ランララ聖花祭〜木漏れ日の二人

●恋人達の丘

 星屑の丘。
 ザーガは木に寄りかかり、人が来るのを待っていた。
「ザーガ! ごめんなさい。遅れちゃったの」
 息を弾ませ、やってきたのはミストティーア。
「ミスティ!」
 ザーガの顔が綻ぶ。
「心配したんだ………」
 そんなザーガの言葉を遮るのは、ミストティーアの唇。
 ほんの数秒。
 いや、ほんの数分。
 永遠ともいえる時が、過ぎていった。
「ミスティ……」
 頬を紅く染めながら、ミストティーアは続けた。
「私と出会ってくれてありがとう、ザーガ………好きなの」

 ザーガの頭の中にチャペルが鳴り響く。
 なんと幸せなことか。
 思わずザーガはミストティーアを抱きしめた。
 いや、抱きしめようとしたのだが……。
「あ、ザーガ、ま、待ってっ」
「え? ええ?」
 わたわたと逃げるミストティーア。それに戸惑うザーガ。
 すっかり忘れていた。
 ミストティーアの後ろに回した手には、ザーガに渡そうとして持ってきたお菓子が隠されていたのだ。
 危うく、そのお菓子を落としてしまう所であった。
「隠さなくてもいいだろう?」
「どきどきする方が、楽しいと思って……」
 ザーガを驚かせようと思っていた作戦が失敗してしまったようだ。
「じゃあ、もう一度改めて」
 ぎゅっと抱きつくザーガ。
「ありがとう、ミスティ」
「どういたしまして、なの」
 二人は微笑み合う。
「あ、そういえば、ミスティの作ったお菓子、何?」
 あっという間にお菓子モードに入るザーガ。
 ミストティーアは思わず苦笑してしまう。
「見てからのお楽しみ♪」

 二人は木陰に座り、仲良くお菓子を食べている。
 二人のキスのように、甘いお菓子を……。


イラスト: 秋月えいる