Le Coeur Pur

● Le Coeur Pur

 二人は手を繋いで、丘を登っていた。
 二人の前には、厳しい試練が待ち受けている。
「この次で最後です!」
 クーヤは勢い良く、試練を突破していく。
「はい、もう少しですね。……でも、ちょっと疲れちゃいました……」
 アヤも大好きなクーヤと一緒で嬉しそうだが、ちょっとお疲れ気味の様子。
「大丈夫ですか? 私がおぶってあげましょうか?」
「え? で、でも……」
「気にしないでください、これくらい大したことありませんし」
 クーヤにおぶってもらって、アヤは嬉しそうだ。
 こうして、彼らは最後の試練を乗り越え、女神の木の下までたどり着いたのであった。

 二人は揃って、女神の木の下に座った。
「これは私からのプレゼントです」
 そう言って、クーヤは自分の持ってきたカップケーキを手渡した。
「ありがとう、クーヤちゃん♪ わたしもチョコレート持ってきたんです」
「まあ、美味しそう……」
 ふと、クーヤはアヤの作ってきた、そのスティック状のチョコレートを見て、何かを思いついた。
 一本のスティックをつまみあげ、その先を咥える。
 そして、じっとアヤを見た。
「クーヤちゃん?」
 一瞬、戸惑ってしまったが、すぐにアヤはクーヤがやろうとしている事に気づいた。
 なぜなら、アヤも同じ事を考えていたのだから。
 アヤは、クーヤの咥えているチョコレートの端を咥える。
 クーヤはアヤの瞳を見つめながら、ゆっくりとアヤに近づいていく。
 アヤもそっと近づき……。

 どくん。

 クーヤの胸の鼓動が早まる。
 唇までもう少しの場所でクーヤは、アヤに触れた。
 まるで壊れ物を扱うように、そっと、優しくゆっくりと腕を回す。
 互いの大きな胸がぶつかり、押し付けられる。
 触れた胸から、相手の鼓動を感じる。

 気が付けば、口の中のチョコレートは溶けてしまっていた。
 クーヤは唇を離すと、左手でアヤの頬に触れた。
 その左手には、アヤから貰った『天使の指輪』がはめられていた。
 優しげな瞳で、口を開く。
「この胸の高鳴りが伝わりますか? アヤちゃんが傍にいると、いつもこうなんです。……この音が消えてしまう時まで、私は貴女の隣にいたいです……」
 それはクーヤからアヤへの愛の言葉。
「大好きなクーヤちゃんとは絶対離れません!」
 アヤはすぐさまそう反論し、頬にあるクーヤの手を上から握る。
「ありがとう、クーヤちゃん。いつもお世話になりっぱなしだから……今日は一杯心を休めてくださいね♪」
 そして、アヤは嬉しそうに微笑んだ。


イラスト: 茶駝乾