【災厄と僥倖の日々】白い断崖に咲き誇る街



<オープニング>


 飄々とした表情を浮かべる男がひとりに、口元に仄かな微笑みを湛えるだけの男がひとり、冒険者の酒場の隅に置かれた円形のテーブルに陣取っている。まず、口を開いたのは前者だった。
「他の連中も集めるんだろう?」
 烈日と晦冥の旗手・パオロは冷め切った珈琲の、少し濁った褐色の水面を見つめながら言った。
「もちろんそうですが、あまり時間がないのです」
 白い湯気のたつ赤い茶をひとくち唇に含んで、薄明の霊査士・ベベウは友人である武人に言った。
 その後、席を立ったパオロが集めてきた冒険者たちに、霊査士が告げた依頼は、次のようなものだった。
「白亜の岩壁、その頂上に栄える街へと赴いて、月影に乗じて現れるであろう複数のモンスターを討っていただきたいのです。その数は三、厳しい戦いとなるでしょう」
 魔物たちは北、南、そして、西から姿を現し、まるで街の中心部を目指すようである、とベベウは言った。四角い建物がひしめきあう、その美しい集落は、周りを急な傾斜の崖に囲まれている、とも。
「北から現れる魔物に、道らしい道は用意されていません。おそらくは、岩壁を這うようにして登ってくることでしょう。対峙する方々には、奈落の縁に建てられた建物の屋上を足場とし、魔物を待ち受けていただく必要がある。街の南側には、幅が十メートルもある大きな階段が設けられています。戦いの場となるのは、その下段から中途にかけてといったところでしょうか。傾斜は急であり、足場としては優れてよいところとは申し上げられません。そして、最後に西側なのですが、そちら側には大地の深い亀裂が……峡谷が口を開けているのです。谷底へと降りたち、そこで魔物を捕捉する必要があるでしょう」
 一息ついた後、ベベウは言った。
「魔物の姿形、そして、その力に到るまでが、驚くほどよく似ているようです。少年のような容貌であること、全身が灰色の鱗のような皮膚に包まれていること……。その力についてですが、複数を絡めとる力を持った糸を口のような器官から吐き、一本だけ生えた鋭い爪から風のように空を走る斬撃を放つ……さらには、相手の守りを透かすように無力化してしまう、不可思議な斬撃をも用いるようです。状況に応じて、その力を最大限に活用した戦いぶりを披露してくるものと思われます。十分にご注意を」

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参加者
愛煙家・ビリー(a03028)
夜闇を斬り裂く連星の騎士・アルビレオ(a08677)
風舞彩月・シリック(a09118)
食医の紋章術士・アルト(a11023)
雹牙絶影・ユウ(a15210)
煉刃暗手・セイジ(a15891)
不完の盾・ウルカ(a20853)
風舞淡雪・シファ(a22895)
天黎月蒼・ラピスラズリ(a23356)
凶殲姫・ルルティア(a25149)
氷雪舞の狩人・ヒミカ(a25982)
守護と慈愛の拳闘淑女・クレア(a37112)
NPC:烈日と晦冥の旗手・パオロ(a90141)



<リプレイ>

●北の奈落
 月影を浴びて浮かびあがる黒い波間――吹き抜ける風に揺れる木々を、足元に広がる遥かなる眺めに見て取りながら、金の髪をした青年は呟いた。
「やぁ、絶景かな絶景かなと、うんいい眺めだ。これなら依頼がなくて来たっていいよなぁ」
 夜闇を斬り裂く連星の騎士・アルビレオ(a08677)は、対となった双剣を腰の両側にさげている。彼に対し、諫めるようでも、面白がるようでもある視線を傾けたのは、烈日と晦冥の旗手・パオロだ。彼らの足場は平らな屋根の上だった。そのすぐ向こうには、絶壁が真っ逆さまに墜ちる奈落がある。
 片膝をつき、すぐ脇に白の毛並みを凍りつかせ、朱の毛並みを燃え盛らせる獣を従えて、闇を湛える奈落を見つめるのは雹牙絶影・ユウ(a15210)だ。その傍らには、口元に細いシルエットの葉巻を加えたまま瞳を閉じ、第二の視覚から届けられた映像を脳裏に揺らめかせる、愛煙家・ビリー(a03028)の姿がある。彼は水晶の胴を持つ従者を、塩の結晶から生成、岩壁を降るように命じ、やがて来たるであろう灰色の少年の姿を探していた。
 火の粉を宙に舞わせ、墜落する煙草の行き先へ舌打ちを向かわせると、ビリーは瞳を開き、ユウたちに告げた。
「確認した……半端じゃねえ勢いで……来るぜ」
 
 屋根の縁へと踵をかけ、身の丈ほどもあろうかという弓を引き絞り、ユウは雷光にも似た輝きを発する矢の狙いを、そそり立つ絶壁を易々と駆けあがる小さな影に定めた。死雹憐歌の銘を持つ大弓が震え、月の光を含んで瞬く弦が激しく振幅し、榛の形をした残像を宙に浮かべる。矢は壁面に沿うように突き進んでいた。鱗を貫き、肉を穿つ鈍い音が、足元から聞こえた。
「さて、まずは射撃戦になるか……?」
 そう呟くなり、アルビレオは連星を左右の腰から抜き、その刀身で体の両側に半円を描いたかと思うと、弧状の線を引くようにしてサーベルで空を薙いだ。風の太刀が白亜の面をさらうようにして飛び、月明かりを浴びて華奢にも見える背を切り裂く。
(「冒険者の信念やら矜持も、モンスターになっちまえば消えうせちまうってか……哀れなモンだな……。まぁ、同情の必要なねぇだろう……殺らせてもらうぜ……」)
 口元の縁に薄い笑みを湛え、ビリーは左腕の肘までを覆う、漆黒の手套に守られた指先に力をこめた。無秩序に折り曲げられた指先ら空へと向かうと、掌中から透明な何かがこぼれ落ち、それは輪郭を膨張させながら数本の足を生やすと、岩壁に張りつく敵に襲いかかった。二匹の透けた胴を持つ蟲は、絡み合うようにして岩肌を降り、鱗に包まれた魔物の肌に、数十もの爪先を次々と突き刺していった。
 炎の粉が宙を舞うように、身を反らせたアルビレオの肩から、鮮血が散った。その次の瞬間、彼の足元に二本の鉤爪が現れ、灰色の躯が弾けるように翻されて、冒険者たちの背後に降り立った。バーサーカーアクスに青い光を走らせ、パオロが左右から両断するようにして魔物に斬りかかる。だが、その斬撃は魔物の鉤爪によって受け止められてしまった。
 漆黒の左腕に青い木の葉を巻きつかせるビリー、ユウは掌に荊の生えた矢を生成している。そして、アルビレオは連星を空へと突きたてていた。
「さて、ここからが本番だ。行くぜ」
 目も眩まんばかりの閃光が発せられても、少年の姿をした魔物は瞬きすらみせなかった。灰の細かな鱗に縁取られた双眸には元より、目蓋となる薄い皮膚がなかったのである。
 
●南の大階段
「夜空が綺麗ですわ、のんびりと眺めていたい所でございますが……まずはお仕事を遂行せねばですわね」
 青白い頬の月から、その表をかすめていた雲が流れ去って、より強い輝きが降り注ぐ。まるで朝露を含んだかのように艶やかな黒髪に、氷雪舞の狩人・ヒミカ(a25982)の顔容は縁取られ、瞳や唇は典雅な微笑みを湛えていた。
 口元に柔らかな笑みを含んで、月を見上げていた少年は、朱色の弓を手にする射手が立つ方へと振り返った。密集する四角い輪郭の建物と、それらを繋ぎ合わせる鎖の輪のような濃緑の樹木、微笑む少女、それに、白亜の石材からなる大階段が伸びる眺めが、蒼月の翳に耀く黒剣・ラピスラズリ(a23356)の瞳に宿る。平穏な人々の暮らしを脅かせるわけにはいけない――かすかな震えを含む声で、少年は言った。
「守れなかった街も人も……もう見たくはありませんから……」
「人々の穏やかな暮らしを守るのが、私たち冒険者の役目なのです!」
 左右の拳を天へと突きたて、漆黒の瞳に真摯な光を湛え、高らかに言い放ったのは、ヒトの武道家である少女……愛の拳を持つ乙女・クレア(a37112)だった。そんな彼女の視線に捉えられ、風舞彩月・シリック(a09118)は羽で飾られた帽子をわずかに浮かせながら、静かに首肯してみせた。つばの端を指先に含み、その反り具合を確かめるようにしながら、彼は自らの矜持を笑っていた。
(「翔剣士たる者、どんな場所でも華麗に戦わねばなりません。こんな拘り……パオロさんたちには、多分解らないとは思いますが……」)
「皆さん!」
 声を発するなり、傍らに置いていた小振りの盾を掴み、腰掛けていた石段から立ちあがったのは、食医の紋章術士・アルト(a11023)だった。半白の美しいブロンドの一房を、エルフらしく尖った耳の裏側へと撫でつける指先は、柔らかな鹿革で仕立てられた手套に包み込まれている。
 清澄な光を宿す青い瞳で、彼は見つめている。白亜の石段を、灰色の小さな身体が獣のごとく這い、凄まじい勢いで駆けあがってくる――。
 
 風が切り裂かれる呻りのような音がして、身をひねったクレアから、円状の影が飛びたつ。石段の中途に展開された戦場を、巨大な円を描くようにして旋回、灰の鱗に包まれた魔物の体躯を打ち据え、主の手元へと戻ったのは、十字を象る投擲用の武具だった。
 敵がこちらの守りを透かすのなら、こちらも――。与えられた『春風の輪舞』という名のままに、白銀に青い石での装飾が施されたシリックの曲刀は、目にも鮮やかな振る舞いから虚空に、弧状の残像を刻んだ。瞳には宿らぬ衝撃の太刀が階を降り、少年の姿をした魔物は一度、後方へ大きく身をのけぞらせた。
 月影を浴びるように結ばれていた甲を裏返し、柔らかな仕草でアルトが指先を広げると、掌中から無数の緑が溢れでた。それらは中空に見事な螺旋を描きながら流れ込み、魔物の周囲に渦巻いて、その身体を束縛の帳に封じ込めた。
 朱色に染まる刹那の弓から、張りつめた弦が冷たい響きをたてる。ヒミカが射た矢は、闇色の透けた羽根を生やす、相手のいかなる守りすらも貫く力を持つものだった。敵の肩口へと吸いこまれるようにして飛来した矢――その震えを視界の内に捉えながら、ラピスラズリは頭上に構えた黒耀の刀身に、稲妻にも似た青い衝動を駆けあがらせた。黒羽を思わせる弧を浮かべ、振り抜かれた長剣は、細かな鱗に包まれた魔物の肉体を裂き、血肉を露出させた。
 
 石段を少しずつ、登りつめるようにしながら、ヒミカは魔物との距離を保ち、闇色の矢を放ち続けた。魔物の鱗に残された浅からぬ傷口は、けっして少ないものではない。
 唇を大きく広げて、白竜の語り部・ラトはその小さな身体から、広く響き渡る歌声を発している。手首から長く伸びた、魔物の爪によって傷つけられた仲間の身体から痛みを取り除き、心には勇気をもたらす調べである。
 アルトは頭上に、まるで月のように耀う球体を浮かべていた。その胎内に連なる紋章文字を封じ込め、輝きをいっそう強めると、エルフの少年は右手を振り抜いて、球体に傾斜を降るよう命ずる。
 視界の端をかすめ、魔物へと向かった球体が、衝撃とともに閃光となって散る――その輝きを貫くようにして、二体の残影を従え標的へと飛びかかったのはシリックだった。虚と実――三方から一点へと収斂された春風の輪舞による斬撃は、魔物の胸部に大きな裂け目を生じさせ、鱗に縁取られた黒い瞳をこれ以上ないほどにまで見開かせた。
 後方へとよろめいた魔物の身体が、何かに触れて静止した。
「捕まえたっ! 私の前に現れたこと……後悔させてあげますっ!」
 魔物の腰へと両手をまわすなり、円を描く運動でその身を振りまわしたのはクレアだ。凄まじい勢いで放り投げられた灰色の体躯は、石段の下方に叩きつけられ、そこで鈍い音をたてた。
 そのまま段差を降っていった身体から、禍々しいまでの膂力が再び発せられることは、二度となかった。
 
●西の谷底
「……生前、の……お姿残してる……からだと、したら、とても……悲しい、です。……小さい、のに……。終わらせて、あげる……のが、唯一、わたし……に、できる、こと……」
 岩壁に垂らされた縄に身を預け、峡谷を吹き抜ける風に身をもてあそばれる不安定な姿勢ながらも、風舞淡雪・シファ(a22895)は自らの思いをそう語ったのだった。
「少年のような……ねぇ。だが、殺意があるなら、どんな姿してても容赦は……不要だな」
 口元に冷ややかな線を含み、煉刃暗手・セイジ(a15891)はあえて酷薄さを繕い、雪のように白い髪をして不安げな面持ちの少女に告げた。シファは理解しているようだった、瞬きを忘れて彼の顔を見つめながら、深々と肯いてみせる。鼻から抜ける笑いを吐くと、セイジは顎を傾け、先に谷底へ降りるよう少女に伝えた。
「おっと、滑んなよ」
 雑な物言いでシファに告げたのは、ほっそりとした面立ちに眼光鋭い瞳を瞬かせ、口元には深い笑みの亀裂を生じさせる男だった。丸々と剃りあげられた頭部に掌を這わせながら、降り立つのに手を貸してやったにも関わらず、彼はシファと視線を重ねようとはしなかった。
 その名も侠盾・ウルカ(a20853)、ヒトの重騎士である。
 
 疎らな緑がちりばめられた白亜の岩壁、左右に屹立する絶壁をの合間を縫うようにして、川面を清冽な風が吹き抜けた。夜気にせせらぎの冷たさが含まれ、シファの頬をかすめる髪は震えている。白日を思わせる光を瞬かせる輪を、彼女は頭上に浮かべていた。
 黒ずんだ弧状の爪が、両手を柳のように枝垂れさせたシファの身体を貫かんと、怒濤のごとく突きだされた。少女の左腕には、まだ魔物によって引き裂かれた痕が赤々と残っている。だが、風に煽られた木の葉のように身を舞わせると、シファは広げられず束ねられたままの術扇で、魔物の腕を受け止めていた。その瞬秒の後、魔物の身体は後方へと弾かれていた。凪のように静かな構えから放たれた、反撃の衝撃波を浴びたせいだった。
 凶鳥の翼――巨大な影を水面に落とす大鎌――を翻し、斬舞姫・ルルティア(a25149)が怒濤のごとき斬撃を魔物の体躯に叩きこむ。指先を蠢かせながら気を練り上げ、一枚のカードへと仕上げると、セイジは右腕を振り抜いた。不吉な影が浮かびあがるカードは、魔物の胸部を貫き、傷口から灰の鱗へと、黒く滲みでるような刻印を広げた。
 頭の上に浮遊していた羽の塊が、狂ったように繰りだされる魔物の腕に消し飛ばされた直後、ウルカは両肩に衝撃を浴びせかけられた。手首から先が鉤爪となった魔物による斬撃だった。
「……ここで体張らにゃ重騎士の名がすたるわな」
 痛みに口元をひきつらせながら肩をまわすと、ウルカは樺砕きの名を持つ斧を振りあげた。再び彼の頭上には羽の塊が浮遊し、敵との距離を詰める彼の足の運びに合わせ上下した。
 重騎士が放った重たい斬撃が魔物の左肩を砕いた直後、谷底にいくつかの新たな影が姿を現した。風の太刀を放ち、魔物の身を痙攣させたのはシリック、そして、闇色の矢を弓につがえ、声を発したのはヒミカだった。
「月夜に響く弓鳴りの弦を聞きながら、闇にお帰りなさいませ!!」
 矢が突き刺さったままの小さな体躯へと迫り、シファは一瞬の跳躍でその側面へと身を躍らせると、相手の腕を取り、数度の回転によって、灰色をした鱗の身体を川辺に叩きつけた。
 空を掻きむしるようにして、魔物が不可視の衝撃を放ち、ウルカは身を仰け反らされたが、かまうことなく水飛沫をあげながら駆け抜け、樺砕きを再び、灰の小さな肉体に叩きこんだ。
 魔物の躯が傾き、その背後に、鮮紅の弧が揺らめく――。無音の斬撃によって魔物を切り裂き、その命を散らしたのは、紅楼夢を手にして亡骸の傍らに佇む……セイジだった。
 
●東の光明
 月影を浴びてまるで舞い踊るかのような影を、アルビレオは四角い建物の平らな宿に投げかけながら、鋭い爪を振り抜いては彼の躯を裂かんとする魔物の攻撃を、鮮やかに避け続けていた。親友の身体に真新しい傷口が記される度、唄う碧き彗星・ウィンが穏やかな癒しの輝きを広げて彼を援護した。
 南での戦いをいち早く終えた三名の冒険者たちが、集落の北端で戦う彼らの元へ現れたのは、パオロが魔物の肩から青く瞬く鮮紅を散らして間もなくのことだった。水車のように回転された両腕で、魔物の体躯を痙攣的に揺るがしたのはクレア、パオロと同じ剣術で灰の鱗を裂いたのはラピスラズリ、そして、アルトは紋章の力を封じた黄金の球体を頭上に輝かせて――。
 闇色の手套に紋章が瞬く。衝撃を浴び続けてもたつく魔物の側面に、ビリーは佇んでいた。哀れな姿へと成り果てた躯を見下し、彼は左腕を魔物の腹部に叩きこんだ。
 ユウの死雹憐歌から、闇夜を駆けめぐる雷光もさながらの矢が放たれ、魔物は奈落へと通じる断崖の縁に追いやられた。連星を翼のように翻し、紅玉を思わせる瞳で小さな影を睨め付けながら、アルビレオは言い放った。
「見せてやる、風の刃はこうやって撃つんだよ!」
 
 亡骸と化した魔物の躯が、白亜の断崖に弾みながら木々の波間へと消え去る様を見届けると、クレアは屋根の上に手足を広げた格好で寝転がった。
「はぅ……やりましたです」
「そんな格好だと、冷えるんじゃないか?」
 月影に降られるがままに寝そべる少女に、そんないたわりの言葉を口にしたのはパオロだった。そんな彼の肩に手の平を重ねると、年上の友人に対し、アルビレオは親しげに言った。
「お疲れさん、前の時よりずいぶん腕上げたみたいだな。そういやあの時からもう結構たってたんだなぁ」
 その後、しばらくすると、集落の北端に西方から仲間たちがやってきた。
「夜風が心地よいですわね」
 黒髪へと指先で触れながら言ったヒミカに、パオロは「そうだな」と肯いた。そして、シリックの姿を認めると、彼には「華麗に戦えたみたいだな」と笑顔を向けた。
 屋根の縁に腰掛けて、ラピスラズリは眼下に集落を眺めていた。月の輝きを浴びる家並みは、ひっそりと静まりかえり、その佇まいは深閑たる森を思わせた。
「護れたならいいんです。失わずにすんだのなら……」
 やがて朝日が東雲を照らす頃、集落は目覚め、狭い路地は人々の声によって満たされるのだろう。


マスター:水原曜 紹介ページ
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作成日:2006/04/14
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