」 と、声。 「あらいいんですか〜? それじゃあお言葉に甘えて〜」 そして二人の冒険者と、少しずれた冠をのっけた一人の霊査士は楽しくティータイムを過ごした。
●おさんぽ〜酒場〜 「ギャンブルはビビッた方が負けんだぜ? つーわけでレイズ」 酒場はギャンブルであったり、ギターを弾きながらゆったりとしたバラード調の歌を歌っている冒険者がいる。 「あ、ユバさん、いらっしゃいませ! 今日は何かの依頼かな?」 バーテンダーに扮した冒険者が、お盆片手に問い掛ける。 「あ、いえ、今日は違うのです。お散歩の帰りなのです」 「へ〜、そうなんだ〜。僕も今日はここでお手伝い中なんだよ♪」 そう言うとガッツポーズを取る。とその時、 「すまない、姉を探しているんだが、何か知らないだろうか。名前はエーディットと言う。深緑色の長い髪に、桃色の薔薇を咲かせている。もともと歌や楽器が好きだったから、おそらく吟遊詩人あたりになっていると思うんだが」 と、焦ったように問い掛けてくる冒険者。 「エーディットさん……ですか。うーん、お名前はわかりませんが、楽器を奏でている女性の方でしたら森にいらっしゃいましたけけけど、どどど」 「本当か!? 何所だ、何所で見た?」 ユバが言葉を言い終わる前に肩を掴まれゆっさゆっさと揺さぶれる。 「あああ、もも森の、おお奥ですすす」 「…ありがとう、恩に着る。…姉さん、やっと見つけた…」 そう言うとその冒険者は感謝の意を示し、外に飛び出して行った。 (「お姉さん、見つかるとよいのです」) ユバは少し乱れた服を直しながらその背中を見送る。
「っかーーっ! …やはりこっちの方が酒はうまい!!」 カウンター席で酒を煽りながら至福の笑みを浮かべる冒険者。 奥の席ではリュートで素敵な音色を奏でている冒険者もいる。 「何故ワシの料理が先でないんじゃ! 女将を呼べ!」 突然激昂する白髪交じりの男性。 「うぬ、ユーザン!!」 その男性に応戦する若い男性。 「……」 そんな様子を、フォーク片手に呆然と眺めている一人の冒険者。どうやら料理勝負の審査員をしているようで、先に若い男の料理に手をつけたことが白髪男に気に入らなかったらしい。 周りにいる冒険者達は、「いつものことだ」といった感じで、特に気にすることもなく、隅でお茶を飲みながら本を読んでいたり、ピコピコハンマーをポコポコ叩きながら、「暇だよぅ〜」と、二人で会話をしている。 「音は心を奮い立たせる、このサーガを聴く…酒は喉と心を潤し、新たな冒険へと誘わん」 舞台では激しく高らかに、だけれど明るく舞いながら歌う冒険者の姿。 酒場は人で入り乱れ、いつでも喧騒にまみれているが、ここに集う冒険者達は逆にそれが心地良いのかもしれない。 ●おさんぽ〜再び街〜 「あら、ユバさん。今日はお出かけかな?」 小さなお揃いの籠を持ったペットのペンギンと一緒の冒険者。 「あ、はい。暖かかったので少しお散歩をしてきたのです」 「そっかー。にふー。私はお夕飯のお買い物をしてたの。今日はお鍋で湯豆腐さんですよ。ダシ汁が決め手だね」 そう言うと包みを持ち上げる。 「あ、湯豆腐は美味しいです。大好きなのです」 あんなに色々食べたのにまだ興味を示すユバ。 「うん! 今度良かったら来てね。好きなもの、一緒に作って食べよう」 「はい、ありがとうございます!」 「それじゃ、またですよ〜♪」 ペトペト歩くペンギンを連れながら帰ってゆく。
「……ふぅ、もう夕方です。家に帰るのです」 ユバはそう呟くと家に向かって歩き出した。 ●一日のおしまい ○月×日 天気 晴れ 今日は天気が良いのでお散歩をしてみました。 春の訪れを至る所で感じることが出来て、心がウキウキしてしまいました。 普段みなさんが何をされているかを知る事も出来て、とても良かったです。 書き溜めたスケッチブックは後程皆様にお配りします。 そうそう、色々な物を頂いて、少し太ってしまいそうです。気をつけるのです。 ふぅ、少し眠いです。今日はもう寝てしまいます。 おやすみなさい。また、明日。 パタン――

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参加者:43人
作成日:2006/04/09
得票数:ほのぼの48
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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