特大料理を喰らえ!〜花より団子〜



<オープニング>


 春だ。花見の季節だ。
 旅団【動く雑貨屋・アーティファクト】では、旅団を上げての大々的なお花見を行おうと、画策していた。
 どうせやるなら、近場で済ませず、ど派手に思いっきり騒いだ方が良い。どこか、いいか良いところは、無いだろうか? ……あった。遙か海の南、常夏の大地には、満開の桜で視界全てが桜色に染まる森があるという。
「と、言うわけで、【動く雑貨屋・アーティファクト】、春のお花見大会会場は、ワイルドファイアに決定だよっ!」
 旅団長、轟然たる竜の鼓動・ラスティ(a20452)は、高らかに宣言した。
 集まっていた団員達からは、どよめきと拍手が沸き起こる。
「と、いうわけで準備が出来次第、出発だよっ!」

 というわけで、やってきたのは常夏の大陸ワイルドファイア。
 まだ肌寒いランドアースとはうってかわり、陽炎が立ち上るほど、暑い。ついでに地面は熱い。
 そんな灼熱の大地を、テクテク進む冒険者達。道中、巨大野菜を収穫したり、巨大な獣をゲットしたり、それなりに賑やかな道を踏破し、ついに一行の前に、それは姿を表した。
「うわああ!」
 誰ともなく、歓声が上がる。見渡す限り、桜色に染まったその森の姿に。

 ここに、盛大な花見の幕が開いた。

マスターからのコメントを見る

参加者
チョコの人・トウゴ(a07208)
諷意なる時の光輝・ナコ(a15542)
轟然たる竜の鼓動・ラスティ(a20452)
朱き焔・リール(a27896)
お元気料理人・ルーリ(a30381)
鈴鳴姫・リィリ(a31959)
ハロー・エヴリィ(a32715)
堕ちる雫・ルティチェ(a36670)


<リプレイ>

●到着、ワイルドファイア
「ぉぉおおお……ワイルドファイアはでっかいどー!」
「わーい! どこもかしこおでっかーい!」
 灼熱の太陽の下、ちっちゃな鈴鳴姫・リィリ(a31959)と堕ちる雫・ルティチェ(a36670)の歓声が響きわたる。
 遠路はるばる、やってきましたワイルドファイア。
 視界いっぱいに広がる、満開の桜を前に、冒険者達のテンションは上がりっぱなしだ。
「溶ける……。お菓子も……俺も……」
 まあ、例外的に一名、瀕死の声を出している者もいるが。
 極端に暑さを苦手としている、チョコで出来てる・トウゴ(a07208)は、花柄の日傘に身を隠しながら、おぼつかない足取りで最後尾を歩いている。なんだか、そのまま液状化しそうな感じだ。
「おりょ、トーゴたんってば可愛いの持ってんのね〜♪」
 と、轟然たる竜の鼓動・ラスティ(a20452)がつついでも、まともな反応は返ってこない。
「あー……うー……」
 溶けた目で、溶けた声を返すのが精一杯だ。
 それでも遅れずついてきているので、まあ心配は無用なのだろう。
「あれ、そういえば、エヴリィさんは?」
 オッスおら・エヴリィ(a32715)の姿が見あたらないことに気づいた、諷意なる時の光輝・ナコ(a15542)は辺りをキョロキョロと伺う。
 すると、
「肉、獲ったどー!」
 取れたての獲物を抱えたエヴリィが、得意げな笑みで雄叫びを上げ、こちらに戻ってくるところだった。
「わっ、凄いなぁ〜ん。コレなら、いっぱい料理出来るなぁ〜ん」
 目を丸くする、お元気料理人・ルーリ(a30381)に、エヴリィはエッヘンとばかりに胸を張る。

 やがて、一行の前に、薄紅色の林が見えてきた。
 誰とも無しに歓声が上がる。視界に入る木々、その全てが満開の桜という光景は、確かに感嘆を値する。
「やっぱ本物の桜は大きくて、沢山でキレイだねーッ♪ まあ、私の頭の桜も自慢だけどッ」
 ラスティは、帽子を取ると、ドリアッド特有の、花の咲いた頭髪に手をやった。
「はい、とっても楽しみです♪ みんなで一杯楽しんで、一杯美味しい物を食べましょう」
 朱き旋風・リール(a27896)が嬉しそうな声で答える。
 と、ラスティは帽子の中でへたってしまった自分の桜を見つけ、
「おおぅ、大事な桜ちゃんがッ」
 悲鳴を上げた。

●花見だ、カレーだ、フードファイト
「それじゃ、お昼のカレーを作るなぁ〜ん」
 自他共に認める旅団一の料理人、ルーリが腕まくりをして気合いを入れる。
「ラスティさんと、リィリさんと、一緒にお料理するなぁん……って何するなぁ〜ん?!」
「あ〜……至福のひととき〜……」
 いつの間にか、ルーリの後ろに回り込んでいたリィリが、ルーリのノソリン尻尾に抱きつき、スリスリしている。
「なぁ〜ん、逃げるなぁ〜ん!」
 ルーリは一生懸命逃げるが、リィリも同じくらい一生懸命追いかける。
「ああ、ルーリしゃん動いちゃ駄目」

 ひとしきり、追いかけっこが続いた後、改めてルーリはカレー作りに取りかかった。
「はい、コレ野菜です」
 リールが道中収穫した、ジャガイモ、人参、玉葱を差し出す。どれも、ワイルドファイア特産の、巨大野菜だ。
「私もお野菜をお持ちしましたよー!」
 と、続いてナコも、野菜を差し出す。こちらは、どこぞの菜園から拝借……もとい事後承諾で譲り受けた、普通サイズの野菜だ。
 さらに、エヴリィとルティチェの狩ってきた肉を捌き、夜のバーベキュー分を除け、残りはぶつ切りにしてカレー用だ。
「うわ〜! みんな沢山ありがとうなぁ〜ん」
 山盛りの食材を前に、ルーリは目を輝かせて調理に取りかかる。
「流石アーティファクト専属料理人! 私よりも手際がいいねッ♪」
 ラスティの言葉通り、調理の中心になっているのは、ルーリだった。
 ルーリはあまり料理を得手としていないリィリに、火の番をお願いしながら、飯炊きのコツを教える。
「始めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子が泣いても蓋取るななぁ〜んよ。中を見たいという欲望に負けたら駄目なぁ〜ん」
 その隣では、ルティチェが別の鍋で別のカレーを作っている。
 取れたてのまんもー肉にワインをつけ、火で炙ってアルコールは飛ばす。下ごしらえの済んだ肉をカレールーの中に放り込み、ちょっと味見。
「んー、ちょっとこくが足りないかな? あ、トウゴ君、それちょっと頂戴」
「あ? それは、俺のチョコレート!」
 気づいたときには、時既に遅し。ルティチェは、ドロドロに溶けたチョコレートを、お玉ですくい、ヒョイとカレールーの中に放り込んだ。
「うん、良いコク」
「あああ……」
 がっくりとうなだれるトウゴを後目に、ルティチェは満足げに頷いた。
「まあ、気を取り直して調理に掛かるか」
 カレー鍋の中に消えたチョコレートのことは忘れることにして、自分の調理に取りかかるトウゴ。
 道中あちこちで取ってきたフルーツの皮を剥き、盛り合わせを作って小皿に溶いたチョコレートを用意。
 フルーツのチョコレートフォンデュの出来上がりだ。フルーツだけじゃなく、クッキーやポテトチップスに浸けて食べても美味しい。
「ん、そうそう。こうやって切って……」
「んしょ、こう……いったーい!」
 ラスティに指導を受け、野菜を刻んでいたリィリが、包丁で手を切ったらしく、悲鳴が上がる。
 普段モンスター相手に、切った張ったをやっている冒険者でも、包丁で指を切るのは痛いらしい。目尻に涙が滲んでいる。
「料理って難しい……」
 ひょっとすると涙の理由は痛かっただけではないのかもしれない。

「はい、美味しく出来ている! はずなぁ〜ん」
 そう言ってルーリが装うカレー皿から、何とも食欲をそそるスパイスの香りが、立ちこめる。
 昼食開始を告げる言葉は「いただきます」ではなかった。
「ファイト!」
 の言葉を合図に、猛烈な勢いで食べ始めるものが二名。
「この勝負もらっただー!」
 勢いよく、スプーンでカレーを口に運んでいるエヴリィと、
「とっても美味しいです。これならいくらでも食べれるのですよー♪」
 言葉通り、嬉しそうに、美味しそうに、えらいスピードで食べ続けるナコだ。
 フードファイトをしているのは二人だけだが、カレー自体はみんなで食べている。
「うわっ、辛いのは苦手ですが、これなら全然平気です♪」
 一口目は恐る恐る、二口目から嬉々として口に運んでいるのはリール。
「ふはひほも、はんはれー!」
 銀のスプーンを口にくわえたまま、二人のフードファイターに声援を送っているのは、ラスティだ。おそらく「二人共、頑張れー!」と言っているのだと思われる。
 結論から言うと、フードファイトの決着はつかなかった。しいて言うなら「敗者は料理」と言ったところだろうか。
「ゴメンなぁ〜ん、これで最後なぁ〜ん」
 ノソリンに喰わせるほど作ったはずのカレーライスは、見事鍋も釜もスッカラカンになっていた。
「クゥ……」
 最後の一皿を食べ終えたエヴリィは目を回して、その場にバタンキュー。
「ふう、一杯食べましたー」
 一方、ナコは満足げに背中を反らす。
「「ごちそうさまでした!」」
 ワイルドファイアの青空の下、二人のフードファイターの声が唱和した。

●バーベキューと夜桜
 夕日が桜をオレンジに染める中、バーベキューの準備が進む。
「はりきって切るのですよ〜っ!」
 野菜切り係りに立候補したナコが、バーベキュー用の野菜に包丁を入れていく。
 その元気一杯の様子からは、昼間のフードフードファイトの影響は全く見て取れない。
「わっ、これだったら包丁よりも……」
 ワイルドファイア特産、巨大野菜のサイズに目をまくるしながらリールは、包丁の代わりに朱色の巨大剣を構えた。
 ちょっとした岩ほどもある南瓜を、思い切りよく巨大剣で真っ二つに切り飛ばす。
「うん、これでよし」
 ルティチェは、昼の間に、三種類のバーベキュー用のたれを仕込んでいた。あっさり塩だれ、しっかり味噌だれ、そしてピリカラ唐辛子だれ。いろんな味が楽しめるように。
 丸太のテーブルに丸太の椅子。夕食の会場も整い、本格的に日も暮れる。
 キャンプファイヤーに火が灯され、とっぷり日の落ちた星空の下、赤い炎に桜が照らし出される。
 バーベキューパーティが始まった。
「おにくにくにくバーベキュ〜♪」
 楽しげに歌いながら、肉を焼くラスティ。
「はい、これもどうぞ」
 トウゴは昼間に用意しておいた、チョコレートフォンデュをみんなに配る。
 ここでも特筆すべき食べっぷりを見せているのは、昼のフードファイター、ナコとエヴリィだ。
「はりきって食べるですよ〜っ!」
「みんな料理上手だな〜。おらのお嫁さんになっって欲しいくらいだべ♪」
 モリモリ食べる二人の様子からは、昼間の大食の影響は見て取れない。昼と夜とは別腹と言わんばかりの食べっぷりだ。
 食が進むと、話も弾み、笑い声が絶えず沸き起こる。
 そんな中、やおらリィリが手に持つ鈴を鳴らしながら、キャンプファイアの側に進み出る。
「さぁみんな、リリについてきて!」
 今こそ吟遊詩人の腕の見せ所。リィリは見事な声量で歌い、そして踊り出す。
「よし、踊るぞー!」
 踊りには自信のあるルティチェも、すぐに出てきて一緒に踊り始める。さらに、
「リィリちゃんの声、キレイでうらやましいなぁ♪」
 ウットリとリィリの歌声に聞き惚れながら、エブリィも踊りの輪に加わる。
 なぜか、エヴリィの踊りは盆踊りを連想させるがそれもご愛敬だ。楽しいのだから、それで良い。問題はない。
「ほら、ルーリしゃんも」
「なぁ〜ん、踊りは苦手なぁ〜ん」
 リィリに手を引かれ、半ば強引にルーリは連れ出される。
 リィリを中心に歌声を合わせ、踊り、騒ぎ、笑う。楽しい、一時。
「楽しいです」
 ラスティと一緒に踊るナコが、心から言葉が漏れたように、呟きを漏らす。
 そんな仲間達の様子を、トウゴは楽しし下に眺めている。
 ワイルドファイアの楽しい夜は、まだまだ明けない。


マスター:赤津詩乃 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2006/04/24
得票数:ほのぼの13  コメディ1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。