＜Extra Battle！＞
ギーギィはじっとモンスターを睨みつけていた。
ギーギィだからこそわかる、モンスターからの激しいプレッシャー。
（「逃げたら、あかん」）
分かっているはずなのに、体が思うように動かない。
思わず、ギーギィの手は大切な者から送られたアクセサリーへと伸びていた。
（「アーテイはん、あのモンスターを倒すのに力を貸してな……」）
その祈りが、ギーギィに新たな勇気を与えた。
緊張で固まった体をほぐし、いつものギーギィへと導く。
キッとギーギィはモンスターをもう一度見た。
「殺戮ノ宴は起こさせへん！ ……ウチの力は、弱い人々を守る為のもんなんや！」
それに呼応するかのごとく、モンスターは吼えた。
大地を揺るがすほどの、咆哮。
ギーギィはそれを合図にモンスターの前へと躍り出た！
竜の頭部から熱線が発せられる。
閃光！
ギーギィは巧みにモンスターの熱線を避ける。
ギーギィの避けた熱線は空中で一度だけ方向を変える。それに合わせてギーギィももう一度、熱線を避ける。
それだけならまだいい。
今度は怪鳥の頭部から数枚の光る羽毛がギーギィに向かって飛んできた。
ギーギィはとっさに紅蓮の咆哮を使い、羽毛の動きを止める。
もう一度、閃光！
「くっ！！」
ギーギィはとっさに地面に伏せた。羽毛が熱線を浴び、そして爆発したからだ！
爆発が収まったのを見計らって、また接近する。
モンスターはまた羽毛を放った！
「もう、ええ加減にせいっ！！」
ギーギィは一気に流水撃で周辺に舞う羽毛を散らした。
邪魔物がなくなった隙に距離を縮め、モンスターに切り込んでいく！
「はあっ！！」
モンスターを切りつける！
がきぃ！！
ギーギィの持つ剣に強い衝撃が来る。ギーギィの攻撃はモンスターの盾によって吸収されてしまったのだ。
それでも負けじと何度も攻撃していく。
そのたびに盾で攻撃を阻まれる。
否、それだけではなかった！
「！！ しまっ……」
突然、ギーギィの体に激痛が走る！
海蛇だ。海蛇の巨大な口に噛み付かれたのだ！
ギーギィは何とかその巨大な口から逃れようと身を捩るが、思うように動けない。
（「マッスルチャージさえ使えれば……」）
この状況を何とかできるかもしれない。
だが、体の自由を奪われた状況の中ではマッスルチャージさえも使えない。
ほどなくして、ギーギィの体は闘技場の端に放り投げられた。
何とか受身を取り大事に至らなかったが、それでもかなりのダメージを受けてしまった。
モンスターは余裕の表情でまた、熱線を発する。
ギーギィはそれでも、何度もモンスターに切り込み、攻撃の手を休めなかった。
モンスターも執拗に攻めてくる。
羽が舞い、熱線が飛び交い、爆発する。
（「敵は強い」）
モンスターの熱線を避け、幾度となくモンスターにダメージを与えたギーギィは、心の中で呟いた。
このままでは、ギーギィの体力が先に尽きてしまう。
そこまでギーギィの疲労が限界に達しようとしていた。
ギーギィは思わず苦笑を浮かべる。
「それじゃあ……奥の手や……」
一か八かの大勝負。
ギーギィはそれに賭ける事にした。
痛む体を無視して、もう一度モンスターに接近する！
熱線を巧みに避け、飛んでくる羽毛を紅蓮の咆哮と流水撃で次々に蹴散らし駆けて行く。
そして、チャンスは訪れる。
モンスターと接近している時に放たれた熱線。
ギーギィは真剣な眼差しで一気に距離を稼ぎ、熱線をギリギリのところで躱した。なおも追ってくる熱線。ギーギィはそのまま大きく跳躍！ ギーギィを狙っていた熱線がモンスターに直撃するはずであった。しかしその熱線は盾に吸収されてしまった。いや、ギーギィが狙っていたのはこれではない。
「これで終わりやっ！！」
背後を取ったギーギィが渾身の力を込めて、ファイアブレードを放つ！！
ギーギィの剣は深々とモンスターの背中を貫いたのだ！
「アアアアアァァァァァァァーーーーッ！！！」
炎に身を捩じらせ、逃れようとするモンスター。暴れるモンスターから離れたギーギィはゆっくりと立ち上がり、もう一度、モンスターの前に出た。
「今、楽にしたるわ……」
最後にまたギーギィは剣を振るった。
…………。
「ギーギィさん、ギーギィさんっ！！」
遠くで見知った声が聞こえた。
ギーギィは重いまぶたをゆっくりと上げる。
「よかった……もう大丈夫ですね」
リゼルがほっとしたような表情でギーギィを抱きかかえていた。
「……ウチ……あっ！ アイツはっ！！」
がばっと起き上がり、そして、全身を巡った激痛にギーギィはうずくまった。
「ギーギィさん、あちらを……」
ユリシアが指差す先に倒れたモンスターの姿があった。
「ウチが……アイツを……」
ギーギィの言葉にユリシアはゆっくりと頷いた。
「守ってくださり、ありがとうございます。ギーギィさん」
そのユリシアの言葉にギーギィはにっと笑った。
「傷痕が残ってもうたら……２人の未来の旦那様に一生呪われてまうからな」
冗談めかして言った言葉。リゼルとユリシアはきょとんとしていたが、すぐに笑顔になった。
「さあ、行きましょう。皆さんが待っていますよ」
ギーギィは２人に抱えられ、静かな闘技場を後にしたのであった。
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