星の下で君と

● 星降る夜に交わす想い

 空には数え切れない星が瞬いていた。
 降るような星空。
 セリオスとティエランは、美しい星空を見上げながら、ゆっくりと星屑の丘を歩いていく。
 セリオスは辺りを見渡しながら、人気のない場所を見つけた。
「この辺でいいか?」
「……はい」
 二人は揃って草原に座る。
 と、風が吹いた。
 少し肌寒く感じる。
「あ……」
 セリオスは自分の着けていたマントを外し、そっとティエランの肩にかけてあげた。
「……風邪を引くといかんからな。まあ、代わりに俺はこうしてもらうが」
 そして、セリオスはティエランの膝に頭を乗せた。
 そう、膝枕だ。
 ごろりと横になったセリオスは満足そうに瞳を細めている。
「セリオスさんったら……」
 恥ずかしそうに頬を染めるティエランの姿に、セリオスは僅かに微笑んだ。

 二人はしばらく、他愛の無い話をしながら、夜空を見上げていた。
 どのくらいの時間が過ぎたのかわからない。
 けれど、二人にとっては、幸せなひと時だった事は間違い無い。
 ティエランはそっとセリオスの髪を梳きながら、膝に感じるセリオスのぬくもりを感じていた。暖かく確かなぬくもりにティエランは、幸せをも感じていた……。
「いつの間にか、隣にいて……」
 呟くように、まるで詩を朗読するかのように、言葉をつむぎ出すティエラン。
「これからもずっといられるように……互いが互いを、ずっと求めていられるように……一番大切なもので在れるように……」
 それは願いのようで、唄のようで。
 だが、その言葉は詩ではない。願いでもなく唄でもない。
 ティエランが勇気を出して、言葉にした愛の告白であった。

 ふと、ティエランの頬に手が添えられる。
 セリオスだ。その瞳はいつになく優しく感じられた。
「……そうだな、いい加減離れていかれるのも御免だ」
 セリオスのその手で、ティエランの顔を引き寄せていく。
「せ、セリオ……」
 ティエランの声が、途切れる。

 きらりと、夜空に星が流れていった。

「逃がすつもりはないので覚悟してくれ」
 そうセリオスに言われて、ティエランは顔を真っ赤にさせていた。
 それは、瞬く星が流れてしまうほどに、大胆な口付け。
 ティエランは、こくりと頷いた。


イラスト: 秋月えいる